話の流れが出来上がっていてもアウトプットが上手くいかない、あると思いますorz
もしかしたら後で改訂するかも……。
なお途中の『』で囲まれた部分は主人公が日本語を使っています。
sideヒロ
ロキシー先生と思わぬ再会をしましたが、名前はともかく顔を完全に忘れられていたのはまぁ地味顔の宿命だと思う事にします。
それはさておき僕、リーゼさん、タルハンドさん、ロキシー先生で一緒に魔大陸に行くことになりますが、現状僕だけパーティに入る事が出来ません。
ロキシー先生をメインに組むとしてもBランクに上がる必要があるのが困りもの、現状Dランクの僕が全体として脚を引っ張る事になりかねないのを何とかしたいところです。
そんなことを話しつつ時間になるのを待ち、2階の会議室に行ったのですが。
とても、空気が悪いです……。
先に待機していた両親とロールズさんが入室した僕達を見た瞬間、母さんとロールズさんから喜びの感情が消えて険しい表情になりました。
「…………」
「…………」
ロールズさんがリーゼさんを見て渋い顔をするのは予測していましたが、まさか母さんまで同じような表情になるとは全く想定していませんでした。
「……ヒロが無事だった事は素直に嬉しいのだけど。
「ヒロ、その女に誑かされたのか?」
「お、おい。
セリアもロールズもどうしたんだ……?」
母さんもロールズさんもリーゼさんに対する敵愾心……というか嫌悪感に近いでしょうか、そんな感情を隠そうともしません。
おまけに母さんはまだ紹介もしていないのにリーゼさんをフルネームで呼びました。
父さんは二人の急変に理解が追いついていないようでおろおろしつつ二人とリーゼさんの間に視線を彷徨わせています。
「私は大森林出身で、あまり年齢に言及したくはないけど200歳を超えているわ。
エリナリーゼさん、これがどういう事かお判りよね?」
「わたくしの過去をご存知、という事ですわね」
「ええ、となれば私が我が子の隣にいる貴女をどう思うかも判る筈」
ああ、母さんはリーゼさんが過去にやらかした事やそれが原因となって大森林を追い出された事も知っていた……という事なんですね。
とはいえ今はその話は後回しにして貰わないといけません。
「……その話は後にしてもらって良いですか?
再会を喜ぶ前に……話が終わった後でも父さんと母さんが喜べるかは判らないですけど、僕から話さなきゃいけない事があるんです」
「おい、そりゃどういう事だ?
父さん達がお前との再会を喜べなくなるとでも?」
「その可能性が0じゃない……から。
それと、今から僕が話す事は荒唐無稽で妄想と思われても仕方ない事です。
ここにいる人の中で話を聞いて間違いなく事実だって理解出来るっていうか、しているのはリーゼさんだけでしょうから」
そう前置きして僕は両親、ロールズさん、タルハンドさん、ロキシー先生に別の世界で生まれ育った記憶があること、その前世で両親からも周囲の人からも愛されずに育ったこと、3歳頃から思い出した前世の記憶があること、死んでこの世界へ生まれ変わっても前世で愛されず仲良くなった人からも掌返しをされた記憶がちらついてどうしても人を信じきれなくなったこと、そしてもしかしたら本来の”僕”の記憶を上書きしてこの身体を乗っ取ってしまったかもしれないという事を伝えました。
「……そんな訳で、今の”僕”が父さんと母さんの間に生まれた”僕”と完全な同一人物だって断言出来ないんです。
4歳頃には記憶の殆どを取り戻してましたけど、前世みたいに両親から要らないもの扱いされるのが、自分達の本当の子供を返せって言われるのが怖くて今まで言う事が出来ませんでした。
ごめんなさい」
リーゼさんを除く全員がなんとも言いづらい表情で黙りこくっています。
まず前世の記憶があること、その前世がこの世界とは全く異なる世界であること、そして記憶を持ったまま生まれ変わった存在である僕。
常識的に考えればまず間違いなく異常者の戯言です。
「……ヒロ、ちょっとこっちに来なさい」
「え、あ、はい」
なんというか、怒りを抑えているといった感じの母さんに傍に来るよう言われました。
親子の縁切りも、本当の子供を返せという罵倒も覚悟して母さんの前に立った僕にかけられたのは。
「あなたは私とアレクの息子なの!
