――イングナル・フレイが、仲間たちの「声」を追って『鬼ヶ島』へと急行した直後。
「……河松様!」
「むっ!? ……って、お主は確か――しのぶと言ったか?」
「はいっ! しのぶです! 見知らぬ船の中から、覚えのある気配を感じたので……。あの、まだ船の中に残っている小さな気配は、もしや……?」
「……お主が考えている通りだ。少し具合を悪くしてはいるが……」
「そうですか……。もしや、海外の侵入者から船を奪った後ですか? 一旦国外に逃げようと? もしもそうなら、私もお供を――あっ、いや別に、この国での逃亡生活に嫌気が差したという訳ではなくてですね――」
「…………」
「……河松様?」
「いや……よくよく考えてみれば、それが最善かもしれぬ」
「え……!?」
「よいか? しのぶ。まず第一に、先ほど宙を駆けて行った御仁――フレイ殿は、侵入者ではない。いやまあ侵入者ではあるのだが、いずれにせよ拙者たちの敵ではない。それどころか、この国の事情と拙者たちの正体を知りながらも、船の中の薬と食料を好きにしてよいと言ってくれた。それに……」
「……それに?」
「佇まいからもわかる圧倒的な強さ……。いや、それだけではない……。こんなことを言ったら、お主や他の同志は気を悪くするかもしれんが――どことなく、似ていた気がするのだ。外見ではなく、雰囲気が……おでん様に」
「まさか……」
「まあ、それは今はいい。……それよりも、日和様だ。無害な食糧を探すのもいい加減限界。拙者も、もう何日もロクに食っておらぬ――いや別に腹など減ってはおらぬが――今回はたまたま運に恵まれたが、これから先も、似たような幸運を期待するのは愚かにも程があろう。……いずれにせよ、拙者たちの宿願は運任せでは果たせぬ故。国のあちこちに潜む同志たちも、20年もの時を健常に過ごせる保証はないだろう。日和様のような立場の方なら尚のことだ。例え拙者たちの手元から――この国から離れようとも、あれ程の
「先ほど、宙を駆けていった男に任せた方がマシだ、と……?」
「そのような顔をするな……。拙者とて、トキ様から直々に日和様を任された身なのだ。思うところはある、が――20年という時を、拙者は少々甘く見ておった。そして、オロチやカイドウの圧政を……!
「わたすが――って、河松様は? まさか……!?」
「この船をフレイ殿の下まで届けたら、そのまま
「そんな――いけません! トキ様が遺した歌――『
「安心せい。死ぬつもりは毛頭ない。あくまで時間稼ぎだ――
「そ、それに、わたすも、日和様とは殆ど初対面のようなものなのですが……」
「いや、名前と存在だけなら、拙者のほうから既に話してある。拙者に何かあったら、何とか見つけ出して頼るように、とも。同じ女として、色々と都合がよい部分もあるだろうしな。……だが念のため、手紙も残しておこう。ええと、紙……は、あるな。筆は……コレがそうか? おお、書くと自動で、中に蓄えられている墨が出てくるのか……。なんと面妖な……。これで良し、と……。さあしのぶ、スマンが問答するだけの時間はない。拙者は日和様を任されたおでん様の家臣として、更には一端の侍として、受けた恩を返し、日和様を20年先まで生かす為の努力をしなければならぬ。お主はどうだ? 乗るか反るか――その答えだけを示してくれ」
「……わかり、ました……」
「スマンな――では、早速ゆくぞ。まずは網笠村だ。そこまで船を押し泳ぎ、丈夫な縄を貰い受けたら、そこからはそれでこの船を引いてゆく――ちと揺れるだろうから、お主は中で安静にさせている日和様を支えてやってくれ……。全速力で引っ張ってゆくのでな!」
「はい……!」
◆ ◆
――そんな会話をしてから、数週間後。
光月家の押しかけ家臣にして(自称)凄腕の『くのいち』でもあるしのぶは、何とか日和やヤマト共々、『豊拳の一味』の新たなメンバーとして馴染みつつあった。
ワノ国を出てから数時間後に、日和が目を覚ました直後は言うまでもなく大変だった。河松が予想した通り、見知らぬ場所で目を覚まし、見知らぬ人間に囲まれた状況を受けて日和は大いに混乱し、河松が遺した――もとい、残した手紙と、しのぶによる説明でことの顛末を把握した後は、これでもかとばかりに泣きに泣いた。今まで自分を守ってくれた男の安否は知れず、これからは慣れ親しんだ故郷以外の場所で、見知らぬ者たちと何とかして20年先まで生き延びなければならないという状況は、わずか6歳の少女の心を決壊させるには十分だった。
