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挿絵はくろざこ様に描いていただきました。
1.予約していた天雨です
ゲヘナ風紀委員会・行政官の天雨アコは、シャーレ居住区のある部屋の前に立っていた。ドアノブに手を伸ばす前に、冷えた指先をぎゅっと握り締め、深く息を吸い込む。
数日前にモモトークで送った「リラクゼーション施術要項」。あれをシャーレの先生がどう受け止めたのか、今から確かめるのだ。考えるだけで、耳の裏側まで鼓動が響く。
(先生のことだから、大丈夫ですよね……?)
甘えた期待が頭をよぎる。だが、彼女は自分に言い訳を重ねた。これはあくまで「業務の一環」なのだ。先生にもそう念押ししていたのだから。
「……はぁ。情けないことです」
濡れた唇から自嘲が紡がれる。思いを告げたあの夜の勇気は、ドレスを脱いだら消えてしまった。「会いたいです」のたった六文字すら送れず、モモトークから削除した回数は、もう数えきれない。
二人で特別な時間を過ごす時は、決まってシナリオを立てる。互いに
本当は、本音をさらけ出し、素直に愛を囁き合いたい。なのに、いつも遠回りして、察してもらおうとする。自分の面倒くささに、胸が焦げるような苛立ちを覚える。それでも恋人として大事にしてくれる彼への申し訳なさも、消えない。
こんな時にあの包容力を見せられたら、また八つ当たりをしてしまいそうで、それが少し怖い。つい彼にきつく当たってしまうのは、心のどこかで「そうしても大丈夫」だと甘えているからだ。実際に先生は、いつも彼女を柔らかく受け止め、優しく癒してくれる。
(……よし)
意を決して、扉を開く。すうっと温かな空気が流れてきたと思ったら、扉の向こうから柑橘系の爽やかな香りが漂ってきた。柔らかいオレンジの照明が部屋を妖しく照らし、秘密の情事を予感させる雰囲気に、アコの心臓は早くも高鳴りだした。
一歩踏み出し、靴を脱いで敷居を越えると、行政官の役割がドアの向こうへ消えていく。足裏に感じていた硬い床の感触はカーペットの柔らかさに変わり、雲の上を歩いているような心地よさに包まれた。
スリッパに足を通しながら、アコは一呼吸置き、台本の一行目を紡いだ。
「予約を取っていた……天雨です」
わざと苗字を名乗る。その声はわずかに震えていた。
「いらっしゃいませ、天雨様。お待ちしておりました」
施術師のロールを纏った彼は、穏やかに微笑み、恭しく頭を下げた。その声色の落ち着きに不自然な固さはなかった。彼女の肩から少しだけ力が抜けたが、胸のざわつきは収まらない。
部屋の奥へと進み、中央に置かれた施術用のベッドに目を落とす。アロマディフューザーから立ち上る細い煙がたなびき、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
(あんなに忙しいのに、ちゃんと準備してくれたんですね)
内心でそう労いながら、アコはベッドの端に腰を下ろした。香る空気を深く吸い込むと、心地よいはずのアロマが、心を落ち着かせるどころか、逆に胸を騒がせる。これからアコの恋人は施術師となって、彼女の生肌に手を這わせるのだ。
「施術にはオイルを使用いたします。こちらに着替えていただけますでしょうか。私は後ろを向いていますので、着替え終わったら教えてください」
「分かりました。よろしくお願いします」
ぺこりと一礼し、施術師が準備のために後ろを向いたのを確認して、彼女も背を向けた。
業務の体を装った事務的な文面で連絡したが、今日のアコは行政官の制服ではなく、フェミニンな私服だ。ベージュのニットは豊かな膨らみを強調し、くびれたウエストとの落差も際立つ。皺にならないよう立ってスカートを外しただけで、たっぷりした膨らみが、たゆん♡と弾んだ。
ニットの裾を掴んで引っ張り上げる間、あらためてアコはアメニティに視線を落とした。頼りない薄さのペーパービキニだ。素肌を隠すための最低限――いや、それ未満かもしれない。
(こんなに薄っぺらい上に白だなんて、濡れたら透けちゃうじゃないですか。まったく、いやらしい……)
肩越しに先生を睨みつけるが、当の彼は言葉どおりに背を向けたまま。もう一度ちらりと訝しむ視線を送り、アコは用意されたペーパービキニに渋々着替えた。
このチープな薄さで曲線美だらけの贅沢なボディを隠せるはずもなく、むしろ「肝心な所だけが隠れている」ことで、食べごろの色気がむわっと匂い立ってしまう。
官能の時間へ誘う以上、生肌を見られることは当然アコも承知している。シャーレにやってくる前に、デリケートゾーンの手入れだってしてきた。
だからといって、羞恥心が込み上げないわけではないし、「どうぞ、ご覧ください♡」と自信満々に裸体を見せびらかす度胸も持ち合わせていなかった。
「……着替え終わりました」
「ありがとうございます。では、背面から施術を始めますので、準備いたします。天雨様は、ベッドでうつ伏せになって、楽にしていてください」
ダークグリーンのガラス瓶が、内容物をちゃぽちゃぽ揺らす。きっとマッサージオイルだろう。彼の手の温かさと、分厚い掌の感触を想像すると、むっちりした太腿がぶるっと震えた。
