※この作品はR-18です。

アイマスのアイドルが童貞をもらってくれるシリーズ   作:ふりーじ屋/家庭内禁書

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有償依頼15件目です。ご感想くださるとうれしい です。
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関裕美さんが、白バニー衣装ックスでPの童貞をもらってくれるお話

「これ、いくらかかったの?」

「俺が持つって」

「折半」

「いや」

「折半。私だって、プロのアイドルなんだから」

 

 アイドル・関裕美と、彼女の担当プロデューサーは、事務所の休憩室でヒソヒソ話をしていた。

 

 某芸能プロダクションの“休憩室”は、アイドルやプロデューサーが“親睦”を深めるための打ち合わせによく使われている、とのウワサがある。

 休憩室にはダブルベッドがあり、いつもシーツは清潔でノリがきいている。そのダブルベッドから引き戸二つ向こうに据えられている某社製のユニットバスは、家族風呂にも使えそうな面積の広さと、浴室床の滑りにくくヒヤリとしない感触によって、レッスンルーム併設のシャワー室より評判が良い。そのほか、スターリースカイ・ブライトやアクロス・ザ・スターなど、共通衣装が収められたクローゼットもある。

 これらは使用後、できる限り原状回復するのが暗黙のマナーとされている。

 

 そういう休憩室なので、裕美とプロデューサーが二人きりでいるのは、その事務所内の人間にとってはそこまで不自然ではない。

 

「俺が言うのもなんだが、それの支払いにアイドル関係あるか?」

「……あるよっ! だって……」

 

 裕美の服装は、水色のブラウスにベージュのパンツルックだった。

 手に持つ『これ』は、ウサギの折れ耳を模したヘアバンド。そのほか、二の腕から手のひらまでを覆えるロンググローブ。チューブトップ。二重のミニスカート。サイハイソックス。正確に言うと『これら』は、すべて一揃いの衣装で、白とパールピンクをベースカラーとして、ウサギというよりヒツジに近いふわふわもこもこのあしらいをちりばめている。名前は「フォーチュンバニー」。裕美の年頃に相応のガーリッシュな雰囲気で――ファンの中では「白バニー」と通称されている――アイドル・関裕美専用に作られた衣装だった。

 

「……プロデューサーが居なかったら、私、こんなの着ること絶対なかったもん」

「こ、『こんなの』……?」

「いっイヤだったわけじゃないよっ。ただ……」

 

 プロデューサーと裕美は、彼女が仕事で着用した「白バニー」を買い取っていて、その代金の支払いを『俺が持つ』か『折半』かで揉めていた。

 

「……えっち、なんだもん。この衣装」

「そっか! 裕美もそう思うか!」

「う、嬉しそうにしないでよ!? うぅ、こんなのステージより恥ずかしい……」

 

 裕美以外に着るあてのない衣装の代金で、なぜ揉めるのか。

 その理由は数週間前に遡る。

 

 

 

 

「自分で着させておいてなんだけど、裕美のフォーチュンバニー、えっちだよなぁ」

「プロデューサー、アンタ疲れてるんじゃないの?」

 

 裕美は仕事帰りで、プロデューサーの営業車に乗って、プロダクションの女子寮へ送っていってもらう途中だった。そこに担当プロデューサーのあんまりな言い草を聞かされ、彼女は後部座席からルームミラーごしを通して、運転席の彼を覗こうとする。

 

(……あっ)

 

 ミラーを見た拍子に、裕美は自分の目つきがけっこうキツいと感じてしまう。

 プロデューサーは運転中だから、こちらの顔を凝視することはないだろう……と思いつつも、裕美はあわてて眉と目尻を軽く指でほぐしてから、あらためてプロデューサーへ声をかける。

 

「……疲れてるんだったら、私、電車で帰るよ」

「疲れてるとも! でもプライベートならともかく、仕事中に裕美を一人で歩かせるわけにはいかない。俺が付き添う。するとクルマは置き去りだ。かえって手間が増える」

「仕事は終わったじゃん」

「家に帰るまでが仕事。通勤でも労災は下りるだろう?」

「あぁ、そう……」

「それはそれとして、えっちだよなぁ」

「もー!」

 

(えっち、えっちって……プロデューサーにそう言われると、私までそんな気がしてきちゃうじゃない……っ)

 

 フォーチュンバニーは、ウサギがコンセプトで、白・ピンク・ふわふわもこもこを強く押し出している衣装である。それゆえ一見すると、裕美の年頃かそれより少し年下の少女に似合いそうな雰囲気ではあった。

 が、露出度は大人にも負けていない。

 

(肩も背中もぱっくり出てるし、おヘソなんて出した衣装はじめてだし、スカート丈なんか……スペインのときとか花嫁さんのときとかは、太腿あんまり見えてなかったのに……)

 

 それでもフォーチュンバニーに袖を通したとき、裕美は自分をまったく性的とは考えていなかった。

 

(……だって、まわりが……のあさん、愛梨さん、優さんだったもんねぇ。だから、私はキュートなガーリー……むしろロリータ? な路線で……)

 

 当時、裕美がステージで並んでいたアイドルは、同事務所の高峰のあ、十時愛梨、太田優だった。いずれもバストトップは90センチ近く、カップ数でいえばFかGかという威容。

 裕美は思わず『もう少し立派な身体だったら……』とボヤき、それをプロデューサーに聞かれて励まされてしまった場面もあった。

 

「プロデューサーは、私が……」

「ん?」

 

 裕美がプロデューサーの表情をうかがおうと、またルームミラーに視線を映すと、自分の頬が少し赤くなってしまっていることに気づいた。裕美は、こんどは懐から手鏡を取り出して、それを見ながら目と頬を指で揉んだ。

 揉む加減は、彼女がステージの本番前にやっているルーチンと似ていた。

 

「私が……『もう少し立派な身体だったら……』って言っちゃったの、気にしてる?」

「気にしていないわけじゃないが」

「……が?」

「そういうのに鈍感だから、俺は」

「アンタ開き直るんじゃないよ」

 

 裕美の胸がざわつくのは、照れか、いらだちか、呆れか。

 いずれにしたってプロデューサーが原因らしかった。

 

――『ま、まぁ、何ていうか、その……いいなって思った、けど……』

――『なれないの、わかってるし。きょう、オーディション受けてみようかなって友達に言ったら、まずはその目つき直しなよって言われちゃったし』

――『……それだけじゃない。顔もべつにかわいくないし。髪だって、こんなだし……性格だって、派手じゃないし、それから……とにかく、こんな私がアイドルなんて、ありえないよ』

 

 裕美は『そういう』話になって、ついこのプロデューサーと出会った場面を思い返してしまう。

 

(名前も知らない、偶然行き合っただけの女の子に、ニラマれながら開口一番でこうまで言われて……よくスカウトするもんだよね。もし、私がプロデューサーの立場だったら、名刺を渡すどころか会話を続けたかどうか)

 

