アイマスのアイドルが童貞をもらってくれるシリーズ 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
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『きみはとてもお利口さん……いや、“しんし”だね。奥ゆかしいぐらい。できるだけ、これからもそういてほしいな。ほかの女の子のために』
ぼくは国語が得意なほうだけど、『しんし』が『紳士』なのか『真摯』なのか、耳で聞いても表情をうかがってもわからなかった。どっちもでよかった。その言葉を口にして、ぼくに聞かせた人の格好のほうが、ずっと大問題だった。
『でもね』
ぼくの目の前でバスチェアに座りながら話しかけてくるのは、アイドルの十時愛梨だ。素肌にお風呂の湯気と汗しかまとっていないように見えた。裸だ。本当に。ぼくが出会って何日かのころは『ふぅ~……あっついねぇ。脱いじゃおかな。脱いでも良い?』なんて何度も言って、けっきょく胸元のボタンをくつろげるぐらいだったのに。
『私は、きみの特別がいいなぁ』
あ、布が一枚だけあった。ミルクチョコレートぐらいの暗めな茶髪が、うちの白いタオルでくるくる巻かれてまとめられていた。ふだんはせいぜい『お姉ちゃん』なのに、このときは『お姉さん』に見えた。年下のぼくが言うのもなんだけど、とても大人っぽかった。顔は相変わらず、丸っこくて、ちっちゃくて、笑うと目と口元がふにゃあってする感じなのに。
『そうだっ、きみも……呼び方、変えてみたほうが特別な感じになるかな? ねぇ、愛梨、って呼び捨てにシてみてよ。いまなら、いいよ』
ふだんは『とと姉ちゃん』と呼ばされていた。最初に『十時さん』って呼んだとき、あまりによそよそしいからって変えさせられた。
『ふふ、よろしいっ。きみ、そう呼ぶの初めてでしょ? 男の子にそう呼ばれて、ちょっとドキっとしちゃったよ』
とと姉ちゃんが大げさにくすくす笑うと、それだけでおっぱいがふるふる揺れた。でっかい。ぼくの両手をめいっぱい広げて、やっと片方のおっぱいをすっぽり覆えるかどうかってぐらい、でっかい。おっぱいのふくらみが急すぎるのか、シャワーを浴びた直後でもないのに、肌に大きな水滴がいくつも乗っていた。乳首は、そこだけぼんやり日焼けしたような色だった。おっぱいのふくらみがてっぺんの乳首に向かってきゅっと絞られているように、ちょっとだけツンとしていた。
とと姉ちゃんはぼくより少し背が高く、肩幅も少し広いけれど、それにしてもおっぱいがでっかくて重そうだった。どうやったらあんなおっぱいで、ステージで何曲もダンスが踊れるんだろう。
『呼び捨てにしてくる知り合いの男の人は、それこそ家族とか親戚とか……ほとんどいないよ。大学の友達がね……この程度のオトコが愛梨を呼び捨てするなんておこがましい、とか、このあいだテストしてみたけどイマイチだったよ、とか……なんとか言って止めさせちゃうの。ま、いまは夏休みでここまで来てるから、関係ないけどね』
じゃあ、ぼくが『とと姉ちゃん』と呼ぶのに資格とかテストとかいらなかったのだろうか。
『もー、愛梨って呼びなさい、って言ってるでしょう?』
ずい、って。とと姉ちゃんがぼくに迫ってきた。
おっぱいに気圧されてしまった。ぼくは首のあたりの血管がぶくぶく沸騰しているように熱くて、喉がごくんと鳴ってしまった。
とと姉ちゃんのおっぱいを服越しに見ていたときは、正直に言って見たかったし触りたかったけど、こうやってずいっと差し出されると指先も手も肩も武者震いが止まらなかった。
ぼくはあのおっぱいを触ったことがある……いや、触らされたことがある。とと姉ちゃんと最初に会った日。まだぼくの夏休みがもうちょっと残っていたころ。とと姉ちゃんがハートのネックレスを失くして困っていたからって、きれいなお姉さんに良い格好をしたくて一緒に探してあげた。
その日のぼくはまだ、とと姉ちゃんを“ただの”きれいなお姉さんだと思ってた。落ちてたネックレスをぼくが見つけてあげたら、両腕であのおっぱいを思いっきり押し付けられて抱きしめられた。ぼくがネックレスを拾い上げたとき地面に膝立ちで、とと姉ちゃんに上から抱きしめられたもんだから、顔がおっぱいに押し付けられて、しかもあんまりぎゅうぎゅう強く抱きしめられたから、服――と、あとたぶんブラジャー――越しなのに、おっぱいに鼻と口をみっちり覆われて、窒息するかと思った。
『だいじょうぶ? おっぱい、怖くないよー』
ぼくはどう言葉を返したらいいかわからなかった。
ぼくがおっぱいを押し付けられ抱きしめられジタバタしてようやく離してもらったら、とと姉ちゃんは『あ、しまった、子供扱いしちゃった』って顔をしていた。
