※この作品はR-18です。

豊穣の王   作:イロゴト柿

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第28話『5人の賢人』

 ……そして。

 

 再び時間は元に戻り、現在。

 

 世界的な大海賊である『カイドウ』と『ビッグ・マム』を、海賊(れんちゅう)の流儀に(のっと)る形でこれ以上自分たちを追い回さないよう「説得」し、その「戦果」を手土産に王下『七武海』に名を連ねることで、政府や海軍からも追われない、恋人(なかま)たちやアマゾン・リリーの住民たちとの平穏な生活を手に入れる。

 

 そのことを事前に相談していたオルビアを除く他の恋人(なかま)たちおよび、レイリーとシャッキーに説明し、にも関わらず――カイドウにビッグ・マムといった2大巨頭との戦いを控えているにも関わらず――その日の夜に、シャッキーからの誘惑に負ける形で彼女との「性戦」を開始。

 

 翌日には彼女と共に恋人(なかま)たちが待つバーへと朝帰りし、その殆どすぐ後にかかってきた一本の電話。フレイたちの「作戦」が始まるまで近くの島で待機している筈の『九蛇海賊団』の船。そこから、憧れの『豊王(フレイ)様』に一刻も早く会いたいが為に小舟で飛び出した三姉妹の少女たちが、「人攫い」の手にかかってしまったかもしれない。

 

 そんな『九蛇海賊団』の船長にしてアマゾン・リリーの現皇帝代理であるらしい、『グロリオーサ』という女性からの報告を受けたフレイとステューシーが、件の三姉妹救出の為にシャッキーの店を飛び出してから数十分後。

 

 案の定、諸島で最も大きな『人間屋(ヒューマンショップ)』へと続く1番GR(グローブ)の大通りにて、「人攫い」に捕まってしまったらしい三姉妹を見つけたフレイは、彼女たちを即金で買い取ったらしい『世界貴族』――『天竜人』が、三姉妹の内の黒髪の少女を犯そうとしていることを、彼女の『声』を聴くことで確信。

 

 己の手で制裁を加えたいと願うあまり、わざわざ周りを囲っている男たちのように『覇王色』を浴びせないよう配慮した下手人(てんりゅうびと)を殴り飛ばすことによって、うら若き乙女の尊厳を守ることに成功したイングナル・フレイの、現在の心境はと言うと――

 

(――()()()()……!)

 

 という、苦い後悔によって占められていた。無論それは、犯されそうになっていた『九蛇』の少女を間一髪の所で助けることができたという結果、それ自体に対してではなく、

 

(……つい怒りに囚われて、直接殴り飛ばしちまった……! 周りの連中みたいに、『覇王色』で一緒くたに気絶させちまえば、もう少し穏便に済ませられただろうに……!)

 

 他ならぬフレイ自身が、幼い頃は天竜人の奴隷だったという過去の持ち主で、その時の自分と、凌辱されそうになっていた『九蛇』の少女の姿を重ねてしまった結果である。が――当然、今さら後悔してももう遅い。その証拠に、

 

「て……『天竜人』を殴った~~っ!? な……なんてことをっ!」

「確か、()()()()()()()が起きた時には、『大将』が軍を率いてやって来るんだろ……!? 最悪じゃねえか……!」

「い、一体どこの誰だアイツは!?」

「あの女みたいな顔に……銀色の髪と、紅い瞳……。『豊拳』って奴じゃねえかっ!?」

「オハラに向けられた『バスターコール』を止めて、学者――犯罪者たちを逃がしたっていう、あの!?」

「確か、『金獅子』とも戦ったって……! 懸賞金は、確か5億……!」

「そんなことはどうでもいい! 早くここから離れるぞ――周りの人間や知り合いにも知らせてやるんだ! このGR(まち)……いや、この諸島自体がヤベェ! 5億の賞金首と、軍を引き連れた『大将』がぶつかり合ったりしたら……!」