そうでなくとも、ヤマトと言う少女がいまだ、すぐに鬼ヶ島に戻ろうよと喚きながら暴れていたり、それを下半身が魚のそれである面妖な少女と、あちこちから腕を生やす『妖術』を使う少女が何とか抑えようとしていたり、河松が言うところの「フレイ殿」が、未だ目を覚まさないふたりの大人の女性の仲間に、どういった処置を施せばいいのかわからず右往左往していたりと、中々に混沌とした状況だった為、日和を宥める役は実質しのぶだけだった。
それが何とか収まったら収まったで、今度はヤマトが(どういう理屈かはサッパリわからないが)「僕はおでんだ!」と言い張ったり、実は彼女が
が、それでも、ようやく目を覚ました頼りになる大人ふたり――白髪の女性がオルビアで、金髪の女性がステューシーという名前らしい――の助けもあって、ようやく全員がそれぞれの事情を把握し、ある程度の落とし所を見つけることには成功した。
ヤマトには主にフレイが「おれたちが今戻ったら、あの侍たちの覚悟が無駄になる」などと言って何とか言い聞かせ、日和のほうも、河松の覚悟を無駄にしない為に――そして、20年後の未来に、健やかな姿で彼と再会する為に、この船の一員として生きていくことを決めたようだった。恐らくは、河松が残した手紙の末尾に書かれた一文――「20年後に再び
ヤマトがカイドウの娘であるという事実だけはすぐには飲み込めなかったが、その問題も、時間の経過と共に融解していった。彼女の人間性がカイドウやオロチとはまったく真逆のものであり、なおかつ、おでんに対する尊敬の念が偽りのないものであるとわかったからだ。今では同じ年頃、同じ故郷(厳密に言うとヤマトが生まれたのは、カイドウがワノ国を侵略する以前のようだが)の出身とあって、日和とヤマトは大の仲良しとなっていた。ロビン(顔立ちが似ていたからもしやとは思っていたが、オルビアの実の娘らしい)やシャーリーとの仲も良好で、今では暇を見つけては、4人で一緒におでんの航海日誌を読んだり、同じベッドで寝たりする仲である。
しのぶもしのぶで、彼女ら4人とは勿論のこと、フレイ、オルビア、ステューシーの大人組とも良好な関係を築けていた。最初の内こそ、しのぶはイングナル・フレイという男の器を計りかねていたが、ワノ国から脱出する際に見せた驚異の実力および『妖術』の数々と、それに見合わぬ穏やかな人間性。更には、海外に出てから何度か襲ってくるようになった『ビッグ・マム』と呼ばれる、世界的にも有名らしい海賊と戦ったり巧妙に逃れたりする姿を見て、河松の人を見る目は確かだったとしのぶは断ずると共に、この方に忠誠を誓うことこそが、自分や日和の身の安全、更には遠い未来にワノ国を取り戻す為に、現状採り得る最適解であると確信した。
彼が、オルビアやステューシーとは特別な関係にあり、毎晩のように愛し合っているという事実には当然すぐに気づいたが、かといって、それでしのぶがフレイを見損なったかというとそんなことは全然なかった。彼女が仕えていたおでんにもそういう部分はあったし(彼が15歳の頃に、都の女たちを山寺に招いたことに端を発する『ハーレムの乱』などはその最たる例だ)、なんだったらチャンスだとさえ思った。
彼は既に余所者の自分や日和に対しても心を許してくれているが、肉体的な繋がりを持てば互いの絆はより強固なものとなるし、それが日和の安全性の強化にも繋がると信じた。しのぶはまだ処女ではあったが、くのいちである以上、いつかは望まぬ相手にそれを捧げなければならない可能性もあると覚悟を決めていた彼女にとって、フレイのような男にそれを捧げられるというのは、むしろ
だからこそしのぶは、『ドレスローザ』という国で行動を起こした。フレイに夜這いをかけることにしたのだ。
その国では、数時間前の海岸において、船をつけようとしていたフレイと、国の軍隊長である『キュロス』が協力して、海賊に攫われそうになっていた王族の姉妹を救出したところだった。国王である『リク・ドルト』はこれに感謝し、フレイたちが札付きであることとその背景を知りつつも、人気の少ない王宮の一画に寝泊まりすることを許し、フレイはこれを快諾した(罠の可能性をしのぶは疑ったが、『ケンブンショク』という術でそういった裏がないことを、フレイは確信しているようだった)。ビッグ・マムとやらのしつこい求婚や、ヤマトを取り戻そうとする『百獣海賊団』の追跡から逃れる為に『新世界』から『