ぼくはそれがシャクにさわって、でもそういうイライラを表に出すほうが子供っぽいって気もしたから、とと姉ちゃんとやりとりするときはいつもギクシャクしていた。もしかして『とと姉ちゃんって呼んで』っていうのが、そういうぼくのギクシャクをなんとかしようっていうアイドル・十時愛梨流の荒療治だったのかもしれなかった。
『きれいだ、って……? きみ、すっかりお上手になったね。ふふ、あははっ、けっこうドキっとしちゃったよ』
いままで大人の目を盗んでこっそり見てきた、エロい写真や動画のおっぱいは、確かにエロくて興奮したけど、どこかおもちゃみたいだった。とと姉ちゃんのおっぱいは、エロくてぼくを興奮させるだけじゃなかった。ぼくをどうにでもしてしまえる、って力のある人の体だった。あの肌の下だって、ぼくよりみっちりしているんだろう。だって最初にぎゅうぎゅうって抱きしめられたときそうだったんだ。ぼくはジタバタしても、とと姉ちゃんが力を緩めるまでぜんぜん相手にならなかった。
直に触れてもいないのに、ぼくの手の甲やら腕やらあごやら首やら肩やらに、むぎゅうって強く柔らかく押されてどうしようもないって気分が、まとわりついて離れなかった。
『このおっぱいで……きみのおちんちん、ぎゅーってシちゃおっか♥』
とと姉ちゃんの声を聞かされて……そんなことしちゃだめだ、あそこまでどうしようもなくなっちゃう……って危機感がぼくの中でぐるぐるしていたけど、あえなくとと姉ちゃんに捕まってしまう。おっぱいに比べると手足は細いのになんて力だろう。ぼくがふにゃふにゃにされてしまったのか。
『こら。ジタバタしないの。男の子でしょう? でも、私だって力じゃ負けないよ』
おちんちんがおっぱいに捕まると、顔まで抑えられたように息が詰まってしまった。心臓が壊れたようにばくばく暴れて、息が詰まってなかったら口から飛び出ていたかもしれなかった。
『アイドルって、ただニコニコしてるだけのお仕事だと思ってた? でもそれって、ぜんぜん違うよ。まぁ、私も自分がなるまで、そう思ってたけど』
とと姉ちゃんの言う通りに『ぜんぜん違うこと』はとっくに知っていた。
こうされちゃった何日か前に、とと姉ちゃんが前に出演したドラマを少し見せてもらったことがあった。とと姉ちゃんの例のでっかいおっぱいが半分ぐらい出てる青くてもこもこして鎧なんだかビキニなんだかって衣装がすごかった。けれど、とと姉ちゃんが自分の胴体ぐらいありそうなでっかい剣をびゅんびゅん振り回して殺陣をこなしていたのはもっとすごかった。ぼくたちがホウキでふざけてやっていたチャンバラとは次元が違っていた。
『ふふ、おちんちん、もう逃げられないねぇ♥』
挟まれていた。包まれていた。皮をあっさりむかれて、先っぽがしびれて熱くてたまらなかった。自分で触ると痛くて気がすすまないけど、とと姉ちゃんにされるとどうしようもなかった。お尻の穴あたりを中心に、腰がぞくぞくして、タマが縮み上がってしまった。
『へぇ、白い“おしっこ”、出したことないんだー。あれは精液っていうんだよ。保健体育も、これからはちゃんと真面目にやろうね?』
むぎゅむぎゅ、ぐちゅぐちゅ。おっぱいで何かぐちゃぐちゃにされていた。
ぼくは声が止まらなかった。とと姉ちゃんにこんなことされているって誰かにバレたら恥ずかしくて、でも気持ちよくて抵抗できなくて、見つかったらどうしよう……そうやって考えれば考えるほど、頭にまで、しびれるのとぞくぞくが広がった。
『何かが出ちゃいそうでしょ。わかるよ。でも、まだだめ。がまんして。がまんしたら、もっと気持ちよくなれるよ?』
もうおかしくなってたのに、もっと気持ちよくなったら。
『こら、だめでしょっ。悪い子は……ぎゅって、シちゃうんだからっ。ほら、こうしたら……ふふ、空打ちって言うのかな? びくびくしちゃうけど、出せないの……♥』
だめ、出したい、出せなきゃおかしくなる、お願いとと姉ちゃん、ぼくは……。
※
「……はぁ」
ぼくはフラフラヨタヨタしながら、なんとか風呂場から出た。ぼくがあまりに長風呂で『早く上がれ』と親から催促されて、その声でなんとか我に返った。我に返ると、あれだけぼくを好き放題シていたとと姉ちゃんは、幻と消えていた。
あれは確かにあの風呂場であった出来事だけど、きょうのことじゃない。あれは夏休みだったころのことだった。いまは秋も終わろうとしている。ぞくぞくするのは湯冷めのせいだった。
きょう学校から帰ってきたら、ぼくあての大きく分厚い茶封筒が家に届いていた。
伝票の差出人欄には『十時愛梨』と書いてあった。アイドル・十時愛梨のサインより少しきりっとした筆跡だった。それがとと姉ちゃんその人の手によるものだと、ぼくは知っている。
品名は『献本・私信』とあった。これも、とと姉ちゃんの字だ。茶封筒の紙からとと姉ちゃんの顔がうっすら透けて見えている。重さと硬さからして、アイドル・十時愛梨の写真集が1冊収まっているのはわかった。
……じゃあ、『私信』は?
