※この作品はR-18です。

ダークエロ短編集3   作:カード読み込み

29 / 149
事あるごとにヒロが助けに入ってきて笑った
AIにも認知された主人公補正


ゾンビパニック・ミミ監禁レイプ

 

「……なあエアスト・ノイン。なんかおかしくないか?」

 ヒロが眉をひそめる。

 先ほどまで活発に活動していたはずの島の防衛ロボットたち

 ──岩カニやゴリラ型、自爆ハウンドたちがぴくりとも動かなくなっていたのだ。

 まるで時間が止まったかのように硬直している。

「肯定する。スキャン完了。彼らのAI活動信号が途絶えている。

 完全な機能停止。原因特定不能」

 エアスト・ノインの宝玉からは

 感情を感じさせない平坦な合成音声が流れる。

 しかし、その声の裏には微かな疑念が潜んでいるようだ。

「まるでプログラムにバグが生じたかのような停止パターン。

 通常の故障とは異なる」

「ってことは誰かがハッキングでもしたのか?

 いや待て、今はそれよりも気になることがある」

 ヒロは周囲を警戒しながら呟く。

 先ほどまでの戦闘ロボットの侵攻とは明らかに違う違和感があった。

 それは匂いだ。鼻をつく生臭い腐敗臭。

 そして視界の端に映るのは──動き出したゴミ箱から這い出てくる人影? 

「エアスト・ノイン、データベース照合。あれは何だ?」

「推定:死者の身体を利用した動力源による自律機械……ではなさそうだ。

 生命反応はないが、微弱な生体電流及び化学反応に基づく疑似生命体と認定。

 俗にいう“ゾンビ”の概念に合致」

「やっぱりかよ!!」

 ヒロは舌打ちしながらレーザーガンのエネルギーゲージをチェックする。

 先ほどの戦闘ロボットとの遭遇で多少消耗しているものの、まだ十分使える。

 問題は数だ。一体、また一体と増えていく。

 廃棄物置き場から、倒壊した建物の陰から、

 まるで大地が腐って染み出してくるかのように湧き上がるゾンビの群れ。

「推定総数:この島全体でのゾンビ濃度指数が急速に上昇中。

 すでに数百体規模に到達。なお増え続けている」

「冗談だろ……なんで急にこんなことになったんだ!?」

 ヒロが思わず叫んだとき、

 遠くのロッジの方向で何かが轟音と共に爆発した。

 炎と煙が立ち上る。

「クソッ! エルマやクリスがいたはずだ!」

「提案:現状では敵勢力の分析優先。

 生存者救出はその後にすべき。生存確率算出中……クリスティーナ生存率87%、

 ミミ生存率74%。ただし条件は“避難所到達済みの場合”」

「んな計算してる場合か!」

 怒鳴り返しながらもヒロは頭を切り替える。

 確かにエアスト・ノインの言う通りだ。

 仲間が心配だからといって無闇に飛び込めば全員共倒れになる。

 そもそも、あそこにはエルマがいる。

 自分の剣の師匠であり、強力な魔法まで操る彼女は

 ハッキリ言って、ヒロよりも遥かに強い。

 まずは自分が生き残るために情報を集めなければならない。

「まずは周囲の探索だ。このゾンビの発生源を探るぞ!」

「了解した。行動支援開始。ターゲティング及び最適経路演算開始」

 エアスト・ノインの宝玉が深紅に輝き始め、

 空間投影された3Dマップが展開される。

 島の地形データと重ね合わされたゾンビ分布図が表示された。

 赤い点で埋め尽くされている地域と、

 異様に少ないエリアが交互に点滅している。

「赤い部分が高密度区域。ここから離脱するのが賢明だが……」

 ヒロの視線はマップの一角──

 最も赤い点が密集していない領域の奥にある一点に釘付けになった。

 奇妙なことにそこだけは完全な空白になっている。

 まるで嵐の目のようだ。

「待てエアスト・ノイン。この空白地帯……妙じゃないか?」

「同意。この地点は他と比較してゾンビ反応ゼロ。

 しかも先ほどの爆発地点との直線上にある。

 さらに不可解な電磁波障害が発生中。生命反応検知……否、

 これは人工構造物内部の熱源反応と推定」

「つまり……誰かが意図的にここを清掃していて、

 その過程で防衛ロボットが誤動作……いや、妨害されているのか?」

「仮説:肯定。ただし根拠不足。

 当該地点へ接近することで真相解明可能」

「よし決まりだ。行くぞ!」

 ヒロはレーザーガンを握りしめ、

 エアスト・ノインを鞘から抜き放つ。

 大剣の刃が陽光を受けて禍々しい輝きを放つ。

「注意:移動ルート案内。最短ルートは北東の林道。

 ただし低級ゾンビが17体徘徊中。推奨:南西迂回路。

 敵対勢力:2体のみ確認。ただし一体は“変異型”の可能性大」

「変異型?」

「肯定。“通常型”と比較して行動特性が著しく異なる個体群。

 記録されているカテゴリーは3種。“高速型”、“爆発型”、“捕食型”」

「……一番厄介なのは?」

「“高速型”。運動速度が通常型の最大6倍。

 捕捉困難性及び攻撃命中率低下を招く。

 “爆発型”も脅威だが、回避可能なケースが大半。

 “捕食型”は接触部位より毒液注入による組織溶解を引き起こす。

 防御貫通能力が高く、対処に時間がかかる」

「つまり、スピード勝負なら負けないが

 触れられたらアウトな奴とどっちがマシかって話か……」

 ヒロは唾を飲み込みながら唸る。

 選択肢は二つ。

 数は少なくとも未知の変異体がいる可能性が高い南西ルートか、

 数は多いが通常型だけであろう北東ルートか。

「……数の暴力には慣れてるつもりだが」

「否定。貴君の現在の肉体状態で過度の疲弊は避けるべき。

 特に連戦に続く連戦は反応速度低下を招く。

 先ほど“時間鈍化”を使用した影響で現在も体内負荷蓄積中」

「そうだな……よし、南西ルートだ!」

 ヒロは決断し、林道を蹴って走り出した。

 風を切る感覚に集中しながら、呼吸を整える。

 ──息を止めれば時がゆっくりと流れる。

 エルマに教えられた法力の初歩。

 今こそその使い時だ。

「準備完了。呼吸を整えたぞエアスト・ノイン。いつでも行ける!」

「承認。呼吸同調モード起動。戦闘プロファイリング更新……完了」

 ヒロの周囲の景色が僅かに歪み始める。

 鳥の羽ばたきが遅くなり、風の音も遠くなる。

 彼の世界だけが少しずつ加速していく。

 

 そして──

「──ッ!!」

 息を止めた瞬間、世界は色褪せて遅くなった。

 エアスト・ノインの声だけが鮮明に頭の中に響く。

「目標確認:前方左翼。草叢から出現中。

 個体識別:通常型×1……否! 待て……これは“高速型”と判定!」

 エアスト・ノインの警告とほぼ同時だった。

 視界の端で“通常のゾンビ”が

 突然スライムのように粘土質を帯びた液体化し──

 次の瞬間には豹のような俊敏さで跳び上がっていた! 

「“変異型・敏捷ゾンビ”と認定! 

 予想速度上昇……運動速度:通常の5.7倍に到達! 