船も、国が所有する、余所者の目にはつかない王族所有のガレージハウスへと収められ――これはチャンスだと思ったしのぶは、今夜こそはフレイとの「繋がり」をより強いものにしようと、行動を起こすことにしたのだ。今までにもそのチャンスが皆無だった訳ではないが、やはり、日和などに盗み見される危険性――というよりは、それに対する羞恥心のほうが勝って、中々決心がつかなかった。
事実、日和とヤマトを加えた4人の少女が、毎晩行われているフレイとオルビア、もしくはステューシー(毎晩、誰かはマストの上での見張りをしなければならない為、3人全員で行為におよぶことはあまりなかった)の情事をドアの隙間から覗き見しながら自慰にふけるというのを毎晩の恒例行事としていることを、しのぶは知っていた。気づかない振りをするのは無理だったし、日和とヤマトがいつの間にかフレイに「そういった感情」を抱いていることについても、特に驚きはなかった――自分もまた、「そう」だったからだ。
ひとりの女として――否、1匹の雌として、あれ程の雄に心惹かれずにいるのは無理な話であり、日和様やヤマトも同じ気持ちに違いないと、そう思った。
だが、リク王に自由にしてくれていいと言われた王宮の一画は相応に広い。日和を含めた少女たちの目の届かぬところで、フレイとの新たな「繋がり」を得るのは、そう難しいことではないだろう――そう思い、この千載一遇のチャンスを活かすべく行動を開始したしのぶではあったが、先立って、オルビアとステューシーに相談するという過程を省いたりはしなかった。それぐらいの分別は、しのぶにもあった。
「あら、私は全然構わないわよ?」
薄々予感していたことではあったが、ステューシーはあっさりと快諾した。オルビアは彼女ほど割り切ってはいないようだったが、それでも、「まあ……正直、時間の問題だとは思っていたわ」と苦笑混じりにしのぶの提案を受け入れた。
よし、これでもう後ろめたいことはないし、後は行動を起こすだけだ――そう思って部屋を出ようとしたしのぶだったが、そこへステューシーが「あ、ちょっと」とストップをかけた。「?」としのぶが振り向けば、彼女は「ふたつだけ確認させてくれる?」と言って、
「まずひとつ――あなたがフレイに身体を開くのは、日和や自分の安全を確かなものにする為に
後者です、と言おうとしたしのぶではあったが、前者の思惑も当然あったが故に、「両方です」、と正直に答えた。少なくとも、嘘をつくよりはマシだと思った。
そんなしのぶの判断は間違っていなかったらしく、ステューシーは、
「オーケー……。まあ正直、打算混じりでも構わないわ。
突然、声の届け先をしのぶが開けようとしていたドアに変えたステューシー。「えっ……?」と思ってしのぶがそちらに目を向ければ、どことなく観念したような面持ちで、4人の少女――ロビン、シャーリー、日和、ヤマトが、ゆっくりと部屋に入ってくるところだった。
しのぶは目を丸くし、少女たちを代表して、ロビンが、「ごめんなさい……。しのぶさんが、何か凄く深刻そうな顔で、お母さんとステューシーさんがいる部屋に入っていくのが見えたから……」と言ったものの、展開に追いつけずにいるしのぶとしては、目を白黒させるより他にない。すると、そんな彼女を放っておく形で、ステューシーが続けて、
「別に構わないわよ――ところで、フレイは?」
「……まだ、あの『ヴィオラ』って子とイチャイチャしてる」
プゥッ、と頬を膨らませながらロビンが言った。「アレ」はイチャイチャしているというよりは、海賊の魔の手から救われたことで簡単(?)にほの字となったヴィオラなる少女の積極的過ぎるアピールに、フレイがただただ戸惑っているだけのようにも思えたが、そんな指摘をする精神的余裕も今はなくて――彼女の視線は、他の幼女たちと同じように気まずそうな表情を浮かべている日和に向けられていた。……まさか、聞かれて――
「4人共、話は聞いていたわね?」
「「「「……はい(うん)……」」」」
――いたらしい。しのぶは心中で頭を抱えた。が、次に放たれたステューシーのひと言は、そんなしのぶの心情を更に悪化させることになって、
「フレイがいつ戻ってくるかわからないし、個人的にも遠回しなのは好きじゃないから、単刀直入に聞くわね――貴方たちも、フレイに抱かれたい?」
「「はあっ!?」」