『献本』というのはわかっている。本を出版するとき、協力した人たちに刷った本を贈ることを献本って言うらしい。それもとと姉ちゃんから教えてもらった。
ぼくの家は、親が2人とも建築家で、田舎の古民家を買い取って改築して事務所兼民宿にしてしまった。『都内から電車で1時間のところに、こんな山と緑が豊かで歴史のある景観の土地は、ここしかない』と親はよく自慢する。ぼくはこの口上を詐欺だと思っている。都内のどこから数えて1時間、と言っているつもりなのか。少なくとも東京駅からだと、片道1時間どころか2時間でもちょっと足りない。
とと姉ちゃんは、こんな田舎に写真集の撮影にやってきて、撮影中はぼくの家にスタッフさんと一緒に泊まっていた。とと姉ちゃんとぼくが初めて会ったのは8月半ばだった。それからぼくの夏休みが終わるころまでずっと泊まっていった。
とと姉ちゃんと初めて会った日、ぼくは夏休みの終わりをうっすら感じて気分がだらだら下り坂だった。でもおかげでヒマだったから、とと姉ちゃんがハートのネックレスを失くして困っていたとき、何時間も一緒に探してあげられた。
それから撮影の合間合間に、とと姉ちゃんがぼくをかまってきた。ちょうど『十時さんじゃよそよそしいよ。そうね……じゃあ、とと姉ちゃんで』って言われたのもこのあたりだった。
それがうれしかったけれど、それ以上に照れくさくて、あと相変わらず子供扱いされてる気がして、ついいろいろイヤミを言ってしまっていた。
『とと姉ちゃんって、アイドルなんだよね』
『そうだよー』
『ここで、写真集の撮影をしてるんだよね』
『うん。ここには初めてきたけど、ちょっと懐かしい感じがする。私のおじいちゃんおばあちゃんの家って秋田なんだけど、ちょっと似てる気がするから』
『でもこんな田舎じゃ、いくらとと姉ちゃんが被写体でも、絵にならないでしょ』
『地元きらいなの?』
親は『こんな田舎』が大好きだけれど、ぼくはイマイチ好きになれなかった。ほかのクラスメイトがもう何年も顔なじみになっているのに、いきなりやってきたものだから、話もよく合わないし。
ぼくは東京23区で生まれて、中学年まではそこで住んでいたのを、親の仕事の勝手でここまで引っ越す羽目になった。前に住んでいたところも、道や家が狭くて、カラスがたむろしていてあんまりきれいじゃないとか、夜はときどきノラネコのケンカでうるさくなるとか、そんなにいい土地ではなかったけれど、じゃあこっちがいいかと言われると……。
『まぁ、ここの写真だけで1冊もたせるわけじゃないよ』
『それなのに、わざわざここまで泊まりに? とと姉ちゃん、もしかしてヒマなの』
『むー、そんなことないよー!』
とと姉ちゃんは、珍しくトゲトゲしい声を上げていたけど、頬を丸くぷくーっとふくらませてもいたから、本気で怒っていたかどうかわからなかった。
『私、もうちょっとしたら映画の撮影やるんだけど、プロデューサーさんが……そこ、原作の小説のモチーフになった土地だからついでに勉強してこい、一石二鳥だ……って言うんだ。ムチャ言うよね』
『こんなところが、小説の舞台になるの?』
『伝奇ホラーだよ。新月の夜、昔からその土地で行われてきた秘密の儀式があって、それを見てしまった主人公たちが……』
『新月?』
『あれ、月の満ち欠けって理科でやらなかったっけ。まぁ、きみは見られないけど』
『ば、ばかにしないでよ。怖くないよ』
『ホラー映画なんだから、怖くなきゃ、作ってる私たちが困っちゃうよ。あと、見ちゃだめな理由は年齢制限』
『……とと姉ちゃんが、人を怖がらせるなんてできるの?』
『秋田にいたころは、なまはげ役やったこともあるんだよ。あんまり怖がってもらえなかったけど』
『だろうなぁ』
とと姉ちゃんが、また頬をふくらませた。
とと姉ちゃんの写真集の撮影はたいそう順調らしくって、空き時間に近所のお年寄りに話を聞いたり、夕方や夜になると日焼けした古い本を借りてきて部屋で読んでいたらしかった。そうやって空き時間に進めている土地の勉強はぜんぜん順調じゃないらしかった。とと姉ちゃんがぼくを呼び出すとき、いつも日焼けした古い本がテーブルにひっくり返っていた。
とと姉ちゃんは何かにつけてぼくを話し相手にした。親は『アイドル・十時愛梨にかまってもらえるなんて、どんだけ役得なんだ』と、ぜんぜん止めてくれない。おかげで、とと姉ちゃんもぜんぜん遠慮しない。
『とと姉ちゃん、ちょっとかんべんしてよ。ぼくだって忙しいんだよ』
『夏休みなのに? あ、もしかして夏休みの宿題、終わってないんでしょ』
『とと姉ちゃんっ!』
図星だった。ドリルとか、日記とかはどうとでもなったけど、自由研究が難題だった。何もネタが思いつかない。
『だいたい、とと姉ちゃんって大学生だよね。大学生って夏休みの宿題ないの?』
『私はないかなぁ。あと、うちセメスターだから、夏休みは9月の末まであるんだー。いいでしょー』
『いいなぁ大学生って、勉強しなくていいなんて』
『してるよー! そりゃ、そんなに得意じゃないけど』
『ふーん……』
『あー、なにその顔ーっ』
ぼくは、とと姉ちゃんがそんなに勉強できる人と思っていなかった。当人の口から『勉強が苦手』って聞いてたし。とと姉ちゃんがここですべき『勉強』も、なんだかさっぱりはかどっていなさそうだったし。
『あ、そうだ! きみ、自由研究って終わってる?』
『お、お……終わって……ない、けど』
『私とケーキ作ろう! それで1つネタができるよ』
『ケーキって……なに、家庭科?』
ぼくは、とと姉ちゃんとケーキを作って写真を撮ってレポートを書いて、それを夏休み明けの学校に提出した自分を想像した。オンナみたいだ、ってからかわれるんだろうな、って気が進まない。ぼく自身は別にいいだろ、って思うんだけど。そういうところが多いのも、ここはちょっとイヤだ。
『ふふ、家庭科だとレシピどおりに作りましょう、ってなっちゃうね。それだけじゃないよ? わかった、わかった。もっと面白くしちゃう。ふふん、十時愛梨がちょっと勉強もできるって、見せてあげるっ』
どうやらぼくは、とと姉ちゃんの心のなにかに火を着けてしまっていたらしい。ぼく自身が、とと姉ちゃんから子供扱いされて内心ふくれっ面だったけれど、同じようなしくじりをこんどはぼくがとと姉ちゃんにやらかしたらしい。
だから大人しく、とと姉ちゃんの世話になることにした。
――ほら、もっとクリームは勢いよく、力強く! 空気と混ぜるの。ほんとだよ? ホイップクリームって空気と混ざってるからふわふわになるの。
――あぁ、パンやスポンジのふわふわとはちょっと違うよ。あれはベーキングパウダーっていって、水と熱で炭酸ガスが……コーラとかサイダーに近いかな。
――火から水が出るわけがない? ふふ、出てるんだなぁこれが。ロウソクだけじゃないよ、ガスでも出てるよ。だからサクサクパリっとさせたいものはだいたい窯で、しっとりジューシーはだいたいグリルで焼くの。
――ああっ、アルミホイルそんな使い方したらだめだよ、腐食しちゃう! え? あぁ、腐食っていうのは……アルミから、ええと、これだとステンレスだから、最外殻電子が……そうだ、試してみる? 家庭科じゃあ教えてくれなくて、理科じゃあ実験させてもらえないことだしっ。
――理科だけじゃないよ。私、社会科もちょっとはできるんだから! そうだね、近所で売られているチョコを調べてみよう。なんでホワイトチョコレートってカカオマス使ってないのにチョコって言うか知ってる? それはねー……えっ! ここからスーパーってそんな遠いの!?