「で……でも、本人も護衛も気絶しているし、海軍はまだこのことを知らないんじゃ……?」

「とっくに誰かが知らせたに決まってるだろ!? そうでなきゃ、後で事が露見した後にとばっちりを受けるのは、犯罪行為(それ)の通報を怠った近隣住民(おれたち)だろうし――天竜人(れんちゅう)の性格を知ってるこの町の住人なら、当然……!」

「まずはとにかく、できるだけ遠くまで離れろ! 話はそれからだ!」

 

 フレイは軽く舌を打った。今からでも『覇王色』を行使して、周囲の民間人(ギャラリー)たち全員を気絶させるべきか? ……いや、駄目だ――フレイは即座にその考えを却下した。先ほど誰かが言ったように、恐らくは既に民間からの通報も成された後だろうし、仮にそれがまだで事態の封じ込めに成功したとしても、その内、目を覚ました天竜人本人が海軍に泣きつくだろう。

 

 かの者の「存在」自体をこの世から隠蔽――消し去るという手段も取れない。たった今自分が殴り飛ばした現場を多数の人間に見られたことだけは確かな為、後で真っ先に疑われるに決まっているからで――それは同時に、『七武海』の一席を手に入れるチャンスを、永遠に失うに等しいということを意味していた。その制度を作った『世界政府』の中枢に居座っているのが、『天竜人』と呼ばれる者たちなのだから。

 

 先立って殴り飛ばしたことによって、記憶も一緒に吹っ飛んでるに違いないというのは、流石に都合が良過ぎるというもので――「作戦」成功の為にも、天竜人が目を覚ます前に諸島を離れるという選択も、ない。

 

 昨日の内にステューシーが、CP(サイファーポール)時代の伝手(つて)を使って「作戦」の詳細を、とある知り合いのジャーナリストにリークしておいたと言っていたし――無論、『七武海』就任の為に必要な世界的な「知名度」の獲得を、より確実なものにする為だ――今さらバックれることは許されない、と。

 

 むしろそんなことをしては、とんだ「腰抜け」として世界中に報じられ、かえって『七武海』の地位は遠ざかってしまう――つまりは、これからも政府や海軍に追われ続けることになり、恋人(なかま)たちとの平穏な日々が遠ざかってしまう、とも。

 

(まあ……でも……)

 

 フレイは思った。天竜人に手を出せば『海軍本部』の「大将」が軍を率いてやってくるというのは確かに世界の常識(の筈)だが、どの道、先述したように『七武海』入りに必要な「知名度」稼ぎの為に、こんな場所――『海軍本部』に程近いこのシャボンディ諸島で、カイドウやビッグ・マムといった大海賊(ビッグネーム)と戦えば結局は同じ展開になるのだからと、半ばヤケクソ気味にそのように割り切ることにしたフレイは、

 

「あー……大丈夫か……?」

 

 と言って、たった今天竜人に犯されそうになっていた黒髪の少女。その両手首に嵌められた海楼石の手錠を、高レベルの『武装色』で難なく破壊して遠くに放り投げ(爆破機能を警戒しての投擲だったが杞憂だったらしく、使い物にならなくなった手錠はそのままガシャンッ、と情けない音を立てて地面に落ちた)、続いて、すっぽんぽんの彼女を手を引いて立たせた。

 

 当然のようにこのままにしておく訳にはいかず――かといって、彼女が着ていたと思われる衣服は、乱暴に引きちぎられたのか、見るも無残な状態で周囲に散乱していた為――フレイは、仕方なく自分が着ていたTシャツを脱ぐと、それを何やらボーっとしている黒髪の少女に頭から被せた。

 

 歳の頃は恐らく10代前半といったところか。同年代の少女の平均的なそれと比べればやや背は高いほうだろうが、元々大柄(2メートル)なフレイが着ていた物である上に、やや丈長でもあるTシャツを被せられたことで、何とか――本当に何とか、大事な部分が辛うじて見えない程度には覆い隠すことができた。かなりギリギリであることと、その下が全裸であることを踏まえると、走ったり跳んだりといった大きな動きは自粛する必要があるだろうが――と、フレイがそんなことを考えていると、

