この件によって、くまの過去話に続いて再度メンタルがズタズタになりましたが、尾田先生のほうがもっとずっとズタズタになっている筈です。が、それでもきっと先生ならば涙を流しながらも何だかんだで漫画を描き続ける筈でしょうから、自分も落ち込んでばかりはいられません。
そんな訳でややいつもよりも時間が押してしまいましたが、最新話です。どうぞ。
……開発中のドラクエ最新作とかどうなるんだろう……?
「おっ……帰ったか――昨晩は、お楽しみだったか?」
「…………」
時刻は午前の10時過ぎ。
たった今言われたように、前日の夜からほぼ不眠不休で、シャッキーとのセックスをヤり通したフレイは、彼女と共に
それを受けたフレイとしては頬をヒクつかせながらの曖昧な笑みによって無言で応じるより他になくて――思い思いの場所に腰かけて
その一方で、思わず立ち尽くしていたフレイを追い越す形で自身の
「ええ……。たぁ~っぷりと、
――なんて惚気た台詞を、(ほんの数時間前までブッ続けで行っていた情事の内容でも思い出しているのか)赤くした頬に片手を添えながら言い放つものだから、
にも関わらず、先の台詞を向けられたレイリーなどは、
「ハッハッハ……!
――と、実にあっけからんとした様子で、カラカラとした笑い声を上げながらのたまうものだから、フレイとしては肩透かしもいいところだった。どうやら、あくまでも「ただの友人」だというシャッキーの弁は真実らしい。
……と思ったのも束の間、先のシャッキーの台詞を受けたことで、何人かの
――ジリリリリリリリンッ! ジリリリリリリリリリリリリリンッ!
「あら……?」
突如店内に鳴り響き、その場にいた全員の興味関心を引き付けるのは、カウンターの向こう側の棚に置かれた電伝虫の
「はい、もしも――『ああっ! シャクヤクかっ!? よかった! 店にいたか――「豊拳」殿とその仲間たちはどうだ!? そこにいるのか!? もしもそうなら、すまないが彼らにも手伝って貰って』――ちょっと、落ち着いてよグロリオーサ様。どうしたって言うの?」
電伝虫という生き物には、元より向こう側にいる人間の外見的特徴を真似る習性があり(個体にもよるが)、それによって相手側の人相や表情を判別することが可能なのだが――そうでなくとも、先ほどシャッキーの台詞を遮る形でまくしたてるように並べられた台詞から察するに、グロリオーサ様と呼ばれた相手(確か、先々々代アマゾン・リリーの皇帝で、今は皇帝代理を務めている九蛇の戦士だったか)の慌てぶりは相当なもので、その原因について、面食らいつつもシャッキーが尋ねてみれば、
『ああ、スマン……』
コホン、と咳払いをした後で、グロリオーサは、
『以前話した三姉妹のことは覚えているか? 少し前から、若くして「九蛇海賊団」のメンバーに選ばれた3人のことだが? ……一応聞いておくが、既にそっちで匿っていたりはしないか?』
「いいえ、残念だけど会ってすらいないわ。その3人の話については覚えているけど……」
――それがどうかしたの? とシャッキーが言葉を紡ぐよりも先に、グロリオーサはこう言った。
『その3人が攫われた! 恐らくだが……状況から見てほぼ間違いない! 10時間近く経っても、まだそっちに着いていないのなら尚のことだ!』
「……なんですって?」
眉間に軽くシワを寄せながら、シャッキーが尋ねた。突如店内の空気が張り詰め、全員が真剣な面持ちで受話器を持つシャッキーを注視し、耳を澄ませた。今まさに酒を注いだカップを口元に持っていこうとしていたレイリーは、それを中断してゆっくりとカップを下ろし、テーブルに置いた。
「どういうことなの? 順序立てて説明してくれる?」
『無論だが――それよりも先に、ひとつ確認させてくれ。「豊拳」殿は、我々の頼みを聞いてアマゾン・リリーの皇帝に即位することには納得したが、何やら「やるべきこと」を
「ええ……昨日そう連絡したわよね?」
『ああ……』
ハァッ、とため息をついたような音を挟んだ後で、グロリオーサは、
『その連絡を受けた時の会話を、あの3人は物陰から聞いてしまったんだ――その後で、船から抜け出した。皆が寝静まった後に、船に積んであった救命用の小舟を使い、見張り番の目を盗んで出奔したんだ。お前の店がある場所については、以前話して聞かせたことがあるから――にも関わらず、まだそっちに着いていないとなると……』
「待って、待ってちょうだい」
グロリオーサの台詞を遮った後で、シャッキーは次のように尋ねた。
「それなら、攫われたっていうよりは遭難した可能性のほうが高いんじゃないの?
