カップル成立後のその晩のイメージです。
"彼女の権利に、彼氏でいかがわしいことを想像する権利はございますでしょうか"
ひとりはギターヒーローの動画を編集するスタイルで、AVを見ていた。
(マグロは嫌われるって聞くし、いざというときのために勉強しないと!)
押し入れの中で、ヘッドホンをつけて、AVを再生する。
AVの内容はネットの海で見つけてきた、無修正ラブラブえっちものだ。
喜多に出会う前のひとりだったら、リア充な内容に爆散していただろう。
(これも勉強。教材! ちゃんと見てしっかりと身につけるんだ)
映像では半裸の男女が絡んでいる。
女優が組み敷かれ、ひとりと同じぐらいのサイズの乳房を鷲掴みにされていた。
ひとりもそれに習い、ブラのホックを外したくし上げる。
やわらかな膨らみが寝巻きからこぼれた。
「ん・・・ッ!」
自分の胸を触る。
ただ自分で触ったとしても、自分の手が触れた、ただそれだけとしか感じないだろう。
けれど。
(この手が、指が喜多くんのものだったら・・・)
「恥ずかしいよ・・・喜多くぅん・・ ・」
胸の先端、蕾からぴりりと快楽が走る。
吐息にも甘いものが混じる。
(喜多くん)
名前を呼ぶたびにボルテージが上がっていく。
「喜多くん♡ 喜多くん♡ 喜多くん♡」
気持ちが通じあった彼の名を、呼べば呼ぶだけ通じ合う気がして、ひとりは繰り返し呼ぶ。
指は激しく豊かな乳房を揉みしだく。
そのたびに身体の奥から蜜が溢れた。
AVでは、女優が激しく男優に責められている。
ひとりは自分たちに置き換えた。
喜多が好奇心混じりに、自分の胸をいじり倒すイメージ。
『ひとりちゃんって乳首が一番感じてるよな。こんな感じが好きなの?』
「あぁ、喜多くん、そんなに先っぽ引っ張らないでぇ・・・」
つんと固くなった乳首を、自分でつまみ上げながら嬌声を上げた。
頭の片隅で、なにをしてるんだとドン引きしている自分。
行為に不毛さなんてない。これは正当な練習なのだと自己弁護する。
夢中になって喜多の名を呼びながら胸を弄っていたら、いつの間にかAVは次のフェーズに映っていた。
女優の下半身を覆っていた下着が取っ払われて、男優に愛撫されていた。
ひとりもそれに習って、甘い痺れを走らせる乳房から片手を離し、指先を下半身へと遊ばせる。
首元までたくしあげているせいで胸と一緒に露出している腹部を、へその上を滑って、寝巻きと下着のゴムをくぐって、薄い茂みを超えて、秘密の割れ目へ。
(ぐっちょりしてる・・・)
ひとりの割れ目はしとどに濡れていた。
喜多を、つまりは男性を受け入れる準備が整い初めている。
(喜多くんのってどんな感じなんだろ・・・このくらい濡れてれば大丈夫なのかな?)
下着が汚れそうなくらいだったので、ひとりは下着ごと寝間着を足首までずり下げた。
火照った体には、直で触れる空気が心地よい。
「あああ・・・喜多くんがそんなとこ触れちゃってる・・・やぁ・・・」
割れ目をなぞり、子宮から溢れ出る潤滑液を伸ばす。
ビラビラしている大陰唇をなぞり、クリトリスに触れると胸先とは違う強烈な稲妻が背筋を走る。
何回か擦れば達しうるだけの強烈な快楽。
いつもならそうする。
でも今回は曲がりなりにも自慰ではなく『練習』である。
(あまり触ったことないけど・・・こっちも慣らしとかなきゃだよね?)