花の香りがするオイルをぬるぬると全身に塗りたくられ、肩や腕を指圧していた手がいつの間にかビキニの内側へ滑り込み、ただのマッサージはペッティングになって、なし崩し的にセックスへなだれ込んでしまう――無断アップロード動画の取り締まり作業で見つけたビデオから、アコはそういうシナリオを描いていた。
「では、失礼します。触りますね」
「はっ、はい……」
低い声が背中に落ちてきて、アコは唇を噛んだ。見えないことがもたらすスリルに、皮膚の神経が過敏になりそうだった。緊張と期待が交錯する。掌でオイルを擦り合わせる音を背後に聞きながら、ただ次の瞬間を待つしかなかった。
2.台本どおりのはずなのに
――さわっ……
「ひっ!?」
掌の体温が華奢な肩を包んだ途端、アコの喉から小さな悲鳴が漏れた。オイルの滑りが肌にじんわり広がり、思わず背筋が震える。
「大丈夫ですか?」
「えっ、ええ。すみません、ちょっと、驚いてしまって……」
肩越しに振り向くと、施術師の穏やかな瞳と目が合う。そこに映る自分の驚いた顔に頬が熱くなるのを感じ、彼女は慌てて枕に顔を埋めた。
「驚かせてしまい、申し訳ありません。まず肩から始め、全身にオイルを馴染ませていきますね」
「はい、分かりました。よろしくお願いします」
平静を装ったが、彼女の声は震えを帯びており、心臓が脈を急いでいた。
台本に身体の反応まで書きこめるはずがない。先生と幾度も肌を重ねた記憶が蘇り、軽いタッチでさえも愛撫と誤認してしまう。まだ始まったばかりなのに――焦りにも似た気持ちが、呼吸を浅く、速くしていた。
「痛かったら、お申し付けください」
「はい……んっ……♡」
硬い手が肩に触れ、生ぬるいオイルが肌に滑る。親指が背筋のくぼみをゆっくりなぞると、押し出されるように鼻声が漏れた。
「疲れてらっしゃいますか? 背中の筋肉が、やや硬いようです」
「……そうですね。書類に向き合うことが多いせいか、猫背気味なのかもしれません」
「仕事熱心なのですね。天雨様がリラックスできるよう、努めてまいります」
少し大袈裟な褒め言葉。普段のアコなら眉をひそめていたかもしれない。それでも、どこかよそよそしいやり取りはアロマの香りに溶け、違和感なく心に染みていく。彼女は彼と一緒に、施術の空気に浸っていた。
オイルを塗られた肌がじんわり熱を持ち、背骨の脇を、指がぬるっと滑る。肩から腰へ、ゆっくり下りていく感触に、背筋がぞくっと震えた。アコは思わず尻を浮かせそうになったが、腹をベッドに押し付けてこらえた。
脇腹をなぞられるくすぐったさに目を瞑ると、乳房の根元にそっと指が触れた。ペーパービキニがずり落ちそうな錯覚に、喉から「ダメ」が漏れかかる。
(台本どおりなのに、こうなるって私は知ってるはずなのに……!)
かつて受けたエステの技術は見事だった。でも彼の手つきは違う。アコの奥底にじんわり響き、女の芯を疼かせる。内腿を軽く撫でられた瞬間、アコはシーツをぎゅっと握り締めた。
「天雨様。リラックスしてくださいね」
「あっ……だ、大丈夫です。ありがとうございます。あの……先生は、マッサージがお上手なんですね……♡」
先生。都合の良い曖昧な呼称だった。自分だけはロールプレイを忘れても気付かれない優越感の一方、どこかで台本の流れが途絶えて白けてしまうのではないかと不安もあった。
しかしその不安も、末端から内側へ滑る指の動きに溶けていく。呼吸が浅くなり、湿った吐息が漏れ始めた。
施術師の手が背中から腰へ移る。指先が肌を押すたびに、熱がじわっと広がる。施術のはずなのに、その手つきは愛撫そのものだった。
「っ……あ♡」
くびれた腰を両手で掴まれた瞬間、脳裏に後背位の記憶が閃いた。臍の下が甘く疼き、太腿を擦り合わせると、オイルに混じる愛液のぬめりを感じた。乱れる息を抑えようとしたが、声はもう隠せなかった。
「す、すみません、変な声が……♡」
「大丈夫ですよ。声が出てしまうお客様もいらっしゃいます。ここには私の他に誰もいませんから、リラックスなさってくださいね」
理性の躊躇を溶かす優しい声。羞恥が胸を締め付ける一方、恋人の言葉は彼女の官能を肯定しているようにも感じられて、ますます触覚が敏感になってしまう。枕に額を押し付けて抵抗するも、腰が浮き上がり、たっぷりした尻肉がふるっと揺れた。
「ん……ふぅ……っ♡」
長い指が腰の筋肉を捉え、じんわりと圧をかける。熱っぽい息が漏れた。オイルの滑りが、生肌をより敏感にさせ、臀部の際まで熱が広がっていくようだった。
(こんなに反応しちゃうなんて、想定外ですっ……♡)
愛撫を求めるのではない。そう自分を否定したくて、下腹部の筋肉を懸命に硬直させる。しかし、温かい按摩の心地良さに、力が逃げていく。その間にも秘部がじわじわと潤っていく。アコはシーツをきつく握って、行き場のない感情を誤魔化すほかなかった。
――すりっ……♡
「……ひゃう♡」
意識的に閉じていた太腿に手を這わされて、思わず悲鳴が上がる。唇を噛んでも、もう遅い。むっちり肉厚な内腿にオイルを塗り込まれていると、今にも女性器に指が伸びてきそうだ。
台本どおりに場をコントロールしたい理性と、恋人とのセックスになだれ込みたい欲望が綱引きを始めた。もうこのままでは――焦燥感に口の中が乾く心地だったアコに、施術師が一声かけてきた。
3.その台詞、台本にありませんよね?