4歳の時に前世を思い出した?
だから何よ、あなたは何も変わっていない!
お願いだから自分が私達の本当の子供じゃないなんて今後一切言わないで!」
「そうだ、ヒロ、お前は俺達の子供でそれ以外の何者でもない!
だからそんな悲しい事を言うんじゃない!」
「父さん、母さん……」
泣いている父さんと母さんに抱きしめられ、かけられた言葉は僕の懸念を正面から否定するものでした。
怒っているのは本来の子供を乗っ取ってしまったかもしれない、という点ではなく僕自身がそういう疑いを持っていた事に対してでした。
両親に抱きしめられながらその事を伝えられ、僕は泣きながら二人の子供であることを改めて実感する事が出来たのです。
「えっと、お恥ずかしい姿をお見せしてしまいまして……」
「親子関係の確認なのじゃろ、恥ずかしい事などあるまいて」
落ち着いたところで同席している皆さんに謝罪したらタルハンドさんに諭されました。
……リーゼさん、ロールズさん、それに何故かロキシー先生は難しい顔をしていますが、リーゼさんとロールズさんに関しては親子関係の確認という言葉が刺さったのでしょう。
ロキシー先生の表情が硬い理由はちょっと判らないですけれど。
それはさておき、ロールズさんに謝罪しなければいけない事があります。
「さっきの話に関連するんですけど、ロールズさん。
……シルフィエットちゃんが虐められているのを知っていたのにどうしても他の人の関係に踏み込むことが出来なくて、結果として見捨てる事になってしまって申し訳ありませんでした」
「あ、ああ……。
さっきの話を聞いた限りじゃそりゃ仕方ない部分があるのは判る、判るんだがな……」
僕の謝罪を聞いたロールズさんの表情が険しくなりましたが、どうにも怒るに怒り切れないといった様子です。
過去のトラウマは理解出来るけれど、だからと言って結果として自分の娘を見捨てた事を許せるか……と言うと難しいのでしょう。
「……シルフィに再会したらその事を直接謝罪してくれ、今はそれでいい。
それ以上にだ、そいつがお前と一緒にいるのは何故だ?」
「ああ、それは私も早く教えて欲しいわね。
ヒロ、あなたはその女の悪評やら何やらを知っているの?」
ロールズさんの矛先が僕からリーゼさんに変わりました。
母さんも同じくリーゼさんの方を見ながら僕に問い質してきます。
「えっと、僕がリーゼさんと出会ったのは転移事件で飛ばされた直後です。
空中に飛ばされて落っこちて気絶した僕を助けてくれたのがリーゼさんだったんです」
そしてその場で一目惚れして告白したこと、リーゼさんの呪いとその影響のせいで断られたこと、魔眼を駆使して呪いをなんとかしようとしたこと、そして呪いの一部を書き換える事に成功したものの、その代償として右目や魔力総量の大半を失ったことを説明しました。
一目惚れして即座に告白した事を説明した時には父さんは大きく頷いて「流石俺の子だ!」と満面の笑みを浮かべ、母さんは「惚れた相手が悪過ぎるわ……」と肩を落としていました。
とはいえ呪いの事とその解呪に挑戦した結果として右目の魔眼や魔力総量を失った経緯についてはその場にいた全員が――既に知っていたタルハンドさん以外――驚くと同時に、魔術師としての将来を棒に振るような行為を「惚れた女性の為だから」で済ませた僕をどう評価していいか困っているようです。
そして悪評の原因となっている呪いの一部をなんとかした事、その結果リーゼさんから逆告白を受けて恋人同士になった、ということを聞いた母さんは。
「……エリナリーゼさん、貴女はこの子の好意を裏切る事はありませんね?」
色々と感情を抑えた低い声でリーゼさんにそう問いかけました。
大森林育ちでリーゼさんの過去の所業を知っている母さんからすればどうしても信用し切れない、というのが本音だったのでしょう。
「ええ、わたくしはヒロを最後の男にすると決めましたの。
ヒロは初めて出会ったわたくしの為に魔術師として大成するために必要な力まで犠牲にして助けてくれたのですわ、それなのにヒロの思いを裏切りなんてしたら本当の人でなしに堕ちてしまいますもの」
母さんの問いにそう断言するリーゼさん。
その言葉を聞いた母さんははぁ、とため息をつくと真正面からリーゼさんを見つめ。
「貴女の事を信頼します。
うちの子を、ヒロを宜しくお願いしますね」
「えっ、あっ、はい、それはもうお任せくださいまし」
そう言ってリーゼさんを抱きしめました。
突然の抱擁に驚き慌てる姿をその場にいる人達は微笑ましいものを見ている目付きになっていました。
たった一人を除いて。
「ふん、そいつの言葉なんて信用出来るか怪しいもんだ。
ヒロの目の届かないところでまた男を咥え込むに決まってる!」
「そんなことはありませんわ!」
「うるせぇ、アンタのせいで俺は、俺達は散々苦労してきたんだ!
