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メディカルチェックは定期的に
「足の調子もすっかり戻りましたね」
「うん、おかげ様で。歩くのにも不自由しなくなってよかったよ」
メディカルチェックと称しての訪問診療。ゲヘナ学園救急医学部の氷室セナが足繫くシャーレに通い詰めて、私の怪我の予後を診にくるのも、もう何度目だろうか。病院へ行く時間を確保するのも時には難しい私にとって、仕事場で治療や検査を受けられるのは有難いことであるのは確かだった。物騒な物言いや搬送の荒さはあれど、セナは一度始めた治療に対する責任感が頑固なまでに強く、それだけに信用もできた。
指揮を執るときは、常に砲火の届かない距離を取って後方へ。作戦行動を共にするどの生徒からも、口を酸っぱくして厳重に言われることだった。
だけど、それだけ安全な位置にいても、思わぬ理由から怪我をしてしまうこともある。きっと日頃の疲れも祟っていたのだろう。間の抜けたことに、私は作戦終了後の市街地を歩いている時に瓦礫に躓いて転び――そのまま打撲やら捻挫やら、ともかく体のあちこちを負傷してしまった。酷かったのは右足の骨折で、しばらくは松葉杖をつく破目になったほどだ。屋内での業務にはそれほど支障をきたさなかったのが救いだろうか。これが利き腕の骨折だったりしたら――と思うと、ゾッとしてしまう。
「脈拍、血圧も正常。体温にも異常無し。患部の腫れも引きましたね」
「そろそろ、メディカルチェックも卒業できそうかな」
「ええ、予後は良好です――しかし」
「ま、まだ何かマズいことが……?」
「性機能の検査を済ませなければなりません」
「ぶほっ!?」
飲みかけていたコーヒーが気管に入り、むせこんでしまった。
「せ、セナ、今なんて」
「性機能の検査です。先生の生殖器が正常に機能するか確認します」
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って! さすがにそれは」
「必須の検査項目です。ある箇所の身体的な損傷が原因となり、別の箇所に不可逆的な機能不全を起こしてしまう事例は、過去いくらでも存在しています」
セナは真顔だ。元々表情の変化には乏しいクールな子ではあるけれども。
医療分野においてはセナの方が専門家だ。素人が医療従事者に反論したって、確固たるエビデンスが無ければ釈迦に説法というものだ。セカンドオピニオンという単語が一瞬よぎるが、その思考を遮るように、セナが私の前に立ちはだかった。
「……その検査をスキップするっていうのは?」
「容認できかねます。機能が万全であることを確かめられなければ、要観察の死――いえ、負傷者として医療室へ移送します」
「つまり……」
「ドクターストップによる強制入院と同義であると受け止めていただければ」
「あぁ、なるほど……」
「デリケートな部分であることは承知していますが、先生は代わりのきかない大切な存在です。そのお体に万が一のことでもあれば……」
「うぅ……」
セナは真っ直ぐ私を見つめる。思わず頭を抱えたくなってしまったが、そうしてもいられない。セナが悪ふざけなんてするわけもなく、患者の心配をしているのは紛れもない事実だ。
インフォームドコンセントは遵守されているが、選択肢は一見あるように思えて、無いも同然だ。腹をくくるしかない……。
「じゃあ……分かった。何をすればいいのかな?」
「男性器の勃起と射精が正常に行われ――」
「ちょ、ちょ、ちょ!?」
「男性器の勃起と射精が正常に行われることを、目視で確認します」
セナは顔色一つ変えずに言い切った。
「勃起」「射精」と。
あぁそうだ。
氷室セナはこういう子なんだ。
あらためて思い知らされる。
「検査場所へご案内します。ベッドのある所がいいでしょう」
看護師が患者を案内するがごとく。
セナが仮眠室へ私を先導した。
* * * * *
「では先生。メディカルチェックを開始します」