しのぶとオルビアの声がハモった。「セックス」という言葉を使わなかったのは、恐らくはそういった海外の言葉に馴染みのない日和やヤマトに配慮してのことだろうが、そんなことに感心する余裕すら、今のしのぶにはなくて――
「あ、あなた、一体何を――」
「黙って。いつフレイが戻ってくるかわからないって言ったでしょ? ……で、どうなの? あなたたちも、私やオルビアと同じように、フレイと愛し合いたくないの?」
わずかな間があった。そして――
「……したい、です」
「私も……お嫁さん候補として、遅かれ早かれだし……」
「光月の血を絶やさぬ為の努力を、あれほど素敵な殿方を相手に行えるのなら……!」
「ふたりのどっちかが毎晩やってる、あの、股同士を叩きつけ合うヤツだよね? なんだかすっごく気持ちよさそうだったし、見ててポカポカした、変な気持ちになってくるし……。許されるなら、僕もやってみたい!」
ロビン、シャーリー、日和、ヤマトが順番に肯定の意を返した。それを見たステューシーは実に満足そうに頷き、逆に、頭痛がするわとでも言うように額に片手を当てたオルビアは、次のように言った。
「あのね……ステューシー……。できることと、できないことがあるでしょう? 仮に、倫理的なアレコレをフレイが飲み込んで、この子たちの想いを受け入れたとしても――その、
「あら、それについては簡単に解決できるわ――しのぶが協力してくれればね。そうでしょ?」
台詞の矛先が突然自分のほうに向き、しのぶは戸惑ったが、すぐにステューシーが言わんとしていることに当たりをつけると、
「ま……まさか、わたすの『ジュクジュク』の
『ジュクジュクの実』――フレイたちがワノ国を訪れる以前、光月家の家臣たちと共に『百獣海賊団』との決戦に臨んだはいいものの敗北し、ロクな食べ物もない都以外の場所を巡る逃亡生活を送っている際に、空腹に耐えかねた彼女が口にした奇妙な果実、『悪魔の実』の名称。その能力は、任意の対象を「熟す」――悪い言い方をすれば「腐らせる」ことでドロドロの状態にするというもので、主に地面を溶かして逃走用の経路を確保したり、建物を崩壊させてそれに敵を巻き込ませたりという逃走、妨害が主な使用法となるが、ステューシーが企み、しのぶが思い至ったものはそれとはまた違う。いわば一種の「奥義」のようなもので――
「――この子たちを
「――できる筈よ。昼間、あなたがこの王宮のかぼちゃ畑にしたような能力の使い方をすれば」
しのぶは口を噤んだ。「それ」は、食糧難が常だったワノ国で逃亡生活を送っていた頃から行っていた能力の使用法で――つまりは、「熟する」の言葉通り、生育を加速させることで、本来それなりの時間がかかる作物の成熟、からの収穫を殆ど一瞬で行うことができるのだ。
今年は、国の特産物にして民たちの主食でもあるかぼちゃの育ちが良くないとリク王がぼやいていたのを受けて、ちょっとした「お節介」を焼いてあげたしのぶではあったが――その光景を実際に目の当たりにしたステューシーは、それを人間に対して行えばどうか? と言っているのだ。
しのぶは面食らったが、恐らくは、目前のフレイの情人が思っている通りの結果になるだろう、と心のどこかで冷静な予想を下していた。他ならぬ『ジュクジュク』の能力者として、それができるという実感があった。
とはいえ――だからといって、実際にそれを行うかどうかはまた別問題だった。しのぶは
「ちょっと! ステューシー……!」
「
ステューシーの声は若干苛々していた。彼女は続けて、
「私だって、面白半分にこんな提案をしてる訳じゃないわ。フレイの精液には、それを蓄えた相手に特殊な恩恵を与える力がある。身体能力の増加に、彼が使っているのと同じ黄金のオーラの顕現……。この際ハッキリ言わせて貰うけど、4人の子供たちの面倒を見ながら、カイドウやビッグ・マムの追跡を何とかしつつ、その上海軍や賞金稼ぎたちからも身を守るというのは、流石に難易度が高過ぎるわ――いくら、フレイが強くともね。この間のワノ国の一件で、あなたもそれを痛感したんじゃない?」
「それは……」
オルビアは明言しなかったが、その表情を見れば答えは明らかだった。そこへ追い打ちをかけるようにして、ステューシーはこう言った。
「当たり前だけど、大人になれば、子供の時にはできなかった多くのことができるようになる――フレイの『モノ』を受け入れられるってだけじゃない。ロビンとヤマトの『能力』は間違いなく相応に底上げされるし、ヤマトに至っては、今の時点でも相当な素質を感じさせるもの……。大人になれば、私と同等以上の実力者になれる筈。シャーリーも、世界一の遊泳速度を誇る人魚族の本領を発揮できるようになるわ。海戦ではかなりのアドバンテージよ。……日和だって、できるだけ早い段階で、少しでも多くの『光月』の血筋を残せるなら、それに越したことはないでしょう?」