アンタの子だって判っただけで白い目で見られて!」
それは当然と言うべきか、ロールズさんでした。
リーゼさんの息子さんで、そうであることを理由に結婚を反対され大森林を追い出された過去があるロールズさんからすれば自分の――リーゼさんの他の子達も含め――苦労の元となったリーゼさんが幸せになるのがどうしても認めがたいのでしょう。
とはいえ恐らくですがそれは感情的な反発であって実際にはロールズさんがリーゼさんをそこまで嫌っているとも思えません。
何故なら。
「……でもロールズさん、言うほどリーゼさんを嫌ってませんよね?
嫌ってたらリーゼさんからもらった名前を使い続けてるハズがないですし」
「!」
そう、僕が疑問に感じたのは名前でした。
「ロールズ」という名前はリーゼさんから与えられたもので、本当にリーゼさんが嫌いで仕方ないのならその名前を使い続ける理由がないんです。
大森林を出た時、ブエナ村に住み始めた時、過去と共に名前を捨てる機会はいくつかあったのですから。
「前世の僕は自分の名前の由来を知った時、未成年だと法律の関係もあって変えられないから早く大人になって名前を変えたいと心から思ってました。
笑っちゃいますよね、自分を捨てた男への嫌がらせの為だけに僕を産んで、わざわざ『フヨウ』なんて名前を付けて捨てた男に押し付けて。
『フヨウ』って前世の言葉ですけど、字によって意味合いが変わってくるんです、僕の『フヨウ』は
同じフヨウでも「芙蓉」だったら女の子に付ける名前として不思議ではないかもしれません。
でも僕に付けられたフヨウは不要、女はいらないものを男に押し付け押し付けられた男は文字通り僕を不要と断じつつ世間体の為だけに養育していた誰にとっても要らない存在。
まさに名は体を表す、の言葉通りでした。
「僕は形の上での両親からは名前も含めて欠片の愛情も貰えませんでした。
でもリーゼさんが子供や孫に注いだ愛情は本物で、ロールズさんもその事は薄々判っていたんじゃないですか?
だからリーゼさんから、母親から貰った名前を変える事はしなかった、僕はそう思ってます」
「う、うるせぇっ!