抑揚に乏しい声でそう言うと、セナはナースキャップを脱ぎ、何の躊躇もなく自らの着衣を解き始めた。
ほどける紐。
ホールをくぐる金属製のボタン。
衣擦れの音。
私は下を脱ぎ、タオルで局部を隠している。理性で押さえ込んだ本能は、頼りないたった一枚のタオルの下で、何とかまだ平静を保っている。
「先生、目を逸らさないように」
「で……でも、セナっ」
「患者の協力なしに、医療行為は成立しません」
すとん――。
救急医学部の制服が床に落ち、膨らんだ袖やスカートの襞に隠されていた艶めかしい肉体が姿を現す。羞恥心がないのか、それとも使命感ゆえに羞恥を覚えないのか、ともかくセナは堂々としている。
黒と紫のきめ細かく編み上げられたセットアップの下着が、露になったセナの身体をかろうじて包んでいる。布面積の少なさは、まさしく裸体を守る最後の砦。年齢を思えば不釣り合いなデザインだったが、このセナのスタイル――今にもカップを乗り越えて零れそうな乳房に、引き締まってきゅっと縊れたウエストと、赤子を生み育てる準備は万端と言わんばかりの豊かなお尻。言われた通りにしていたら心を奪われてしまいそうで、思わず私はセナの指示に反して目を逸らしてしまった。
「ダメです、先生」
「ごっ、ごめん」
「しっかりご覧になって下さい」
ベッドに腰かける私に詰め寄り、セナが前屈みになった。私のまさに目の前で重そうな乳肉がずっしりたぷんと弾み、その柔らかく瑞々しい質感が、触ってもいないのに脳に刻まれそうだ。
「性的特徴の発達した肉体の方が、交尾・生殖にはより好ましいとする研究データもあります。乳房においても臀部においても、先生に物足りない思いをさせることはない。私にはその自負があります」
背中に手が回ると、引き締まった腹部が露になった。正中線に沿って筋肉の起伏が綺麗な一本線を形成している。ウエストの細さに目を取られた隙に――ぷちっ。ホックの外れる微かな音を合図に、胸元で雪崩が起こった。だぷっ、どぽんっ……♡ と揺れながら、重力に引かれた長い乳房が私の視線を奪う。花弁が開くようにカップがズレると、そこに息づくのは淡い色の雌しべ。脳の底がジリッと焼ける絶景だった。まず他人に見せることのない場所を晒してなお、セナには動じる様子がない。
「数値までは測定していませんが、より興奮していただくため、具体的なサイズをお伝えしておきます。こちらをどうぞ」
「え……?」
体から離れたブラのタグを、セナが示した。
「I-65……?」
「その数値はアンダーバストです。トップとの差によってカップ数が定義されます。3サイズの表記に従うなら、トップバストは推定94センチから96センチの間といった所でしょうか」
「そ、そんなに……?」
「最近ブラが窮屈に感じているので、100センチを超えているかもしれませんね」
涼しい口調でセナが言った。大したことではありませんが、とでも言いたげだ。謙遜や当てつけといった類の意図は全く感じられないが――催眠術をかけるようにゆらゆら視線を誘う大ぶりの果実に、喉が鳴った。
「興味を示しているようですね。いい反応です」
「あ、いや、そんなことは」
「遠慮は無用です。これは正当な医療行為です。異性の裸体を見ることで、脳に刺激を与えるのです。さぁ、もっと近くで」
「ん、ぉ、もが……!」
私の首に手を回し、セナが体を密着させてきた。湿気をまとった石鹸の匂いは微かな汗を孕んで、むせ返るようだ。温められた大福のような、搗き立ての餅のような、乳肉の途方もない柔らかさが鼻先を包む。顔を覆ってしまえるような女の象徴は、脳の奥から酸素を奪い、思考能力を削り取っていく。チカチカする視界の中で、猛烈に込み上げるものが、形を取っていく――両脚の間で。
あぁ、大切な生徒なのに。
劣情を催してはいけないのに。
一度火が入ってしまえば、張り詰めるのはあっという間だった。私が身じろぎしたのを悟って、琥珀色の瞳が「そこ」に視線を注ぐ。タオルがテントになっていくのを見られた。頭から血の気が引いていくような感覚と同時に、体が火照り出す。どうしようもない恥ずかしさに目をきつく閉じると、追い打ちをかけるようにセナが呟いた。