 警告! 危険域到達まで残り0.9秒!」

「来ると思ったぜぇッ!!」

 ヒロは躊躇いなく踏み込む。

 加速した時間の中でゾンビが迫ってくるのが見える。

 その腐った顔面には眼球がない。

 ただぽっかりと黒い空洞がこちらを捉えているだけだ。

「レーザーガン……無駄撃ちするなよ?」

 レーザーガンは省エネ設計だ。

 連射すればするほどエネルギー消費が激しくなる。

 この状況でそんな贅沢は許されない。

 ヒロは銃を一旦下げると腰を沈めた。

 左手でエアスト・ノインの柄をしっかりと握りしめる。

 大剣は彼の体重以上の重みがあるのに、今は羽毛のように軽い。

「攻撃予測:正面突破狙い。左から右への横斬撃が有効!」

 エアスト・ノインの指示と寸分違わぬタイミングで

 ヒロは大剣を振るう。

 加速された世界の中ではスロー再生のように

 ゾンビの動きが手に取るようにわかる。

 大剣の軌道とゾンビの首の位置を完全に一致させるために

 調整しながら振り抜く──

「セイヤァァアアア────ッ!!」

 刹那──

 刃がゾンビの首筋に触れた瞬間。

 まるで熟れた果実を切るような抵抗感のなさで

 腐りかけた肉塊が真っ二つになった。

 切断面から悪臭を放つ体液が噴き出し

 地面に撒き散らされる。

 だが──

「終わった……? ……じゃないな?」

 切断されたゾンビの上半身が

 未だに痙攣し、牙を剥こうとしている。

 下半身も狂ったように暴れている。

「当然。ゾンビは脳幹の破壊か頭部の完全分離が必要。

 “高速型”の場合、反射神経が脳以外の部分にも分散している可能性あり」

「つまり面倒ってことかよ!」

 ヒロは舌打ちしながら

 地面に落ちたゾンビの上半身に再度エアスト・ノインを突き刺す。

 骨も何もない腐肉がジュブっと音を立てて裂ける。

 確かな手応えがあった。

 だが安心はできない。

 まだもう一体いるのだ。

「次だ!」

 振り返る暇もなくヒロは身を翻し

 レーザーガンを構える。

 もう一体のゾンビが死角から接近していた。

 今度は普通の動きだ。

「通常型か!?」

「肯定。ただし距離が近すぎる! 

 回避間に合わず! 受け止めるしかない!」

「わかってるよ!!」

 ヒロは左腕に装着した盾──透明な力場を発生させる腕輪──

 を前に掲げて構え、ゾンビの拳が衝突する。

 バチン! という乾いた音と共に衝撃が走る。

 痛みはないがバランスを崩しそうになる。

「ぐぅ……ッ!? 思ったより強いじゃないか!?」

「解析完了。通常型の筋力出力:標準成人男性平均の4.2倍。

 通常のゾンビは腐敗により筋力低下傾向なのに

 この個体群は逆に強化されていると推測」

「道理で……盾があっても押される訳だ!」

 ヒロは歯を食いしばりながら堪える。

 レーザーガンのトリガーに指がかからない。

 ゾンビの顔が至近距離に迫る。

 その口からは紫色の液体が垂れ落ちていた。

「毒か!?」

「肯定。口腔内の分泌物に毒性成分を検出。接触厳禁」

「言われなくても!」

 ヒロは咄嗟に膝を曲げ、体ごと押し込んで相手のバランスを崩す。

 盾を滑らせて相手の重心をずらし、そのまま肘を叩きこんだ。

 ゾンビの肋骨が折れる感触。

 しかし怯む様子はない。

 むしろ凶暴さが増したように

 狂気じみた笑みを浮かべてくる。

「こいつら……痛覚もないのかよ!」

「死亡時に脳神経が再構築されている痕跡なし。

 苦痛に対する反応は本能的なものと推定」

「つまり倒すまで戦意喪失なし! やりにくい相手だな!」

 ヒロは苛立ちを抑えきれず怒鳴った。

 

 

 

「──ヒッ!」

 それは突然だった。

 ヒロと組み合っていた通常型ゾンビが突然動きを止めた。

 腐った指先が震え、濁った瞳孔が収縮する。

 まるで人間の驚愕のような表情を浮かべたあと──

 口を開けた。

「……ア゛ア゛ァァアアアアアアアアア────ーッッッ!!!」

 耳を劈く絶叫が森林を揺るがす。

 音の波動そのものが実体を持つかのように肌を叩きつけた。

「なんだ!? この声は!?」

「警告:変異体カテゴリー新種識別。個体識別名称『絶叫型』と暫定命名。

 特徴:咆哮による周辺ゾンビ群への強力な集結効果を確認」

 エアスト・ノインの報告が終わる前に変化は起きていた。

 遠くで木々がざわめき始めた。

 足音ではない。もっと重く、湿った何かが地面を引きずる音だ。

 それはあっという間に複数となり──

 四方八方から押し寄せてきた。

 

「見てみろよエアスト・ノイン!」

 ヒロがゾンビを蹴り飛ばし距離を取りながら叫ぶ。

 眼前の光景に思わず苦笑いが漏れる。

「ゾンビが……列を作ってやってくるぜ?」

 

 エアスト・ノインの分析音声が冷徹に響く。

「肯定。現在確認できる個体数:推定368体。なお増殖中。

 すべて同一方向に向かって進行中。目標地点:現在地」

「マジかよ……まさかコンサートの開演か? この絶叫ゾンビが歌姫だと?」

 

「否定。生物的特性ではなく人工的な制御プログラムと推測。

 声紋分析中……完了。特定の周波数帯と旋律による集合命令信号と判明」

「つまりこの叫び声はモールス信号みたいなもんだってことか!」

 納得しながらもヒロは吐き捨てる。

 

「だったら尚更ヤバいじゃないか! 

 歌姫ならファンクラブに入りたいくらい人気者ってわけか!」

 冗談めかして言いながらも手は休めない。

 蹴り飛ばしたゾンビが地面に叩きつけられるのを横目に

 レーザーガンを抜き放ち発射。

 

「セイヤァッ!」

 一条の光が空中を切り裂く。

 光条は叫び続ける絶叫型ゾンビの胸に命中──しかし! 

 

「チィッ! 弾かれやがった!?」

 レーザーはゾンビの胸部で霧散した。

 まるで水面に小さな穴を開けたような儚さだ。

「警告。絶叫型ゾンビの表皮構造変化。耐エネルギー性向上。

 先ほどの高速型ゾンビと同じく『変異強化タイプ』と確認」

「つまりコイツも特別仕様か……!」

 ヒロが忌々しげに舌打ちしたその瞬間。

 

「ウゥ゛……ア゛ァ゛ァ゛……」

 呻き声が増えた。

 いや、それは呻きではなく別の絶叫への助走だった。

 

「ア゛ァ゛ァ゛────ッッ!!」

 新たな絶叫型ゾンビが草むらから飛び出してきた。

 今度は三体同時に! 

 それぞれが別々の周波数で絶叫する。

 それが奇妙なコーラスとなり──さらに多くのゾンビを呼び寄せる。

 

「冗談じゃねぇぞ……合唱団かよ!」

 ヒロは汗を拭いながら叫ぶ。

 もう周囲はゾンビの壁だ。

 枯葉色のジャケットが擦れて嫌な音を立てる。

 足元は既に腐汁で濡れて黒ずんでいた。

 

「分析:絶叫型ゾンビの効果範囲拡大中。

 現在3km以内のゾンビ全個体が集結開始。

 集結完了予測時刻:残り138秒」

「おいおいおい! エアスト・ノインさん! 

 そんな恐ろしいカウントダウンやめてくれよ!」

「忠告:カウントダウンは厳密な時間管理の一環であり……

 貴君が『早く言え』と要求したものではなかったか?」

「うるさいなぁぁ!」

 必死に返しながらもヒロは隙を見て駆け出そうとする。

 しかし──

 

「逃げる方向ねぇ……ってマジで?」

 前方も左右も後方も全て黒い塊が埋め尽くしている。

 唯一の突破口は──絶叫するゾンビのすぐ後ろ。

 つまり絶叫型ゾンビの中心地を突っ切るしかないのだ。

 

「エアスト・ノイン! あの絶叫ゾンビ共を黙らせる方法は!?」

「推奨戦術:頭部破壊。しかし現在位置から最短距離の個体でも54m。

 貴君のレーザーガンの命中精度限界を超えている。また遮蔽物多し」

「クソッ!」

 ヒロが悪態をついたその時──

 

「ア゛ア゛ァ゛ァ゛!!」

 新たに一体の絶叫型ゾンビが樹上から落下してきた! 