「次は、前面をマッサージいたします。体を起こしますね」
何かを考える間もなく、アコは「はい」と口にしていた。お腹を抱き起こされて、ベッドに座るが、力が入らずに倒れそうになってしまう。がっしりとした体躯が、倒れそうな彼女をしっかり支えた。
脱力した首を振り向かせると、アコはバックハグのような姿勢で抱き留められている。アコよりも二回りほど太い腕が、華奢な胴体を包む。彼の体温が背中からじんわり伝わり、炭酸の泡のような幸福感が胸を満たす。
覗き込まれた瞬間、彼女は唇を差し出しかけたが、すぐに顎を引いた。台本を逸脱しそうな自分に気づき、羞恥と期待が交錯して、顔に火が点いた。
「いい具合にリラックスできているようですね、天雨様」
「そ、そうですね……」
「血流が良くなるよう、姿勢を変えましょうか。両腕を掲げてください」
アコはふわふわの頭で生返事をして、何も疑わず言われたとおりにした。行政官の制服の脇からいつもまろび出そうになっている豊乳が、ペーパービキニをぴちっと張り詰めさせる。
細い紐が肩に食い込んだ。薄い布が汗ばんだ肌にぴったり張り付き、乳房の輪郭を浮かび上がらせる。興奮に膨れた乳首が薄布を押し上げ、チェリーピンクの乳輪がうっすらと透けて見えたが、腕を下ろして隠すよりも、次の展開への期待が勝った。
「失礼します」
――しゅる……♡
「あっ!?」
背中の結び目が解かれ、張っていた紐が緩む。儚い布地がぬるっと滑り落ちた。支えを失った乳房がぷるん♡と弾み、部屋の空気をアロマの香りと共に揺らした。羞恥心が胸を締め付け、彼女は咄嗟に腕を下ろそうとしたが、肘を優しく掴まれて制止された。
「あっ、な、何をするんですかっ。見えてしまいますっ!」
「大丈夫です、私からは見えていませんから」
「でも……!」
「こういったデリケートな部分は老廃物が溜まりやすいのです。皆さん同じようにされていますから、ご安心ください」
「は……はい……」
台本どおりのやり取りのはずが、頭が茹だるような恥ずかしさが込み上げる。ディフューザーの白い蒸気が、剥き出しの乳首を舐めるように漂い、アコは思わず背を反らした。「見えていない」なんて白々しい。肩越しにちょっと覗きこめば、興奮で硬く膨らんだ乳頭が見えてしまうのに。
裸を晒す状況に顔が熱くなる。火照りが首筋から背骨を通り、下腹部を疼かせる。彼女は目を閉じ、深呼吸を試みたが、心臓の鼓動が速まり、耳元でその音が響く。
「では、こちらも施術してまいります。痛かったら教えてくださいね」
「はい……分かり、ました……」
――ふにっ……♡
腋の下から伸びてきた手が、豊かな乳房を掬った。大人の男性の手にも収まりきらない重みが、彼の掌に預けられる。指が軽く乳肉を押すと、甘い刺激が胸の奥から広がり、彼女は肩を震わせた。
「肩がやや凝っていた原因は、ここにもあるようですね」
「そ、そうなんです。その、大きいと、重くて……」
――たぷ、たぷ♡ むにゅっ♡ もちっ、もちっ……♡
雑談を交わしながら、彼の手が乳房へ優しく圧をかける。指が乳肉に沈むたび、彼女の喉から湿った息が押し出されていく。掌と指の付け根が、柔らかさの等級付けをするみたいにねちっこく乳脂肪を揉みしだくと、乳首が充血し、ますます張り詰めていく。
「スペンス乳腺に沿ってほぐしていきます。リンパ腺や神経が多く敏感な所ですから、声は無理に我慢しなくていいですからね」
「んっ♡ あっ♡ はぁ、あ……♡」
胸と脇の間、横乳の根元をそっと按摩される。オイルで滑る手が肌と擦れ合うたび、じんわりした甘痒さが乳房全体に広がった。
――すりすり♡ こねこね……♡
「あ、の……先生っ♡ これ、マッサージじゃないですっ……♡」
「いえいえ、マッサージは心地良いものですから、息が荒くなってしまうのも自然な反応ですよ」
「でも♡ おっぱいはそんなにマッサージしなくたって、うぅ……♡」
「ここのリンパ腺は流れが滞りやすいんです。天雨様ぐらいボリュームのある方ですと、なおさら」
親指が乳腺を圧迫しながら、横乳から先端へじっくり往復する。じいんと胸に響く快感に、頭が徐々に蕩けていく。指が食い込み、乳房の芯をほぐす。そのたびに、座ったままの腰が浮き上がりそうになる。下乳を掌で包み、弄ぶようにたぽたぽ揺らされると、その微弱な振動にも彼女は声を抑えきれなかった。
「はっ♡ あぅ……♡」
オイルを塗り込まれ、乳房全体を揉みしだく掌が時折乳輪を掠めていく。指と指の隙間から乳肉がむにゅっとはみ出しては潰れる。「天雨様」と施術師が囁きかけてきた。
「唐突かもしれませんが、恋人はいらっしゃいますか?」
「えっ?」
突然のアドリブに一瞬アコは言葉を詰まらせたが、咄嗟に「はい」と答えてしまった。
「差し支えなければ、どのような方かお伺いしても?」
「……年上の男性です。その……頼りなく見えますし、実際だらしないんですけど……優しいんです。いつも当たりがキツくなってばかりの私にも愛想を尽かさず、根気よく付き合ってくださるんです……」
「天雨様にそういった所にも、惚れ込んでおられるのでしょうね」
「そっ……! そうだと、いいのですが……。あの、私もちゃんと、彼のことは――好き――なんです。自分でも素直でないとは、自覚してまして……。本当は、もっと……」
すぐ背後から手を伸ばし、体に手を触れているのが「彼」本人なのに、本音がするすると唇から漏れていく。胸から広がる快感に頭がぼんやりして、彼女は自分で赤裸々な内心を暴露しているのに気づいていなかった。
(あっ……私、何てことを……!)