とと姉ちゃんの『もっと面白くしちゃう』は、ぼくの夏休みギリギリまでエスカレートした。ぼくの家は台所から始まって、どこもかしこも一度は実験室にされてしまった。
――レポートには私の名前も書いてよ。献辞っていうの。それが研究のマナーだよ?
自由研究のレポートには、いったん『十時愛梨』の名前を書いたけど、提出前にこっそり修正液で消してしまった。とと姉ちゃんには申し訳ないと思ったけど……現役アイドルがうちに泊まりに来て、しかも自由研究をみっちり手伝ってもらったとか、ここで周りに知られたら、ぼくがどうなるのやら。ただでさえ一緒に行動してるのはウワサになってそうなのに。
それよりも知られたらどうにかなってしまうことも……とと姉ちゃんと、してしまったんだけど。
※
『ねぇー、ちょっとバスタオル忘れちゃったからとってきて……あ、ついでに背中流してよー』
『ついでに頼むことじゃないよ!?』
とと姉ちゃんのぼくへのあたりもエスカレートしていた。とと姉ちゃんは、ぼくがよそよそしくすると、そのぶんなれなれしくなる。うかつにツレなくしようものなら、このありさまだ。
『だいじょうぶ? おっぱい怖くないよ?』
『こ、怖くなんか……それに、背中でしょ!』
だからてきとうに付き合っていたんだけど、あるときとと姉ちゃんの部屋で『勉強』の資料を片付ける手伝いをしていたら、とと姉ちゃんが一度にたくさん本を抱え込みすぎて本を落としそうになって、それどころか自分まで転びそうになってて、とっさにぼくが手を出したら、とと姉ちゃんのおっぱいをわしづかみにしてしまった。
ごめん、って謝ったらとと姉ちゃんは許してくれたけど、ぼくは気まずくて、とと姉ちゃんの前では自由研究を始める前よりギクシャクしてしまうようになった。それがとと姉ちゃんをもっとエスカレートさせると知っていても、そうなるのはどうしようもなかった。
ぼくの夏休みが終わる日と、とと姉ちゃんが撮影を終えて東京に帰る日が迫ってきていた。
『入るよー』
『わぁああっ!? ぼ、ぼく入ってるよっ!?』
『知ってるー。きみと私だけなら、だいじょうぶでしょっ』
民宿の中には、泊り客専用のお風呂があるところもあるみたいだけど、うちは古民家を改造したものだから、もともとまともなお風呂がなかったらしい。それで離れを新築して、ぼくらと泊り客兼用のお風呂やら脱衣所やらを造った。あのときみたいな夏はともかく、冬はあっという間に湯冷めしてしまう。
あのころのぼくの家は、とと姉ちゃんと撮影のスタッフさんで貸し切りになっていて、ちゃんと入れる時間帯を分けてていた。なのに、とと姉ちゃんはぼくが入ってるときに時間割を無視してやってくる。自分ちであるはずのぼくよりも、我が物顔でこのお風呂を使っている。
その日もそうだった。頭に巻いた手ぬぐいとバスタオル以外、とと姉ちゃんは何も身につけていなかった。ぼくが入っている最中に、そんな調子だ。“ねえ”ちゃんとお風呂入ってる? なんて低学年みたいなしゃれが浮かんでしまう。
『あ、頭っ、もっとちゃんと洗わないとだめだよー』
ぼくがとと姉ちゃんに背を向けて、もうとっくに済んでいるシャンプーをムダに泡立てていると、背中にとと姉ちゃんの声が近づいてきた。
『あ、な……とと姉ちゃんっ』
『どうしたの?』
背中に、むにゅん、と押し付けられる、おっきくて柔らかいもの。まさか、と思う。泡が目に入っていないのに、目を開けられない。
『きみはこれから、もっと大人らしく、男らしくなるでしょう……で、そうなると、もっと頭をしっかり洗わないとだめになるの』
『ど、どうしてさ』
『汗臭くなっちゃうの。そしたら、女の子に嫌われちゃうよ?』
とと姉ちゃんは、シャワーを浴びていないのに、甘くていい匂いがする。とと姉ちゃんと作ったどんな料理より濃くて、近い。鼻をそらしているのに届く。
『きみの背中も流してあげようかっ』
『わぁっ』
ぼくが肩や腕を揺するぐらいじゃ、とと姉ちゃんをとても振りほどけない。大人の女の人の体ってこんなに強いのか。それとも、とと姉ちゃんが特別なのか。
とと姉ちゃんの手が、ナイロンタオルにボディソープを含ませてしゅわしゅわ泡立てている。ぼくの頭の中身まで泡立てられている気分になる。ホイップクリーム作ってるときはぜんぜんそんな気分にならなかったのに。
『お、きみは……生えるには、ちょっと早かったかな』
『ちょっ、そこ、とと姉ちゃんっ!?』
『ここもちゃんときれいに洗わなきゃだめだよ。皮は剥いたことある? 敏感だから、触りたくないかもしれないけど』
『あっ、あっ……! とと姉ちゃんっ、そこは自分で……あうぅうっ……!』
『あはは、かわいい声っ♥ ……こほん、きみはお父さんやお母さんに、ちゃんとした洗い方は教えてもらった?』
『え、ええと……』
『じゃあ、私が……とと姉ちゃんが教えてあげる。自由研究に書けとは言わないから』
『あ、あたり、まえ……あ、あっ、だめ……っ!』