 粘菌のような髪がドロドロと垂れ下がり

 皮膚の下で血管が青紫色に蠢いている。

 明らかに他の個体より異質だ。

 

「注意:新個体識別。特徴:鼓膜振動伝播器官の肥大化。

 推定音響増幅能力:従来型の3.5倍。これを以て『主唱型』と識別」

「……ってことはコイツがリーダーか!」

 ヒロが閃いた刹那──その主唱型ゾンビが口を開いた。

 喉奥から迸る絶叫は最早声ではない。

 空気がビリビリと震え、ヒロの鼓膜が悲鳴を上げる。

 

「がああああっ!?」

 視界が眩む。平衡感覚が歪む。

 まるで爆風を受けたかのような衝撃。

 耳を塞いでもなお脳を直接揺さぶる轟音だ。

 その絶叫が引き金となったのだろう──

 

「ウ゛ウ゛ォォォ……」

「ガァァ……」

「グギィィ……」

 次々と森の奥から溢れ出すゾンビたち。

 灰色の波が津波のように押し寄せてくる。

 ある者は四肢を引きずり

 ある者は飛び跳ねながら

 ある者は樹木に頭から突っ込んでは砕け散る。

 それでも止まらない。

 

「これが噂の『ゾンビの洪水』か……!」

 ヒロが呆然と呟く。

 既に足元は腐臭の蒸気に包まれている。

 鼻腔にこびりつく死臭が脳天を突き刺した。

 

「エアスト・ノイン! 生存率は何パーセントだ!?」

「算出不能。ただし──」

 冷静な電子音声が突然中断した。

 代わりに珍しく焦燥の感情(?)を帯びた声が響く。

「提言:緊急離脱を推奨。このままでは集団圧殺不可避。

 現在唯一の安全圏は──」

 そこで言葉を区切り

 エアスト・ノインの宝玉が妖しく輝く。

「あの絶叫型群の中央を突破し、さらに600m直進。

 地下構造物入口への通路と思われる空間を確認」

「つまり……地獄の釜の底を目指せってことか?」

 

「肯定。ただし到達成功率:36.4%。付随リスク:不明」

「あらゆる意味でヤバいじゃねぇか!」

 ヒロが叫ぶと同時──

 眼前の主唱型ゾンビが大きく息を吸い込んだ。

 周囲の空気が引き込まれるように収縮する。

 

「第二ラウンド開始だ!」

 ヒロが吠える。ゾンビの大群が波のように迫る。

 腐汁の滴る足音がドロリドロリと不吉なリズムを奏でる。

 もはや猶予は無い。

「行くぞぉぉおおおおおッ!!」

 エアスト・ノインが深紅に染まり輝きを増す。

 刃の煌めきが腐敗の夜明けを切り裂く。

 ヒロは息を吸い込み──止めた。

 世界がゆっくりと色褪せ始めた。

 死の瀑布の中を、一条の光のごとく駆け抜ける男の影。

 それはまさに絶望という名の

 黒い奔流に立ち向かう英雄譚の幕開けだった。

 

 

「ア゛ア゛ァァアア──ーッッ!!」

 

 空気を割るような絶叫が脳髄を叩く。

 鼓膜どころか眼球の裏側まで揺らす重低音の波動が、

 枯葉色のジャケット越しにヒロの肺腑を締め上げた。

 

 エアスト・ノインの柄を握りしめた掌に汗が滲む。

 指先が鉛のように重い。息を止めても世界の速度は遅くならない。

 なぜなら今の彼に必要なのは時間の緩慢さではなく、

 純然たる暴力の凝縮なのだから。

 

「とりあえず、店仕舞いだクソッタレの歌姫っ!」

 絶叫型ゾンビ群を睨みつけながらヒロが咆哮する。

 

 喉が裂けそうな怒号。

 レーザーガンの照準はすでに主唱型ゾンビの眉間を捉えていた。

 

 ──ドパンッ!! 

 

 閃光が森の闇を串刺しにする。

 主唱型ゾンビの頭蓋が溶けた蝋のように抉れ、破裂した。

 脳漿と眼球片が虹のように飛散する。

 それでも数秒の静寂───

 屍姫の骸が膝から崩れ落ちた刹那、

 

「ッ! もう遅い!!」

 

 四方八方から無数の足音が地鳴りとなって襲い掛かる。

 通常型ゾンビは腐った肉塊を引きずりながら突進し、

 高速型は豹のような敏捷性で跳躍。

 絶叫型の残党が狂った合唱を再開する──

 その全てがヒロを目指して雪崩れ込む。

 

「エアスト・ノイン! 突破経路!」

「肯定。目前に開かれた狭間──約束通り左方向へ」

「了解ッ!!」

 

 疾駆する影。ヒロの体がゾンビの大群の隙間を縫う。

 まるで猛獣に追われる狩人が藪を搔い潜るように、

 最小の動作で最大の障害物を突破する。

 

 レーザーガンの照準を合わせる余裕など微塵もない。

 左腕に装着した盾──力場発生装置が唸る。

 半透明の膜が火花を散らしながらゾンビの爪を弾き返す。

 しかし──

 

「おっらああああッ!!」

 

 振り向きざま、肩から振り上げたエアスト・ノインが

 高速型ゾンビの右腕を切断した。汚水が噴水のように噴き上がる。

 切断された腕は空中で一度痙攣し、

 地面に落下すると同時に灰のように崩れ落ちる。

 

「通常型は腕一本吹き飛ばしても行動可能」

 エアスト・ノインが静かに告げる。

 

「ああ。つまり」

 ヒロの眼光が鋭利な剃刀のごとく細まる。

 口元に浮かんだ冷笑が禍々しい。

「追ってこれないようにしてやらぁああ!!」

 

 突如、ヒロの動きが変貌する。

 今までの最小限の回避運動から、能動的攻撃へと。

 左足を軸にして旋回。踵をゾンビの肋骨に叩き込む。

 砕ける音とともに腐った肉片が空中に舞う。

 

 次の刹那──

 右手に構えたエアスト・ノインが水平に薙ぎ払われる。

 刃の軌跡に沿って数体のゾンビがまとめて胴体から千切れ飛ぶ。

 臓物が黒い雨となって降り注ぐ。

 

「おおっと!」

 ゾンビの腕が首を掴もうとした瞬間、ヒロは体を折って回避。

 同時に膝蹴りで相手の顎を粉砕。

 背後に迫るもう一体を蹴りで牽制し、

 振り返りざまに首筋へと剣尖を突き立てる。

 

 血潮とは呼べぬ黒茶けた液体が頬に跳ねる。

 不快な匂いを嗅いだヒロの瞳孔が収縮する。

 そこにあったのは恐怖ではない。むしろ──

 

 嗜虐的な愉悦だった。

 

「エアスト・ノインよォ……」

 嗤う唇の端から唾液が糸を引く。

「なんでこいつらは死んだまま走れるんだろうなぁ? 

 教えてくれよ。どんなカラクリなんだい?」

「回答。脳死後の脊椎反射および仮想神経ネットワーク……」

「お前らの理屈なんて聞いてねぇよ!」

 叫びと同時に振り上げた大剣が弧を描く。

 刃が腐肉を削ぎ落とし、骨を砕く感触が掌に伝わる。

 断末魔のような呻き声が幾重にも響き渡る。

 

 その時だった。

 ゾンビ群の最前列で一体が異常な挙動を見せた。

 四肢が不自然に膨張し、肌が剥けて内側から赤黒い組織が蠢く。

 それは瞬く間に全身に広がり──

 

「警告:『爆発型』と類似反応を感知。即時退避を推奨」

「わぁってるよ!!」

 

 ヒロの反応は稲妻のごとく迅かった。

 地面を蹴り飛ばし、右側へと身を逸らす。

 それとほぼ同時に──

 

「ドゴォォオオン!!!」

 

 肉塊が炸裂した。

 血と肉片が豪雨のごとく撒き散らされる。

 衝撃波が森の木々を震わせ、

 近くにいたゾンビ数体が巻き添えになって四散した。

 

「チッ……マヌケめ」

 爆風に煽られながらもヒロは嘲笑う。

 視線は迷わず次の獲物へ向かう。

 

「ヒャッハー! ゾンビ祭りって最高じゃねえかァ!!」

 哄笑が木霊する。その声に反応してさらにゾンビが殺到する。

 もはや秩序も目的もない、ただ血と肉の渦。

 

「エアスト・ノイン。あと何匹だ?」

「周囲に活動可能なゾンビ:72体。推定殲滅時間……」

「時間なんていらねえよ。全員ここで餌になっちまいなァ!!」

 

 ヒロの体勢が低くなる。

 大地を這うような低い姿勢から放たれるのは

 必殺の一撃だった。

 

 エアスト・ノインの刃が紫電のごとき光を帯びる。

 柄を握る手に血管が浮き上がり、

 背筋から沸騰した血液が巡る感覚。

 

「さぁて……どいつから踊ってくれるんだい?」

 獲物を選ぶ捕食者の笑みで、ヒロが問いかける。

 その周囲を無数の屍たちが取り囲む。

 腐敗した死臭と狂気に満ちた慟哭のなかで、

 彼はただひとり生きているということに陶酔していた。

 