「勃起を確認。目視します」
「うぅ……」
「先生も一緒にご確認を」
私が何か言う前に、タオルが外された。セナの冷えた眼差しが、剥き出しのペニスに刺さる。冷や汗とは裏腹に、水平だったそれには芯が入り、ぐんぐん角度を上げていく。内側で膨らむ海綿体に押され、亀頭の根元を隠す包皮がぴらっと剥けた。肉竿が下腹部にくっつきそうになったのを、セナはじっと、一瞬たりとも見逃すまいと見つめていた。
「勃起障害の兆候はありませんね。仮性包茎のようですが、機能に支障はないでしょう」
「……そりゃ、どうも」
「次は」
「やっぱり、次があるんだね……」
「まだ始まったばかりです」
医療行為。
これは医療行為。
理性を納得させようと心が叫ぶ。
だが、教え子のグラマーな裸体を目にして浅ましくペニスを硬くしていては、それは虚しい反響に過ぎない。私の葛藤を他所に「触診を始めます」とセナはあくまで淡々としていた。一切の反論を封じる冷徹さすら感じられた。
「血液が集まり、海綿体が硬化しています。陰茎亀頭まで張り詰めていますね」
「ん……セナ、くすぐったい……」
「ご安心を。そのこそばゆさは快感です。膨張した海綿体が不随意に収縮して陰茎を揺らすのは、感覚神経がきちんと生きている証拠です」
指先で裏筋をなぞるセナ。解剖学的見地にも詳しい彼女のことだから、もしかしたら――なんて思っていると、私の心を読んでいるかのように、敏感なポイントがくすぐられる。縫い目をそっと撫でられて、またペニスが角度を上げる。
「外気温でやや体内に収納されていた精巣が、手に温められて下がってきましたね。とろっと柔らかな手触りになってきました。粒が大きくて弾力豊かな睾丸ですね。これなら精子も順調に作られていることでしょう」
「あっ、あの……セナ。そんな、詳細に言わなくていいから……」
「医療従事者と患者の情報格差を埋めるために必要なことです。ご理解下さい」
柔らかな掌に、玉袋が包まれる。患者を搬送する荒さを思い浮かべてゾッとしたが、実際にはそんな乱暴さとは無縁の、優しいマッサージだった。睾丸をソフトな手触りで揉まれ、微弱な電流が走る。
「内臓が体外に露出しているに等しい、男性の肉体で最もデリケートな部分です。ですからこうして、ソフトタッチで少しずつほぐしていきます」
「……っ……」
「声や吐息は無理に我慢しないようにしてください。快感を堰き止めると、射精の質が低下してしまいます」
「そ、そうなの?」
そうです、と言い放ち、セナは睾丸をやわやわと揉み続ける。竿の根元で滞留する緩い快感がじれったくなって、びく、びく……とペニスの本体が頭を揺らした。一瞬私と目を合わせると、セナの手が上ってきた。
「硬い幹ですね。銃身に喩えられることが多いのにも頷けます」
「うぁっ……」
根元から先端へ、輪郭をなぞるように握り直す。ひんやりした指が巻き付いてくると、思わず腰が引けてしまった。逃がしません、とばかりに握られ、女の子の手が竿を上下に擦り出す。
「マスターベーションはされるのですか?」
「え、えっと……」
「失礼。回答の必要のない質問でした」
手で扱きながらそんなことを言われると、ムラムラが膨らんでしまう。水に泡が立って熱湯になっていくように、熱が先端に収束し始める。その熱を追いかけるように、セナの手が先端の粘膜へにじり寄ってきた。
「亀頭も触診します」
「そこも、敏感だからさ……」
「承知しています」
「っ……あ……」
「この張り出したカリ首は『冠状溝』と言って、海綿体の最も太い部分です。ペニスの中で最も敏感な部位の一つです。男性の性感帯の多くはここに集中しています」
「そ……そうなの……?」
「はい。特に亀頭冠の溝を圧迫しながら滑らせるようにされると、快感が強いでしょう?」
「お、ん……」
"ちゅく、ちゅく、ちゅく"
口で答えるまでもない。長い指がくるくる螺旋を描き、単純な上下の動きに捻じれの動きが加わる。クールな顔色は相も変わらず事務的なのに、セナの手は弄ぶようにペニスを扱く。