「しかしなぁ、えっちすぎたかなぁ」

「いまさら言わないでよね、もう取り返しつかないじゃん」

「悪いとは言ってない。少なくとも俺にとっては」

 

 私も悪いなんて――と言いかけて、裕美は自分のくちびるをもごもごと抑える。

 プロデューサーは裕美の挙動不審を指摘せず、黙って営業車で都道を流し続ける。

 

 裕美が目をそらすと、車窓風景が女子寮へ近づいていた。

 

「プロデューサーは、さ」

「裕美?」

「あれ着た私、見て、えっちなことシたい、って思った?」

「……」

「思ったんだね?」

 

 プロデューサーは、さっき『裕美のフォーチュンバニー、えっちだよなぁ』と裕美自身へ言って聞かせたのが嘘のように押し黙った。自分で裕美に聞かせるのと、裕美から彼自身に聞かされるのでは、勝手が違うらしかった。

 

「違うの?」

「……違わない」

「えっちシたいって思ったんだね? 嘘じゃないの?」

「う、嘘じゃないって」

 

 裕美の声は奇妙だった。

 世間的に言ってはいけないこと――裕美とセックスするのは、彼女の年齢のせいでれっきとした犯罪である――を、言わなければいけないことのように問い詰めていた。

 

「その割には、プロデューサー、使おうとしないよね」

「何を」

「“休憩室”だよ、うちの」

 

 裕美は休憩室の用途を察していた。

 利用者についても、当人たちが納得して業務に支障をきたさない範囲であればそれでいいだろう、と理解していた。

 

「……シたいと、するは、別だろう」

「まぁ、ふつうはね」

 

 一見すると、この休憩室のおかげで、男性プロデューサーが若い女性アイドルを複数はべらせてハーレム……という男の夢が可能な事務所にも思える。

 が、(プロデューサーたちにとって)状況はそうお気楽ではない。

 

 現実の歴史上にあったハーレムは、皇帝的専制権力や財力と、お世継ぎを確実に作らねばならない立場的・文化的な背景があって成り立っていた。この事務所のプロデューサーたちは、かくの如き前近代的特権を持ち合わせていない。むしろアイドルたちに業界内での立場・稼ぎを依存する立場だった。『男性プロデューサーが若い女性アイドルを複数はべらせてハーレム気取り』に見えるプロデューサーは、裕美たちの事務所でも少数派だった。

 裕美は彼らを『つまり、共有されてるヒモだろう』とみなしていた。そして裕美の知る限り、彼女の担当プロデューサーは、裕美以外のアイドルとも休憩室を使用した素振りがまったくない。

 

「……ふつうは、ね」

「ふつうって言っても色々あるからな」

「あなたは、私がアイドルになりたいって言ったら、アイドルにシちゃった」

 

 裕美とプロデューサーの車は、女子寮付きの――正確には事務所付きの――屋内駐車場を徐行していた。プロデューサーは裕美に返事せず、シフトレバーをいささか乱暴に握ってリバースへ入れた。

 

「言行不一致」

「……プロデューサーって、そういう仕事だから」

 

 会話は、バック音のチャイムに半分かき消されていた。

 プロデューサーは、右ドアをこぶし一つほど開いて外をうかがったり、バックモニターに首を向けたり、はじめてハンドルを握った車種のようにバック駐車をしていた。

 

「その言い方ーっ、どうかと思うよ。仕事じゃなきゃ、シたいの? シてるの?」

「そうでもない」

 

 裕美は、彼女自身がかつて「できる」「できない」と言うことへこだわった以上に、プロデューサーの言い草へこだわっていた。

 

「ホントに?」

「そんなに知りたいかぁ、裕美」

 

 営業車は駐車スペースにちょうどよく収まり、プロデューサーがシフトレバーをニュートラルに戻した。

 サイドブレーキ。エンジンが切れて車内灯が点く。シートベルト。

 

「着いたよ」

「プロデューサーは、私から『シてあげよっか』って言わせたいんでしょ」

 

 プロデューサーの運転行為が完全に終わったことを確認し、裕美は容赦を振り捨てる。

 

「えっちなの、プロデューサーのほうじゃん」

「違いない」

 

 裕美はカチャカチャしゅるしゅるとシートベルトを外すやいなや、プロデューサーの首に向かって顔を寄せ、手を伸ばした。プロデューサーの頬は、伸び始めたひげが少し指先にチクチクした。プロデューサーはされるに任せていた。

 角度が変わってしまったせいか、もうルームミラーを見てもプロデューサーの表情はわからない。

 

「なぁ、裕美」

「なに?」

「シたいよ。シてないけど」

「なんで?」

「……童貞って、そういうもんだし」

 

 裕美は『どうてい』という音声を『童貞』と脳内で漢字変換するのに、一呼吸ほど時間がかかった。

 

「童貞って……」

「ホントだよ」

「シてないから童貞、って同じこと言ってるよね。これが例のオクシモロンってやつ?」

「これは撞着語法(オクシモロン)というより同語反復(トートロジー)だな」

 

 プロデューサーは、彼の頬を撫でてくる裕美の指先に、自分の手を重ねた。

 

 それから一呼吸置いて、

 

「あぁあぁあ゛ぁ゛ッ、裕美に童貞もらってほしい、むしろ奪われたいぃ……!」

「やっぱりそういうことだったんじゃないっ!?」

 

 裕美が容赦を振り捨てたあと、プロデューサーも体面を振り捨てていたようだった。

 

「ひろみぃ……ひろみえっちぃ……えっちしたいぃ、してくれぇ……!」

「わかったっ、わかったから静かにして! ここ女子寮だから! 駐車場だけどね!?」

「どうせ俺なんか……えっ? そんなことない? ……ホントに?」

「人の言葉を蒸し返さない!」

 

 裕美は、プロデューサーの顔が真っ赤になるまで、後部座席から首を締め続けた。

 

 

 

 かくしてプロデューサーの童貞卒業を面倒みることにした裕美だったが、ここで凝り性を発揮した。

 

『はじめてなら……フォーチュンバニー、買い取って着ながらシてみようか?』

 

 プロデューサーは即座に賛成した。裕美が承諾しているにもかかわらず重ねて懇願した。そういう名目ゆえ、プロデューサーは自分が買い取り代金をすべて負担するつもりだったらしい。

 しかし裕美は折半を主張して譲らない。

 

(プロのアイドルだから……ってのは、プロデューサーの言う通り、へんな理屈だけどさ……)

 

 筆下ろしを買って出るだけあって、裕美は経験済みであった。

 衣装の話になる前、それを裕美から聞かされたプロデューサーは、

 

『裕美のはじめてがァほかのオトコの手で散らされェ!? いやオンナかもしれないけど……』

『あ、気にする……?』

『プロデューサーとしては泣゛き゛た゛い゛ッ!!! が……』

『が?』

『オトコとしては大いに頷けるところであるっ!』

『あ、そ……』

 

 と、ひと騒ぎしていた。

 

(……コスプレえっち? なら……私も、はじめてだし……)

 