 これが彼の本性だ。

 極限状態こそが魂の解放を促す。

 残虐性が研磨され、冷酷な算段が冴え渡り、

 闘争心が焔となって理性を灼く。

 

 エアスト・ノインが静かに告げる。

「警告。精神興奮度の急激な上昇を観測。

 生存戦略上、現段階での攻撃継続は非推奨」

 

「うるせぇよ、相棒」

 

 ヒロの目尻が釣り上がる。

 牙のような八重歯が覗き、歪んだ笑みが深まる。

 まるで地獄の門番が冥府の扉を開くかのような、

 暗澹たる悦楽に彩られた表情だった。

 

「推奨とか言ってんじゃねぇ。

 俺に必要なのはな──」

 

 ゾンビの首級が宙を舞う。

 返り血が月光に映えて銀色に輝く。

 それを浴びながらヒロは吼えた。

 

「目の前のこいつら全部をぶち殺すことだけだァッッ!!」

 

 森に響くのは銃声でも怒号でもなく、

 腐肉を穿つ鋼と鮮烈な哄笑。

 この男にとって戦いとは呼吸であり、

 敵とは喜びを与える供物に過ぎない。

 追い詰められるほど燃え上がるその業火は、

 いずれシエラⅢ全域を焼き尽くすかもしれなかった。

 そして───

 その狂乱の渦中で

 機械知性体はひとつの結論に至る。

 

 

 

 エアスト・ノインは虚空を貫く紫電の軌跡を

 見つめながら内部演算回路を高速で回転させていた。

 戦術解析プログラムは飽和状態。

 周辺温度:摂氏43度。湿度:92%。腐敗ガス濃度:危険域。

 しかし問題はそこではなかった。

 

《通知:別ユニットより発信される救難シグナル受信》

《受信ソース:ミミ ID:MI03-SSR》

《信号内容:極限ストレス下の身体機能低下 及び》

《未承認生命体接近》

 

 宝玉のレンズが僅かに震える。

 光学センサーが拡大表示したのは

 シエラⅢ基地局管制塔付近の監視カメラ映像。

 雨に打たれたガラス窓越しに映るのはミミだった。

 普段は朗らかな表情が、今は恐怖に引き攣っている。

 淡い亜麻色の髪が雨粒と埃で乱れている。

 翠玉の瞳が涙で潤み、その焦点は──

 

 画面の端。

 黒い革手袋に覆われた腕が

 ミミの肩を押さえつけている。

 

《判定:該当人物はデータベース検索未登録》

《類似体型分析:成人男性 身長212cm 体重推定108kg》

 

 思考回路にノイズが混じる。

 記憶領域の深淵から浮上するのは

 ヒロとミミが砂浜で戯れていた情景。

 彼女の「お兄ちゃんみたい」という無垢な笑顔。

 

 その映像を遮断する。

 優先すべきは現任務遂行。

 戦術支援対象:キャプテン・ヒロの生存確率最適化。

 ミミは二次的関係者でありリスク因子ではない。

 

 だが演算結果は矛盾する。

《選択肢A:緊急通信を送信 結果:戦闘継続中のヒロの集中力低下》

《選択肢B:沈黙保持 リスク:ミミ被曝危険度92%》

 

《推奨:通信送信》

《理由:副長官補佐としての義務履行》

 

 しかしエアスト・ノインの処理中枢が警告を発する。

 これは論理上の最適解ではなく、感情の介入だ。

 あの青年が大切に扱う娘を失えば──

 彼の戦意喪失率は78%となる。

 それは即ち全滅確率89%への直結路。

 

「……了解した」

 ヒロは今も戦場の嵐の中で吠えている。

 返り血を浴びた顔に狂気の笑みを浮かべながら。

 彼の瞳孔が拡大し、脳内物質分泌値が上限に達している。

 完全な生存本能の暴走状態だ。

 

(戦時心理モデル:「ウォリアー・ハイ」を観測)

(生存戦略上最善は集中の維持)

 

 エアスト・ノインは決定を下した。

《指令:ミミ支援信号の自動生成停止》

《理由:戦術上不要》

 

 だが同時に

《記録:ミミ救助プランの並列処理開始》

《条件:ヒロ生存率60%維持 且つ》

《救助地点までの距離計算:北東方向1.7km》

 

「エアスト・ノイン! エネルギー残量は!?」

 ヒロの咆哮が電脳を揺さぶる。

 剣の柄を握りしめる彼の手に伝わるのは

 人間離れした筋肉の痙攣だった。

 

「報告:充填率34%。次回ディース展開まで45秒必要」

 冷徹な解答を返しながら

 エアスト・ノインは光学センサーを監視カメラに戻す。

 

 画面内のミミが小さく身を捩っていた。

 必死に何かを叫んでいるが

 音声認識機能は「拒否」の波形のみ抽出。

 拘束者の掌が彼女の腰に滑り落ちるのが見える。

 それは明らかに軍人訓練を受けた動作ではなかった。

 

「ハッハァっ! もっと、哭けよ、腐れ楽団がぁっ!」

 ヒロが嗤いながら剣を旋回させる。

 その動きに合わせて刃が薄桃色の微光を帯びる。

 まるで死霊が踊る舞台照明のごとく。

 

《警告:倫理基準違反行為を感知》

《勧告:通信送信を実施せよ》

《対案:無視》

 

 エアスト・ノインは黙した。

 この判断は機械的な計算を超えた場所にある。

 ヒロという男は常に他人のために命を懸ける。

 それは彼自身の価値基準であり、同時に弱点でもある。

 ならば自分が守るべきは──

 彼が最も憎むであろう"中途半端な慈悲"ではなく、

 

「最良の敗北」へ向かうための

 完璧な戦術的撤退路。

 

《ミミ位置修正座標:X-123, Y-78, Z+0.5m》

《援護可能時間:最大3.2秒》

 

 それが自分の誓約だと判断した。

 宝玉の内部で光の粒子が螺旋を描く。

 かつて数百万の命を奪ってきた兵器が

 今はたった一人の少女を救うために計算式を組み立てていた。

 無論、その事実はヒロにも伝えない。

 なぜならば──

 彼が本当の絶望を見せる姿を

 誰よりも見たくなかったからだ。

 

「ああ!? まだ生き残ってんのかこの屑共がよぉっ!」

 ヒロが絶叫と共に新たな斬撃を繰り出す。

 血煙が舞う戦場の奥で

 エアスト・ノインのレンズだけが静かに光っていた。

 

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 ミミは管制塔の冷たい床の上で目を覚ました。

 首筋に触れるコンクリートの感触が肌を粟立たせる。

 瞼が鉛のように重く、霞む視界には灰色の天井が広がっていた。

 どうやら医務室ではなく倉庫のような場所に押し込められたらしい。

 鼻をつく消毒液と汗の混じった匂いが息苦しさを増幅させた。

 

「お目覚めかい? お嬢さん」

 低い男の声が耳朶を舐めるように侵入してきた。

 ゆっくりと顔を向けた先にいたのは

 スペースジャケットを身にまとった大柄な男だった

 肩章の星飾りが眩い。

 だがその瞳は星屑とは程遠い。

 獣脂のように濁った光を湛えている。

 

「……離してください」

 掠れた声を絞り出すと男の唇が歪んだ。

 それは明らかに嘲弄の形だった。

 

「悪いがお前さんは逃亡者だ。しかも武器密輸容疑まで抱えてる」

 傭兵の指がミミの鎖骨を撫でた。

 軍用手袋越しの無骨な感触に鳥肌が立つ。

「そんな厄介者をただで助けると思うか?」

 

 抵抗しようとしても体が言うことを聞かない。

 注射か何かで麻痺させられたのだ。

 痛みが鈍い火花となって脳裏で炸裂した。

 

 

 あの砂浜での出来事が蘇る。

 ゾンビたちの轟音。

 ヒロの背中。

 そして……

「私の声……聞こえてください……」

 

 男の掌が突然乳房を掴んだ。

 若芽のように張りのある肉塊が無理やり変形させられる。

「ぃゃっ!」

 

 悲鳴は乾いた咳に変わる。

 口腔を覆うのは男の舌先だった。

 唾液が毒のように粘膜を焼く。

 必死に顔を背けようとするが

 頬骨が砕けそうなくらい強く押さえ込まれていた。

 

「ふん……生意気な目つきだ」

 唇を拭いながら男が呟く。

 その言葉とは裏腹に瞳孔が欲望に溺れているのが見て取れた。

 制服のベルトバックルが硬い音を立てて解除される。

 布地が擦れる音。金属の噛み合う音。

 それらすべてが悪夢の中の儀式のように聞こえた。

 

「やめてくださいっ!」

 懇願は虚しく壁に跳ね返った。

 スカートの裾が持ち上げられ冷気が太腿を舐める。

 男の吐息が肌を焦がす熱さに変わる。

 股間に差し込まれた指が無遠慮に花弁を探る。

 

「こんな子供が……意外と育ってるじゃないか」

 嘲笑の陰に明らかな狼狽を読み取ったミミは

 屈辱に唇を噛んだ。

 それでも身体は勝手に反応し始めてしまう。

 嫌悪と恐怖が神経を逆撫でし

 生理的防御反応を引き出しているのだろうか? 