『ああ――勿論、その可能性も考えて、近海を捜索してはいるが』
グロリオーサが言った。
『実は、以前お前と再会した時に、今後の為にと作っておいた「
「――途中で何らかのトラブルに巻き込まれたか……最悪、人攫いの手にかかった可能性が高いってことね」
途中で台詞を引き継いだシャッキーは、頭痛がするわとでも言うように受話器を持っていないほうの手を額に当てていて――その後で彼女は、
「勿論、そんな大事じゃない可能性もあるけど、この場合は、できる限り都合の悪いケースを想定して動くのが吉ね。そうであるにも関わらず楽観視したせいで、気づいた時には取り返しがつかないことになっていた、っていうのが本当に最悪なケースだし。……それにしても、そもそもどうしてその三姉妹は、そんな勝手な行動をしたの? 何か理由が?」
『言ってなかったか? この3人――特に「ハンコック」という長女は、「豊王」への憧れが異常に強くてな……。今回の遠征でも、今度こそ必ず
「――我慢できずに飛び出してきてしまった、という訳ね」
シャッキーはため息をついた。
「確か、凄く
『見た目については――ああ、3人共な。特に今言った長女のほうは国内どころか、世界的に見ても類を見ないほどの美しさだ――まだ、わずか12歳という年齢でありながら。……そして、世間に関する知識は――残念ながら、3人共詳しいとは言えないな。いや、ハッキリ世間知らずと言ってもいいだろう。くどいだろうが、まだ12歳なんだ。遠征以外ではロクに外界に出る機会もないし……』
「それはマズイわね……」
キュッ、と眉を吊り上げながら、シャッキーが言った。
「どんなに才能に溢れていても、世間をロクに知らない見た目が良い少女たちなんて、『人攫い』たちからすれば恰好の餌食でしかないわ。……なるほど確かに、
『ああ……。これでもしも「天竜人」なんかの奴隷になった日には、こちらも迂闊に手出しできなくなる。「豊拳」殿を皇帝にすれば多少国もバタつくだろうし、尚のことそれ以外のことに労力は割けん……。できれば、今の内に身柄を取り戻したい――まだ、時間的に売られてはいない筈だな?」
「そう……だと思うわ。諸島には『
シャッキーの台詞を聞きながら、フレイはチラッと壁にかけられた時計に目を向けた。午前の10時半を回ったところだった。
……オークションの開催まではまだ時間があるが、それでも、件の三姉妹が本当に『人攫い』の手にかかったのだとしたら早めに助け出すに越したことはないだろう、とフレイは思った。『
例え既に『首輪』がかけられていたとしても、『ワノ国』で幽閉されていたヤマトに対してそうしたように、フレイならば、嵌められた人間に損傷を及ぼすことなく破壊することができるが――誰にも気づかれずにそれを行うのは流石に厳しいだろう、と思った。ただでさえ――何日先の話になるかはわからないが――
そう思って――だからこそフレイは、
「シャッキーさん、おれが行きます」
受話器の向こう側にいるグロリオーサという女性にも聞こえるように、やや大きい声でフレイが言った。全員の目が、一斉にフレイのほうへと向けられ――それにやや気圧されつつも、彼は、
「自分の
現在は、自分たちの船の倉庫に保管しているそこそこの量の財宝を思い浮かべながらフレイが言った。その辺りの知識に詳しくないフレイでも、換金すれば数千万、あるいは「億」を超えるかもしれないとわかる程の金銀財宝の数々。こう言ってはなんだが、もっとも相場が高い人魚族(の女)でもない、3人の人間の少女を無事に譲り受けるには十分な額だろう(買い取る、とは言いたくなかった。幼い頃に散々自分を痛めつけ、惨めな思いをさせてくれた
(そうなると、先に換金を……イヤ……)
とにもかくにも、まずは件の三姉妹の現在地と安否を把握することが最優先だ、とフレイは思った。換金も支払いも、交渉次第でいくらでも後に回すことができる、と。