 裕美は『はじめて』でないことを負い目とは認めていなかったが、なるべく『はじめて』なプロデューサーの心持ちに合わせてやりたかった。

 

「そりゃあね、プロデューサーがこれ全額持ってくれるほうが、私のおこづかいとしてはありがたいよ?」

「これ裕美専用の特注だからけっこうシたぞ? そこのヤる用衣装と一緒にするなよ」

「だからこそ……半分払ったほうが、私も気兼ねなく……ね?」

「なるほど、裕美はデート割り勘タイプか」

「いっしょにしないでくれる!?」

 

 衣装代は折半でまとまり、ようやく裕美は着替えを始める。

 

「後ろ向いてるか、シャワーでも浴びてて」

「シャワーでも、って、それ男のセリフじゃ――」

「――ステージ前に着替えてるアイドルの姿は、プロデューサーでも見ちゃダメなのっ」

 

 プロデューサーがシャワーで身繕いする気配を聞きながら、裕美は三面鏡とハンガースタンド――キャスターつきで、休憩室のクローゼット内にしまわれていた――の前に、衣装を抱えて立った。

 

 

 

 裕美がプロデューサーへ『ステージ前』と言ったのは、半分本気だった。

 

「ち、近いよプロデューサー……あと、なんでそんな、ほふく前進みたいな格好で……」

「最前列とか花道近くとかのファンの気分になろうと思って」

「あ、そ……」

「わぁー裕美ちゃーんっ!」

「きょ、きょうは私のステージに集ま……き、来てくれてありがとーっ! ……ホントにこのノリでするの?」

「お願いシンデレラ! もとい裕美!」

「はいはい」

 

 プロデューサーは、フォーチュンバニーを裕美にまとってもらったあとに『裕美のライブを独り占めしたい』と言っていた。彼は手際よく、音源とポータブルスピーカーを持ち込んで設置していた――休憩室のユーザーも、さすがにライブごっこはしたことがないようだった――裕美はその趣向へ付き合ってやっていた。

 裕美は当初、ベッドの上をステージとさせられそうになったが、足元があまりに不安定ということで、休憩室の床を使うことになった。

 プロデューサーはバスローブ姿で床に伏せていた。ステージを下から見上げたいらしい。

 

(あの話以来、プロデューサーのテンションがおかしくなるようになっちゃったけど、まさか歌まで歌わせるなんてね……防音だいじょうぶ? まぁ、喘ぎ声よりは恥ずかしくないけどさ……)

 

 プロデューサーが端末を操作すると、シンセとキーボードを軸とする前奏が、春風ぐらいのアップテンポを裕美へぶつけてきて、彼女はあわててステップを刻みだす。

 曲目は『HARURUNRUN』。

 

「……らんららん、らんらんっ♪」

「らんららん、らんらんっ!」

 

(なーんで、『楽園』じゃないのかなぁ……そりゃ、こっちも私の持ち歌だけど、ね)

 

 前奏の振り付けで腕を振った裕美は、ある違和感に気付く。

 

(衣装のホルダーとかストッパーとか抜いちゃってるから、本番と違って、胸が、揺れ、揺れ……揺れる?)

 

 裕美のフォーチュンバニーは、ウサギのジェスチャーによってステージ上でぴょんぴょん跳ねる動作を想定し、インナーをズレにくくしたり見せ方を調整したりするホルダーやストッパーを備えていた。

 が、いまセックスの前フリでライブしようとする裕美の衣装は、それらが外れている。

 

(楽園だったら、まだ振り付け的にゆったりしてるから……それが狙い? それはそれとして、揺れてくれてるかなぁ)

 

 裕美は、十時愛梨がバニーガール姿でプロデューサー(と裕美)の前をぴょんぴょんして、胸ボタンを弾き飛ばしたようすを思い出した。さすがにあそこまでのハプニングは起きないとみて、裕美は歌と振り付けへ意識を戻す。

 

(……というかプロデューサー。そんな下からじゃ、私が見えにくいじゃん)

 

「手ーのひーらをー、桜なーみきにかーざしーてー♪ いーま、確かな気持ちが♪ 湧き上がる胸はー♪」

「春よりも素敵だよー!」

 

 裕美は自分の思考を吹き飛ばすよう、ことさら元気よく歌声を紡ぐ。

 プロデューサーも床にうつ伏せで声が出しにくいはずなのに、負けじとコールで声を張る。

 二人だけの密室なのに、やたらとにぎやかで、セックス前の艶っぽさとは程遠い。営業車中でえっち問答をしていた頃のほうが、まだしもそういう雰囲気に近かったかもしれない。

 

(プロデューサーが童貞だったのって……もしかして、いままでの彼女さんにこんな感じで、へんてこなリクエストして引かれたからじゃ……?)

 

 じゃあ、そのリクエストを聞かされて、口では文句を言いつつ、内心では嬉々として踊っている自分は……と思い至り、裕美は胸の奥が燃えて動揺する。それを吐くように、歌声がさらに熱っぽくなる。

 

「時間はー春を告げてーきーた♪ さぁ、未来へゆくだー……ぁ……!?」

 

 サビの直前、裕美は膝を曲げつつ大きく跳ねて気付く。

 

(『HARURUNRUN』、ぴょんぴょん跳ねたり走るマネするから、スカートのなか丸見え……っ!?)

 

 裕美のフォーチュンバニーは、ちょうど春風に煽られたようにふわりと浮き上がる。

 

「満開の桃色っ景色春風♪ ランランラン、楽しく走れっ♪」

「らんらんらんっ! 裕美ちゃんかわいいー!」

 

 プロデューサーの勢いは、床へ伏せたままでなければ床を飛び跳ねて、ライブで迷惑行為扱いされるぐらいになっていた。しかしエキサイトしてもプロデューサーは伏せたままだった。

 しっかりスカートのなかを覗く構えらしい。

 

(プロデューサー……口ではかわいい、かわいいって言うけど、たぶん目がやらしーよ。どっちが本音かしら……考えるまでもないか)

 

 もともとプロデューサーはフォーチュンバニーの仕様を知っているのだから、一瞬だに見逃す角度ではあるまい……と、裕美は呆れとともに確信した。

 

「君と僕の中に、春風を呼ぼーうーっ♪」

 

 裕美が本番以上に勢いよくターンすると、回転の遠心力でスカートが浮き上がる。『HARURUNRUN』のタイアップドラマで着た聖キャッスル女学園の制服であれば、膝丈の紺色セーラーがヒラヒラ舞うぐらいで済むが、フォーチュンバニーでは下着どころか、腰やヘソの下まで丸見えになる。

 

「らんららん、らんらんっ♪」

「らんららん、らんらんっ!」

 

 一曲終わってみれば、裕美はおおむねゲネプロぐらいの真剣さで歌いきり踊りきっていた。

 終えたあとの余韻も同じぐらい熱かった。

 

 

 

 

「あぁああぁあ、裕美、ひろみぃ、かわいいよぉ……うぅうぅうっ」

「ぷ、プロデューサー……アンタ泣いてない……?」

「泣くよぉ……裕美がぁ、俺のために、ここまでしてくれるなんてぇ……」

「はいはい、よしよし」

 