 

「――『豊王』様ぁ♡」

「は――あっ!? ウム……むっ……!?」

「「ね、姉さま!?」」

 

 黒髪の少女より頭2、3個分ほど身長が高いふたりの少女――事前に聞いた外見的情報から察するに、緑色の髪が次女の『サンダーソニア』で、橙色の髪が三女の『マリーゴールド』に違いない――が、ほぼ同時に驚きの声を上げるのも当然だった。着ていたTシャツを被せる為に地面に片膝を着いたことで、ほぼ同じ目線になっていたフレイに対し、黒髪の少女は突如抱き着いて見せると、そのまま勢いに任せる形でフレイの唇を奪って見せたのだ。

 

 突然のキス――しかも、(恐らくは)初めてであるにも関わらず、舌を差し込み、絡めるタイプのディープなキスを受けたフレイは大いに驚き、目を白黒させた。

 

 その間にも別の生き物のように蠢く少女の舌が、ピチャピチャっ♡ という淫靡(いんび)な音を立てながら、フレイの舌を間断なく(ねぶ)ってきて――しかも、絡ませてきたのは舌だけではなかった。細い両腕はフレイの首の後ろへ、既にムッチリ♡ と太腿に柔らかな肉がつき始めている両脚もまた彼の腰の後ろへと回し、可能な限り眼前の雄との密着を図る『九蛇』の少女。

 

 前述したように、歳の程は恐らく自分(24歳)の半分程度だろうが、その身体的特徴は、限りなく一人前の「女」――しかも、極上の――に近づいているらしく、間違いなく意図的にこちらの胸板に擦り付けられている乳房はそれなりの豊かさを備えていたし、こちらの口内を貪る舌使いも、かつて毎日のように抱いていた娼婦たちに劣っていなくて、だからこそ、

 

(ま、マズイ……!)

 

 と、そう思うと同時に不覚にも「反応」してしまったフレイは、グググッ……! と肥大化を始めてしまった己の愚息の変化が、そこに同部位をしきりに擦り付けてきている黒髪の少女に気づかれる前に、両腕を互いの身体の間に差し込んでは伸ばすことで、何とか彼女の身体を引き剥がすと、

 

「待て――その、えっと……ハンコック?」

 

 グロリオーサから電話越しに聞いた話だと、確か三姉妹の長女で、そういう名前だったよな? と――そう思いながら尋ねてみれば、眼前の少女は、

 

「はい――ボア・ハンコックです♡ あなた様のハンコックでございます♡」

 

 と、完全に発情した表情で応じてきて、

 

「今回は、わらわのうかつな行動のせいでご迷惑をおかけして申し訳ございません♡ 幼き頃より想い続けてきたあなた様に♡ ようやくお会いできると知ったことで、いてもたってもいられず♡ お詫びとして、どうか――どうぞ、この場で♡ たった今あなたが守って下さった、わらわの純潔を……♡」

 

 そこまで言ったところで台詞を中断させた上で目を閉じ、んー……っ♡ と尖らせた唇を再度肉迫させてくるハンコック。間に挟まれたフレイの両腕をものともせず、だ。恋の力が成せる技か、あるいはこの年齢で『九蛇海賊団』の一員に抜擢されるほどの「才」故か――とんでもない力だった。フレイは慌てた。

 

「だ、だから待てって――少し落ち着けっ!」

 

 なんとか、近づいてくるハンコックの顔、その朱く染まった頬をペチペチと叩きながら、フレイが言った。

 

「気持ちは嬉しいけど、今は状況が状況だから……な? 悪いけど、おれにはこれからやらなきゃいけないことがあって――これから君たちをシャッキーの店……先々代皇帝の所に『送る』から、そこからはあの人の指示に従ってくれ」

 

 後でおれも、必ず合流するから――と、そう言ったところで、ようやくハンコックの目に理性の光が戻った。頬を軽く叩かれたことで正気に戻ったらしい彼女は、ハッ……! と表情を強張らせたかと思うと、フレイに絡ませていた両手両足を解き、地面に降り立った上で――さながら、王に謁見する騎士よろしく、片手と片膝をついた姿勢を取ると、次のように言った。