余計なトラブルを避ける為に仕方なく見捨てる、という選択肢は始めからなかった。見ず知らずの人間とは言え、過去の自分と同じような目に遭って欲しくないから、ということだけが理由ではない。いや、勿論それもあるが――それ以上に、これからアマゾン・リリーの皇帝になろうという男が、その住民である3人の少女を見捨ててどうする、という思いもあった。そんなことをして、それよりもずっと多くの
……正直に言ってしまうと、自分のような奴隷くずれが一国の王になるということに、いまだ実感を持てずにいたフレイではあったが――それはそれとして、だ。
『むっ……? もしや「豊拳」殿か? そこにいるのか?』
「ええ――話は聞いていました。その三姉妹の捜索は任せて下さい」
『……確かに、先ほどは手伝って欲しいとは言ったが、それでも、こちらの不始末に対して、事実上既に皇帝であるお主――いや、貴方様のお手を煩わせる訳には……』
「気にしないでください」
フレイがピシャリと言った。その辺りの体裁は正直どうでもよかった。早速彼は、クルリと身体を反転させて早足で出口へと向かい――ドアノブに手をかけたところで、クルリと後ろを振り返ると、
「手伝ってくれ、ステューシー。それから……レイさん、仲間たちをお願いしてもよろしいですか?」
「それはまあ構わんが」
待ってましたとばかりにステューシーが立ち上がる一方で、レイリーが以下のように応じた。
「一緒に探すのはバッ――ステューシーだけか? 他の仲間たちは?」
「う~ん……。人手が多いに越したことはないでしょうけど、ミイラ取りがミイラになる危険を冒すのは、ちょっと……」
実際問題、ステューシー以外の
こうなると、一切の心配なく手伝いを頼めるのは、
そして――そんな彼の心情を察したらしいレイリーは、神妙な面持ちで一度コクリと頷いて見せると、
「……わかった。この娘たちの安全は私が保証する――が、気をつけろ。高額の賞金首である君もまた、『人攫い』たちからすれば恰好の獲物でしかないからな。まあ、君ほどの実力なら杞憂だろうが……」
「感謝します。……じゃあ、そういう訳ですので、グロリオーサさん」
カウンター席の向こう側にいるシャッキー……の手の中にある受話器に向かって、フレイが言った。
『「豊拳」殿……! すまん、恩に着る……!』
「ですから、気にしないでください――座ってろ、ヤマト」
「うっ……」
今にもソファから腰を上げようとしていたヤマトを手で制した上で、フレイは、残された仲間の中でもっとも古い付き合いであるオルビアに視線を向けると、
「スマン、オルビア……。ここは頼む」
先のヤマトがそうであったように、他の誰かが自分の後に続こうとしたら押さえておいてくれ――そういう思いを込めて、フレイが言った。そんな彼の意図を察したのだろう。オルビアもまた、「わかったわ」とレイリーと同じく神妙な面持ちで頷き――それに続く形で、何かを手に持った上で、フレイのすぐ傍まで移動したステューシーが、
「確か、一番大きな『
「わかった――ありがとう」
そう言って。
電話を終えて受話器を置いたシャッキーから、ステューシーと共に、件の三姉妹の外見的特徴についてもひと通り聞いたフレイは、ステューシーが言うところの
そして――
◆ ◆
自分は、いつの日か偉大なる『豊王』の妻となる女である。
アマゾン・リリー国内でも度々話のネタになるほどの才覚を持つ3人の少女。十代前半という異例の若さにて国民全員の憧れである遠征隊――『九蛇海賊団』の一員として抜擢された三姉妹。その長女である『ボア・ハンコック』は、幼い頃よりそのような願望を抱いていた。
最近急速に背が伸び始めたふたりの妹たちに比べれば流石に見劣りするが、それでも歳の割には高い身長と、同じく、歳の割には起伏の激しい魅力的な肢体。艶のある黒髪や色白の肌はそれぞれが同色の真珠よろしく透き通るような色合いを備えていて、目鼻立ちについても、まるで神が直接その手で作りたもうたのでは、と思いたくなる程の美しさだった。
将来を期待せずにはいられない器量の良さと、若くして『九蛇海賊団』の一員に選ばれる程の戦いのセンス。天は人に二物を与えず、とは有名な慣用句だが――少なくとも、彼女については全く当てはまらないだろう。そう断言できる程に。