 裕美が、足元で這いつくばったままのプロデューサーの手をとり肩を起こしてやる。さっきまでステージだった床の上で、二人の腕が絡み、裕美はようやくセックスらしい匂いに鼻と喉をむずつかせた。

 

(これに付き合ってあげる子は……アイドルにも、いないかなぁ。少なくとも、私より前にはいなかったんだよねぇ……)

 

「あぁあ……ぴょんぴょんしてるぅ……裕美がぴょんぴょんしてたぁ……」

「も、もぅ……プロデューサーったら、物好きだよね……私なんかに……」

(……私なんかに声かけてアイドルにしようってんだから、物好きでもしょうがないか)

 

 フォーチュンバニーのうさ耳ヘアバンド、それから裕美のウェーブヘアを、プロデューサーの手と吐息が撫でてくる。シャワー上がりバスローブ一枚で、ライブの興奮に火照ったプロデューサーの体温が、裕美にぐんと迫ってきた。

 

「わ、『私なんか』なんて言うなぁ……っ」

「んっ……! は、はいはいっ、そんな、わしゃわしゃ、しちゃ、ぁ……っ」

 

 アイドルになって自分にだいぶ自信をつけた裕美も、ウェーブヘアだけはあまり好きじゃないままだった。

 むしろ、ある意味でコンプレックスが深くなった。

 頑固な髪質は、ほかのアイドルほどアレンジに融通をきかせてくれないくせに、寝癖はキツく出るし、空気が湿っぽくなるとすぐに調子が狂ってしまう。アイドル業界でヘアスタイルといったら、小顔に見せるため額や輪郭を隠す型が定番となっているが、裕美には縁遠い話だった。

 

「あぁぅ、いい匂いがするよぉ、裕美……」

「ひぅっ、んんっ……わ、私は、シャワー浴びてないんだけど……っ!」

 

 プロデューサーも裕美の髪質を承知していた。アイドルの仕事でも、裕美のヘアアレンジといったら、結び方を変えるか、あるいは彼女の趣味であるアクセサリーづくりを生かしたヘアアクセか。一貫して、髪質を活かすアプローチにしていた。

 いまではアイドル・関裕美のトレードマークとしてファンに親しまれている。

 

(ぁ……こ、これぇ、プロデューサーに、髪、おでこ、撫でてもらうの、す、き、かも……っ♥)

 

 それをプロデューサーから愛撫されている。

 力加減は、愛撫と言うほど艶っぽくない。ライブ後の激励で、裕美より年下のジュニアアイドルの一部が、プロデューサーに「撫でて」と要求して通すぐらいの加減だった。おそらくプロデューサーも――奇妙な姿勢ながら――さきほどの裕美の『HARURUNRUN』を、本番のライブのように堪能したらしかった。

 

「んっ、ふっ……はっ、はぁ……こ、こどもじゃ、ないんだよ、私……っ」

(も、もっと、撫でて……かわいいって、好きって、褒めてっ、ぷろでゅ……っ♥)

 

 それでいて、裕美の粘膜と意識に迫ってくるプロデューサーの気配は、いつものミントみたいな整髪料でも、ちょっぴりアルコール臭いマウスウォッシュでも、裕美があまり気に入っていないフローラル系制汗剤でも、コーラの不良品みたいなスタドリやエナドリでも、苦くて酸っぱいコーヒーでもない。

 風呂上がりのボディソープと、それで覆い隠しきれない男の肌から滲み出る体臭。

 もっとも信頼できるパートナーのような素振りをして、これから裕美を喰らおうとするオスが透けている。

 

「……そうだな。子供なんかじゃないよな、裕美は」

「あ……っ、ぷろ、でゅーさー……っ」

「俺より、大人だもんな」

 

 裕美は、額の真ん中、髪の毛をちょうど分かれ目の生え際あたりに、プロデューサーの吐息らしきくすぐったさを感じた。そのおかげで、ちょっとカサついた感触が、プロデューサーのくちびるだと察せられた。

 

「んぁ、ぁ、あぅ、んんっ……! お、おでこって、プロデューサー……アンタ、少女漫画でも読んだ……?」

(髪、撫でながら……っ、き、きすっ、そんなとこ……っ! 汗、かいてるのも、熱いのも、ぜんぶ……っ)

 

 とっさに裕美は「えっちする前なのに、あんな声出すからくちびる乾いちゃって……」と、おせっかいな思考をめぐらせる。まともにこのキスへ浸ってしまったら、なにかとてつもないことになってしまう予感がした。

 

「……アイドル・関裕美の顔に……キスマークは止めとこうか」

「ふ、ふんっ……童貞さんに、キスマークなんかつけられる? やり方わかるのかしら……」

(そんなとこ、キスなんて、だめ、ぜったいだめっ♥ 鏡、見るたびに、思い、出しちゃ、ぁ……っ♥)

 

 プロデューサーは裕美を離してくれない。

 このままでは、裕美は額に不可視の――しかし、消えそうもない――なにかを刻印されてしまう。

 さすがにそれはゾクゾクしすぎる。

 

「わたしが……」

「……裕美?」

 

 裕美が反撃に出る。

 

「私が、教えてあげるっ――んんちゅ、ぷ、ふぁ、ぅ、んんんっ……!」

 

 こんどは、裕美のほうから距離を詰めた。

 

 

 

 

「ん、ちゅ、ぢゅ、れぅ、ちゅっ……んぷ、ふ、プロデューサー、ぁ……っ」

 

 裕美がフォーチュンバニーへ着替えているあいだ、プロデューサーは歯磨きも済ませていたらしかった。裕美はそれをいじらしいと思おうとした。そうやって、彼の生々しい粘膜を味わいそこねた口惜しさをごまかしていた。

 

「んぷっ、ふぁ、ぅ……ひろ、み……」

「ふふっ、いきなり刺激的すぎたかな……ごめんね、童貞らしくない撫で方してくれるものだから、つい」

 

 裕美は、上下のくちびると舌先とを、一箇所ずつ重ねるようプロデューサーを誘導する。

 

「んぢゅ、く、ぢゅ……んう、ぁふ……最初から、ぜんぶ、いっぺんになんて……あわてないでよね」

「裕美と、キスして……俺、裕美とキス……? 頭が、真っ白になりそうだ……!」

「だめ。私がはじめてだったこと、ちゃんと覚えてもらわないと」

 

 激しさや深さを抑えたキスに移る。裕美のような少女にも似合うバードキス。

 

「れぅ、ちゅ、んぢゅ……んふ、んむ、んく……プロデュー……さぁー……」

 

 けれど、その接吻は決して控えめと言えない。

 腕を相手の首と後頭部に回して固定し、表面の粘膜を端から端まで執拗に塗りつぶす。何度も、何度も。プロデューサーの乾いたくちびるをふやかす勢い。

 