「亀頭冠の溝、陰茎頭部の根元とカリ首。ここが特に敏感なようですので、重点的にマッサージしていきます」
「うぁ……っ……!」
「痛みはありますか?」
「……いや、大丈夫……」
「快感を覚えているのですか?」
「は、はい……」
「そうでなくては。もっと心地よくなってください。そして、ぐつぐつと精液を煮立たせるのです」
"ちゅこっちゅこっちゅこっちゅこっちゅこっ"
尿道口からは我慢汁が流れ出し、粘液の絡んだ手がリズミカルな上下運動を続けた。摩擦に空気がまぶされて、ぐちゅっぐちゅっと粘り気を帯びたいやらしい音が立つ。
「先生のお体は望ましい反応を示していますね。カウパー氏腺液が滲み出し、体が射精の準備を始めています」
「ま、って、セナ。もう少し、加減してっ……」
「まだです。まだ昂っていただく必要があります」
"ぬちゅ にゅぽ ぬるん にゅる ねちゃッ"
潤滑液で満たされたオナホールに挿入しているような、精液を搾り取る優しくも冷酷な手コキ。私は腰を浮かせ、耐えるしかない。
指で作ったリングでカリ首を小刻みに扱かれ、いやらしい水音に脳まで掻き回されるようだ。大ぶりな乳房をふるふる揺らされる光景も刺激的で、射精直前のひりひりするような快感が尿道から上り詰める。絶頂を訴える前に弾けてしまいそうだ。意を決して口を開くと――
「はい。ここで一旦止めます」
「っううっ!?」
射精に至る寸前に、ペニスの根元をきゅううっと締められてしまった。行き場を失った精子が睾丸の中で暴れ回る。
「先生。感知できたから刺激を止めましたが、オーガズムに達する時は告げていただかないと」
「い、言おうとしたんだけど……ふぅ、う……」
「ただ排泄するだけではマスターベーションと同じになってしまいます。これは機能検査なのですから」
「はい……」
「検査の次の段階へ移ります。ベッドの上へ横になって、楽にして下さい」
おかしいな。何だか、セナにペースを握られっぱなしになっているというか。いや、実際ペニスを握られているのだから、気のせいではないだろう。言われるがままにするうちに、理性の歯止めがすっかり緩んでいることに気づかされた。これは医療行為なんだから、患者たるもの、医療従事者には従わなければ。そんな方向に思考が歪み、私のシャツを脱がすセナをぼんやり眺めていた。
お互い一糸纏わぬ姿になると、仰向けの私にセナが覆いかぶさってきた。背中に腕が回ってきて、サラサラの肌と、皮下脂肪の柔らかさが押し付けられる。分厚い乳脂肪が胸板でぐにゅっと潰れ、その重たい質量ごしに、鼓動が伝わってくる。
「先生は、抱擁のもたらす効果を御存知ですか」
「オキシトシンが分泌されて、リラックスするんだよね」
「既にそういった経験をお持ちのようですね。嫉妬します。いつ、どこで、誰と。具体的に説明して下さい。後ほど」
「ご、ごめんってば」
「冗談です。今こうしているのは私なのですから、存分にスキンシップを取りましょう」
真顔で冗談を飛ばすセナが、体温を分け与えるように肌を擦りつけてくる。生肌と生肌の擦れ合いに、原始的な心地よさが込み上げる。柔らかさと温もりと、微かに甘い香り。潰れた乳房の餅みたいな柔らかさと対照的に、腹部は引き締まっている。筋肉の起伏をペニスの裏筋に感じていると、セナが身じろぎした。
「思い描いて下さい。これから先生の性機能が十全であることの証明として、可能な限り高純度な射精をするのです。ここに放つイメージで」
"ぐり、ぐりっ……"
セナが下腹部を押し付けてくる。皮下脂肪の柔らかさと筋肉の弾力の混ざった不思議な感触だ。臍の下、その奥にあるものといえば、女の宝。新たな命を生み育てるための子宮。「ここにあります」「射精する先はここなのです」と、しっとり温かな体が誘ってくる。
「バルトリン氏腺液で十分に潤った膣へ、この硬く反り返った陰茎を挿入し、膣壁で包んでマッサージします」
「そして、膣の最奥に息づく子宮口に、煮えたぎった精液を注ぎ入れるのです。お腹を空かせた赤ん坊に、お乳を飲ませてあげるのと同じように」
