お昼前、高速に乗って車を走らせる。
「もう旅行終わりなんですね...」
「といっても、別に何かが始まるわけじゃないっスけどね?」
特に学校などに通っているわけではない少年、スマホを眺めていた先輩が声を上げる。
「フンフン、お?お前の見てた小説、映画化してるってよ?昨日から公開してる」
「いや、それ実写じゃないっスか、実写映画なんて9割こけるっスよ?」
「まぁ、実写映画の当たりはあんまり、無いですよね」
「それは少女漫画原作とかのを見てるからだろうが、男向けの現代ものなら違和感はあんまねぇよ」
実写映画の良さに関しての是非は置いておくとして、旅行疲れを取るためしばらく落ち着いた生活をするという話を、旅行帰りの車内で話す。
「そういえば、パスポート、取って何処に行くとかは決まってるんですか?」
先輩の方に視線を向けつつ、少年は首を傾げてそう呟く。
「...カジノ?」
「不健全すぎっス」
「決まってなかったんですね、カジノなんて行けるんですか?」
そもそもからして不健全どころか、アメリカ、ラスベガスでのカジノへ未成年を連れて行くのは違法である。
「まぁ、態々パスポート取っておいてなんだが、沖縄とかで海遊館とかビーチでもいいんじゃねぇか?」
「いや、もう冬も間もなくっスよ!?風邪ひきに行くんスか!...いや、まぁプールくらいは行っても良いっスけど」
ビーチでの海水浴はお流れになりながらも、少年の水着姿の誘惑に負け、プールが予定に組み込まれる。
「み、水着買っても、一回使って捨てることになりません?」
「レンタルとかもあるっスし、まぁそこらへんは行くときに詰めりゃいいっスよ」
旅行後の予定の話に花を咲かせるが、時刻も12時が近くなり、お昼の話となる。
「ん、にしても腹減ったな、飯はどうする?」
「サービスエリアでご飯、もいいっスけど」
「洋食屋さんのパスタ!」
「だそうっス」
少年の要望を受け、高速から降りる。
東京郊外の中華や定食屋、そして洋食屋などの立ち並ぶ市内の駐車場に車を停め、3人は歩道を歩いて回る。
口を開くまでもなく、先輩は少年の手を取り、優しく握る
「こういう雑多に並んだ店の何が出るかわからず入るのも、面白いっスよね」
「そうか?オレは何が出るのかどれくらいのものが出るのか保証されてて欲しいもんだが」
「ふんふーん」
肌寒いと感じる秋の風に吹かれながら、手を触れていると、外気の冷たさと接触面の温かさが強く感じられる。
「機嫌良さそうだな?」
「え、そうですか?」
にへらと緩んだ顔をしていた少年に声を掛けると、少年はハッと顔を引き締めて先輩を見つめる
「平静装ってるのか知らねぇけど、口、緩んでるぞ?」
「そうっスねぇ?幸せそうなお口っスねぇ?二人で楽しそうに!ウチだけはのけ者扱いされて寂しいっスねぇ!?」
「ごめんなさい、おねえさんも手、繋ぎましょ?」
空いてる方の手をお姉さんの方に向けて差し出すと満足そうに差し出された手を掴むと、揉むようにギュッギュと握る
「く、くすぐったいですよ?」
そうして適当に特定のお店の当てもなく歩いていると、パスタとコーヒーのお店の看板が目に飛び込む。
「あ、パスタのお店ですね!あそこ、入りましょ!」
少年は2人のつないだ手を引っ張りながらお店へ向かう。
お店の中に入り、空いた席に着くと、少年はメニューの冊子をペラペラと捲りながらにらめっこをする
「うーん、普通にミートソース?バターと明太子の和風醤油パスタ!トマトクリームパスタもある...うーん?」
「ウチの分も選んでもいいっスよ?」
「えー!いや、余計悩んじゃいますよー!こんないっぱいの中から2個も選べないですよ」
うーんうーんと唸りながら何にしたものかと困った声を上げる少年、横でパラパラと冊子をめくり終えた先輩が注文を決めてしまう。