とと姉ちゃんにいじられているあそこが、いままでにない感じでムズムズする。おしっこが出る寸前のようだけど、でもおしっこの前でぼくはこんなに熱くなったり震えたりしない。
『おちんちんが、もっとおっきくなって……血が流れ込むの。たんこぶみたいにね。そうすると、おしっこの穴から、白くてどろどろのが……出しちゃったことある?』
『な、なぃ、って……だっだめ、あそこだ、え……ひっ、い……ふぁっ、ぁああっ……!』
『それはきみが大人になって、子供を作るときにいるんだよー』
とと姉ちゃんの言うことは、うっすら知っていた。でもそんなの、とと姉ちゃんにおっぱいを押し付けられ、あそこをいじられながらでは、一瞬の気休めにもならない。
『おちんちんを、きみが好きになった女の人のあそこに入れて、中でびゅーびゅーってすると、子供ができるんだよー』
とと姉ちゃんから『好きになった女の人』と言われても、ぼくにはとと姉ちゃんしか思い浮かばない。もしかして、このまま、ここで……それは……。
『ふーん……♥』
ぼくはなにかを、とっさに口走っていたんだと思う。ぼくはまだ、とと姉ちゃんに釣り合う男じゃないとかなんとか。
ちらりとはそう思っていたけど、心の底までそう思っていたか、どうか。
とと姉ちゃんの腕とおっぱいに包まれていると、ぞくぞくしてたまらない。寒いわけじゃなくてむしろ熱いぐらいなのに。取っ組み合いでは何をどうしても勝てない。しかも、何をムリヤリされても、とと姉ちゃんが相手だと、ぼくはそれをイヤだとも思わせてもらえない。
『きみはとてもお利口さん……いや、“しんし”だね。奥ゆかしいぐらい。できるだけ、これからもそういてほしいな。ほかの女の子のために』
それでぼくは、とと姉ちゃんのおっぱいで、あそこを……。
パンツとあそこが擦れて、我に返った。また、とと姉ちゃんが幻と消えた。ぜぇぜぇはぁはぁ息苦しいぼくだけが、ぼくの部屋に帰ってきた。
あの日、風呂場でとと姉ちゃんに押し倒されて、おっぱいでおちんちんをずりずりされて、なにか出ちゃう、出したい、出させて……といくら言っても、とと姉ちゃんは承知しなかった。とと姉ちゃんの手で、ぼくのタマとお尻の穴のあいだをぐいぐい押されると、どうしても出そうなのが、いきなりどうしても出せなくなった。ぼくは体の根っこまで、とと姉ちゃんにひっつかまれてしまった。
ずりゅずりゅして、出しちゃう寸前に追い詰められて、それをぐいって止められる。何度も繰り返される。その1回ごとが永遠みたいに長かった。
『はじめてなら……せっかくだし、こっちに出してみようよ……♥』
とと姉ちゃんがバスチェアに座ったまま、太腿を広げた。スカートだったら余裕でパンツが見えてしまうぐらい。そのときのとと姉ちゃんは、スカートどころか手ぬぐいとバスタオルしか身に着けてなかったけど。そのバスタオルもほどいてしまって、とと姉ちゃんの本当の裸を見てしまう。
『あぃっ、ひ、ぁ、うぅうぅ……っ』
ぼくは風呂場のバスマットに寝かされたままだった。あそこが信じられないぐらい固く上向きになっている。そのすぐ向こうに膝立ちのとと姉ちゃんがいる。女の人のあそこをまじまじとみたのは初めてだった。あそこの毛は髪の毛より黒っぽくて短くて、ずぶ濡れなのかぺったりしていた。おへその下から両腿のあいだにかけて肌がふっくらしていて、その下のほうにすうっと包丁を一回だけ入れたような切れ込みが垂直にまっすぐ入っているけれど、どこまで続いているのかぼくには見えなかった。男のあそこに比べるとずいぶんあっさりしているな、とそのときは思った。
『ぎゃうっ、あ、あっ……はぁっ!』
『あ、はっ……♥ もうきみの抑えてないからね……いつでも出せるでしょう?』
『だ、だめ、だぇ……! や、やらぁっ!』
『そうだよ。ほかの女の子にこうしちゃだめなんだから』
『あ、ぅ、あぁああぁっ……』
『でもね、私はきみの特別がいいの』
勝手に上向きになってぼくの思い通りにならないあそこを握られ、とと姉ちゃんのあそこに添えられ、ずぶっと入れられてしまう。あそこがあそこに擦られる。ぬるぬるで、あつあつで、すごくきつい。
『あそこじゃないよ。女の人のあそこは、おまんこって言うといいよ♥』
おまんこ、って口に出すのが恥ずかしくてたまらなかった。ぼくが恥ずかしがると、とと姉ちゃんはますますおまんこって言わせようとした。おまんこ、おまんこ、おまんこ……ときどき鼓膜がびりびりするほど高く大きな悲鳴を上げて、なのに顔はうれしそうで、ぼくはとと姉ちゃんがおかしくなってしまったんだと思った。
ぼくもおかしくなっていた。
『ぁ……だ、めぇ……も……っお、っ……!』
熱くて、ぞくぞくして、泣いちゃうほど恥ずかしいのに、おまんこからおちんちんを抜いてほしくない。おまんこのことしか考えられない。とと姉ちゃんがおまんこずりずりしるから、おっぱいがゆさゆさしてる。あいかわらず重そうなのにすっごく揺れる。