「粘膜同士の接触は、ヒトの神経が感じ取る最大の快感であると言われています。しかし、身体的刺激だけでなく、精神的満足も無ければ、先生の性機能の最高潮を引き出すことはできません」
「そこに至るまでには、一定の『焦らし』が必要です。弱火で時間をかけて煮込むことで完成する料理のごとく」
「ですから……もっと高めて下さい。しかし、決して弾けてしまわないように」
囁かれる言葉の一つ一つが、どくどくと脈打つ血流にのって、ペニスへ伝わっていく。
「さあ、私の体にも触れて下さい。先生の関心を満たせるだけの大きさです」
"ふにゅっ……"
"むに……っ"
私の手が導かれて、瑞々しく実る巨乳が掌を包む。どこまでも指が沈んでいく無限の柔らかさ。夢と現の境を往復させられるような幸福感に、頭の中が蕩けていく。コリッと当たった乳頭を軽く摘まむと、セナが一瞬呼吸を乱した。下半身に意識のリソースを割いてみると、むっちりした太腿が微かに震えている。
鉄面皮の裏でセナも昂っているのだろうか。
そう考えると、獣欲が本格的に脳を塗り潰す。
「私を抱きたくなりましたか?」
「えっと、検査……なんだよね。そこまですることはないんじゃないかな」
「言葉と体があべこべですね。どちらが本音ですか?」
生殺しに遭っているペニスは、生肌の向こうに秘められた子宮を目掛けて、さっきから血管を太く浮き上がらせている。じれったさを煽るように、セナは手を伸ばし、ガチガチに張り詰めた竿を握り、亀頭の裏筋をくすぐってくる。私が我慢できなくなっているのを見越して、最後の一押しを試みているのだ。
「…………」
「沈黙は肯定と認識します。では、検査の最終段階に移行しましょう」
多幸感をもたらす温もりが離れ、セナが四つん這いになった。広げた両脚の間から湿気が立ち上り、部屋の灯りを反射した割れ目がぬらぬらと妖しく光っているのが見えた。
「後背位でどうぞ。最も交尾に適したポジションです」
「ねぇセナ。本当にそこまで……」
「本来の用途で性器を用いるのが、最も自然で、最大効率の射精をもたらします」
「……一刀両断だね」
きっぱりとセナが言い切った。理性で悪あがきをする私をさらに誘おうとでもいうのか――秘裂を指で開き、オレンジピンクの粘膜が開かれた。小陰唇の間で愛液が糸を引き、視線が有無を言わさずそこへ縫い付けられる。
「後ろめたい思いをすることはありません。これは正当な医療行為であり、先生の体が健康であることを確認するための検査なのです」
「……うん」
どの道、私が踏み止まっていれば、いずれはセナが強引な手段に出ることになってしまうのだ。そうなる前にせめて、禁忌の一歩は私の足で踏み出さなければなるまい。そう自分に言い訳して、弾力豊かなお尻を掴んだ。
「そうです。そこから前に押し進めて下さい」
片手で握ったペニスを、もう片方で押さえ、私は先端をぴったりとあてがった。愛液のぬめりに助けられ、張り出した亀頭がずるりと飲み込まれていく。
* * * * *
"ずぶぶ……ぬるぅ……っ"
「…………っ」
セナがシーツを握り締め、皺が寄った。振り返ってこちらを見守る彼女は無表情だったが、ずるりずるりと蜜壺へ怒張を挿し入れていくと、眉がぴくりと上がり、目蓋が微かに下がった。甘い声なんて到底あげそうにないセナが、セックスの時にどんな姿を見せるのか――そんな好奇心が湧き起こった。
「根元まで挿入できたようですね。熱を持った陰茎亀頭が、子宮口を押しています」
「う……きつ……っ」
引き締まった腹筋からもたらされる膣圧は強烈だ。ペニスを柔らかい肉でぴったりと包んで締め上げ、早くも射精を誘っている。気を抜けば、挿入しただけで呆気なく達してしまいそうだ。
「先生、そのまま、奥へ擦りつけて下さい」
「それも、正しい検査のため?」
「そうです。体重をかけて、すり潰すように圧迫して下さい」
「こう……かな……」
言われた通り、子宮口へ亀頭を押し当てる。ぐりっ、ぐりっと腰を回して、セナの奥深くへペニスへ擦りつける。