「ん、オレは...ペスカトーレかな」
「早いっスね、じゃあ自分で決めちゃうっスよ?ウチは...よくあるナポリタンっスかね」
「え、え、早いですよ、えっと、えー?じゃあ明太子のパスタにします」
急かされているわけではなくとも、何を頼むか決められてしまうと自分もと焦ってしまうもので、少年は先ほど悩んだものから注文を選ぶ
「すいませーん!」
呼び鈴などは見当たらず、お姉さんが厨房に向けて声を掛けると、女性の店員がこちらへ駆けてくる。
「ご注文、お決まりでしょうか?」
「はい、ペスカトーレ、ナポリタンに明太子のパスタを一つずつ、お願いします」
「お飲み物は?」
「食後にまた注文します」
店員の女性は注文を復唱で確認すると、厨房に戻り、元気そうな声で注文を伝達していた
3人分の皿が届き、3人の前にそれぞれが置かれる。
「んじゃ、いただきます」
「「いただきます」」
「明太子のパスタって最初混ぜないで食べるものですかね?あむ、んく...おいひいれふ」
にっこりとパスタの味を楽しみ、頬が緩む少年。
「...ウチのも食べるっスよね?はい、あーん」
「え?あ、あーむ、あ、甘くておいしいです」
「え?甘いんスか?あむ、あー、たひかにあまひ」
「まさか、あむ...あめーな」
3人揃って甘いという感想が飛び出し、メニューに書かれている概要を読み直す。
「玉ねぎを飴色になるまで炒め甘みを出し、ケチャップも火にかけ続け酸味を飛ばした砂糖不使用のナポリタンです」
「砂糖...」
「使ってないんですね?」
ベタベタとしたイヤな甘みではないが、野菜由来でこんなに甘くなるものか?と疑問符を頭の上に浮かべながら食べ進める。
「うん、ピリッと辛くてうめー」
「あむ...うぅ、からい、からい、おみじゅ」
「あー、辛いのそんな一気に食べるから、ほらお水、ゆっくり飲むっスよ」
くぴくぴ、と水の入ったコップを傾けて飲む少年を頭を撫でながら見るお姉さん。
「おい、食ってみろよ、そんな辛いか?」
「あむ...旨辛って位っスね?だとすると、めっちゃ弱いっスね...」
「うぅ、おみず、無くなっひゃいまひた」
目に涙を浮かべながら、少年は自分の空になってしまったコップを見つめている
「ほら、ウチの、あげるっスから、すいませーんお水のおかわりくださーい!」
同年代と比較してもおそらく相当に辛さに弱い少年に庇護欲と少々の嗜虐心を2人は感じながらも、少年の舌が落ち着くまでなだめ、パスタを片付ける。
「大丈夫っスか?」
「は、はい、だいじょうぶ、です」
パスタを食べ終えてからも、半泣きになってしまっている少年を見かね、
「あー、アイスとか頼むっスかね?」
「オレはコーヒーでいいが、まぁ好きなの食べさせてあげるほうが良いよな」
「うぅ...」
食べ終わった後も目に涙を浮かべながらお姉さんに顔をうずめる
「あぁ、やばい可愛いっス、先輩、写真撮ってください」
「後で恨まれんぞー」
パシャリと少年を撮っていると、店員さんが注文を聞きに来る
「はいご注文を...どうかなさったのですか?」
「あー、辛いの弱くてな、ペスカトーレでやられて泣いてるだけだ気にしないでくれ」
「注文で、コーヒー、オリジナルブレンドを3つとハニートースト、バニラとクッキーのアイスを一つずつ」
「は、はい、かしこまりました、少々お待ちください」
自分の顔に顔をうずめている少年の髪を撫でながら注文を待つのだった。
なんか少年を泣かせたい
辛いもので泣かすか←今ここ
という状況でした、辛いの好きでもコーヒー飲めない大人もいるし、苦いの行けても辛いの無理な人は居るもんです。
コーヒーはいけるけど辛みよわよわ少年完成、こういう類のかわいそうはかわいい、と作者は思う
次回は東京着いてゆっくりしてる話、かな?
未定ですが36話も読んでいただけると励みになります。