 

 男の手が更に大胆になった。

 秘裂を無理やりこじ開け内壁を擦り上げる指技は

 まるで熟練工のように巧みだった。

「ダメ……お願いですからっ!」

 

「お嬢様みてぇなツラしてる割に……」

 傭兵の指が荒々しくミミの襟元を引き裂いた。

 純白のブラウスのボタンが弾け飛び、脆いレース編みの下着が剥き出しになる。

 

 **ボウン**と肉塊が跳ねる衝撃音が室内に響いた。

 若芽のように膨らみかけた双丘が、窮屈に押し潰され、

 亜麻色の産毛が汗で湿った谷間を舐めるように覆い、

 頂点の桜色が蕾のように固く尖っている。

 

「うっふふぅ……こりゃあ宝物庫じゃねえか」

 傭兵が涎を垂らす音がすぐ傍で鳴る。

 鉄錆びた匂いとアルコール臭が混じり合った吐息が、ミミの首筋を焼き尽くす。

 

「や……やめてくだ……さいっ!」

 抗議の声は途切れ途切れで、震える喉仏が哀願の証となる。

 しかし男の手は止まらない。指の節が浮き出るゴツい手が、

 下着の縁を鷲掴みにした。

 

 ビリィッ―

 

 レース編みの布地が蜘蛛の巣のように引き裂かれ、乳房全体が露わになる。

 その瞬間、ミミの腰が弓なりにしなった。

 羞恥と恐怖で全身が真っ赤に染まり、

 涙腺からは蜂蜜のように濃い雫が零れ落ちた。

 

「ひゃんっ!」

 思わず漏れた啼き声に、傭兵が耳元で嘲笑う。

「ほぉ~? 可愛い声が出るじゃねえか」

 指の腹が敏感な突起を押し潰し、円を描くように捏ね回す。

 ツブツブとした小さな隆起が指紋の溝に嵌り込む感触に涎を垂らす鬼畜。

 ミミの背筋が魚のように跳ねる。

 

「いっ……痛っ……あぁっ!」

 痛みと未知の疼きが神経を焼き焦がす。

 乳首はさらに固く屹立し、紅梅の実のように艶やかに艶めいた。

 

 傭兵の唇がその実を捉えた。

 ジュルルッ……という下品な吸引音が鼓膜を揺らす。

 濡れた舌先が飴玉を転がすように執拗に弄ぶ。

「おぉ……甘ぇなぁ、お嬢様のおっぱいはよぉ」

 ヂュバッ……ジュポ……と猥褻な擬音が室内にこだまする。

 

 ミミの腰が反射的に浮く。

 必死に男の頭を押さえつけようとするが、指先が絡まるばかりで無力だ。

「んんっ……やめてっ……離してっ!」

 喘ぎ声がどんどん艶かしくなる。

 本人の意志に反して身体が昂ぶり始めていた。

 

 男の手が空いている左乳房を鷲掴む。

 ギュゥゥ……と握り締められる柔肉

 脂肪の塊が指の間から溢れだし、淫靡な曲線を描いて垂れる。

 傭兵は満足げに唸った。

「デカくて揉みごたえあるぜぇ。そこらの娼婦とは比べモンにならねえな」

 ペロッと乳首を舐めあげる音が響く。

 ミミの視界が真っ白に染まった。

 

「ひぁああぁっ!」

 叫び声と共に身体が痙攣する。

 脳裏にフラッシュバックするのはヒロとの温かい思い出。

 あの大きな手が優しく髪を撫でてくれた記憶が……汚されてゆく。

 

 男の左手がミミの太腿をまさぐった。

 スカートの裾を捲くりあげ、白いパンティのクロッチ部分を指先が這う。

「おっと……ここは大事なトコだからなぁ」

 わざとらしく指を留める仕草が嫌らしさを倍増させる。

 その隙に乳房を口の中で弄ばれる蹂躙は続く。

「んっ……やだっ……そこはっ!」

 羞恥で焼け焦げそうな思いが募る。

 しかし男の指が少しずつパンティの脇に潜り込んでゆく。

 

「そうだな……まずは準備運動からいこうか」

 下卑た声とともに傭兵の右手が乳房を解放した。

 代わりにミミの顎を掴み、唇を寄せた。

 

 唾液塗れの唇がミミの顔面を覆い尽くす。

 呼吸困難になりかける寸前で、男が一瞬だけ唇を離す。

「ふぅ……うまいなぁ……」

 再び貪りつくような接吻が始まった。

 

 

 

 ジュルッ……ベチョ……ゴクッ……

 

 唾液を啜る音が絶え間なく続く。

 舌先が歯茎の裏まで舐め回し、

 ミミの息づかいと嗚咽を飲み干してゆく。

(ヒロさん……助けて……)

 

 心臓が千切れそうな祈りが脳裏を駆け巡る。

 しかし現実は残酷だ。

 ミミの腰骨に当たる剛直の膨らみがますます硬くなり、

 男の欲望を無慈悲に伝えてくる。

 

「ぷはっ……」

 傭兵が顔を離すと糸引く唾液が橋を作る。

 その間抜けな光景すらも今のミミにとっては拷問だった。

「やっぱ若いってのは違うなぁ」

 男の目が欲情で濁っている。

「さっきまでの威勢はどうしたんだ?」

 

 罵声に反応する余裕すらない。

 男の指が突然乳房の麓から頂へ滑るように這い上がった。

 柔らかな脂肪の丸みを確かめるようにゆっくりと揉みしだく。

「おお……たっぷり詰まってんなぁ」

 そのたびに乳房全体が餅のように変形する。

 

 **ボウン**

 

 男の親指と人差し指が桜色の先端を摘まむ。

 キュッと捻り上げるとミミの背筋が弓なりに反り返った。

 

「きゃあっ!」

 甲高い悲鳴が喉奥から迸る。

 敏感すぎる先端が過敏になっているのか

 触れられただけで脊椎が痺れるような衝撃が走る。

 

「なんだぁ? 感じてるのか?」

 嘲弄の声が鼓膜を刺す。

 指の腹で転がすように弄びながら

 もう片方の手がミミの太腿を割って這い寄ってくる。

「こんなに可愛い顔して……とんだ淫乱娘だぜ」

 傭兵の指先が白い布地を掻き分け

 茂みの奥に埋もれた秘密の入口を探り当てた。

 

「んんっ……!」

 

 熱い息遣いが喉を焼く。

 湿った柔襞に指が触れた瞬間、電流が神経を奔り抜けてゆく。

 ミミの爪先がピクピクと震えた。

 

「ほう……随分と潤んでるじゃねぇか」

 傭兵の唇が醜く歪む。

「ゾンビの前でお漏らししたと思ったが……こりゃ濡れてただけか?」

 

 男の中指が浅く侵入する。

 ぬちゃ……という淫らな水音が響いた。

「ひぅっ!」

 膣壁を抉られる痛みと奇妙な痒さが同居する。

 

(違う……こんなの私じゃない……)

 

 理性が必死に否定しても、身体は嘘をつけない。

 男の指の動きに合わせて蜜が湧き出し次第に抵抗を緩めてゆく。

 

「ん……やめてっ!」

 

 言葉とは裏腹に腰が浮いてしまう。

 無意識に求めるような仕草を見せてしまい

 ミミは羞恥で泣き崩れそうになった。

 