"ぐり……こり……"
「……ん……」
僅かに眉根が下がり、艶めかしい吐息をセナが漏らす。耳を澄ましていなければ聞こえない、微かな声だった。枕に顔を沈め、時々こちらを横目で窺っては、尻を揺らして私を促してくる。ぴくっ、ぴくっと臀部が震え、膣肉がきゅうきゅう締まる。
「その調子です、先生。繰り返しますが、これはあくまでも検査です。余計なことを考えず、続けて下さい」
「そ……そうだね……」
"ぐちゅ……ごぷ……"
"こちゅっ、こちゅっ"
奥深く突き入れたまま、腰を回す。カリ裏のくぼみに食い込む肉環がもたらす快感に、腰が痺れてしまう。摩擦なしに射精まで導かれてしまいそうだ。ロクに腰を振ってもいないのに音をあげてしまいそうな私とは異なり、セナは平然と、いつものクールな表情を保っている。
「セナ、痛いのを堪えていたりしない?」
「どうしてそう思われるのですか?」
「いや、その……」
「ご安心下さい。性感の強いスポットを刺激されて、私も強い快感を覚えています。もう二度ほどオーガズムに達しました」
「えっ!? そ、そうなの……?」
「……今、三度目が。そのまま、引き続き、お願いします」
淡々と告げると、セナは唇を閉ざした。挿入したばかりの時よりも膣内は潤み、ヒクヒクと壁が蠢いている。よく見てみれば、首筋がほのかにピンクに染まっているし、撫でた背中は汗ばんでしっとりしている。セナの肉体は官能の兆候を示している。不感症なのかもしれない、と頭によぎった疑念は、子宮口をすり潰した瞬間にうねって吸い付く膣壁の反応に霧散した。
"ぐり、ぐりゅっ、こりっ……"
"ぐっ、ぐっ、ぐっ、むぎゅっ"
無表情なセナが、もう三度もイッているなんて。このまま責め続けてみたい。なくなっていく余裕の中、そんなことを思った。内なる情欲の炎が燃え、理性が焼けて落ちていく。
「先生、そろそろ摩擦も加えましょう。前後に動いて下さい。奥を優しくトントンするイメージです」
「それも検査の手順っていうこと?」
「それもありますが。そうしてほしいという希望です」
「……ストレートだね、こんな時も」
「褒め言葉と受け取っておきます。さぁ、先生、早く」
"ずぢゅぅ……"
促されるまま、腰を後ろに引く。亀頭が膣壁をぞりぞり擦りながら抜けていく。カリ首で膣壁の襞を一つ一つ捲り、裏筋にぴったりと密着する子宮口をぐりぐり抉ってから、また奥へと突き戻す。
"ばちゅっ……!"
「う……吸い付き、ヤバい……」
「射精しそうになっても、すぐには出さないよう願います」
「が、我慢しなきゃダメなの?」
「そうです。限界まで堪えて、精液を濃縮させるのです。どうしても我慢ならなくなったら、その時は告げて下さい」
「わ……かった……」
ペニスが抜けてしまうギリギリまで引いて、突き入れる。奥に当たる前にブレーキをかけて、ふわっと子宮口へ着地する。引き抜く前に、膣奥を軽く二、三回ノックする。だけどうまくブレーキがかからなくて、勢いよくずるんと押し込んでしまうこともある。そうするとセナは息を詰まらせて、シーツをギュッと握った。
"ずちゅっ、ずちゅ、ずちゅ……"
"ずっ、ずぷっ、ぬぷ、ぬちゅっ"
「……っ……っは……」
ぐちゅ、ぐちゅっと、結合部から立つ水音が大きくなっていく。セナは相変わらず静かだが、肉体の反応が賑やかになってきた。呼吸する肩が上下し始めた。内股が痙攣して、シーツの皺が密になっていく。首筋には珠のような汗も滲んできて、膣肉のうねりや締まりがますますその律動を激しくし始める。
「セナ、どう? 今は、何回目ぐらい?」
「……八回目です。一度迎えた波が引く前に、次がやってきます」
「だいぶイッてるんだね。苦しくない?」
「ご心配なく。そのまま――あッ♡♡」
セナが明確に嬌声をあげ、背筋を仰け反らせた。
強烈な膣圧がかかり、搾り上げられた私も思わず声をあげてしまう。
「ごめん、痛かった?」
「いえ、深い波が来ただけです。お構いなく」
「……じゃあ、続けるよ」
「はい。……っ……ぅ……」
"ずちゅ、ぱちゅっ、ぱちゅん!"