認められるかそんなこと!」
僕の言葉を聞いて狼狽えた様子のロールズさんはそう言いながら会議室を出て行ってしまいました。
……会議室は微妙な雰囲気に包まれてしまいました。
「……まあ、色々あったのは判った。
ひとまずロキシーさん達は今晩ブエナ村住人用の仮設住宅に泊まって欲しい」
「了解した。
エリナリーゼ、ロキシー、良いな?」
「判りました」
「了解ですわ」
結局微妙な雰囲気のまま解散と相成りました。
その日の夜、僕はロールズさんに割り当てられた家を訪ねていました。
再出発の前にどうしても確認しておきたい事があったからです。
「……ああ、やっぱり来たか。
俺の本音を聞きたいんだろう?」
「はい。
今のままだとリーゼさんがあまりにも可哀そうですから」
愛情を欠片も貰えなかった僕、愛情を注いでも理解してもらえなかったリーゼさん。
僕の方は前世の経験ですし今更どうしようもないですが、リーゼさんはまだ取り返しがつく筈です。
だからこそロールズさんの本音を聞き出したかったのです。
「ああ、癪だがお前さんの言った通りだよ。
頭じゃ理解してるんだ、あの人が自分の子供や孫に本気の愛情を持ってるって事は。
でなけりゃ自分の子や孫に何かあった事を知った時に素性を隠して手助けなんてする筈がないからな」
昼間とは打って変わって落ち着いた様子のロールズさん。
「だけどよ、今まで散々あの人の子だってだけで偏見の目で見られた上に実害もあったんだ。
理屈じゃ判っていても感情がどうしても納得出来ないのも事実なんだよ。
……とはいえ今のままじゃダメなのも判っちゃいる、判っちゃいるんだ。
だからよ、お前さんに頼みたいことがあるんだ――」
ロールズさんの頼みを快く引き受けた僕は仮の自宅に戻り、数カ月ぶりに両親と一緒に就寝しました。
sideエリナリーゼ
……久しぶりに自ら産んだ子供に会いましたわ。
場所と状況のおかげでいきなり罵倒されたりはしませんでしたけれど、嫌われている事を再確認させられるのは辛いことには変わりありません。
とはいえヒロの言葉であの子も、ロールズも何か思うところはあったようです。
まさかヒロの前世での名前があんな酷いものだったなんて。
「……親が初めて子に与える”個人”を示すために必要なもの、それが、名前」
わたくしが付けた名前を改名の機会があったにも関わらず未だに名乗っている、それはわたくしの愛情を頭の中では理解しているから。
ヒロがロールズに指摘した事は恐らく事実、だからこそ痛いところを突かれたあの子は逃げるように会議室を出て行ってしまったのでしょう。
いつか我が子達と判り合える日が来るのでしょうか?
そんなことを考えながらその日は眠りにつきました。
……久しぶりの一人寝で隣にヒロの温もりがない事を残念に思いつつ。
「昼過ぎに出発ですの?」
「ええ、冒険者ギルドと捜索団から依頼がありまして、その準備が昼頃までかかるそうです」
翌朝、改めて旅立ちを……と思っていましたらヒロからストップがかかりましたわ。
なんでもミリス大陸で発見・救助された人達を乗せる馬車をイーストポートまで運んで欲しいとの事。
「僕の冒険者ランクを上げる必要もあるだろうからと依頼って形になってます。
イーストポートで報酬も出るそうですし、運ぶっていうか実質移動用の貸し出しですね」
「ま、どんな理由があろうとワシらからすれば足が手に入ったという事じゃ」
「馬車があれば予定より早くイーストポートまで行けますから有難いですね」
そしてお昼過ぎになって馬車の用意が出来たと連絡がありましたわ。
ヒロのご両親と幾人かのブエナ村の人達が見送りに集まる中、わたくし達は馬車に乗り込みイーストポートへ旅立ちました。
……やはりあの子は、ロールズは見送りに来てはくれませんでした。
そう思っていたら。
「そうそう、リーゼさん。
ロールズさんと昨晩話し合ったんですけど。
”今はまだ面と向かって言えるほど心が整理し切れていない。
最短でも数年後だろうが次に会う時までには心の整理を付けておくつもりだ。
だからそれまでの間
だそうです」
「ろ、ロールズが本当にそう言ったんですの……?
わ、わたくしの事を本当にそう呼んだんですの……?」
「ええ、間違いなく。
それにほら、見送りの人達の方を見て下さい」
ヒロにそう言われ後ろを振り向くと、そこには先程までいなかった筈のロールズの姿がありましたわ。
もう数十mは離れてしまっていましたが、わたくしがあの子を見間違える筈がありません。
「ああ……ああっ!」
まだ面と向かっては言ってもらえないけれど、それでもあの子が、ロールズがわたくしの事を母親と認めてくれている。
その事を知らされたわたくしは感情を抑える事が出来ずヒロの胸に顔を預けて号泣してしまったのです――。
子や孫から罵倒され傷つくエリナリーゼさんの心を救いたいと色々話を捏ねた結果こうなりました。
これでようやく(?)シリアスさんが休憩modeに入るので次話からイチャorバカエロメインになっていく……ハズ?