「んう、ぁふ、んんくっ……あんまりぼーっとしてると、べちゃべちゃにしちゃうよ?」

「ふぁ、あ、は、ぁ……ひろ、み……」

「……続きは、ベッドのうえでね」

 

 そう言いつつ、裕美は上半身をプロデューサーの肩に預けた。

 プロデューサーが裕美の意を察して、彼女の体をベッドまで抱え上げてやった。

 

 

 

「けっこう、乱れちゃったかもね……あーあ……せっかく、買い取ったのに……♥」

「俺がえっちえっち言い出さなければなぁ、こんなことにはなぁ、まったく……」

「何をアンタ、他人事みたいに。もー……」

 

 ベッドに横たえられた裕美は、仰向けで手足を楽に開きながら、膝立ちのプロデューサーを見上げていた。

 頬や耳や首など、皮膚の薄いところは露骨に赤く火照っている。それを無防備に見せている。

 

「他人事なもんかよ。あー、裕美ぃ……こんどはおっぱいを堪能させてくれ」

「……ホント、プロデューサーって物好き」

「おっぱい揺れるの気にするの、ちゃんと見てたぞー」

「う、嘘だぁ」

「さすがに直視は厳しかったが、ステップや声にも恥ずかしがってるのが出るじゃないか」

「アンタに私の恥じらいを分けてあげたいわねっ……」

 

 裕美は、自分の一挙手一投足がプロデューサーへ何を語っているか、いっそう気になってしまう。童貞のくせに、という軽いむかつきが、さっそく指先に出てしまった。

 

(まぁ、こんなヘンタイでも、私のプロデューサー、なんだなぁ……)

 

 裕美が自分に言い聞かせて気を静めていると、プロデューサーの手がフォーチュンバニーのトップスをつつき始める。

 

「ふぁ、んんっ、あんっ……なに、手ぇ、やらしー……っ」

 

 生地はもこもこして感触も遠いはずなのに、裕美はまるで自分の皮膚がつつかれたように反応してしまう。

 

「ふわふわもこもこ、かわいいウサちゃんが、こんなセックス待ちみたいな格好で……」

「誰のためだと思ってるのさ」

「……あぁうぅ、俺のため……!? めまいがしそうだ……もし俺が死んだら、これを墓前に供えてくれぇ」

「いっそ棺桶に入れて、いっしょに灰にしてもらおうか」

 

 裕美は、自分がプロデューサーにコスプレセックスしてやった証が、彼の葬儀か納棺で満座のもとに――おそらく彼女自身もそこにいる――さらされるのを想像して、悲しいやら笑えるやら恥ずかしいやらで思考が混乱した。

 

「ひぁあ、あっんんっ……!?」

「うん、衣装はいいけど、裕美の素肌のほうが……くすぐったい?」

「ひゃっ……あ、あたりまえ、でしょ……でも、これぐらいで、いいよ……」

 

 プロデューサーの指先が裕美の上半身を撫でる。仰向けになって少し薄くなっている乳房のふもとから、肩の付け根をそろそろとゆく。

 

「ひぁうっうぅ……ど、どこ触って……んんっ、ひぁぅうっ……!」

「腋の下。なんでこんなえっちなところ無防備にしたんだろ俺。うさみみジェスチャーしたら丸出しじゃん。あ、あったかいなぁ」

「腋の下の体温が高いのは、ふつうでしょうが……」

 

 裕美はくすぐったさに眉をしかめてしまう。しかしプロデューサーから、余裕をなくしていたり嫌がっていたり、ととられたくはない。

 

(ぎゅ、ぎゅって……おっぱい寄せなくてもいいのかなぁ。まぁ、それじゃ愛梨さんには及ばないし、それなら、私は……)

 

 あえて、腋を開く。

 

「うさみみジェスチャーって? そうだね……ぴょん、ぴょんって。みみみん、みみみんっ♪ うーさ……ひぁあうっ!?」

「他人の持ちネタを勝手に借りるとは、イケない子だな裕美。俺はあくまで裕美とえっちシたいんだよぉ」

「やらしー目と手付きしながら、もっともらしいこと言っても、ねぇ」

「ここのプロデューサーじゃなかったら、裕美とこうなれる可能性はゼロだったし」

 

 いまは、事務所の休憩室で半ば公然と乳繰り合っているが、もし二人の立場が……という想像が、裕美の気分にチクチク水をさす。水どころか、故郷・富山のツララか霜柱ぐらい冷え冷えする。

 腋を広げたまま腕を伸ばし、プロデューサーを引き寄せる。

 

「……裕美、いっ」

「もっと。めちゃくちゃに、シてみてよ」

「俺が童貞ってこと忘れてないか?」

 

 引き寄せたまま、爪を立てる。

 

「アンタのやり方が、いいの……っ」

(プロデューサーが……足先や声から私の恥じらいを見透かせるんなら……もっと、見てよ。私の、気持ち)

 

 プロデューサーの手が、フォーチュンバニーのトップスを強引にずらすと、布地か縫製がきちきちと微かな悲鳴を漏らした。

 

 

 

「んっ、ふっ……はっ、はぁ……あ、んんっ……」

「あ、はぁ、んぅ……裕美の、おっぱい、が……ぁ……」

 

 裕美のバストは、公称78センチ。仰向けになって、そのうえ腋を開いていると、乳房のふくらみが重力や肩まわりの筋に引っ張られ、起伏はほんのりと控えめになる。

 

(プロデューサーったら、そんなに息を荒げて……どっちがおっぱい揉まれてるのか、わかったものじゃないわ)

 

 プロデューサーの愛撫も裕美のふくらみに合わせてか、揉むというより指先や手のひらで密着感を味わい、舐めるという調子に近い。

 

「……あ」

「なに?」

「……どきどき、してる? 裕美、いま……」

「え、いまさら?」

「あぁあ、裕美も……興奮、してるんだぁ……」

 

 いっぽう裕美は、プロデューサーの手付きが皮膚の奥、心臓や肺腑まで撫でてくるような心地を味わう。

 

(FもGもないから、どきどき伝わりやすくて、かえって良かったかもね。これから成長するかもしれないけど)

 

 自分のバストが十時愛梨並に成長したら……という仮定は、裕美にとって穏やかならぬ想像だった。

 

「いまのうちに、堪能しておいてよね」

「……いまのうちに、って」

「誰かさんのせいで、これからおっぱいおっきくされちゃうかもしれないし」

「え、胸を揉むと大きくなるって、あれ冗談じゃないのか……!?」

「さぁねぇ」

 

 裕美は、プロデューサーの――自分が揉んでバストアップさせるものという――勝手な思い込みが、どこか微笑ましかった。微笑ましいと感じてしまっていることに気づいて、自分もなかなか重症だとこっそり嘆息した。

 

「んきゅっ……!? ぁ、は、プロデューサー、強くシちゃうの……?」

「あぁう、裕美のおっぱい……」

「いきなりは、ダメだよ……っ」

 