よくもまあそんなにスラスラと誘惑の言葉を吐けるな、としのぶはいっそ感心した。言っていることはもっともらしく聞こえるが、彼女には何か他の思惑があるのでは? と邪推せざるを得なかった。一応、
「……話は、聞いていましたね? そういうことらしいのですが――日和様は、それでよろしいのですか? 他の3人も?」
ステューシーの話術もあって、もはやこの先の展開は決まったようなものだが、それでも念の為の確認をして――4人共が迷いなく頷いたのを見て取ったしのぶは、最後の抵抗とばかりに、先ほど胸中で抱いた危惧を言葉にすることにした。
「……一度大人になってしまえば、元に戻すことはできないのですよ? 記憶も人格も子供のままです――
「
力強い声でそのように反芻したのは、ズイッと一歩しのぶに向かって進み出た日和だった。とても6歳とは思えぬ、大人びた、揺るぎない決意を固めた表情で、彼女は、
「ここに来るまでに、何度もカイドウや、ビッグ・マムとやらの『おって』と戦って――そのいずれでも、私は、まったく役に立てませんでした……! まだ子供なのだから、あるていどは仕方ない、と自分でもそう思っていましたが……。もしも、それを何とかできる『てだて』があるなら……。フレイ様の『ふたん』を少しでもへらし、少しでも早い『だんかい』で一族の『ちすじ』を残せる方法があるのなら、私はそれに身をゆだねたいのです――
凛っ! とした声色だった。その後ろにいる他3人の少女も、同じような、覚悟が決まった顔つきで――いや、ヤマトだけは「?」と、今いちよくわかっていない様子だったが、しのぶはあえてそれには気付かない振りをした――こちらの顔を見つめていた。
そのような口上を述べられては、同じ『光月』の人間として、しのぶも腹を括らない訳にはいかない。彼女は、一度大きく息を吸っては吐き、それから、成り行きを見守っていたオルビアとステューシーに目を向けた。オルビアは少々、いやかなり複雑そうな面持ちを浮かべてはいたものの、しのぶに制止の言葉をかけようとはせず、ステューシーは、正に海外の
どうやら、意見は出尽くしたようだった――しのぶもまた、覚悟を決めた。
「では……いきますよ?」
「「「「はい(うん)……」」」」
「――『
◆ ◆
「――という
「はっ……?」
海賊の魔の手から救ったのをきっかけとして、自分に対して並々ならぬ感情を抱いてしまったらしいヴィオラ(10歳)からの熱烈な
そこには確かにオルビアとステューシーの姿があったものの、彼女らはいつものようにベッドの上でフレイを待ってはおらず壁際の椅子に腰かけていて、代わりに、例の忍び装束姿のしのぶと、全裸の上にバスローブだけを纏った――何やら非常に見覚えのある、4人の
しのぶを先頭とし、その後方に横一列で既視感のある美女たちが並んで正座しているという位置関係で――4人の内3人はしのぶと同じようにベッドの上で座っていたが、ひとりだけ図抜けた長身を誇る5メートル近い人魚だけは、床の上で魚の下半身を畳んでいた――フレイが入室するや否や、ことの経緯をしのぶが説明し始め、たった今それが語り終わりはしたものの、正直フレイは1割たりとも理解できずにいた。あまりにも突然過ぎる状況に、彼の理解力が追いついていなかった。
しかし、そんな彼の戸惑いに寄り添う気配を微塵も見せないまま、しのぶは続けて、
「それでは――フレイ様」
「……?」
「先ほども申し上げましたように、我々全員が同じ気持ちです。貴方様を純粋に女としてお慕いしているだけではなく、ステューシーやオルビアと同じように貴方様の『恩恵』を授かり、少しでも力になりたいのです――どうか、その覚悟に報い、今この場で我々の『
「「「「お願いします!」」」」
「いや……その……えぇっ……?」
しのぶの堅苦しい口上からの丁寧な土下座に、後ろの4人も同じ台詞、同じ所作で続いて――フレイとしては、ただただひたすらに戸惑うことしかできず、壁際の椅子に座って成り行きを見守っているステューシーがニヤリとした悪どい笑みを浮かべたことに、彼はついぞ気づくことができなかった。
ここからちっとばかしエロい話が続くんじゃよ。