そんな彼女が、言い伝えレベルの存在である筈の『豊王』の妻になる――などと、何をきっかけにしてそのような想いを持つに至ったのか? それについては思い出せないし何なら「
どうすれば、自分は偉大なる『豊王』を見つけることができるのか? 見つけて、更に妻になるにはどうすればいいのか? そればかりを考えていた――この世に生を受けてからの12年間、ずっと。
異常なことだ。わかっている。ハンコックはちゃんとそのことを自覚していた。かなり昔からアマゾン・リリーにおいて常識とされている女尊男卑の風潮。男という生き物は基本的に弱く、それでいて妙な『ウイルス』を持っているとも言われている下等な存在。
しかしながら、『恋わずらい』という遺伝的な病からの『恋焦れ死に』――それの発症数が年々問題になってきたことを受けて、先々々代皇帝であるグロリオーサなどが中心となって広め始めた『豊王』の伝承。
確かに男は下等な存在だが『豊王』だけは例外で、かの者こそが、いつか自分たちを苦しめている呪いの連鎖――言うまでもなく、『恋わずらい』からの『恋焦れ死に』のことだ――を断ち切ってくれる救世主にして、次代の王であるという『おとぎ話』。
いつか、実際に『豊王』の後継者を迎える際に、できるだけ摩擦が起きないようにという配慮の下に子供たちに対して施された、悪い言い方をすれば洗脳教育――それを、ハンコックもまた例外なく受けたことは確かだが、少なくともそれが原因ではない、と彼女は確信していた。
自分の「コレ」は、生まれつきのものだ――きっと自分は、生まれた時から「こう」なのだ、と。
いつの日か、自分は必ず『豊王』の妻になると、妻になって見せると、物心がついた頃からそう思っていて――それが異常であることは認めつつも、かといって不思議と矯正しようという気にはまったくならない。九蛇の学者的な立ち位置にいる戦士の中には、より優秀な才覚を持って生まれた者ほど、つまりは、九蛇の血が濃いほど、そこに刻まれた遥か昔の記憶――初代皇帝に奉仕し続ける日々を送った先祖の記憶の影響によって、かの者と同じ力を持つとされる『豊王』への崇拝の念が強くなるのだろう、と。
そのようにしたり顔で語っている者もいたが――そんな小難しい理由さえどうでもいい、とハンコックは思った。ボア三姉妹の長女、ボア・ハンコックとはそういう少女だった。
そして――約2年前。
初代皇帝である『豊王』――『豊穣の王』が使っていたとされる黄金のオーラ。それと同種の力を用いて、『オハラ』という島に向けられた海軍の艦隊による殲滅作戦――それを、イングナル・フレイという青年が阻んだというニュースが世界中を駆け巡った。
と同時に、彼こそが初代皇帝の再来に違いない、というのがアマゾン・リリーに住まう国民全員の共通認識となってからは、手配書に載っているイングナル・フレイの
特に初代に関する伝承を信じていなかった国民まで、イングナル・フレイの手配書を見た途端に手の平を返したような態度を取り始めたのだ。物心ついた頃より、将来は豊王の妻になると言って
流石に自分には及ばずとも、『豊王』への想い入れがそれなりに強い妹たちと共に、戦士としての鍛錬にも一層力を入れた。目的は、『九蛇海賊団』の一員となる為。元より目指していた立場ではあったが、「イングナル・フレイ=豊王」説が国民全体の常識となって以降、ハンコックにとってはより達成が急務の目標となった。
憧れの『豊王』、イングナル・フレイにいち早く邂逅し、あわよくば「恩恵」を授かるに当たって、遠征隊――『九蛇海賊団』の一員になることほど効率的な方法はないからだ。物資の調達、言ってしまえば略奪――だけではなく、次期皇帝候補筆頭であるイングナル・フレイの捜索が重要な任務として加えられたという背景も、当然のようにあった。