数秒遅れて、自分の言葉の意味を悟る。裸を見せるのとは別ベクトルの羞恥が押し寄せて、頬が燃えるように熱くなった。顔が見えないのだけが幸いだった。
「……それにしても、彼が羨ましくなりますね」
先生の言葉が続く。
「滑らかな肌に、きゅっとくびれた腰。シミ一つない美しい背中に、掌に収まりきらないほど大きな胸。先っぽの色もとっても綺麗ですね。脚もすらっと長く、太腿はむっちりと肉付きよくて、いつまでも触っていたくなるほどすべすべです」
「ほ、褒めすぎですっ……!」
「男からすればとびきりの御馳走みたいなお体を許してもらっているのですから、天雨様の恋人はキヴォトスいちの幸せ者に違いありません」
「いえ……お……大袈裟ですよ、そんな……」
台本にない言葉で、先生がアコの体つきを隅々まで褒めそやす。照れ臭さに全身が焦げてしまいそうだった。施術師のリップサービスなのか、男性としての本心なのか判別がつかないが、もし後者なら、と思ったら、咎めようにも咎められなかった。
(わざとかもしれませんが、でも……♡)
照れ臭さの反面、足先まで温かさが満ちていく。カラダというのは内面と異なり、取り繕えない個性だ。そこを手放しに褒められるくすぐったさも手伝い、全身が浮き上がるような喜びをアコは覚えていた。胸を揉まれる快感を、もっと享受していたくなる。
「おっぱいから搾りだした老廃物が、先端に溜まってきましたよ」
「あっ、や……♡」
とろとろにほぐれた乳房の先端へ、指先が忍び寄る。まだ「そこ」は手つかずだった。乳輪の周りを焦らすように撫でられると、じれったさがアコを苛む。「これからここもほぐしますからね」と指で予告しておきながら、彼はその瞬間を意地悪く先延ばしにしていた。
「はっ……く……♡」
無意識に唇を噛み、アコの息が焦燥感に詰まりだす。男性の硬い指先は乳輪の縁をカリカリするばかりで、張り詰めた突起を勿体ぶってばかりだ。
「ここは刺激が強い所です。毛細血管が閉じてしまわないよう、周辺の血行を良くしますからね」
――もみゅ♡ もちゅ♡ ぬりゅっ♡
柔らかい声でそう語り掛け、乳輪から指を遠ざけると、施術師はまた汗とオイルのローションでテカテカになった乳房を揉みしだき始めた。
真っ白なミルクタンクを左右から押し潰して擦り合わせ、谷間でぐちゅぐちゅとオイルを掻き混ぜる。だが、乳腺をほぐされる甘い心地良さでさえも、今のアコには不満だった。
「あのっ、先生……♡ も、もう、血行は良くなっていますからっ……♡」
「もう少しだけ丁寧にほぐしましょう。こういった部位は、じっくりとケアすることで、女性ホルモンも分泌も促されます」
「そ、そんな……♡」
「天雨様がますます綺麗になれるのですよ。もう少々ご辛抱ください」
彼の声は穏やかで、まるで施術のプロのような口調だったが、アコにはその言葉が意地悪な焦らしにしか聞こえなかった。
――つつつ……♡ すり、すり……♡
乳輪の縁をなぞる指が、まるで彼女の我慢を試すようにゆっくりと動く。オイルで滑る肌が彼の指先と擦れ合うたびに、温かい痺れが乳房全体に広がっていく。
「んっ……♡ そんなに、じっくりしなくても、ぉ……♡」
「ご心配なく。リンパの流れを整えるには、これが一番いいんです」
アコは抗議するように声を上げたが、言葉の端々が甘く震え、説得力を欠いていた。放置された乳首を擦りつけるように背を反らすが、施術師の指はそれもお見通しとばかりに逃げてしまう。
理性が快感の沼に落ち、沈んでいく。乳首が疼き、触れられることを待ちわびて、硬く張り詰めていた。
(あぁ……ここまで台本どおりにしなくても……♡)
彼の指が、胸の付け根をトントン叩く。乳房が柔らかく姿を変え、乳首からオイルが雫となってこぼれた。
敏感に尖った突起を、早くいじってほしい――けれども、クライアントとしての立場上、シナリオに沿わなければ、ロールプレイが崩れてしまう。
――すり……♡ つつつっ♡ かり……♡
「あうっ♡ はぁ……くぅ、う……♡」
乳輪の縁に指がかかり、その大きさを確かめるようになぞっていく。期待に膨らんだ乳首は乳輪ごとパンパンに膨れていた。
触ってほしくて仕方ないのに、触られたらどうなるのか。アコは息を呑み、彼の指先から目を離せずにいた。あと少しで触れそうな所でまた縁をカリカリされて、とうとう痺れを切らしてしまう。
「先生、っ――」
――ぴんっ♡
「んひゃうっ♡♡」
肩越しに振りかえろうとした瞬間、尖り切った先端を指で弾かれた。待ち侘びた刺激に、彼女は尻を浮かせ、愛らしい悲鳴をあげた。
「大変お待たせいたしました。では、ここの施術に入りますね」
――すりすり♡ くにっ♡ こす、こす……♡
「お……お……♡ んは♡ あっ、あああ……♡♡」
指の腹で乳首を優しく引っ掻かれ、電流のような快感が脊髄を駆け上がってきた。顎を持ち上げ、白い喉を晒して、彼女は官能的な嬌声を漏らしてしまう。
お預けを食らわされたご褒美だった。焦らされきった乳首が、爪に弾かれ、体温を纏った指に挟まれ、上下左右から押し潰される。
「老廃物がかなり溜まっていますね。すごく硬くなっていますよ」
「あぅ、あぁぁ、い、言わないで、くださ、いィん♡♡」
「大丈夫ですよ。声もいっぱい出して、ストレスを発散しましょう」
「あぁっ♡ や、はずかし、っ♡」
強すぎる快感から逃げようと、無意識に体が捩れてしまう。だが、彼女はがっしり抱き留められていた。乳首を摘まれるたびに、下腹部へ熱い疼きが広がり、理性が快楽の波にさらわれていく。
――むぎゅっ♡ むぎゅ♡ むぎゅぅっ♡
「あっ♡ は♡ あぁんっ♡ あっ、おっぱい……っ♡♡」