 無防備な乳房の素肌を差し出して、心臓の拍動まで絡め取られて、そのシチュエーションを裕美は抵抗なく受け入れていく。衣装をズラされた瞬間は、羞恥なり緊張なりが彼女をかき乱していたが、体がプロデューサーのぎこちなく焦れったい愛撫を受け入れているうちに、心までそれを受け入れていく。

 

「ん、ふっ……ふぅっ……! さきっぽ、いじっちゃ、ぁ……♥」

「……かわいいよ」

「でも、見せちゃだめなとこ……でしょ?」

 

 いくらプロデューサーが『かわいい』と褒めてくれたって、アイドルとして、少女として、公衆の面前に晒せない部分。

 

(ち、ちくびっ……硬くなってぇっ……気づいてるよね、プロデューサー……)

 

 裕美の乳頭は、彼女自身に覚えがないほどこりこりとしこりたっていた。

 プロデューサーの手のひらを押し付けられれば、張力に負けじと押し返す。プロデューサーもそれを意識してか、裕美の素肌へ食い込ませる指先も、乳輪近くではほんのわずかにためらう。

 

「ぁ……あっ、んっ、ふ、んんんっ……!」

「う、ぉおっ……!?」

 

 肩甲骨と肘を使って、シーツへずりずりシワを寄せながら、裕美はおっぱいをずらす。

 こりこりの雌乳勃起への刺激をせがむフリに、プロデューサーのほうが動揺の息を吐く。

 

「気になってるんでしょ? かたく、なっちゃってるもんね……」

「お、おう」

「見てよー。かわいくないぐらい、勃っちゃってるかも」

 

 裕美が無防備な体勢をといて、プロデューサーの手首を掴んだ。彼の手をそのまま横に押しやろうとする。プロデューサーの手は逆らわず、裕美の息づく素肌の胸が、二人の目前に現れる。

 

「あはは、おっぱい吸わせてあげるアテもないのにね」

「もしあったら、俺ぁ憤死してるよ」

「……じゃあ、吸いたくないの? プロデューサーは」

「吸いたいです」

「はいはい、せいぜい憤死しないでね」

 

 プロデューサーから裕美の左乳首に落とす口づけは、上から下へ迫るのに、手の甲へ接吻するようにうやうやしく、裕美の背筋をむずむずさせた。

 

(あーあ……プロデューサー、赤ちゃんみたいに、私の乳首くわえちゃって……んんっ、ふふっ……♥)

 

 裕美から見ると、プロデューサーの顔は見えなかったが、「自分の乳首を吸わせてあげている相手はプロデューサーだ」との実感は、ひょっとすると胸を揉まれているときよりも鮮やかで深く焼き付いてくる。頭髪の匂いが近くなって、プロデューサーの気配が濃くなったせいだろうか。

 

「はっ、あ、ぁぁ……んっ……もっと、つよく……♥ ぁ、歯は、立てちゃだめだよ……」

 

 裕美がプロデューサーの手首を掴んでいるだけだったのが、いつしか指が絡まって、手のひらの汗も混じり合う。口が乳首しゃぶりで塞がっているいま、プロデューサーの感想はこの手指に乗るのだろうか。

 

(くっ、ぅあ……! さきっぽ、ぺろぺろ……プロデューサーに、され、てぇ……♥)

 

 裕美は乳首の感覚に翻弄されつつ、プロデューサーの指先から気持ちをすくい取ろうとした。彼が彼女の羞恥を足先から察したのを仕返しするようだった。

 

「ふあっ、ひぅ、ぁあ……っ、わ、わかってるって、プロデューサーが、うれしいって……伝わってるから。もっと、シていい……♥」

「むぁふっ……!? 裕美に、そんなこと言われたら、俺は……」

「ば、ばかぁっ、おっぱいのそばでしゃべらないのっ」

「あ、ごめん」

 

 ふと、裕美のヘソあたりに、なにか固く温かいものを押し付けられた感触が走る。

 

(え、まさか、おちん……い、いやいや、ないから。体勢的に。どうせ、ヒジか、なにか……)

 

 裕美は自分の口で『おっぱい吸わせてあげるアテも』とか言い出して、そのうえプロデューサーの乳首吸いを受け入れているせいか、ヘソの奥が妊娠を連想してしまっているらしかった。

 

(でも、きょう……プロデューサーの、おちん……で、私の、ここまで、ごりごりって、されるんだよね……?)

 

 その連想は、ある意味で状況と合致していた。

 子宮が、膣道が期待する。目の前のオスを飲み込もうと舌なめずりする。

 

(う、ぅうう……へそ出しの衣装だから、こんな……そういえば、これ、はじめてへそ出しした衣装なんだけど、あらためて考えると……え、えっちかな……♥)

 

 きゅううう、と裕美の奥深くから音もなく繰り返し響く。プロデューサーを深みに誘う呼び声。あるいは誘われているのは裕美自身。

 

「んくっ……くふっ、あんっ……うん、ぅふっ……♥」

 

 興奮しきった乳首をくすぐられる。

 絡み合った指が力んで、噛みつき合って震える。

 吐息で鳥肌が立つほどゾクゾクしているのに、肌一枚下はジリジリと熾る。

 

「ひっ、あっひ……♥ だめ、それ、ぃいから、ぁ、ふぁぁっ、あぁっ♥」

 

 下腹部を意識するたび、「させてもいい」が「シたい」に変わる。

 肩や腰がシーツからゆらゆら浮いて、愛撫を誘導する素振りで快楽をせがむ。

 

「あ、はぁ……っ♥ ぷろでゅ……くっ、ふっ、うぅっ、う……ふぅっ、ふーっ……♥」

 

 腰をゆらゆらさせた拍子に、裕美の陰部から愛液が漏れて、下着を濡らす。まだ音が出るほどではなく、彼女自身だけが気付く。

 

(お、思ったよりやばいかな……アイドルの衣装、くしゃくしゃにされながら、おまんこ期待して、濡れて……おまんこ、おまんこ……っ♥)

 

「んぅっ、ふっ、くぁ、ぅ……だ、だめ、ぇっ……はぁ、ああぁぁぁ……っ」

「裕美……」

 

(プロデューサーに気づかれちゃったら、私、ヘンタイだって……っ!)

 

 奥歯を噛み締めて嬌声を抑えようとすると、そのぶん背筋に走る電流がしつこくなって、裕美は胸から腰までびくびくと悶える。彼女のまとうフォーチュンバニーが、プロデューサーやシーツにこすられ、ますます乱れていく。

 

(……まぁ、かえって喜ぶでしょ……♥)

 

 裕美には、乱れさせられる自分を楽しむぐらいの余裕はあった。

 

(ねぇ、まだぁ……気づいて……童貞じゃ、わからないかな……?)