 

「も、申し訳ありません……! わらわとしたことが、つい、我を忘れてしまい……! ようやく、豊王様の子を孕めるかと思うと、理性を保つことができず……」

「…………」

 

 大分飛躍してんナァ、とフレイは思った。あらかじめ、彼女らの自分に対する懸想の程をグロリオーサやシャッキーから聞いていたフレイではあったが、まさかこれ程とは、と。

 

 正直、ここまでの美少女にこれほどにまで想われるというのは、まったくもって悪い気はしなかったが――生憎今は、状況が悪い。いつ、事態を聞きつけた海兵たちがやって来るかもわからないし、逃げるにせよ返り討ちにするにせよ、彼女たちがいる状態ではどちらの対処も難しいだろう。

 

 そうなる前に一刻も早く彼女を「送る」べきだと、そう思ったフレイは、ハンコックの妹であるサンダーソニアとマリーゴールドの手首にも嵌められていた手錠を難なく引きちぎった上で遠くに放って見せると、

 

「……『輝く者(スキールニル)』」

 

 昨晩、シャッキーと交わった際に発現した新たな能力。黄金のオーラを(もと)に、まったく同じ外見、更には五感もリアルタイムで共有するという機能を備えた「分体」を作り出すという、理外の異能を発動。それを3人分出現させると――当然のように目を丸くして驚いている三姉妹に向かって、こう言った。

 

「おれの『能力』だ。心配しなくていい」

 

 次に彼は、顕現したばかりの分体たちに目を向けると、

 

「一旦感覚の共有を切るから、海兵たちとの戦闘やその他諸々のトラブルを何とか避けながら、シャッキーの所に送り届けてあげてくれ。それが終わったら()()()()()

「「「わかった」」」

 

 分体たちは揃って返事をすると、それぞれがひとりずつ、傍に立っていた姉妹をお姫様抱っこのスタイルで抱え上げ――その際にハンコックが、(本物のフレイに向けて)次のように言った。

 

「ほ――豊王様!」

「うん?」

「改めて――わらわたちを助けてくださり、本当にありがとうございます! このご恩は生涯忘れません……! ですので――どうか、どうか必ず! 無事に戻ってきてください! 口惜しいことに、今のわらわたちの実力では、これから豊王様が成さろうとしていることの手伝いさえままならないと思われますので……! せめて、無事に戻ってきて下さった暁には、私たちが持つ『すべて』を惜しみなく捧げる所存でございます――コラッ! ソニア! マリー! そなたたちもちゃんと礼を言わぬかっ!」

 

 フレイへの感謝の言葉もそこそこに、ここまで戸惑ってばかりでロクに言葉を発していなかったふたりの妹に向けてウガァッ! と気炎を吐く黒髪の長女。それを受けたふたりは、自分を抱えてくれているそれぞれの分体(フレイ)の腕の中で、一度ビクリっ! と身体を震わせたかと思うと――本体(こちら)のほうに視線を向けた上で、次のように言った。

 

「あ、ありがとうございます……」

「ありがとうございます、豊王様……」

 

 おずおずとした口調だったが、それでも、自分を見つめるふたりの瞳の奥には――ハンコック程ではないにしても――確かな情愛の色がチラついていて。

 それを見たフレイは、まさか本当にグロリオーサやシャッキーが言ったように、アマゾン・リリーの国民全員がこんな感じなのかと、恐ろしいような、ありがたいような、奇妙な感情を抱いた上で、開いた手を振りながら「気にするな」と苦笑気味に応じてみせると、分体たちに対し、

 

「よし――行け」

 

 その言葉を合図として『月歩(ゲッポウ)』で跳び上がる、三姉妹を抱えた分体たち。その姿がシャッキーの店がある方角へと消えていったのを見届けたフレイは、早速行動を開始した。早くも予定とは大分異なった展開だが、仕方がない(天竜人を「殴った」件については100%自制を失った自分が悪いのだが、フレイはあえてその事実からは目を逸らすことにした)。