左手は乳首を、右手は乳房を。左右から別々の刺激が襲ってくる。指の腹で乳首を転がされ、手が沈み込むほどに激しく乳房を揉み込まれ、喉から漏れる嬌声がシーツを淫らに湿らせていく。
全く触れられていない下腹部もじんじん気持ちよく、アコはしきりに内股を擦り合わせる。施術師の指使いは確実にアコを追い詰めていた。人差し指と中指が、乳首を挟み、根元から先端までゆっくりとしごきあげる。
「お、ォ……っ♡♡」
ぎゅうっ♡と潰されているのに、滑りの良いオイルのおかげで、痛みはない。仮にあったとしても、刺激の全ては快楽に変換されて、彼女の脳を犯していく。
――きゅっ♡ きゅ♡ きゅっ♡ きゅ♡
(あぁ、もう……♡♡)
「いいですよ。そのまま、自分を解放してあげましょう」
「あっ、は、はい……♡」
先生の言葉は、羞恥心を解きほぐす魔法だった。理性が削げ落ち、絶頂へと追い詰められる中、彼女は甘えるように体重を預けた。硬く尖った乳首を執拗に責められ、視界がチカチカと瞬き始める。激しい快感が全身を駆け巡り、頭の中で星が弾けた。
――ぎゅっ♡ こりっ♡ ぐり、ぐり、ぐりっ♡
「イ……イく♡ イきます……あぁぁっ♡♡♡」
パチン――頭の中でエクスタシーが弾けた。身体が軽くなり、空に浮かぶような錯覚に陥る。甘い陶酔に浸り、一瞬だけ全てを忘れた。
「ふぁ……♡ んぁ、あ……♡♡ はぁ……はぁ……♡」
絶頂の余韻が反らした背中を駆け抜ける。乳首イキの第二波が後から押し寄せ、じゅわぁ……♡と脳の芯が蕩けていく。
「せ、せんせい……♡」
彼女の声は甘く掠れていた。下半身がまだ小刻みに震え、太腿の内側が熱く濡れているのが分かった。支えられていなければ、ベッドに倒れ込んでいただろう。
「お疲れ様です、天雨様。トロトロにほぐれましたよ」
「あ……っはぁ……♡ はぁ……♡♡」」
ねちっこく乳首を責め抜いた指が、透明な糸を引きながら離れていく。アコは名残惜しそうにそれを見詰めていたが、腰元でもう一つの紐が解け、お尻にひんやりした空気が当たって、ふと我に返った。
(次は……あぁ、そうでした……♡)
性器へのマッサージが待っている。絶頂の余韻で理性は蕩け、脚を閉じる羞恥心も薄れていた。ペーパービキニのパンツは割れ目の形にぐっしょり濡れ、脱がされた裏地から長い銀糸が伸びていく。
「それでは、続けてお腹の施術もいたしますね」
「あ……はい……♡ お、おねがいします……♡」
内股を撫でて促されるままに、アコは脚を開いていた。
4.限界を迎えるシナリオ
ベッドに膝をつき、尻を踵に預けた体勢で、アコは脚を開く。一度絶頂に達した身体は過敏で、熱を帯びた疼きが収まらない。息は浅く乱れたまま、肉付き良い太腿が小刻みに震えている。ペーパービキニが吸い切れなかった愛液が、整えた陰毛に雫を宿していた。
「はぁ……はぁ……♡」
頼りない布地は剥ぎ取られ、肉感的な裸が晒されている。顔こそ見られていないものの、彼の吐息が耳の裏をくすぐる。厚い胸板に背中を預けているため、開いた股がランプの光に照らされ、サーモンピンクの粘膜も、きっと見えてしまっている。
「まずは、手でマッサージいたします」
「はっ、はい……♡」
内腿を擦られ、彼女の肩がぴくりと跳ねた。これから触られる。「まずは手で」という言葉に、次への期待が熱となって広がり、膣口から蜜を溢れさせる。
早く触れてほしい――その思いを読んだかのように、右手の指先が茂みの先へにじり寄る。
――くちゅ……♡
「ん……♡」
ディフューザーのモーター音を縫うように、水音が静かに響いた。男性の太い指がぬかるんだ秘裂をなぞり、包皮を押し上げるクリトリスをそっとくすぐる。びくんと下腹部が浮いた。
「んっ♡ や、あぁ……♡」
軽く外側を撫で回しただけで、しとどに濡れそぼっているのが分かったのだろう。施術師の指はすぐに膣口を探り、ぬるりと中へ滑り込んできた。ごつごつした関節が膣口を押し広げる感覚に、たまらず彼女は顎を持ち上げた。体が跳ねた拍子に、乳肉が上下する。
――つぷ♡ ぬぷ……ぬぷ……♡
「あ♡ あっ♡ あ♡ あふぁ♡」
抜き差しに回転を織り交ぜ、彼の指は充血した膣を検査するように這いまわる。乳首イキの余韻はまだ全身に響き、潤みきった蜜壺はちゅうちゅう指へ吸い付く。
先生の指の腹はわずかにザラつき、それが膣壁を擦るたびに、切羽詰まった嬌声が押し出される。軽く掻き回されるだけで甘い痙攣が走り、熱くなった体はさらなる刺激を求めてくねった。
――ぐにゅっ♡
「んひ、ッ♡♡」
膣内で、指が「く」の字に曲がり、膣天井をゴリゴリ抉った。Gスポットがぐちゅん♡と潰され、アコの腰が跳ね上がる。
――ずちゅ、ずちゅ……♡ ぐり、ぐりっ♡
「あッ♡ おぉ、お……♡ お゛っ……♡♡」
出し入れされる指にねっとりした愛液が付着し、光の反射が彼女の瞳に飛び込んでくる。敏感な性感帯を責められて、小さな絶頂が絶え間なく押し寄せる。掲げたままの両手が拳を作る。ほっ♡ほっ♡と品のない息遣いと共に、彼女は腰をヘコヘコ揺すって媚びてしまっていた。
感じやすい箇所を執拗に責められ、恥骨を裏からトントン揺らされる。彼女は臍を浮かし、快感から逃げようとしたが――ぐっと抱き寄せられ、カリカリ、カリカリ……♡と弱点を甘掻きされる。
「は、お゛……♡ あっ、あ~~~~っ……♡♡」
包皮の上から親指がクリトリスを押し潰す。電流のような快感がバチンと脳を叩き、驚いた意識の隙間にGスポットを撃ち抜かれる。切迫感が背筋を駆け上がってきた。
(あぁ、だめです……イく……また……♡)
絶頂の予感を訴えようとした、その時――
――ずるるるっ♡♡ ぬぽっ♡♡