"ぱん、ぱんっ、ぱん、ぱん!"
深イキしたセナが一瞬だけ見せた乱れ。私はすっかり火が点いてしまい、夢中で腰を振った。
この柔らかな尻に腰をぶつけ続けたい。もっと奥へ突き入れてみたい。欲求が膨れ上がり、膣壁を抉るペニスにも力が入る。
絡みつく襞をカリでこそぎ取りながら引き抜き、突き入れ、繰り返す。ペニスの根元まで込み上げた射精感を堪えていたが、それも限界に近付きつつあった。
「セナ……そろそろ……」
「もう堪えられそうにありませんか?」
「うん、限界……」
「この分なら、十分に精液が濃縮されたでしょう。どうぞ、最奥へ放って下さい。子宮に注ぎ込むイメージです」
「それは、検査の指示? それとも、セナがそうしてほしいの?」
「両方です」
淡々とした受け答えが、興奮を煽る。
緊張が解けると当時に、堰を切って大量の精液が溢れ出す。
"ごぽ……ぶぴゅるるるっ!"
"ぶぢゅ……びゅうぅぅ~~っ"
「……ぅん……ッ♡♡♡」
熱い迸りを子宮口に直接浴びながら、セナは反らした身体をくねらせた。尻肉が波打ち、大きく肩を揺らして、湿った息を吐く。私の下で白い肢体が不規則に痙攣するたびに肉穴がうねって締まり、さらなる射精を促してくる。一滴残らず注ぎきるために腰を突き出し続けながら、私は長い長い射精の快感に酔いしれた。
「検査、終了……ですね。お疲れ様でした」
振り向いたセナの瞳はオーガズムの余韻に潤み、頬が染まっている。本人曰く何度も達して、鉄面皮にもほんの僅かな綻びが生じていた。紅潮した頬に手を触れると、火照りを帯びた体温が伝わってきた。
* * * * *
「検査結果は、どう? 合格?」
「ええ。先生の生殖機能は問題ありません」
"ずる……ぬぽんっ"
ペニスを引き抜くと、栓を抜かれた膣穴から、白い粘液がとろっと零れ落ちてきた。挿入する前には気づかなかったが、セナはぐしょぐしょに愛液を垂れ流しにしており、内腿どころか膝までべったりと濡らしていた。結合部の真下ではおねしょでもしたみたいにシーツが色濃く濡れている。
「ではこれにて、検査は……と思いましたが」
「…………」
姿勢を変えて仰向けになったセナの裸体が、露になる。汗ばんで艶を立ち上らせる肌が、強烈な引力を放つ。二、三回分はまとめて吐き出した後だというのに、ペニスが持ち上がっていく。無表情なセナが、微かに唇の端を持ち上げた。
「再検査をご希望ですか?」
「その、セナは……?」
「願ったり叶ったりです。今度は正常位で、より濃密なスキンシップも交えましょう」
念のために検査をもう一度。
医療行為。
そうだ、これは医療行為なんだ。
そんな言い訳を口の中で繰り返す。
「先生、どうぞ」
股を広げて私を誘うセナに覆い被さる。
"ずぢゅんっ……"
彼女の体もきっと、一度の交合では不満だったのだろう。滑りに任せて一気に奥まで挿入すると、蕩けた蜜壺が甘えるように絡みついてきた。尿道の残り汁を啜るように吸い付かれる。
"ばちゅっ ばちゅっ ばちゅっ"
大きくストロークを取ってピストンすると、皿の上のプリンみたいにIカップが派手に揺れる。夢中で鷲掴みにして、掌に収まりきらないそれを揉みしだく。
「……っ……い……」
指の間からはみでた乳頭はいやらしく尖っている。関節で押し潰すように圧迫し、検査中指示された通りに、膣奥を亀頭で捏ねる。そうしてやると、尻を持ち上げ、白い喉を見せて、セナは堪えきれなくなった声を吐息に溶かす。
「先生、どうしてそんなに見つめるのですか?」
「いつも冷静なセナは、どこまで気持ちよくなったら乱れるのか、気になってね」
「もう十分に乱れています。お分かりになりませんか?」