 

 自分の発情にプロデューサーがいつ気付いてくれるかを楽しむ余裕は、失われつつあった。

 

「はぉ、ふっ……!? そ、こ……プロデューサーぁ……っ」

「……胸触ってるあいだ、何回もこっちがずりずりされて……裕美、こっちがいいのか?」

 

 プロデューサーの口先が、裕美のおっぱいから肋骨あたりへぬらりと移る。

 唾液でべたべたにされた乳頭が、いきなり空気にさらされ、ヒヤリとしたのが恨めしい。

 まだ触れられてもいないウエストの曲線が、彼の視線にさらされて、ビクリとうずき待ち遠しい。

 

「……えっちだよなぁ」

「どっちがよ」

 

 プロデューサーは答えず、裕美の下腹部を撫でながら口づける。

 

「んっふ……っ! あ、ふぁ、んっ……そ、そこ、はぁ……っ♥」

「やらしー匂いが、する……?」

 

 プロデューサーの存在を最近接領域に許してしまった、という実感だけで、裕美の女性器はいよいよ発情をあらわにする。ぬちゅり、くちゃりと愛液が耳打ちする。乱れた布の隙間から鼻を撫でる。

 

「……めくるよ、裕美」

「もう、めくれてるようなもんじゃない……?」

 

 裕美の脳裏を、プロデューサーの鼻息が、すぅはぁ、すぅはぁと、やけに澄んだ尾を引いて横切っていった。

 

「童貞には、刺激が、強すぎるかもね……♥」

(バレちゃう……♥ おまんこ、期待して、トロトロのべっとべとにシてる、女の子だって……っ♥)

 

 細い感触がいくつか連なって、裕美の太腿に食い込んだ。プロデューサーの指先らしかった。

 

「でも、嗅ぐだけじゃだめ。脱がせて、広げて、おちんちん入れなきゃ、童貞卒業、できないもんね……♥」

「裕美、ぃ……俺は、ぁ――ッ!」

 

 裕美の女性器は、彼女の想定を超えて待ち遠しがっていたらしかった。

 『脱が』され『広げ』られ、挿入前にむしゃぶりつかれた段階で、仰向けの腰をびくびくと跳ね上げながら、何度も達してしまうことになる。

 

 

 

「あ、はぁ、あぁ……っ♥ はぁあ、あ、あ……っ♥」

「ぁ……ひ、裕美……っ」

 

 裕美の衣装は、スカートも下着もサイハイソックスも、べとべとやら、さらさらやら、めちゃくちゃに濡らされていた。こんな衣装では、もうステージに立つ気にならないだろう。

 

「……もー、プロデューサーがえっちで、わたし、興奮しすぎちゃった……っ♥」

 

 プロデューサーは度肝を抜かれていた。

 彼は裕美の肌から彼女の快不快を察せられるぐらいの『鈍感』だから、あまり明け透けな濃厚アクメをぶっつけられると、感覚が飽和してしまったのかもしれない。

 

「じゃあ、こんどは私から……されっぱなしは、好きじゃないの……」

「うぉ、ぅ……っ!?」

 

 プロデューサーのバスローブは、フォーチュンバニーより肌の露出が少ない割に、あっさりと裕美の手ではだけられてしまう。抗弁の一つも口にする暇がない。

 

「へぇ、けっこうおっきいね……でも……えいっ、えいっ!」

「あぁううっ!? ひ、ひろっ」

「硬さとか、角度とか……本調子じゃないみたいね。もー、合わせなきゃだめだよ?」

「そ、そんなぁ……」

 

 プロデューサーのペニスは、裕美の痴態を浴びて勃起していた。が、裕美の手でぐりぐりと力を込めて握られると、男根の芯こそ残るものの、粘膜はぐにぐにと弾力を残している。張り詰めた怒張までは、もう少しといった具合。

 

「……ま、すぐ出ちゃわないだろうから、しごき甲斐はあるかな」

「ぁ、て、手で……?」

「別におくちでもいいけど、とにかくパンパンにシてもらわないと、ね。入らなかったり、中折れしちゃイヤだよ?」

「はぁあぅううっ!?」

 

 裕美がぎゅうぎゅうと根っこを絞ると、プロデューサーの鈴口から音を上げたように先走りの透明な雫がこぼれる。裕美がそれを見逃すはずもなく、裏筋も垂れきらないうちに、薄く開けたくちびるのあいだで受ける。

 下から上なのに、むさぼるようなチンポへのくちづけ。

 

「んっ……れろぉ~♥」

「ひろ……ぉ、ふぉおぉおっ……!」

「んふふっ、おちんちん、敏感だね……? 私がキツくし過ぎちゃったら……泣いちゃっても、いいよ」

「にぁあっ! な、泣かせるのは、かんべん、シて……ああぅうっ!」

「んー……ねろんっ、ねろんっ、ちゅぱっ……ベロと、手と、どっちがいい?」

 

 一度主導権を奪われると、プロデューサーは脆かった。

 あるいは、裕美が絶頂させられて「もうプロデューサーに手加減はいらない」と認めたからか。

 経験の差が浮き上がってきて、プロデューサーは一方的にペニスを弄ばれる。

 

「あっ、あぅうっ……そんなの、決められぇ……はぁぉおおっ!」

「両方? ぜいたくだなぁ……んっ、びちゅ、ぴじゅ……こしゅ、くしゅ、ずりゅ……っ♥」

 

 ふだん彼自身がオナニーでしごく力加減に比べると、裕美の手コキフェラは物理的な刺激は弱かった。しかし、彼女の愛撫はずっと目まぐるしく、繊細で、神経へ伝わる刺激は比較にならない。しかも裕美は、ペニスの弱点を捉えれば、彼以上に執拗に責め立てる。

 

「んふふっ……きゅーって、ちゅーって……それから、ベロで……ぴちゃ、ねろん、ねろん……っ」

「あ、ああ……くっ、う、ぁあああぁ……っ!」

「暴れちゃ、や。それとも……もっと優しくて甘ったるいのがお好み? こしゅ、こしゅ、くりくり……って」

「ひぅうっ、ぁ、ああうっ、ひ、ひろ、ぉ――うく、んんぐうぅ……ああぅうぅうぅ……!」

「声、出そっ。遠慮しないで。さっきのコールぐらいでもいいよ。あんまり歯を食いしばろうとすると、くちびる切っちゃったり、ベロ噛んじゃったりするし……」

 

 裕美は上目遣いでプロデューサーの表情と声を堪能しつつ、指と舌とくちびるで、たっぷり童貞ペニスを甘やかす。見た目はよく大人びてみられる裕美だが、いまプロデューサーへ与えるペニス愛撫の手練手管と並ぶと、どうしようもなくあどけない表情をする。

 

(……いまなら、いい目ができてる気がする……ダメかぁ。おちんちんしゃぶりながらカメラ、なんてムリだし……それに、撮影のたびにこの調子じゃ、変な気分になりすぎだよ……♥)

 