 

 着ていたTシャツをハンコックに譲った関係で上半身裸の状態になった彼は、どうせ通報を受けた海兵たちがやって来るならと、そう思いつつも行動を開始――目指すは、あらかじめカイドウやビッグ・マムと戦う場所として決めていた66番GR(グローブ)。『海軍本部』の駐屯地がある場所だ。

 

 そこならば、民間人に迷惑をかけることはない――とは言い切れないし、なんだったら天竜人を殴り飛ばした時点で、既に大分迷惑をかけているとさえ言えたが、まあ、他のGR(ばしょ)よりは大分マシだろうと、そう思いつつも、先の分体たちと同じように『月歩(ゲッポウ)』を用いての移動を始めるフレイ。

 

 ……気絶し、顔の半分以上を腫れ上がらせた上に、だらしないぜい肉が目立つ裸体を晒した状態で大の字で横たわっている天竜人(ゴミクズ)と、同じように気を失った状態で倒れているその護衛と『人攫い』たちは当然のように放置した上で、だ。

 

「……っ! おい! いたぞっ! 『豊拳』だ!」

「ヤリディック聖を殴り飛ばした、前代未聞の重罪人……!」

「宙を走っているぞ!?」

「『大将』殿の到着を待つまでもない! 討ち取れっ!」

 

 やはり、ことの顛末を見ていた民間人の誰かによって、既に通報は成されていたのか――宙を駆けるフレイを見るや否や、ドンドンドンッ! と銃を乱射してくる海兵たち。

 

 当然、未来視レベルの『見聞色』を持つフレイにそんな雑な攻撃は当たる筈もないし――何なら、こうして彼らに発見されたこと自体が、フレイの思惑の内だった。

 

 三姉妹を抱えて跳んでいった分体たちとは違い、その気になれば、『(ソル)』による超高速移動によって姿を見られることなく移動することさえ可能な手ぶらのフレイが、『月歩(ゲッポウ)』による空中移動という、極めて目立つやり方で66番GR(グローブ)を目指している理由――あえてそうすることによって、海兵たちの注意を引く為に他ならない。

 

 そうすることで、反対側の方向にあるシャッキーの店にいる恋人(なかま)たちや、そこを目指して三姉妹を運んでいる分体たちおよび、いまだ三姉妹を捜索中と思われるステューシーの安全を確保するという狙いだ。

 

 即興だが、上手くいった――自分に向けて放たれる弾丸の数々を難なくかわしながらも宙を駆け続けるフレイはそう思って、更に、ズボンのポケットから、あらかじめ渡されていた子電伝虫を取り出すと、とある番号に向けて念波を発信。

 

 プルルルル……という独特の鳴き声を発した後で、ガチャリッ、という音と共に閉じていた両目を開ける子電伝虫。通話相手の外見を擬態する機能を持つ手中の生き物の口元には、大変見覚えのある口紅……を模して赤く変色した、艶っぽい唇が形成されていて――「もしもし?」――オルビアの次に付き合いの長い「彼女」に対して、フレイは、

 

「例の三姉妹の救出に成功した。既にシャッキーの店に()()()から、お前も戻ってくれ。……後、実は、救出する際にちょっとしくじっちまって……。具体的には――」

『――うっかり天竜人を殴り飛ばしちゃった、とか?』

 

 咎めるような口調でステューシーが台詞を引き継ぎ、それを聞いたフレイの目がパチパチと瞬いた。

 

「どうして……」

『どうしてもへったくれもないわよ』

 

 ステューシーが言った。彼女(に擬態した子電伝虫)はそこでひとつ、実に大きなため息をついて見せると、

 