ずちゅっ、ずちゅっと粘ついた音を立てながら、とろとろの膣穴を責める。腰を打ち付ける間に、コリコリになった乳首を吸い上げる。厚みのある尻がびくんと持ち上がり、膣奥のうねりが激しくなった。後背位で交わっている時には分からなかったが、正面から密着していると、吐息が荒くなっているのがより明瞭だった。
表情の変化は相変わらず乏しいが、汗を帯びた頬の紅潮は耳にまで及び、額に張り付いた前髪の下で、時折ぎゅっと眉根が寄っている。抱き合う肌もまた、熱を持って汗ばんでいた。セナなりに相当乱れているのだろう。数往復毎に絶頂して蠢く膣壁が、それを何よりも雄弁に語っていた。鉄のカーテンで覆われたセナの内面が、また少し分かるようになった気がする。
"どちゅ どちゅっ どぢゅ ぶぢゅっ"
「先生。もう検査項目はクリアされています。射精したくなったら、遠慮は無用です」
「い……いいの? さっきより吸い付きが凄くて、我慢できなくて……」
「ええ、お気遣いなく。好きなだけ私の奥へ射精してください」
遠慮なく、だの、お気遣いなく、だの言いながら、セナは両脚を私の腰の後ろに回してきた。キヴォトス人の例外に漏れず彼女の筋力も相当で、跳ねのけることなんて到底敵わない。蛇の交尾みたいに密着していると、射精感が急速に膨らんで、腰の奥で弾けた。
"どく、どくっ……ぶびゅっ!"
「…………っ♡♡」
"とぷ、とぷ……とくん……"
根元まで深く突き入れ、劣情を吐き捨てる。セナに両腕両脚で抱き締められながら、絶頂に身を震わせる。セナが漏らす熱っぽい吐息を耳元で浴びるたびに、どくどくと精液が溢れた。もうそれ以上奥まで入れないのに、腰が勝手に前へ進もうとして、子宮口をこじ開けんばかりになって、弾ける熱を夢中で注ぎ込んだ。
「……ふぅ……ふぅ……」
長い射精が終わった後も、ペニスはびくびくと痙攣を繰り返す。セナもオーガズムが持続しているようで、竿を包む膣壁全体のうねりが中々治まらない。
互いの息遣いが落ち着いても、私はセナと密着したまま抱き合い、汗ばんだ肌を重ね合っていた。
* * * * *
シーツを取り替え、汗を拭い、後始末をしている間も、頭の火照りが残る。
冷徹なまでに職務に忠実で、無表情な鉄面皮で無遠慮な氷室セナと、セックスしてしまった。検査という名目で一度だけならまだしも、二回戦までしてしまって。
複雑な感情を抱く私に対して、当のセナは淡々と後片付けを進めていた。股を拭い、下着を、制服を身に纏い、徐々に私のよく知る氷室セナに戻っていく。だけどクールな佇まいを見ると、私の脳裏には、ほんの一度や二度しか発されなかった、0.1秒にも満たない艶めいた声がよぎってしまう。微かに乱れた官能的な吐息と、汗ばんだ肌の匂いも。
「それで、先生。次回の検査日程はどうしますか?」
「え!?」
思わず素っ頓狂な声をあげる私に、セナは小首を傾げている。
「現時点での先生の身体検査は全項目が終了しましたが、性機能のチェックは定期的に行う必要があると判断しました」
「そ、そういうものなの?」
「そういうものです」
「……検査を無しにするっていうのは」
「容認できかねます」
有無を言わせぬ断定口調。きっと拒否すれば、要観察患者として幽閉されてしまうのだろう。
「先生さえよろしければ、私は毎日でも歓迎です。先生と肌を重ね合う時間には確かな甘い充足感があり、幸福が胸の内を満たすということが、今日ハッキリ分かりましたので」
「そ、そうストレートに言われると……」
「物事を伝えるにあたっては、正確性と確実性が重要視されるべきと考えております」
「それは、確かに、そうなんだけど……」
「では、そういうことで。次回もよろしくお願いします」
無表情の美人が、口角を上げた。
終わり
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