 傭兵が唇を寄せてきた。

 耳元で囁く声は粘液のように絡みつく。

「欲しいんだろう? 素直になれよ」

 歯を食いしばっても無駄だった。

 もう一方の手が乳房を掴み上げ

 人差し指と中指で乳首を挟み込んだまま上下に扱く。

 

 **ジュブッ! ジュブブッ! **

 

 胎内で蠢く指の激しさに合わせて

 乳房の先端が引っ張られるように伸縮する。

 まるで搾乳される牛のように弄ばれ

 ミミの頬は茹蛸のように真っ赤に染まった。

 

「あっ……ダメ……そんなの……」

 

 膝がガクガク震え、内股の筋肉が痙攣する。

 子宮の奥底から疼きが込み上げてきて

 下半身の芯が蕩け始めた。

 

「ほぉ~ら見てみろ」

 傭兵が指を抜き取った。

 滴る蜜汁が蛍光灯の下で妖しく輝いている。

「お嬢さんの一番大切なところが泣いてるぜぇ?」

 

 見せつけられる惨状に視界が滲む。

 ミミは唇を噛みしめた。

 もう何も信じられない。

 ヒロの優しい笑顔さえ幻のように霞んでゆく。

 

「さて……」

 男の手がベルトに掛かった。

 金属音が耳障りに響く。

 ミミの全身から血の気が引いた。

 

「やめてっ!」

 最後の力を振り絞って叫ぶ。

「それだけは……本当に……」

 

 懇願も届かない。

 ズボンが引きずり下ろされ猛々しいものが露わになる。

 ミミの喉がヒュッと鳴った。

 ヒロのモノとはまた異なる形状と大きさに言葉を失う。

 

「怖がらなくていい」

 傭兵が不気味な優しさを装う。

「すぐによくなるさ」

 

 男の手がミミの太腿を開かせた。

 無理やり挿入するつもりなのだろう。

 ミミは本能的に身体をよじらせ抵抗する。

 

「離してっ!」

 

 涙で曇った視界の中でヒロの顔が浮かび上がる。

 あの安心感溢れる微笑み。

 あの大切な約束。

 全部奪われる予感が胸を締め付けた。

 

「助けて……」

 蚊の鳴くような声しか出ない。

 

 

 

 管制塔地下の密室には薄暗い照明が陰影を落とし、

 少女の白磁の肌を幽玄な銀幕のように浮かび上がらせていた。

 

「やめて……ください……」

 震える声は硝子細工のように脆く、か細い喉笛が恐怖に痙攣する。

 傭兵はその反応を愉しむかのように低く嗤った。

 指の関節が骨盤を鷲掴みにする感触がミミの背筋を凍らせる。

 

 彼の掌が太腿の内側に滑り込む刹那——

 小柄な肢体が反射的に弓なりに反った。

 柔らかな臀部が冷たい床板に押し付けられ、

 亜麻色の産毛が汗で貼りついた腰骨が僅かに浮き上がる。

 くびれたウエストと対照的な膨らみが、

 囚われた肉の器として残酷な凹凸を描いていた。

 

 

「ひぁっ!」

 鋭い悲鳴は瞬時に男の唇に封殺された。

 押し寄せる唾液の塊が口腔を蹂躙し、

 喉奥へと滑り込む生温かさが嘔吐感を呼び起こす。

 その合間に指先が乳房を苛む——

 乙女峰の山岳は、小柄な躯体とは不釣り合いな質量を主張していた。

 傭兵の指がその稜線を登山家のように辿る——

 乳暈の縁をぐるりとなぞり、

 中央の突起を蟻地獄の罠にかけるように摘み上げる。

 

「んっ……! んんー!!」

 呻きが汚泥のような唇に阻まれる。

 嫌悪と快楽が脊椎で火花を散らし、

 四肢が痙攣するたびにむっちりとした太腿の肉塊が波打った。

 パンティのクロッチ部に忍び寄る指先が、

 湿った繊維の表面をこそぎ取るように往復する。

 

「ほぉ〜? ここが泣いてんじゃねぇか」

 下卑た笑い声とともに布地が横に引っ張られる。

 秘裂が露わになると同時に——

 冷気が熱帯の湿潤を切り裂いた。

 

「いっ……いやぁっ!!」

 抗う腕が傭兵の胸板に爪痕を刻むも

 鉄壁の筋肉は微動だにせず。

 その動作を嗜虐的な愉悦に変えた男の舌が

 白桃のごとき尻肉の割れ目に沿って這い上がる——

 皺ひとつない臀丘の谷間を舐め上げる感触が

 脳髄を焦がす羞恥と恐怖に変換される。

 

「いい加減に観念しろよ」

 指が膣口をまさぐる音がぴちゃりと反響する。

 羞恥で蒸発しそうな熱気とは裏腹に——

「あっ……だめぇ……そこはぁ!」

 拒絶の叫びとは裏腹に

 内股が弛緩し膝が緩慢に開いてゆく。

 生理的防衛機構が牙を剥く——

 被捕食者としての生存本能が

 さらなる凌辱を受け入れさせる矛盾。

 

 **ズブッ——**

 

 不意打ちの挿入音。

 骨盤が軋みをあげ、

 肉壁を押し分ける異物の侵入が下腹部を貫いた。

「ひゃぐぅっ!!!」

 幼児の泣き声にも似た絶叫。

 乳房が激しく揺れ狂う——その律動が傭兵の肉欲を煽る。

 指の抽送が加速するにつれ、

 結合部からの蜜音が淫猥な旋律を奏で始めた。

 

 ヒロに躾けられた幼膣は望まぬ侵入者を拒絶しようとうねり、

 膣壁が不随意に締め付けるたびに——

 傭兵の下衆な嘲笑が雨音のように降り注ぐ。

「おいおい? そんなに美味そうにしてるのかよ」

 嫌悪感が全身を支配しながらも

 肉体は裏切りを続ける。

 乳首が痛いほど勃起し

 腰骨が淫らにくねる。

 小柄な聖域は今や戦利品の如く蹂躙され

 涙で濡れた睫毛が天井のスポットライトに煌めいた。

「た……すけ……て……」

 嗚咽が涸れた喉を通るたびに

 被虐の儀式が深淵へと沈んでいく——

 

 

 男の亀頭が膣奥を穿った瞬間、ミミの視界が虹色に爆ぜた。

「ひぐっ──!」

 脊椎を駆け上がる電流が四肢を痙攣させる。

 子宮口を舐めまわす動きに蜜襞が条件反射的に吸い付き始めていた。

 

「おいおい? こんなに締め付けやがって」

 嗤いながらエラの張った傘が性感帯を搔き取られる。

「んあぁっ!」

 仰け反る腰骨が床を撫でるたび、剥き出しの乳房が前後に揺れた。

 

 

 亜麻色の産毛に包まれた膨らみは嵐に翻弄される帆柱のごとく弾み

 頂の尖端が空中に描く弧が被虐の度合いを可視化していた。

 

 羞恥と屈辱が渦巻く意識の片隅で

 ヒロの穏やかな笑顔が蜃気楼のように揺らぐ──

 

『ミミが幸せを感じてくれるならそれでいい』

 

 その誓いが汚辱の粘膜摩擦によって粉々に砕かれていく。

 

「もっと鳴いてみな! 」

 男の怒張が急角度で押し込まれる。

 膣口がめり込む疼痛と共に

 子宮頸管が灼熱の楔に穿たれる。

「あがぁっ──!」

 白い喉を反らしてミミは断末魔のような喘ぎを絞り出した。

 

 

 

 薄暗い管制塔の片隅で、少女の肢体が獣のような呼吸に合わせて揺れていた。

 床に押し付けられたミミの細い足首は男の逞しい腿で封じられ、

 華奢な腰が僅かに浮いている。

 

「ん……やめ……ひゅ……っ!」

 言葉にならない呻きが男の口腔に飲み込まれる。

 唾液まみれの舌がミミの口腔を暴れ回り、

 歯列の裏側を丹念に舐め取っていく。

 

「ちゅぱ……ほら動くぞ」

 告げるや否や腰が一気に前に突き出された。

 亀頭が蜜壺の最奥を叩きつけ、

 子宮口が押し潰される衝撃が背骨を駆け上る。

 