男は出したら終わりだ、というのはエロ動画で知っていた。出ちゃう。もうとと姉ちゃんは抑えていてくれない。
『あ……あ、あっ、あ、だ、めぇっ、くるっ』
『いっちゃえ、いっちゃえっ♥』
おしっこではない、というのはわかった。どろどろしていて、漏れるというより打ち出すって感じがぜんぜん違っていた。体の中でふくれあがって熱く苦しかったものを、とと姉ちゃんに解放してもらっている。おまんこがキツくておちんちんが潰されてしまうかもしれない、と一瞬心配になった。でも痛くなかったからどうでもよくなった。
しばらくすると、とと姉ちゃんが声をもごもごと喉に籠もらせてから、満足気にニコニコ笑って、『よくがんばったね♥』とぼくの頭を撫でてくれた。それから脱衣所まで肩を貸してくれた。
そのとき腕や胸にあたったおっぱいの感触と、さっきよりもっと濃くなっていた甘い匂いまでは、なんとか覚えている。
それからぼくは、とと姉ちゃんから事あるごとにえっちなちょっかいを出された。
『と、とと姉ちゃんっ、着替えるんなら言ってよ!』
朝、準備中のスタッフさんに頼まれてとと姉ちゃんを部屋に呼びに行って、『開けていいよーっ』と聞こえたから、開けてみたら……やたらに丈の短いズボンと、鎖骨やおっぱいの上半分ぐらいが見えそうなシャツのとと姉ちゃんがいて、ぼくの目を見てすぐにベルトをかちゃかちゃやって……。
『なに、って……きみがいるから、着替えてるんだけど?』
脱ぎかけのズボンが膝の少し上に引っかかっていた。だらしない。シャツとズボンのあいだの太腿がムチッとしている。あれでまたがられたら、ぼくはぜったいに逃げられないと知っている。シャツの裾におまんこが……いや、さすがに下着をつけているはず……下着のありそうなあたりがぎりぎり隠れて見えない。吸い寄せられる。床に這いつくばってしまいそうなのを必死でがまんする。
とと姉ちゃんのズボンが膝下に、ふくらはぎに、かかとまで落ちる。糸でも引くようにゆっくり落ちていた。それから足首とつま先で行儀悪くズボンを引き抜いて、ぽーんと部屋の端に蹴り飛ばしてしまう。
『ねぇ、またシたいって思った?』
『お、お、お、も……っ』
とと姉ちゃんの脚は、当たり前のような姿なのに、ぜったいにおかしいと思った。
もしぼくの目がカメラで、とと姉ちゃんのこの両脚を写真に撮ってみんなに見せたとしたら、世界中の誰もが『女の人のきれいな足』だと認めるはずだ。きれいだけど、理想的だけど、ある意味でありふれている姿だった。
でも、よく見るとおかしい。
とと姉ちゃんの太腿が、しなやかで柔らかくて、例のぼくを押さえつけたぐらい力も強い姿なのに、とと姉ちゃんのスタイル全体からするとびっくりするほどすらっと細い。膝頭や足首は骨が出ていてしっかり硬いと一目でわかるけれど、太腿の柔らかいと骨の硬いの境目が、あるようで見えなかった。柔らかくて硬い。ぜったいにおかしい。
『ねぇ、シたいって、思ったかな♥』
とと姉ちゃんは自信満々な声音のくせに、もうひと押ししようというのか、シャツの裾をつまんで、おへそが見えるぐらいたくしあげた。水色のパンツが丸見え。しなやかな太腿と比べると、腰がぎゅっと硬そうに角ばってて、そこにパンツの紐がうっすら食い込んでいる。輪郭がそこだけ歪んでいる。それすら、習字の上手い人が角で筆をいったん止めたみたいに自然だった。
おへその下からパンツの上あたりまでが、少しふっくらしている。でもおまんこのナカがきゅってなった瞬間、そのふっくらもぎゅうって引き攣れるのをぼくは覚えている。もしいまとと姉ちゃんが、お腹に軽くでも力を入れたら、ぼくは……。
『ふふ、言葉は出なくても、視線は雄弁だね。目は口ほどに物を言う、なんて』
そういえば、とと姉ちゃんが服を脱ぐところを見るのが初めてだった。それは湯気で曇ったようなお風呂で見た裸より、なんだか生々しかった。する、する、ぱさぁっ、なんて服のこすれる音まで、いま鳴ったように思い出せる。
触られてもいないあそこが固くて痛くなっていた。前かがみになってしまう、って意味がいやというほどわかった。
『んんっーっ、ふ、はぁ……っ』
首から服を抜くために両腕が肩より上になる。わきの下の肌は毛なんてさっぱりないようにツルツルだったけど、しなやかというよりきしきし筋張って見えた……どうだろう? すぐそばに、ぷるぷるゆさゆさしていたおっぱいがあるせいで、余計に筋張って見えただけかも。
とと姉ちゃんの水色のブラジャー……で支えられているところのすぐ下、肋骨があるあたりがとっても白い。手足も白いけどそこと比べるとほんのちょっぴり日焼けしていた。ここの山とか川とか林とかで日差しを浴びながら撮影していたんだな、と思う。下着みたいに本当は見ちゃいけないんだよ、なんて肌から叱られている気がする。下着姿を見てしまっている最中なのに。
