8歳で不治の病に侵され、薬の治験や新しい治療法を試されながら6年。
当初2年と言われた余命は3倍に伸びたけれど、そこまでだった。
結局将来やりたかった事は何も出来なかったなぁ、にしても死んでも意識って残るんだ。
ていうかこれってもしかしてラノベによくある神様転生の前振り?
そう、病室で死んだはずの僕は何故か真っ白い空間に浮かんでいた。
そして僕はこういう状況をよく知っている、これはきっとラノベやweb小説で言うところの神様転生ってヤツだ。
理由は様々だけど、死んだあとに神様に出会って異世界に転生ーとか転移ーとかして現代知識で無双したり貰った能力で色々活躍する話。
入院してベッドの上から殆ど動けなくなった僕はその手の本を読み漁っていたから間違いない。
……ただ、事故死した訳でもないし何かを成し遂げた訳でもない僕に何故?
「それはお主の投薬や治療経過で得られたデータを元に特効薬が開発されたからじゃよ」
神様キター!?
突如僕の脳内に語り掛けてくる声!
これは間違いなく神様転生!
浮かれた僕の前に現れたのは白いローブに木の杖を持ったご老人、いかにも私は神様ですと言わんばかりのお姿。
「……最近の若いもんは察しが良いのぉ。
簡単に説明するとお主のおかげで完成した薬によって同じ病を得た少年が助かることになる。
そしてその少年は将来放射能除去装置を開発し人類の救世主とも呼べる存在になるんじゃ」
つまり僕の犠牲(?)は無駄にならなかった、と。
まあ薬を開発した製薬会社の社長が僕の父親で、僕は認知されていたとはいえ元愛人が産んで父親に押し付けた子だったから表向きはともかく内心邪魔な存在で実験に使うのに何のためらいもなかったんだろうけど。
普通ならどのくらい効果があるのか、どんな副作用があるかもはっきりしてない薬の治験なんてそう簡単に出来るものじゃないけど自分の子供、それも訳アリで死んでも惜しくない相手となればね……。
「うむ、世間で評価されたのは開発した製薬会社とその社員じゃが開発に必要なデータが揃ったのは紛れもなくお主の貢献じゃからな。
だからこそその貢献を讃えお主を転生させてやろうという訳じゃ。
もし転生せずこの世界の輪廻転生の環へ戻るのであればそれもよし」
します、転生しますさせてください!
……でもどんな世界に転生することになるんです?
「まず2つの選択が可能じゃ。
お主がよく知っておるラノベの世界に今現在の作品知識にある程度の力を持って転生する。
もう一つはお主が全く知らぬ作品の世界にかなりの力を持って転生する。
与えられる力は物理、バランス、魔法の何れかを選んでもらうことになるかの」
そう言われて僕は少し考えてしまう。
原作知識を持って介入するのも楽しそうだし、原作という柵がない中で俺TUEEEが出来るのも楽しそうだ。
ただ、原作を知っているからこそ介入してバタフライエフェクトで本来の物語がどうなるか判らなくなるのも怖い気がする。
逆に原作を知らない世界ならあくまでもその世界に生まれた一人の人間として過ごす事が出来る、と思う。
一長一短の選択肢を与えられてしばし悩んだ結果、僕が選んだのは知らない作品に魔法の力を貰って転生する事だった。
「力を持たせるのは間違いないがの、使いこなせるかどうかはお主の努力次第じゃ。
最初から強い訳ではないが努力が確実な結果となる、そう考えるがよいぞ。
それ以外にも条件次第で様々な能力が目覚めるようにしておくのでな、頑張って生きるのじゃぞ」
はい、頑張ります!
あ、もし可能なら今度はちゃんとした親の元に生まれたいです神様。
神様の声が段々遠ざかっていく中、最後にそう希望を出しながら僕の意識はゆっくりと薄れていった――。