『今じゃもう、島中その話題で持ち切りよ――よりにもよって、「海軍本部」のすぐ近くで天竜人に手を上げるなんて! あなただったら、「覇王色」を駆使することで、姿を見せずに事を治めることもできたでしょうに! そりゃ、カイドウやビッグ・マムとドンパチする以上は遅かれ早かれでしょうけど……。大将たち(れんちゅう)が来る前にふたりへの「説得」を済ませるのが理想という話だったでしょう? 勿論、ふたりが次の襲撃をかけてくるタイミングなんてわかる筈もないから、分の悪い賭けだけど。……でも、こうなってしまったらもう――下手すれば、あのふたりが来るまで次々と送られてくる、大将を筆頭とした海軍の精鋭たちと戦い続ける羽目になるわ。いくらあなたでも、これは厳しいでしょうし、今からでも……』

「駄目だ」

 

 今度は、フレイのほうがステューシーの台詞を遮る番だった。宙を駆け、周囲から放たれる弾丸を苦もなくかわしながら――彼は続けて、

 

「お前たちの安全を保障させて貰った上で、あのレベルの怪物たちと存分に戦えるなんて好条件は、レイさんがいるこの諸島(しま)以外ではまず成立しないし、おれにとってはこれが最高に好都合(デカい)。『海軍本部』がすぐ傍にあることを差し引いても、だ。かと言って、既に引退したあの人をおれたちの逃避行につき合わせるのも悪いし、何よりそんなことをしたら――それで()()()()()首尾よく逃げおおせたとしても――距離的な問題から、海軍(れんちゅう)の矛先がアマゾン・リリーの人たちに向けられる可能性が高い。……あの天竜人(ゴミクズ)がハッキリと言ってたからな。長女のハンコックって子に対して――『九蛇』の娘、って」

 

 フレイがそこまで言葉を連ねるのと、彼の身体が海に面した66番GR(グローブ)に降り立ったのはほぼ同時だった。『海軍本部』の駐屯地があるという関係上、つい先ほど天竜人を殴り飛ばしたばかりの彼は、当然のように大勢の海兵に取り囲まれることとなるが――「ほ、『豊拳』だ!」「取り囲め! すぐにだ!」「自分からノコノコとやって来たのか! 馬鹿な犯罪者め!」――これまた当然のように、その殆どを『覇王色』で無力化(きぜつ)させた上で、フレイは、わずかに残った()()()()腕が立つ海兵たちも、遠距離からの斬撃、『嵐脚(ランキャク)』などで薙ぎ払うことで、着地からほんの数分の内に敵を殲滅。安全を確保することに成功すると、

 

「お前が言ったように、『覇王色』で姿を見せずに済ませられたところを、わざわざ荒っぽいやり方で解決したのは間違いなくおれの落ち度(ミス)だから、そこは素直に謝っとく――スマン。……けど、そうしなかったらそうしなかったで、結局連中は――さっきも言ったように――アマゾン・リリー……というよりは、今この諸島に停泊している『九蛇』の人たちに狙いを定めるんじゃないか? あの人たちが生まれついての優秀な戦士だってことはおれでも知ってるけど、シャッキーさんが言ってたように、『恋焦れ死に』のせいで年々弱体化しつつある状態で、その上、軍を率いた『大将』を相手にした日には……」

『わかった、わかったわよ』

 

 ステューシーが言った。彼女は再度、ハアァ~~っ、と特大級のため息をついて見せると、

 

『決意は固いって訳ね――いいわ。あなた自身がそこまで考えた上で決めたことなら、これ以上はこっちも野暮は言わない。……けど、ひとつだけ約束してくれる?』

「…………」

 

 無言で続きを促すフレイに対して、ステューシーは、

 

『……必ず、帰って来て。あのふたりに加えて「大将」まで相手にする以上、「絶対に勝って」なんて無茶は言わないから、せめて――帰ってきてちょうだい、私たちの所に。例の……「見聞殺し」? だっけ? それだって、都合よく習得できるとは限らないでしょう……? あなたが私たちのことを心底想ってくれているのは知ってるし、だからこそ、現在私たちを苦しめている問題の大部分を解決する為に、今回の計画に踏み切ったっていうのもわかってるけど――それでも、よ。……私も、オルビアも、ロビンも、シャーリーも、ヤマトも、しのぶも、日和も――全員が、あなたなしでは生きられないと思うような存在になってしまったのだから。……だから――改めて、お願い』