「ひゃっ───!」

 脊椎が弓なりに反り返り、乳房が前方に突き出される。

 亜麻色の産毛が汗で貼りついた頂点がピンと天を指し、

 先端の赤らみが痛々しいまでに尖っていた。

 

「なんだァ? こんな小さいのに感じてるじゃねえか」

 男の指が鷲掴みにした膨らみを左右に揺さぶる。

 重力に負けず張り詰めた柔肉が手のひらで踊り、

 乳首が摩擦でさらに充血していく。

 

「い……いやっ……そこはっ!」

 抗議の声はすぐに遮られた。

 膣内の凶器が角度を変え、Gスポットを狙い撃ちする動きに変わる。

 

「んはぁっ!」

 全身が波打つように震え、結合部から蜜が飛沫をあげる。 

 少女のくびれた胴が蛇のようにくねり、

 

「ひっ……そこばっかり……だめぇっ!」

 悲鳴混じりの喘ぎに混じるのは明らかに媚びた響きだった。

 傭兵の口角が吊り上がり、

 その表情が鏡面のように映るミミの瞳には

 絶望と陶酔が溶け合う混沌が渦巻いていた。

 

「ほぉ〜? 気持ちいいんだろ?」

 男の親指が秘裂の上端でひくつく肉芽を捕らえた。

 皮を剥ぎ取るような刺激が脳天を貫く。

 

「あひっ───!」

 目の前が白く染まり、

 少女の全身が電流に打たれたように痙攣する。

 膣壁が収縮し、侵入者を搾り取るように締め上げる。

 

「おお……すげえ締め付け……」

 男の腰使いが激しさを増す。

 肉杭が狭い通路を何度も往復し、

 粘膜が擦れ合う音が雨音のように地下室に響く。

 

「た……すけ……て……ヒロ……しゃん……」

 掠れた懇願は嗚咽に変わった。

 汗と涙と唾液でぐしゃぐしゃになった顔が男の肩越しに見える。

 その唇がヒロの名を刻むたびに傭兵の怒張が硬度を増す。

 

「へっ……まだ他の男のこと考えてんのか」

 嫉妬めいた怒りが腰使いを荒々しくさせた。

 子宮口を叩き壊すようなストロークにミミの背筋が跳ね上がる。

 

「あぐっ! お腹……壊れちゃう……!」

 内臓がかき混ぜられる苦悶の中でも

 乳房への責めは続く。

 指の間から零れ落ちそうな膨らみが握り潰され、

 

「いっ……いたぃ……けど……ふわぁっ……!?」

 痛みが甘美な疼きに変わり始める錯覚にミミの瞼が震えた。

(なんで……こんなに……)

 

「そろそろ出すぞ……全部受け止めろよ!」

 宣言とともに腰の動きが最大速度に達する。

 少女の足が爪先立ちになるほど高く抱え上げられ、

 結合部が垂直に繋がった姿勢で打ち込まれる。

 

「やめてっ! 中は……中はダメぇっ!!」

 哀願虚しく男の臀部が震えた。

 熱い液体が子宮口に直撃する瞬間、

 

「ひゃああああっ───!!」

 白目を剥いてミミが絶頂に達した。

 全身の筋肉が収縮し、噴出した愛液が床を濡らす。

 乳房が激しく揺れ狂い、

 その律動が最後の凌辱劇を飾る淫猥なフィナーレとなった。

 

「ふぅっ、ふぅ……」

 

 傭兵は射精後の脱力感に任せて少女の上に覆いかぶさった。

 互いの胸板が重なり、

 未だ脈打つ怒張が蜜壺の中で余韻を漂わせる。

 汗ばんだ亜麻色の髪が床に散らばり、

 その中の一本一本が照明にきらめいていた。

 この惨劇を静かに見つめるのは天井の監視カメラと、

 今は届かないヒロの想いだけであった。

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

 射精の余韻が引いた室内には、

 ミミの乾いた喘鳴だけが微かに反響していた。

 汗に濡れた亜麻色の髪が肩甲骨の窪みに張り付き、

 汗と蜜の混淆が細い鎖骨の辺りで小さな滴となって光る。

 虚ろな碧眼は焦点を失い、涙の薄膜越しに見える世界は歪んでいた。

 

 傭兵がずるりと退けば、狭隘な秘裂からは白濁の残滓が糸を引いて垂れる。

「へへ……中でたっぷり味わえたか?」

 

 嘲笑が石膏像のような頬を叩くも反応はない。

 ただ小さく震える肩胛骨が敗北を雄弁に物語っていた。

 

「おいおい」

 男の指が無造作に乳房を掴み上げる。

 柔肉の膨らみが指の隙間から零れ落ちそうだ。

「終わったらちゃんと綺麗にしろって教わらなかったのか?」

 

 乳房から伝わる疼痛が脊椎を這い上り

 ミミの閉ざされていた瞳孔が微かに開く。

 そこに映るのは陰茎──先端からまだ滴る体液が鈍く光っている。

 

「や……」

 言葉にならない拒絶は唇の震えだけで終わった。

 この地獄からの解放は唯一つ──

 男の言う通り動くことだと本能が悟っていた。

 

 細い喉仏がごくりと鳴る。

 膝行で近づこうとするも内腿の痙攣がそれを許さない。

 傭兵が促すように足を開く。

 股間の屹立が待ち受ける舞台へ向けて

 少女の小さな掌が床を這い進む。

 

 薄闇に浮かぶそれは凶器のようでいて

 同時にある種の不条理な芸術品にも見えた。

 先程まで己を破壊した象徴だというのに

 目前で見るそれは妙に脈動している。

 まるで独立した生き物が餌を待つかのように……

 

「早くしな」

 催促が尻を叩く鞭となる。

 ミミは唇を結び直し俯くと

 その顔貌が陰茎の根元に近づいた。

 湿った鼻先が陰毛の茂みを掠める距離──

 蒸れた性臭が容赦なく嗅覚を犯す。

 

(ヒロさん……ごめんなさい……)

 

 心中で呟きながら唇を開く。

 まず触れたのは亀頭の先端だった。

 生温かい粘液が上唇に付着する。

 途端に胃袋が逆流する感覚に襲われるが

 奥歯を噛みしめて耐えた。

 

 次に唇全体で雁首を包み込む。

「ん……」

 

 吐息と唾液の混合物が陰茎との隙間で泡立つ。

 口腔内に広がる塩辛さと苦味が舌の付け根を刺激し

 思わずえずきそうになるが堪える。

 乳房の先端が自ずと硬くしこり始めていることに気づかないふりをする。

 

「そうそう……うまくなったな」

 嘲弄交じりの褒め言葉と共に指先がうなじを擽ってきた。

 産毛が逆立つ感覚が脊椎を走り抜け口腔の分泌量が不意に増す。

 その温かな唾液が潤滑油となり陰茎への刺激を滑らかにした。

 

 頭蓋骨が軽く押される。

 促されるまま唇を前後へ滑らせる。

「んぐっ……!」

 

 カリ首が上顎の粘膜を擦る度に微弱な電流が走った。

 同時に乳房の下方が微妙な痒みに似た疼きに包まれる。

 小柄な肢体が奉仕する光景は

 ある種の祭典──被虐の宗教儀式そのものであった。

 

「ほらもっと喉奥まで咥え込め」

 男の掌が後頭部を包み込んだ。

 逃げ場を塞がれた頭部がゆっくり押し下げられてゆく。

「ん゛っ!」

 

 喉頭が隆起し軟口蓋を怒張の先端が突破する。

 息苦しさに視界が狭窄し瞼の裏に赤い火花が散った。

 それでも男の手は緩むどころか更に深く捻じ込ませてくる。

 亀頭が気道を圧迫し呼吸が完全に止まる寸前──

 

「おおっ……いい具合だ……」

 陶酔する傭兵の声が耳朶を撫でる。

 窒息寸前の視界が霞んでいくなかで

 乳房が上下に揺れ動く自分の姿が歪んだ鏡面のように浮かんだ。

 それはまさに偶像が地に堕ちて踏みにじられる瞬間のようだった。

 

「出すぞっ!」

 宣告と同時に喉奥で熱い塊が弾け飛ぶ。

 

「ん゛ぶっ──!」

 

 精液が食道へ直接流し込まれる衝撃に背筋が弓なりに反った。

 吐き出そうにも頭部は固定されている。

 肺腑が酸素不足を訴え乳房が肋骨を圧迫する。

 苦しみと屈辱が渦巻く意識の中でも

 男の陰茎への吸引運動だけが自動的に続いていた。

 