そのときやっと気づいたけれど、とと姉ちゃんの水色のブラジャーは、ぱっつんぱっつんで飾り気のない見た目だった。お風呂でみたときより、おっぱいがすごくきゅうくつそうにしていた。
『どこ見てるの?』
『ひゃっ!? え、えぇ、と』
『……ふふっ、おっぱい、怖くなくなったみたいだね♥』
とと姉ちゃんが、両肘でおっぱいをきゅって寄せながらくすくす笑っていた。笑うと肋骨や鎖骨の形が影だけ見える。あんなでっかいおっぱいの下に、あんな細い骨があるなんて、と思ったけど、肋骨ってそういえば何本もあるんだっけ。とと姉ちゃんは理科が得意だから何本あるか知っているかもしれない。
『あんまりジロジロ見られると、恥ずかしいよーっ』
『あ、ご、ごめ、ん……』
なにが恥ずかしいんだろう。お風呂のときは裸であんなにやりたい放題だったのに。
『おちんちん、苦しそうだね♥』
ずい、って、またとと姉ちゃんが近づいてくる。あそこの熱いのがいっそうひどくなる……とと姉ちゃんにそこを人差し指で差されて……指差されただけ、触れられてもいないのに。予防注射で針の先を見てていっそう痛みがひどくなるみたいだった。
『ねぇ、苦しい?』
『う、ぅう、とと、ねえちゃん……』
『おちんちん、苦しいの?』
『う、ぅ……く、くぅ、し、ぃ……』
『ふーん♥ でも、まだだめっ』
とと姉ちゃんが何かを羽織る……撮影用の衣装なんだろうけど、とと姉ちゃんの下着姿しか思い出せない……ああ、ぅうう、なんて情けない声を漏らしちゃって、聞かせちゃった。
『きみとなら、なにかありそうな気がするわ♪ ふん、ふふーんっ♪』
とと姉ちゃんが鼻歌とともにスキップして廊下を行くのを、ぼーっと立ったまま見送った。ぼくは、背中越しで見えないはずの揺れるおっぱいが見えた。
『おっ、私がいなくてもちゃんと宿題やってるっ、感心、かんしんっ!』
昼前、撮影の休憩に入ったらしいとと姉ちゃんが、ぼくの部屋のドアをノックとほとんど同時にいきなり開けて、ずいずいぼくの隣まで迫ってきた。ぼくが机に向かって漢字ドリルを埋めているのに、ぼくの顔にむにゅって服越しのおっぱいが押し付けられる。
『あ、ごめんごめん♥ つい押し付けちゃって。これじゃ里美ちゃんのこと言えないなぁ』
とと姉ちゃんの言う『里美ちゃん』とは、アイドル・榊原里美のことだ。とと姉ちゃんと同じ事務所のアイドルで、いつかの世間話のとき教えてくれた。いわく『私よりほわほわしてて、私よりおっぱいがおっきいんだよ。ラジオとかレコーディングとかでしゃべるとき、うっかりするとポップガードがおっぱいにぶつかっちゃってたいへんなんだって』……腕力ではとと姉ちゃんのほうが上なんだろう、と根拠もなく思った。とと姉ちゃんや『里美ちゃん』は、ぼくらのように腕相撲とかボール投げとかで力比べなんてしないだろうけど。
『おぉ……きみの横顔って、まじまじ見るの初めてかな。きりって、真面目な顔してごらんっ、かっこいいよ♥』
とと姉ちゃんがどすん、と勢いよくお行儀悪くぼくのベッドに座ったらしい。机に向かっていても音が聞こえる。どすん、どすん、ぎし、ぎし。ぼくのベッドが別物のような音を立てる。別物だと思わなければいけなかった。とと姉ちゃんが座ったベッドで寝ようものなら、とと姉ちゃんが毎晩化けて枕元に立ちそうだ。
『なんでよー、私がじーっと見てるのに、褒めたそばから鼻ひくひくさせて、でれーっとして。あまのじゃくーっ』
『じゃ、じゃましないでよ……』
『えーっ!? 私おじゃま虫なんだっ。うぅ、とと姉ちゃん悲しいなぁ、自由研究、手伝ってあげたのになぁ』
『そりゃそうだけど、だからって他の宿題じゃましていいわけないでしょっ』
『うん、それはそうだね』
とと姉ちゃんが、またぼくのそばににじり寄ってくる。
『じゃあ、勉強のじゃまにならないようにシてあげる♥』
ぼくのズボンのファスナーをカチカチやってあっさり下げてしまう。パンツの、おちんちんを出すところの分かれ目もあっさり開いて……。
『男の子って、おちんちんおっきいままだと、考え事に集中できないんだって。でも精液ぴゅうって一回出すとすっきりするらしいよ。だから、とと姉ちゃんがしこしこして、くりくりして、いじいじして、ぴゅうーって出させてあげる♥』
とと姉ちゃんにささやかれながら、皮をくりくりされる。指先らしき小さいもので取り囲まれている。でも見ちゃいけない、とわからされる。見ちゃったら、出しちゃって、終わっちゃう。
『ぇ、あっ、んくっ……』
『あ、ごめん、強すぎた?』
『と、とと、ねえちゃんっ』
『なかなか、男の子の気持ちいい具合って、わからなくって……でも、きみのそうやって……がまん? シてる顔、きゅんってシちゃう……♥ もっと見せてほしいなぁ~』
とと姉ちゃんの指先? が、ねっとり、ゆっくりって変わった。もう爪の硬さと、指紋があるほうの柔らかさとの差までわかる。
『パンツが、しみしみシちゃってるね。でも恥ずかしくないよ。男の子は気持ちよくなるとみんなこうなるから……♥』