 

 絶対に、帰って来て――と。

 ステューシーは、そう言った。その言葉が嗚咽混じりであることに、フレイは気付いた。と同時に、喉奥から何か熱いものがせり上がってくるのをハッキリと感じたが、それを何とか渾身の精神力で飲み込んだ上で、フレイは次のように返した。

 

「ああ、わかっ――」

 

 ――た、と言い切るのとほぼ同時だった。突如、手中の子電伝虫の口から、ザザーッという、砂嵐を思わせる音が鳴り響き、通話相手(ステューシー)の擬態を解いた(保てなくなった、と言うべきか)かの生き物の両目が、グリグリと滅茶苦茶な方向へ動き始めた。明らかに様子がおかしい。一体これは――? と、フレイがそう疑問に思ったところで、

 

『――《ザーッ》……《ザザーッ》……イングナル・フレイ……「豊拳」だな?』

「……アンタは? というか、一体どうやって――」

『海軍の通信部に掛け合い、盗聴用の「黒電伝虫」と念波妨害が可能な「ツノ電伝虫」を応用して、お前たちの念波を奪わせて貰った――が、そんなことはどうでもいい。……()()()「五老星」。……それが何かは知っているか?』

 

 フレイは息を飲んだ。念波を乗っ取られたということ自体も十分驚くべきことではあったが、それをした相手というのがまさか――

 

「――『五老星』? 確か、天竜人の最高位……世界最高の権力者だっていう……」

『そこまで知っているなら話は早い――いや、我々が「確認」の為に差し向けた諜報員(エージェント)を篭絡した以上は、聞いていて当然か』

「アンタたちが差し向けた――?」

『まあ、それについても今はいい』

 

 電話の相手――5人いるとされる『五老星』の内の誰かは知らないが――は、フレイからの疑問を一方的に打ち切ると、

 

『まずは始めに、一番重要なことを聞く――「豊拳」。我々がお前を、王下「七武海」の一席に据えたいと考えていると知ったらどうする?』

「……っ!? どう……する……って……」

 

 フレイは再び息を飲んだ。まさかの展開だった。

 

「……もしもそれを受けたら、おれは、というか、おれたちはもう――」

『――海軍や政府(われわれ)に追われることはない。……当然だろう。よもや、「七武海」の制度に関する説明が必要か?』

「いや……それは問題ない……()()()()……」

 

 正直、幼い頃に受けた屈辱を思えば業腹(ごうはら)ではあったが――フレイは、敬語を使うことに決めた。つい先ほど自分がしでかしたことを思えば、どれだけ媚びへつらっても足りないだろうし、何より愛する恋人(なかま)たちの安寧の為だと――そう思って、

 

『……そうか。ならば当然、「七武海」に()()ということが、政府や海軍(われわれ)()()という意味であることは知っているだろう……。要するに、お前の部下である()()()()が、「義勇軍」――いや、今は小癪(こしゃく)にも、「革命軍」と名乗っているのだったな――に加入した「生き残り」たちのように、「歴史の本文(ポーネグリフ)」の探求、解読などを続けられては、当然称号を与えることなどできないという訳だ……』

「その件については、既にふたりと話してある――あります」

 

 いや別にあのふたりはおれの「部下」って訳じゃねえよ、と――そう思いながら、フレイが言った。彼は続けて、

 

「もしも()()()を優先するつもりなら、始めから、あなたたちが今言ったクロ……『生き残り』の人たちのほうに着いて行っていた、と。……少なくとも、()()あのふたりが望んでいるのは『探求』よりも『安寧』です。だから、もしもあなたたちがそれを保障してくれるというのなら――」

『――我々に尻尾を振るのもやぶさかではない、という訳か? それは重畳(ちょうじょう)

 