「ひ、ひろ……ひぁ、ああ、ぐぅ……!?」

「んんっ……苦しい? プロデューサー、気持ちよくない?」

「き、きもち、よすいて……も……だ、ぇ、で、出る、でちゃ、ぁ……!」

「……自分で急かしておいてなんだけど、プロデューサーのおちんちん、早いなぁ」

「うぅう、ぅううぅぅ……っ!」

「“自分で”急かしておいて“なんだけど”、プロデューサーのおちんちん、早いなぁ。“えっち”だよねぇ♥」

「そ、その言い方ぁ……裕美、もしかして、俺が『えっちだよなぁ』って言ったの、根に持って……!」

「いまさら気づいたんだ。プロデューサーの割には、遅かったね」

 

 裕美は、プロデューサーとセックスしてやるのは承知するが、プロデューサーからえっち呼ばわりされるのは承知しないらしかった。

 

「……私が童貞もらってあげるって話になって、舞い上がっちゃった?」

「ま、舞い上がるだろうぉお!」

「開き直っちゃ、や」

「ああぅうぅうぅ……っ!」

「あ、いい具合になってきたね。おちんちん」

 

 悶絶するプロデューサーの下半身を、裕美が膝立ちでまたいで馬乗りとなる。そのまま裕美はスカートをめくり下着をずらし、結合が目前だとプロデューサーに示す。

 プロデューサーに、一瞬――裕美、あそこの毛は薄いんだな――との感慨が過ぎるものの、すぐあわてだす。

 

「あっ、ちょ……裕美、ナマは……っ!」

「それ、女の子がよく言うよね」

「男女関係ないだろぉ……!」

 

 裕美がきょういちばん――あるいは、これまでの14年か15年でいちばん――自然な笑みを見せつけて、プロデューサーを黙らせる。

 

「確かにそう。でも、こんな部屋を設置してる事務所なんだから、そういう道具の用意もよくってね……プロデューサー、アンタここ勤めてるのに知らなかったんだ? ホントに童貞だったんだね」

 

 裕美は、プロデューサーを見下ろしながら、彼の表情とペニスのあいだで視線を往復させる。一往復するたびに、彼女自身でも触れられない肉体の奥底か、あるいは脳天から、踊り出したいほどの興奮と恍惚が渦巻いて、気が狂いそうだった。

 

(……おかしくなっちゃう……おかしくシてもらっちゃお……♥ ……おまんこのそこから、あたまのてっぺんまで……♥)

 

 にゅるり、と粘膜どうしをこすりつける。セックスから指一本と離れていない体勢。

 

「ま……私がいまから童貞じゃなくシちゃうんだけど」

「ほ、本当に、俺、裕美と……!」

「女の子のおまんこの中で、おちんちんびゅーびゅー射精したら、もう童貞なんて言えないね」

「そ、そうだな」

「後悔しない?」

「するわけないだろ……!」

「憤死しない? 腹上死もしない?」

「し、しないと思う……」

「はいはい、まぁいいや……じゃ、しっかり味わって、私を焼き付けて……♥」

 

 裕美は、自分の秘所を開いて見せつけながら、腰を落とす。

 プロデューサーの鈴口を、亀頭を、カリ首を……根本まで飲み込んでいく。

 

「あ、あ、あぁー……っ! な、ナカに、で……」

「ぁ、はは、あははっ! プロデューサー……ナカダシのとき、アンタそんな顔するんだ……♥」

 

 裕美は、ペニスの痙攣を感じながら、それを膣肉でみっちりと抱擁する。プロデューサーのペニスは、裕美の肉壷に対して大きく、キツキツで苦しい感じがした。そういう簡単じゃなさそうな感じは裕美の好みで、どろどろした興奮のなかへ、少女的に甘酸っぱいカタルシスがほのかに混じった。

 

「出しちゃった、ねぇ……♥ 卒業おめでとう、プロデューサーっ!」

「ぁ、はぁーっ、ああぁあっ……ありがとう、裕美……いっ、あぁあぁーっ……!」

 

 射精直後のペニスを、裕美のナマ膣が容赦なくしごく。

 ばちゅっ、ぐちゅっ、と、アイドルのスカートの中から出てはいけない音が、裕美の腰使いでことさらに響く。

 

「あっはは、プロデューサーったら……感想は、聞くまでもないか」

「だ、大満足、です……」

「……ふーん……♥」

 

 裕美が腰を浮かせる。プロデューサーは呆けた目でそれを見ていた。ついに、童貞喪失、しかも担当アイドルに膣内射精……そんな感慨がふつふつと湧き上がっていた。

 

「じゃあ、こんどは私が満足する番だね」

「……えっ」

「私がプロデューサーのわがまま聞いてあげたんだから……こんどは、プロデューサーが私のわがままを聞いてあげる番だよね?」

 

 そこから、体重をかけて一気に落とす。ペニスが膣肉に圧搾されながら、重みをすべて叩きつけられる。

 

「はァああ゛っおぉォお゛……ッ!?」

「あ、は、ァ……いぃ、いい、よぉ……ずっと、これ、奥で、待ってた……♥」

 

 裕美の体重は40キロちょっと。

 プロデューサーが両腕で抱えてベッドに運ぶには軽かった。ペニスと腰だけで受け止めるには重かった。

 

「ひ、ひろみ、いッ! で、でた、ばっかり、だから、ぁっ」

「ね、プロデューサーっ。私が童貞をもらってあげた瞬間、ちゃんと覚えた?」

「ぉお、覚えたから、覚えたから――」

「――じゃあ、ここからはシラフじゃなくなってもいいよね。この部屋、スタドリもエナドリもあるんだって。ホント、ヤリ部屋って感じ」

「ひ、ぃっ」

「ウサギの性欲って、強いんだってね……ナナさんがしっぽをだ……教えてくれたけど、バニーガールって、えっちな雑誌が由来なんでしょ?」

 

 裕美が某アイドルから聞きかじった豆知識は、ある意味で正確とは言い難い。

 一年のうちで子づくり可能なシーズンの割合や、生殖に関係なくセックスに耽る習性を基準とするなら、ウサギより人間のほうが性欲は強い。

 

「何度でも繰り返したい……そう思うでしょ? さっきみたいに、さきっぽから奥まで、私を……ねっ」

「あ、ぁ、あァあァ……っ」

 

 

 

 裕美が満足する頃、フォーチュンバニーの衣装セットで無事だったのは、折れ耳ヘアバンドだけだった。

 

「あーあ……ま、いいや。楽しかったし」

「……ぁ、あ……っ」

 

 上も下もグローブもサイハイソックスも、残らずめちゃくちゃになっていて、素人目にも廃棄処分は不可避だった。

 

 

 

 休憩室を出た直後。

 

「これじゃ……おこづかい、また貯めないとなぁ。いっぱいお仕事ちょうだい、プロデューサー」

「いっ、言われ、なくても……俺は、裕美の、ぷ、プロデューサー、だからな……っ」

「じゃ、よろしくねっ」

 

 裕美が浮かべた笑みは、ニヤリとニッコリが入り混じっていた。えっちなんてもんじゃ済まない、とプロデューサーはひとりごちた。笑い返すのがせいいっぱいだった。

 裕美が言う『おこづかい』の用途を確認する気力は、とても残っていなかった。

 

(おしまい)

 

 

 

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