結果、生まれ持った戦闘センスも相まってたちまち頭角を現したハンコックは、妹たち共々異例の若さで『九蛇海賊団』の一員となり、その後何度か遠征に参加。先々代皇帝への協力を取り付けることを重視するあまり、『新世界』へと向かって行ったフレイたちの存在をスルーしてしまうという失態を犯すも――つい先日になって、ようやく、どういう訳か『新世界』から戻ってきたらしいフレイたちと接触、からの皇帝就任に関する説得に成功。
そんな電伝虫による報告を、先々代皇帝であるシャクヤクから受けたグロリオーサ――その会話を物陰で聞いていたハンコックは、居ても立ってもいられずに行動を開始。特に隠されている訳でもなく、船長室の机に広げられて置いてあった『
盗み聞いた会話によると、何やら
船で行けばすぐの場所にいるのだ。幼い頃より想ってきた『豊王』が――この2年の間、幾度となく自分への「慰め」の材料として使ってきた手配書。その「本人」が。
会いたい、会って、話して、自分がどれだけ想ってきたのかを伝えて、そしてあわよくば――と、そんなピンク色の想いを胸に意気揚々と小舟に乗ったはいいものの、
「――むっふふ~ん♪ 3人共わちしの好みだえ~♪ いい買い物をしたえ~♪ お前たち、褒めてやるえ~♪」
「へっへっへ……! いえいえっ! こんなに沢山支払……恵んで下さって! こちらとしてもなんとお礼を申し上げればよいか! こんな娘っ子3人でよければ、どうそお受け取り下さい。そちらが下さった『悪魔の実』と『
(……っ! くっ……この下衆共め……!)
ふたりの妹共々、背中側に回された両手の自由を、先ほど台詞に挙がった『海楼石』の錠によって奪われた状態で地面にうつ伏せになった――うつ伏せにさせられたハンコックは、心中で毒づいた。実際に言葉にした上で、更にそれを聞き咎められた日には、どんな目に遭わされるかわかったものではないからだ――現在、彼女の視線の先にいる「人種」は、それをやりかねない存在だった。
……自分たちのように「
わずか12歳という若さで、尚且つ世間一般の常識に疎い傾向にあるアマゾン・リリーの住人であるハンコックでも、彼らのことは知っていたし、聞かされていた――決して逆らってはならぬ存在。目をつけられてはならぬ存在。もしそのどちらかの憂き目に遭おうものなら、まず間違いなく人並みの人生を送ることは叶わなくなる。……そんな人物に「買われて」しまい、「飼われて」しまうことになったのだ。……自分たち3人は。
迂闊な行動だったと、ハンコックは今さらながらに己の行動を悔いた。そんな後悔を今さら抱いても遅いと、わかってはいてもだ。いくら、念願の『豊王』との邂逅が目前に迫っているとはいえ――道中、幾度となく少し落ち着いて欲しい、今からでも本船に引き返すべきだと忠告してきた妹たちの言うことを聞くべきだったと、そう思った。
しかし、覆水盆に返らず。そんなふたりの妹――1歳年下の緑色の長髪と、やや大きめな頭部が特徴的な『サンダーソニア』に、
訝しみながらも手で探ってみれば、細い針のようなものが突き刺さっていて――それが吹き矢から放たれた針であると察した時には、すべてが手遅れだった。彼女たちはまだ、『見聞色』を完璧に修めてはいなかった。
混濁する視界、闇に落ちてゆく意識。どこからともなく聞こえてくる
……というよりは、人攫いたちの手によってうつ伏せに「陳列」されていた。彼らにとって最上位の上客。たまたま通りかかり、「
目を覚ました直後のハンコックたちは当然のように抵抗し、逃げ出そうとしたが――意識を失う前に首筋に打たれた吹き矢の針に何か塗ってあったのか身体が思うように動かず、手枷をどうにかすることは勿論、立ち上がって逃げ出すことさえままならない状態だった。
悪名高き『天竜人』に目をつけられてしまったという絶望的な事実もまた、彼女らの身体の動きを固くして――万が一があっては面倒だから、という理由で、妹たち共々口に捻じ込まれた『悪魔の実』のせいで、状況はより絶望的になった。味も大層酷いものだったが、それ以上に、実の摂食によって自分たちの身体に追加された、「海に対して無力になる」という特性のほうが厄介だった。現在自分たちの手首を拘束している錠の素材となった『海楼石』が、