「ア……っっ~~~~~♡♡」
膣天井を押し潰しながら指を引き抜かれ、ぷしゅっ、と尿道口から潮が噴き上がった。閃光のような短いオーガズムが訪れ、踵がぴんと浮き上がる。がくがくと尻を揺らし、糸が切れたようにアコの体が脱力した。
絶頂の余韻も冷めやらぬまま、また絶頂。頭の中が快感でドロドロの彼女は、彼の胸板にまた背を預けた。
「……これで、膣内の血流も、よくなりましたよ」
「…………?」
浮遊感の中で聞こえる先生の声が、先程までの落ち着きを失い、かすかに震えているように聞こえた。彼女の荒々しい呼吸に、低く速い息遣いが混じる。ふと、股への施術中、彼が何も喋っていなかったことを思い出し、恐る恐る声をかける。
「せ……先生……?」
「――アコ」
「え?」
ぴとり――焼けるように熱い何かが、膣口にあてがわれた。
5.熱情まみれのアドリブ
――ずぶぶぶぶっ♡♡
「お゛っ、お゛おぉぉぉぉっ!?♡」
意識する間もなく、硬く熱いモノが背後からアコを貫いた。膣壁を押し広げる衝撃に体が跳ね上がり、視界に星が散る。
刹那、逞しい腕にきつく抱き締められた。
深々と突き立てられた怒張が脈動する。
「いっ、いきなり何を――」
「っ……あ、出る……!」
――ぶびゅるるる♡♡ どぷ♡ ぶぴゅ~~~~♡♡
「えっ、あぁっ♡ あっ熱っ♡♡ あぁぁっ♡♡♡」
あまりに突然の展開に、彼女は目を白黒させていた。膣内で弾けたマグマのような奔流が、下腹部を満たしていく。不意打ちオーガズムの背後に、彼の呻き声が聞こえた。
「ハァ……ハァ……! あっ、アコ……うぅ、まだ出る……」
――どく♡ どくっ♡ どっくん……♡
どろっとした子種を吐き出しながら、野太いペニスがびくびくと震える。生温かい液体が内腿を伝い、オイルに濡れた肌をさらに濡らしていく。
痛いぐらいにアコを抱き締めていた先生は、射精の勢いが落ち着くと、少しだけ腕の力を緩めた。
その瞬間、炎のような衝動が突き上がってきた。
「せ、先生っ! さっきから台詞が飛んでますし、台本と違うじゃないですかっ」
「ご……ごめん……でも」
「でっ、でもじゃありません! 言い訳は――あ゛っ♡♡」
――ぬる~~っ……ずちゅんっ♡
抗議を遮り、彼が腰を揺すった。射精した直後とは思えない硬さを保つ怒張が、膣奥を押し潰す。
「ごめん、お説教なら後で聞くから。でも今は……アコが欲しくて……!」
――ずちゅっ……ずちゅっ、ずちゅっ、ずちゅ♡
「お゛ッ♡ あ゛♡ だ、だめですっ、ちょっと、止まってくださ――あっ♡ だめ、だめですってば……♡」
「そんな甘い声で『ダメ』って言われても、無理だよっ」
「あっ♡ やっ♡ お゛ふ♡ あ゛っ、ふかぃっ……♡」
制止は聞き入れられず、膣奥を突くピストンにリズムがついていく。精液を愛液が攪拌され、結合部からぐぽっぐぽっと泥を捏ねるような重い水音が響く。尻肉が潰れるほどに密着し、最奥を亀頭が抉る。
「だ、台本、作ったんですからぁっ♡ 勝手なことは――ん゛うぅ♡ は、はげしいですっ♡ もっと、やさしく……!」
「アコ、アコっ……!」
――ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡
台本も筋書きも崩れ去った。彼女は懸命に抗議を試みるが、力強い腰遣いはそれを圧倒していた。
(先生、こんなに強く抱き締めてくるなんて……♡)
オイルと汗に濡れた裸体を両腕に捕らえ、彼は一心不乱にアコを求めてくる。ストレートすぎる情熱に、彼女の不満が呑み込まれていく。
「お゛ッ♡ ん゛おぉっ♡ あ゛ァ、おっ、おく、ばっかり、っ……♡♡」
「ご、ごめんね、優しくできなくてっ。でも、でもっ……!」
「そこ、ぉ……♡ よわいんで――はひっ♡♡ あ゛♡ はへっ……♡♡」
濁った喘ぎ声が部屋に響き渡る。穏やかな彼が、いたわりのないピストンを叩きつけてくる。剥き出しにされた獣性が、メスの本能を揺り動かした。
(あぁ……♡ 先生のおちんぽ、熱くてすごい……♡♡)
支配的に貪られて、子宮が多幸感に咽び泣き、涙のように尿道口から潮を漏らす。諌めようとする理性はとうに溶けていた。「このまま先生の情熱に焼かれていたい」と思い浮かべた瞬間、彼女は自ら尻を押し付ける。
――ずっちゅ♡ ずっちゅ♡ どちゅっ、どっちゅっ♡♡
「ん゛ぁ♡ っは♡ おッ、おぉ♡♡ は、あ゛♡ い、い゛♡♡」
雌穴は完全に屈服していた。ポルチオを叩かれるたびに、断続的な絶頂がアコを襲う。オイルまみれでぬるぬるの乳房を淫らに揺らし、彼女は喉を晒して吠えるように喘いだ。発情した吐息と嬌声が部屋を満たし、肩に落ちた彼の汗が、彼女の濡れた肌に染みこんでいく。
――どぢゅっ♡♡♡
「ん゛ぁ♡ お゛おぉぉぉっ♡ い゛ぐぅぅぅうぅ♡」
子宮口を擂り潰す衝撃に、脳天を突き抜けるオーガズムが押し寄せる。全身をぶるぶる震わせて、深いエクスタシーに沈んだ。目蓋の裏で火花が散り、意識が白に染まっていく。
「っあ゛……♡ っはぁ、はぁ……♡♡」
連続絶頂にアコは限界を迎えていた。肩を大きく揺らし、酸素を求めて息を乱す。汗だくの体がふらりと脱力し、先生に抱き留められる。
「アコ……大丈夫?」
激しいピストンが緩み、優しく膣内を掻き混ぜる動きに変わる。イきたての膣壁が反応し、硬い存在感を緩く抱き締める。
――にゅる……♡ ぐちゅ……♡ ぬちゅ……♡
「が、ガツガツ、しすぎですよ……♡ これでは、レイプですっ……♡」
抗議のつもりだったが、快感に蕩けた声は抗議の体を成していなかった。その言葉とは裏腹に、淫らな昂りが冷めやらぬ身体は、粗野な交尾の続きを乞うようにくねる。