割れ目のその奥。
こんこんと湧き出る泉の源泉。
その奥へ。
(喜多くんはどのくらいの大きさなんだろ)
AVはいつの間にか女優が男根をしごく場面へと映っていた。男優は気持ち良さそうにしている。
見慣れない勃起した男性器の形を横目にしながら、喜多の股間のイチモツに思いを馳せる。
「喜多くん・・・来て良いよ・・・」
自分の人差し指を喜多のものに見立て、濡れそぼった膣口におそるおそる突き立てようとして――――
「おねえちゃーん、押し入れの中で喜多くんにお電話してるの? 私も喋りたい!!!」
ガタガタと押し入れの襖が揺れだした。
ふたりが襖を開けて、ひとりがソロプレイに興じる押し入れに、文字通り押し入ってこようとしている。
「ちょっと待って! は、入って来ないで」
(ひゃああああ! 聞かれてた!ヤバいヤバいヤバい死ぬ死ぬ死ぬいやいやせっかく喜多くんと付き合うことになったのに清い身のまま死ねない!)
直前まで耽っていた行為のせいで脳髄に桃色を残しつつも、ひとり史上、最速の反応速度でふすまを叩くように押さえた。
ガタン。
絶望の音が響く。
力任せに内側から押さえたせいで、押し入れの襖がレールから外れた。
レールから外れた分だけ隙間ができてしまっている。
出てこないひとりに、痺れを切らしたふたりが隙間を覗き込んだらアウトだ。
パソコンでAVを再生しながら、乳尻ふともも、ついでに股間が丸出しなひとりが人目を浴びることになる。
ひとりは史上最速を更新して、パンツをずり上げ、上着を下ろして胸を覆い、 液晶を叩き割る勢いでパソコンを閉じた。
ふたりがどこまで聞いたのか、襖の向こうでなにをしてるのか。
分からないのが恐ろしい。
内側から脱輪を治すことは難しい。外から父や母なら直せるだろうけど、今は呼ばれるわけにはいかない。
「襖が引っかかっちゃったから、1回外すね。倒れて行くかもしれないから離れてて」
「わかったーー!」
ふたりが親を呼びにいってないことに安堵しつつ、ひとりは襖をレールから外しつつ押入れを脱出した。
ふたりは不思議そうな顔で、言われた通り襖から離れたところに待っていた。
「おねえちゃん、何してたの? 喜多くんの名前を呼んでたけど」
「・・・ふたりが言うように電話してたんだよ。喜多くんとつ、付き合い始めたからね」
「えー、でも、ヘッドホンつけてるじゃん。それで電話してたの?」
ひとりはヘッドホンをむしり取って全力で押入れに放り投げた。
「そ、そうだよー。ヘッドホンはスマホに繋いでよく聞こえるようにしてたんだ」
「ふーん、そっか。付き合い立てだもんね! ひたりもわかるよ! でも、身だしなみもちゃんとしなきゃ捨てられちゃうよー? 喜多くんステキだから!」
ふたりはズビシッと指摘する。
「今でも服が引っかかっておヘソ見えてるし、おしりだって半分見えてるよ? 幼稚園の年少さんみたーい」
「ひっ、ひいいい! すぐ直します!あ、あ、で、電話はもう切っちゃったから、お話はできないや。それにひとりはもう寝る時間でしょ」
ひとりは冷汗を滝のように流しながら、部屋から追い出そうとする。
色々な意味で限界だ。
微妙に抵抗しようとするふたりの背を押して、両親の寝室へと追い出そうとする。
「わかったよ、おねーちゃん・・・あれ?・・・くんくん・・・なんかくさいよ。この変な匂いなに?」
(くさい? 何のこと?・・・あっ)
原因に気づいて、ふたりの背を押す手を引っ込める。
ソロプレイ後に手を清める時間なんてなかった。
ひとり100パーセントが付着したまま、ふたりの肩に手を置いてしまっていた。
匂いを発するとしたら、それぐらいで、だけれども。
(え、臭いの? わたしのアソコ。自分じゃわかんないんだけど、もしかしたらそれが原因で捨てられかねないんじゃ・・・)
喜多が嘔吐しフラフラと去っていくビジョンが浮かんだ。
そのまま崩れ落ちそうになる。
「どうしたの? お姉ちゃん」
「ふふふ・・・なんでもない・・・なんでもないから・・・ふたりは臭くないといいね・・・」
「えー、わたしはちゃんとお風呂入ってるから臭くないよ」
「お姉ちゃんもだよ・・・」
なんとかふたりを部屋から追い出して。
ひとりは悩み抜いた末に、泣きながら通販で臭気計を購入した。
何のネタも浮かんでないけど、初体験失敗編も書きたいなあ・・・