ぼくのおちんちんからあふれ出たぬるぬるを、とと姉ちゃんがにちゃにちゃさせている。聞いたらいけないのに耳を澄ませてしまう。とと姉ちゃんに手でいじられて出してしまうことが、とても恥ずかしいことのように思えた。とと姉ちゃんは『ぴゅうーって出させてあげる♥』って言ってたけどそういう理屈じゃない。
『おちんちん、大変になっちゃってるね。私のせいかな?』
『あ、ぅ、ぅう』
うんと言ってもいやと言ってもだめだ。
『ちゅっ……こ、ちゅっ……こ、って。ゆーっくり、ね♥』
さきっぽの皮を剥かれてしまった。たぶん親指と人差し指と中指で、さきっぽだけ包み込まれて刺激される。皮が剥かれきらない下のほうは、手のひらか手首あたりが添えられているんだろう。とんでもなくゆっくりだけど、ぜったい逃げられない。ずくん、ずくんって、心臓に合わせておちんちんが勝手に震える。
『はぅ、ほぁっ、はぁっ……あああっ……!』
さきっぽが輪っかかなにかでぎゅうって締め付けられる。親指と人差指のOKサインかなにかだろう。皮がとと姉ちゃんの輪っかに合わせて上に下に引き回される。皮と中身とのあいだにぬるぬるが入ってしまって、にちゃにちゃぬちゃぬちゃが大きくなる。
『あ、いけない、いけない。このまま精液出したら汚れちゃうね。よし……せっかくだから、これでっ』
とと姉ちゃんは何かを思いついたような口ぶりだけど、そのままの調子でおちんちんをいじくっている。
『これで……うんっ、きみがいつぴゅうーってシてもだいじょうぶっ♥』
『ひっ、い……な、なに、とと姉ちゃん、これ……』
なにかでさきっぽが包まれている。薄くてちょっとざらざらした布みたいなもの。というか、たぶん布だ……おかしい、ぼくの机のそばにそんな布ない。
『これ? 私のハンカチだよーっ』
『だ、だめだよとと姉ちゃん、それ、汚しちゃう……!』
『むーっ、汚くないよ! ちゃんと洗ってるよ!』
『ち、ちがぅ、そっちじゃ、あ、おあっ、あっ! ああ、あっ、う、ううっ、うあ……っ!』
しゅりしゅり、ずるずる……だめ、ぜったい、出したら、とと姉ちゃんの……指よりざらついた刺激、おちんちんが燃えてる、とと姉ちゃんに前にされたように、タマの裏あたりに力を込めて必死に堪える。
『だいじょうぶだよ。ぴゅうーって精液出しても。私のハンカチで受け止めてあげるっ』
『や、ぁ……! あああっ、だ、め……っ……!』
『きみの精液、きょう一日とと姉ちゃんが預かっててあげよっか? 見つかっちゃうかもね。見つかっちゃったら、どーしよっか……♥』
だめだった。切ない、苦しい、もうやめて、おちんちんが……いや、なにもかも、おかしくなる……とと姉ちゃんがわざとらしい猫なで声を聞かせてきて、ちっちゃい子扱いしてくるのに、怒ることもできない。
『ほぅら、しゅこ、しゅこ、しゅこ、しゅこ……いい子だから、びゅっぴゅしましょうねぇ……♥』
皮と中身のあいだにハンカチをねじこまれ、包まれ、ぎゅう、ぎゅうっていきなり強くしごかれ、ぼくは為すすべもなく射精した。
『……あぁ、もうこんな時間。楽しい時間って、短いね』
そうして、ぼくの夏休みが最後の最後まで過ぎていった。
とと姉ちゃんは『シンデレラガール』に輝いたことがあるらしいけど、ぼくにはガラスの靴ではなく、思い出しか残していかなかった。自由研究の献辞の名前は、ぼくが消しちゃったし。
※
「……はぁ」
とと姉ちゃんも、とと姉ちゃんのハンカチも、幻と消えていた。ぼくのおちんちんと精液だけが取り残されていた。ティッシュが破けないようにさきっぽを拭って、床に飛んでしまったのも始末する。
とと姉ちゃんが東京に帰ってから、いつもこんな調子だった。とと姉ちゃんはぼくの家のあちらこちらにイヤらしい思い出を残していって、それが湧き上がるたびにぼくはこうなってしまう。
でもそうなった直後は、気分が少し落ち着く。開けられそうもなかったとと姉ちゃんの茶封筒を開封できる。
予想通り、写真集が入っていた。それからライブチケットと、便箋が1枚。
便箋には、アルファベットの文字列。xが半分ぐらいずっと並んでいる。メールアドレスらしい。ぼくは携帯を買ってもらったばっかりで、親や友達とのやりとりはアプリだった。メールの書き方なんて国語の授業でちょっとやっただけ。どうすればいいんだろう……『xには、私がきみに呼ばせた名前を入れて』……そう書かれても、『とと姉ちゃん』と『愛梨』と、どっちのことなんだろう。
たぶん、とと姉ちゃんは深く考えないで書いたんだ。送ろうか、どうしようか、まぁいいや、送っちゃえっ……って、そんなとと姉ちゃんの独り言が思い浮かぶ。ぼくの自由研究でいきなり実験を増やすとき、そうだったんだ。
それから……また、いっぱいしようね♥ ……そう書かれていて、あと、最後に、キスマーク。
ぼくのくちびるがくっついたまま動かない。とと姉ちゃんとも、誰とも、キスなんてしたことないのに。
(おしまい)