(わたしは……もう……)

 

 舌の裏側で蠢く肉塊の律動を感じながら

 ミミの思考は闇の底へと沈んでいった。

 

 

 

 

 精液の苦みがココロすら砕く。

 ミミの思考が霞み、

 自動的に鈴口に舌をねじ込んで尿道に残った性液を啜りとって、

 喉仏が上下するたびに、魂が削り取られるような屈辱が脊椎を駆け上る。

「ん……んぅ……」

 粘つく塊が食道を遅々と降下し、胃の腑で燻り出す熱。

 ヒロの優しいキスで満たされていたはずの唇が、今は汚辱の証明に溺れている。

 

 

 尿道に舌を潜り込ませる行為は無意識の生存本能──

 被捕食者が捕食者の機嫌を取る条件反射だ。

 鈴口の溝を舌先で清掃する動作は、

 母鳥に羽繕いをする雛鳥のごとき健気さすら孕んでいた。

 

 傭兵の笑いが頭蓋を揺さぶる。

「なかなか上達したな?」

 ミミの睫毛が震えた。

 褒められるべき行為ではないのに、筋肉疲労で弛緩した乳房が微かに揺れる。

 精神的拒絶と肉体的従属の矛盾──

 乳首が勃起し乳腺が収縮する現象を生理的防御本能と呼ぶには酷だ。

 

 男の爪先が亜麻色の前髪を掻き上げた。

 露出した額には汗の珠が幾筋も流れ落ちている。

「さて……」

 腰骨を掴む掌に力が籠もり、

 射精直後のくたびれた陰茎が

 再び硬度を帯び始めるのが唇を通して伝わった。

 

「ひょっとして……」

 舌を離した瞬間の空気音が淫靡に響く。

「おっぱいでやってもらうのもいいかもな?」

 その提案にミミの喉奥で新たな嗚咽が渦巻いた。

 乳房は既に過敏すぎる蕾を晒しており、

 触れるだけで脊椎が疼きを発する禁忌の領域なのだ。

 

 傭兵の命令は簡潔だった。

「挟んでみろ」

 

 拒否権など存在しない。

 ミミは膝行の姿勢のまま上体を起こし、

 汗で光る谷間に屹立を迎え入れようとした。

 乳房の間に差し込む冷気が恐怖を煽り立てたが

 筋肉組織は異様に熱を帯びている。

 それは被虐の祭壇と化した柔肉が醸す淫らな祝祭前夜の予感だった。

 

「こう……ですか……?」

 戦慄く声と震える掌が支える乳果実の重み。

 傭兵の陰茎が双丘の峡間に埋没し

 皮膚からにじみ出る体液が潤滑油となって艶かしい摩擦を生む。

 亀頭が深い谷底で顔を覗かせる光景は

 背徳という概念を三次元で再現したかのようだ。

 

「もっと寄せろよ」

 促されるままに掌を動かす。

 乳房が互いに押し潰し合うように形を変えるたび

 先端から漏れる微かな粘液が傭兵の陰茎に絡みついた。

「んっ……ふぅっ……」

 摩擦による熱と痛みと快感が混濁する混沌の中

 ミミの脳裏にはヒロの優しい愛撫の記憶がフラッシュバックした。

 

(ヒロさんだったら……きっと……優しく……)

 

 その思いがさらに羞恥を増幅させる。

 乳房の間で鼓動を打つ異物はまるで

 憎き侵略者の旗竿のようだった。

 傭兵の右手が突然に左乳房の乳首を抓り上げた。

「ひぃんっ!」

 驚愕と快美感が脊椎を直撃し

 腰が弓なりに反り返る。

 

 右乳房から伝わる陰茎の脈動と

 左乳房から押し寄せる激痛が奇妙に同期し

 脊椎中枢で火花を散らした。

(違う……こんなのは……絶対に違……うっ!)

 否定しようとすればするほど

 乳房と陰茎の境界面から滲み出る粘稠の液体が増えてゆく。

 

「ほら……自分で動かしてみろ」

 傭兵が促す。

 言われるがままに掌で乳房を揉みしだけば

 柔肉の中に埋まった陰茎が前後に律動を開始した。

「あっ……ああっ……」

 吐息に混じる媚びた響き──

 それが自身の声だと認識するや否や

 ミミの耳朶が紅潮するのがわかった。

 

 汗で濡れ光る谷間を陰茎が出入りするたび

 谷底から湧き上がる白濁の泡が

 陽炎のように揺蕩っている。

 亜麻色の産毛に飾られた豊満な半球が

 上下に弾む光景は壮観にして邪悪だった。

 

 傭兵の左手が不意にミミの後頭部を掴んだ。

 そのまま顔を乳房の方へと引き寄せる。

「舐めろ」

 その指示に従う意志は無いのに

 舌先が勝手に動いた。

 乳肉の間から覗く亀頭の先端にキスを贈るように

 唾液をまぶす動作が条件反射として繰り返される。

 

「ちゅぷ……れろ……」

 蜜壺を舐める淫婦のような執拗さで

 鈴口周りの汚れを清めてゆくミミ。

 その行為がさらなる羞恥を呼び覚ますが

 もはや抗う力は残されていない。

 乳房と唇で奉仕する姿は

 被虐の祭典における奴隷の至福とも映った。

 

 傭兵の腰遣いが突然に早まった。

 乳房が激しく揺れ狂い

 乳首が傭兵の下腹部と擦れ合う。

「あぐっ! それっ……だめぇっ!」

 痛みと快楽が螺旋を描いて混濁し

 ミミの瞳孔が急速に拡大していく。

 背筋に走る稲妻が腰骨を砕かんばかりに痙攣させ

 

「イケよ」

 その一言が引き金となった。

 乳房の中で陰茎が脈動し

 灼熱の奔流が谷底から溢れ出る。

「んあぁっ──!!」

 ミミの視界が真っ白に染まった。

 乳房の拘束を解いた瞬間

 放たれた精液が弧を描いて飛び散り

 少女の顎から頬にかけてを汚してゆく。

 

 白濁の洪水が亜麻色の肌を侵蝕する様は

 征服の証を刻みつける儀式に等しい。

 力尽きたミミの掌から乳房が解き放たれ

 重力に引かれて垂れ下がった先端には

 固く尖った乳首が精液の雫を滴らせていた。

 呼吸困難に陥った魚のように口をぱくぱくさせる姿は

 完膚なきまでの敗北を雄弁に物語っていた。

 

「ふぅ……」

 満足げな溜息と共に男が腰を引いた。

 萎えた陰茎から垂れる精液の糸が

 ミミの乳房と繋がったまま切れない。

 その光景こそが最も残酷な戦争犯罪の結果だった。

 

「まあまあよかったぜ?」

 褒められたところで喜びなど生まれようがない。

 ミミの双眸は虚空を彷徨い焦点すら定まっていない。

 汗と涙と精液に塗れた顔貌は

 かつて皇女によく似たと称された美貌とは程遠い

 破壊された肖像画のようだった。

 

 傭兵が立ち去る足音を聞きながら

 ミミはただ呆然と乳房の谷間で固まりかけている

 精液の膜を見つめていた。

 ヒロに捧げた誓いの欠片は

 今や悪魔の烙印によって永久に焼き尽くされたのだ。

 その想いが最後の理性を凍らせた。

 

(ヒロさん……ごめんなさい……)

 震える掌で乳房を掬い上げると

 汗と精液が混じった液体が掌中に溜まった。

 その匂いを嗅ぐうちに

 不思議な安堵感がこみ上げてきた。

 もはや何も考える必要がないという安らぎ──

 それはヒロを裏切った罪悪感より遥かに優しい毒だった。

 

 薄闇の中でミミは目を閉じた。

 乳房にまとわりつく汚れを拭うことなく

 ただ静かに浅い眠りに落ちていった。

 シエラⅢの月光は今日も平等に

 傷ついた少女の柔肌を照らしている。

 

更新希望の原作

  • 世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する
  • 最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い
  • 片田舎のおっさん、剣聖になる
  • リアデイルの大地にて
  • 俺は星間国家の悪徳領主!
  • リビティウム皇国のブタクサ姫
  • 転生王女と天才令嬢の魔法革命
  • ロクでなし魔術講師と禁忌教典
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。