「ごめんね」と彼は小さく謝ったが、膣内のペニスはまだ石のように硬く、締め付けを押しのけるようにびくびく脈打っている。次弾を装填した銃口が、子宮口へ押し付けられていた。
「ちょっと、失礼します……ん゛……♡」
――ぬぷっ……♡
アコは意を決したように腰を浮かせ、ゆっくりと陰茎を引き抜いた。膣口からちゅぽん♡と亀頭が抜け落ちた瞬間、軽イキの快感に全身が震えた。
力の入らない体をベッドに預け、仰向けになって恋人を見つめた。オイルと汗で輝く肌が、穏やかな照明を淫靡なスポットライトに変える。
「さっきからずっと、お顔が見えないままでしたから……♡」
「アコ……」
「その……お顔を見ながら、と思いまして……♡」
理性を溶かされてようやく、彼女は恥ずかしさを乗り越えてそう口にできた。声は震え、腋に汗が滲む。震える膝を開き、ひくつく膣穴を彼に晒す。視線を浴びた瞬間、白く泡立った混合液が、こぷっと溢れてきた。
「でも……その、台本が」
「い、いいから、早くしてくださいっ! 私が、欲しかったんでしょうっ!?」
まごつく彼へ、半ば自棄に言質を突き付ける。施術着の腕を掴んで引き寄せ、吐息のかかる距離まで顔を近づけた。
「もう台本なんていいんですっ! それより、私だって――」
伝えたい――その想いが膨らみ、羞恥の鎖を断ち切る。
「わ、私だって……先生が欲しいんですから……♡」
それでも見詰め合うのには耐えきれず、アコは目を反らしてしまった。
ごくり。先生の突き出た喉仏が上下して、生唾を飲み込む音が耳に届いた。焦がれる思いで訴えた彼女に応えるように、淫水まみれでぬらぬら輝く剛直がびくんと跳ねた。
ここから先の筋書きはない。シナリオは瓦解し、彼女もそれを投げ捨てた。本能の求めに突き動かされ、杭を抜かれた膣がじくじく疼く。精液と愛液が混ざり、練乳のような小川を作っていた。
(欲しい……欲しいです……♡ 太いおちんぽ……♡ はやく……♡)
お腹の中にぽっかり空洞ができた切なさを、早く埋めてほしい。さっきのような燃え盛る情愛でぐちゃぐちゃにしてほしい。アコは淫欲を剥き出しにし、物欲しげな視線を怒張に注いでいた。
「じ、じゃあ……!」
「はい♡ おねがいします……♡」
――ちゅぷ♡ ぬる~っ……♡
「~~~~♡♡♡」
熱い肉塊を膣肉を割り開き、ずるん♡と奥まで滑り込む。背を浮かせ、言葉にならない声をあげる。陰毛が絡み合うまで一瞬だった。
「はぁ……せんせい……♡」
瞳を覗き込み、アコはそっと上体を起こして唇を重ねた。自分からキスするのは極めて稀だった。彼は一瞬硬直したが、ディープキスを誘う舌へすぐに応えてくれた。
――ちゅく♡ ちゅ♡ ちゅる……♡
絡み合う舌からぬめった唾液が滴り、口元を濡らす。ごくりと嚥下すると、悦びが喉の奥へ流れ落ちていく。熱っぽい吐息が唇の合わせ目から溢れ、ベッドの空気を情事に染めていく。
「ン♡ ンふ……♡ っふ♡ ふ~っ……♡」
カチカチの剛直が、充血した膣肉を掻き回す。
貪るようなバックハグの激しさは落ち着き、じっくり味わうピストンが胸をくすぐる。
吐息混じりの官能的な声が止まらない。甘い幸福感の中、アコはほんの少しだけ唇をずらした。
「ど……どうしたんです? あんなにがっついてたのに、優しいじゃないですか……♡」
「いや……その、アコが凄く気持ちよさそうだから、このままがいいのかな、って……」
「いっ♡ いいんですよ? さっきみたいにしたって……あっ♡ でも、うぅ♡ ゆっくりしてもらうのも、うれしくて……♡ もう、こまりますっ……♡」
――ぱちゅ……ぱちゅ……とちゅっ♡
「はぁ……♡ んふ……♡ きもちいい……♡♡」
うっとりと息を吐き、目を閉じる。情熱が奥まで入り込み、子宮口とキスを交わす。傘裏のエラで膣襞をめくりながら抜け出て、ごちそうを食べさせるように、また奥へ。
全部入り切ったところでぎゅっ♡と締め付けると、繋いだ手を握るように、彼のペニスがびくんと胴を揺らした。爪先まで幸福感が満ちていき、体にかかる重みすらも愛しい。彼の裏腿にふくらはぎを絡め、いたわるピストンの続きをねだる。
充足感でいっぱいなのに、アコはまだ欲張りたくなった。ベッドへついたままの硬い腕へ、そっと手を添える。
「せ、先生? あんなに褒めてくださった体が、目の前にあるんですよ?
「……そうだね。ごめん、アコの色っぽい表情に見惚れてて」
「なっ、何ですか、もうっ♡」
「……さっきのは、リップサービスじゃなくて、その……本心だから」
「い、い、言わなくていいんですっ、そういうのはっ♡」
冗談交じりの挑発に本音を返され、羞恥に頭が燃える。ついトゲっぽい態度が出てしまうが、先生が小さな声で呟いたそれは間違いなく、欲しかった言葉で――アコは口角が上がるのを止められなかった。
――むにゅっ♡ ぐにゅ♡ こね、こねっ♡
「あんっ……♡ もう、すぐおっぱいばっかり……♡」
ピストンに合わせてゆさゆさ弾むバストに、先生が手を伸ばした。腕に筋を浮き上がらせ、掌を乳肉に沈めて荒々しく揉みしだいてくる。だが、オイルでヌメりを帯びた肌は、欲望まみれの乱暴な愛撫も、その全てを快感に変換してしまう。
スペンス乳腺をマッサージされたと思えば、下から掬い上げて揺らされ、乳搾りをするように長乳を扱かれる。射精みたいにミルクを噴き上げてしまうかも――アコの脳裏にそんな妄想がよぎった瞬間、コリコリの乳首を指で挟まれた。
――ぐり……♡ くにゅっ♡ ぎゅうっ……♡
「ん゛ひッ♡♡ あ゛♡ ちくび、ッ♡♡ や、それだめっ♡ イっちゃ、ア――」