これによって、いよいよ自力で脱出する術は皆無となってしまったハンコックたち。あまりにも絶望的な状況だった――全身の体温が急速に失われていくような感覚を覚えたハンコックは恐怖に震え、馬鹿なことをしたと己の行いを改めて後悔し、ふたりの妹たちに心中で謝罪した。
妹たちもまた既に目を覚ましており、ハンコックと同じように現況を理解したことで絶望し、すすり泣き始めていた――申し訳ない、本当に……。うつ伏せにされたことで身体の前面と顔の半分以上を土で汚しながらも、ハンコックは歯噛みし、涙を流した。胃袋の中で、1匹の蛇が激しくのたうつような感覚を覚えた。
「いやいや、本当に運がよかったえ~♪ こういったことがあるから、たまの散歩はやめられんえ~♪ それでいて、やっぱり奴隷を大人しくさせるには、『悪魔の実』と『海楼石』の組み合わせが一番だえ~♪ 昔、ゴッドバレーで行方知れずになった、いつかの『銀髪のガキ』を思い出すえ~♪ ……しかし、それはそれとして、この
後悔に満たされたハンコックの意識に、天竜人のダミ声が割り込んできた。かと思えば、髪を無造作に鷲掴みにされた上で、グイッと頭を引き上げられたハンコックは、思わず短い悲鳴を上げながら、下手人である天竜人と正面から視線を合わせることになり――おぞましい権力者の臭い息が顔にかかり、ハンコックは、あまりの気持ち悪さに顔をしかめた。
「「姉様!」」とふたりの妹たちが悲鳴を上げたが、当然そんなことで眼前の醜男が止まる筈もなく――ややあって彼は、ニチャアッ……! 心底寒気を覚えるような、粘着質な笑みを浮かべると、
「……オイ、お前たち。わちしたちの周囲を囲って、周りから見えないようにしろえ」
天竜人の護衛と執事、および人攫いの男たち――彼らは全員、最初のほうこそ何を言われたのか理解しかねるような、きょとんした表情を浮かべていたが、すぐさまそれをハッと何かを悟ったようなそれに変えると、言われた通り、天竜人の男とハンコックたち三姉妹を囲うようにして円陣を作り、周囲からの視線を遮る為の壁となった。
一体何を? と疑問に思ったハンコックではあったが――賭けてもいい、間違いなくロクなことではないだろう。天竜人は勿論のこと、人攫いの男たちが浮かべているニヤニヤとした醜悪な笑みからもそれは明らかで――案の定、天竜人はすぐに
身を纏っていた宇宙服のような白い衣服を脇に放り、中の肌着とパンツも脱ぎ捨て、顔のシャボンだけはそのままに――だらしない、ぜい肉たっぷりの裸体を露わにしたのだ。
ようやく、自分がこれから「ナニ」をされるのかを敏感に悟ったハンコックが、改めて「ひっ……!」と短い悲鳴を上げたが――逆に言えば、それ以上のことは何もできなかった。天竜人の命によって伸ばされる、円陣から外れた数人の男たちの手が――空いた隙間は、当然のように円の縮小によってすぐに埋められた――ハンコックが身に纏っていた衣服を剥ぎ取ることで全裸にし、そのまま彼女を仰向けにすると、四肢を押さえて地面に固定したのだ。
神が直接作りたもうたとしか思えぬ見事な肢体。豊かで形のよい乳房と、それとは対照的に括れた腰。そして、これまでに誰も手をつけたことがないとわかる、綺麗なピンク色の陰裂……。全てが外気に晒されてしまった。枷を嵌められた両手を上に、足は左右にガッポリと割り広げられるという、屈辱以外の何物でもない体勢で、だ。
「お願い! やめて!」「姉様に酷いことしないで!」という妹たちの声がどこか意識の遠いほうから聞こえたような気がするが、当然それで男たちが止まるはずもなく――あまりの恐怖と屈辱のせいで、ハンコックはもはや悲鳴を上げることさえできなかった。カッと見開かれた両目は、自身の無理矢理広げられた両脚の間にある地面で膝立ちになった全裸の天竜人。その股間で既にイキり立っている「モノ」に向けられていて――全身の肌が
この男は、今ここで自分を犯す気なのだ。自分を――いずれは偉大なる『豊王』の妻となり、彼と共にこの世界に頂点に立つことにある自身の肉体を!
それなのに――嫌だ、いやだ、イヤだ……! しかし、いくら首を左右に振りながらも涙を流し、心中で拒絶の言葉を吐こうとも、その程度のことで眼前の
「これこれ♪ そう嫌そうな顔をするでないえ♪ 『九蛇』の娘よ――今この場で、その
そう言いながら、開かれた両足、具体的には両太腿の根本辺りに手を置いて――ゾワリ、とハンコックの背筋に改めて寒気が走った――陰裂と逸物の間にある距離を徐々に短くしていく天竜人。ふざけるな、貴様など「神」ではない、わらわにとっての「神」は、この世にひとりしかいない――と、そう思ったハンコックは、しかし、下劣な「ブツ」と自身の女の園との距離が縮まっていく内に、そういったわずかな反抗心も消え去り、最終的には、助けを求めるか細い声しか出せなくなってしまった。すなわち、
「助けて……助けて……!」
あとほんの数秒で、今まで大事に取っておいた処女が失われてしまうという現在の状況。それを受けて、今や大量の涙を頬に伝わせている顔を横に逸らしながらギュッと目をつぶり、唇をワナワナと震わせながら、ハンコックは――
「……『豊王』様ぁ……!」
そして――ドサドサドサッ……! と。
泡を吹きながら唐突に身体を横たわらせるは、円陣を作っていた男たち。全裸に剥かれたハンコックの四肢を押さえていた男たちも同様だ。ハンコックも、彼女を犯そうとしていた
「どうした? はアンタの頭のほうだろうが――
地面の上に無造作に放置された、一部、引きちぎった
「えっ? は――だ、誰だえお前は? いや、それより待て! その拳で、一体何をする気だえ!? わしちが誰だかわかってるのか!? そんなことをしたら貴様なんかヴォゲァアッ!?」
悪辣な天竜人は、最後まで台詞を言い終えることができなかった。それよりも先に撃ち放たれた美丈夫の右拳がその横っ面を捕らえ、言葉を紡ぐどころではなくなってしまったからだ。
代わりに周囲に響き渡るは、肉を強く打つ打撃音。からの汚らしい濁音混じりの叫び声。だらしない肥満体系の裸体はきりもみしながらも裕に5、6メートルほどの距離を飛んでいき、そこから更に同じぐらいの距離の摩擦痕を地面に残した後で、そのままグッタリと動かなくなった。
精々が、白目を剥いた状態でビクビクと身体を痙攣させるぐらいで――完全に気絶していた。天竜人の
先ほどまで感じていた屈辱や恐怖は、まるでそれが嘘であったかのように消え去り、代わりに心中を支配するのは、えも言えぬ安堵感および幸福感で――「この方」だ、とハンコックは確信していた。ここ2年の間、毎晩己を慰める為の材料としてきた手配書の写真を思い浮かべるまでもなく、『九蛇』の末裔としての本能が、おのが身に刻まれた遺伝子が、血の記憶が、眼前の男こそが「そう」なのだ、とハンコックに知らせていた。
「……アンタがどこの誰かぐらい、よーく知ってるよ」
「……間に合ってよかった。その――
熱い夜に聞く風鈴の音色を思わせるような、優しい声色。それは、つい先ほどまで理不尽に処女を奪われそうになっていたハンコックにとっては、希望の
「『豊王』……様……♡」
2メートルの長身に、スラリとした手足と、細身ながらも引き締まった肉体。それを覆う染みひとつない色白の肌。雪原を思わせる銀髪に、宝石のような深さと煌めきを持つ真紅の瞳。それを含めた目鼻立ちによって構成された、天与の美貌を持つハンコックでもハッと息を飲むほどの、美しさと精悍さを備えた相貌――やはり、間違いない。熱く濡れた吐息混じりに先の言葉を漏らしながら、ハンコックは改めて確信した。約2年もの間想い続けてきた、自分にとって――否、全世界の女たちにとっても究極の理想像に違いない、「最上の
イングナル・フレイ。
その本人と念願の邂逅を果たせたことで、ボア・ハンコックは――手枷以外は一切何も身に着けていない全裸の状態で、屋外の地面の上に仰向けになっているという
下腹部の奥にある子宮を、