親指と人差し指が乳首を挟み、潰しながら捻り上げた。ポルチオをどすん♡と突かれる重い奥イキと、弾ける乳首イキが同時に襲いかかる。大きく背筋を逸らし、結合部から噴き出した潮が、先生の下腹部を濡らす。
「アコ……可愛いよ、アコっ」
――ばちゅ♡ ばちゅ♡ ばちゅ♡ ばちゅ♡
オーガズムの波に揺られる合間も、リズミカルなピストンは止まらない。それどころか、先生は額に汗して息を荒げ、貪欲に腰を叩きつけてくる。粘着音と打擲音が嬌声と混じり、壁に反響した。
「い゛、い゛っ♡ い、イッて、ますっ♡ い、イ゛ぐ♡ イくの、とまらにゃ♡ はひッ♡ あ゛おっ、お゛~~~~~~~~~♡♡」
「っ……! うぅ、すごい、締まるっ……!」
――ずちゅ♡ どちゅっ♡ どちゅっ♡ ごりっ♡ ごりっ♡
(あ゛ッ♡♡ あたま、まっしろになりゅっ♡♡♡)
ペニスのエラで膣肉をぞりぞり引っ掻かれるたびに、子宮口が歓喜に震える。体重をかけて種付けピストンは重く深く、ポルチオをごりっ♡と抉りながら奥まで入り込んでくる。その衝撃が彼女の脳天まで突き抜け、意識が白に染まっていく。
先生の腰が速度を上げていく。膣肉をミチミチに満たす陰茎が、ぐぐぐっ……と膨らみ始めた。乳房を弄んでいた手が離れ、くびれた腰をがっしり掴んだ。
(あっ♡ なかだし♡ くる……♡♡♡)
膣内射精のスリルに背中が震えた。フィニッシュ目掛けて腰を振りたくる先生を、脚で抱き締める。
「アコ」
「あぁっ、せんせいっ♡♡」
――どぢゅんっ♡♡
「……っ!」
――ぶびゅっ♡♡ どぴゅるるるるる♡♡ ぶびゅ♡ びゅっ♡ びゅぅ~~~~っ♡♡
灼熱の肉棒が弾け、濁流が蜜壺へ叩きつけられる。二度目とは思えない勢いだった。子宮口が溺れそうなほどの白濁液を浴びせられ、アコもこの日一番の深いオーガズムを迎えていた。
――どぷっ♡ どぷっ♡ びゅぶ♡ どく、どく、どく……♡
「っア゛♡♡ あ゛ッ、お゛おぉぉ……♡ ほお゛ぉぉぉぉんっ……♡♡♡」
組み敷かれたまま仰け反り、アコは舌を突き出して深イキに悶絶した。先生の下腹部へ臍を擦りつけ、肉穴をぎゅうぎゅうに締め付け、睾丸の中身を根こそぎ搾り取る。先生も犬みたいに息を吐き、ガクガク腰を揺らして吐精に声を漏らしていた。
長い射精が終わり、互いにぐったりと脱力する。夢と現実の狭間で意識が漂い、髪の先まで多幸感にどっぷり浸る。結合部からは、収まりきらなかった濃厚な追い撃ち精液が、とろりとろりと零れ落ちてくる。
「んぇ……はひ……♡」
「……アコ?」
汗で張り付いた前髪が避けられ、つるんとしたおでこへ口付けが交わされた。は微睡から覚めるように瞬きし、アコは肩を起こして先生を抱き寄せる。
(そこじゃないですよ……!)
抗議するように唇を重ねた。そのままぐいぐい彼を引き寄せ、舌を絡める。
「ん……♡ んっ……♡」
――ちゅく♡ ちゅ♡ ちゅる♡ ちゅっ♡ ちゅ……♡
貪るキスが続く。幸せな余韻で頭はトロトロ。何も考えられない。脳の芯から突き上げる衝動に任せるまま、愛しい人の呼吸を奪う。
「……すき、です……せんせい、すき……♡」
理性の堅い抵抗に封じられていた言葉が、キスの合間にようやく紡がれる。先生が何かを答えようとするが、彼女は下から一方的に唇を重ねた。太い首に回した腕に力が籠っていく。
呼吸の合間に愛を紡ぐ言葉を探したが、情事の余韻に浸りながらの甘い接吻が止められない。柔らかくなった陰茎が抜け落ち、体液の混合物がベッドにシミを広げても、アコは愛しい先生への好意をぶつけ続けていた。
6.真に受けて、いいんですよね?
「うわ……凄いことになっちゃったね……」
先生の体には、小さな赤い花が無数に咲き誇っていた。首の根元にも、胸板にも。脇腹にも、臍の周りにも。今は力を失った肉竿にも、睾丸の袋にも。おおよそ服で隠せる部分には彼女のキスマークがちりばめられ、情事の熱を物語る。
「アコ、ちょっと付けすぎなんじゃないかな?」
「しっ、仕方ないでしょう!」
台本を放棄したアコは暴走機関車のように彼を組み敷き、所有欲を刻むキスの雨を降らせた。我を忘れて夢中になった結果、自分の大胆な振る舞いの跡を直視できず、彼女はディフューザーの白い煙に視線を逃がした。柑橘系の香りが性臭に溶け合い、部屋に甘い余韻を漂わせていた。
「だいたい、先生が台本を破るからいけないんじゃないですか!」
「いや、まぁ、そうなんだけど……」
施術師だった彼が気まずそうに後頭部を掻く。そのしぐさに、彼女はそっと近づき、鼻先を指でつついた。
「それで、どうなんですか?」
「どうって、何のこと?」
「〝天雨様の恋人はキヴォトスいちの幸せ者だ〟って、あれ、アドリブでしたよね?」
「そ……そうだね」
彼が目を泳がせた。赤らんでいく耳を見て、彼女の口元も緩んだ。少し意地悪な念押しをしたくなって、胡坐をかく恋人にしなだれかかる。恥ずかしそうに動揺する彼の瞳には、照れを隠せていない自分が映っていた。
「……真に受けて、いいんですよね?」
返事を待たず、彼女は唇を塞いだ。ノーを奪うように、柔らかなキスを重ねる。台本の破綻が、素直になれない彼女を積極的にしていた。
舌を絡めない軽い触れ合いだったが、情熱の深さが銀糸を引く。興奮の極致に茹だっていた頭が、穏やかな落ち着きを取り戻していく。
「……そういうわけで、次回は先生が台本を作ってくださいね」
「えっ!? なんでそういう流れになるの!?」
「いいじゃないですか、たまにはっ」
それでも、見詰め合うのは数秒が限界で。
(やっぱり、素直になるのは難しいですね……)
一歩前進できたはずなのに。また恥ずかしさに自分を誤魔化してしまい、天雨アコはひっそりと溜息をつくのだった。
終わり
高評価・感想など頂けたら嬉しいです。