 電話の相手が言った。先ほどまでとは違う声だった。どうやら――恐らくだが――5人全員でひとつの電伝虫を取り囲んだ状態で話しているらしい。

 

 しかし、仮に彼らの現在地が地上1万メートル以上の高さに位置する『聖地(マリージョア)』のどこかであった場合、自分の手中にある子電伝虫の念波がそんな所にまで届くとは思えないが? 大型の電伝虫を使った『間接通信』でもしているのだろうか? と――そんなフレイの思考に、続けて発せられた相手の声が割り込んできて、

 

『……貴様がそれで妥協できるというならば、我々としても「七武海」の称号を授けるのはやぶさかではない。懸賞金5憶ベリー……。2年前に「オハラ」に向けられた「バスターコール」を攻略し、その数カ月後には脱獄したばかりの「金獅子」とも渡り合って見せたお前ならば、実力的にも申し分ない。……先ほど、こちらに上がってきた報告を聞くまでなら、な」

 

 そこまで言ったところで、電話の相手はハァッ、と失望したようなため息をついて見せると、

 

『……ヤリディック聖への暴力行為だと? 困ったものだ……。残念だが、我々にも面子がある。お前が「七武海」に就く意思を見せたところで、その恩赦だけでどうにかできるような事態ではないぞ。他の連中(どうぞく)が納得すまい――「バスターコール」の攻略や金獅子との戦いにしても、既に2年の時が経過しているからな……。説得の材料としては薄いだろう……』

「……どうしろと?」

『証明して見せろ』

 

 ピシャリとした口調で、先のふたりとはまた別の声が言った。

 

天竜人(われわれ)に歯向かう者が現れた際に海軍が行うようになっている「大将」の出動要請――それを跳ね除けて見せろ。「大将」の力をもってしてもどうにもならない実力者だと証明し、「七武海」として味方につけられるのならば多少の「粗相」には目をつむってもいい、と我々に思わせて見せるのだ。……ちょうど、お前の首を取りたがっている「大将」に昇進したばかりの男が、つい先ほど本部を飛び出した、という報告を受けたところだしな』

『軍艦の出撃準備も待たずに、単身「本部」を飛び出すとは……。よほど、お前に執着していると見える』

 

 更に別の声が言った。4人目だ。その声の主は続けて、

 

『――間違っても「他の者たち」にお前を討ち取る手柄を渡したくないようだ。恐らくは、つい先ほどこちらから知らせたばかりの報告を受けての行動だろう……。たった今、マリージョア(ここ)の上空を()()()()()()()()()()()()()()()、という……』

 

 そこまで聞いたところで、フレイはハッと表情を強張らせると、厚い雲に覆われた遥か上空へと視線を向けた。あらかじめ計画していた「作戦」の都合上、常に限界まで展開していた『見聞色』――それが、遥か上空からこちらに向かって下りてくる、ふたつの巨大な「声」を感じ取ったのだ。

 

 その正体を即座に悟ったフレイは戦慄した――馬鹿な、早過ぎる。『魚人島』へと向かう直前、こちらが何とか連中のすべての船を沈めてから、3日と経っていない。まさか、自分たちの拠点には戻らず、船の修理も購入も略奪もせずに、持ち前の『能力』を使って自分たちだけで――? 更には、先ほど五老星の誰かが言ったことを裏付けるかのように、水平線の彼方から迫って来る謎の「声」。

 

 ……いや、謎の、ではない。この「声」には覚えがある。「大将」に就任したばかり、というワードからきっとそうだろうと思ってはいたが、やはり――どうやら、想定していた中でも最悪の状況(ケース)が現実になってしまったらしい、とフレイは苦々しい思いで唇を噛み締めた。面子ではなく、タイミングの話だ。すなわち――

 

『あのふたりとお前との間に、どういった因縁があるのかは知らないが――どうも執拗に追い回されているらしい、という報告だけは以前から受けていた。よもや、「赤い土の大陸(レッドライン)」を飛び越えてまで、単騎で追いかける程とはな』

 

 ――と、そんなフレイの思考に割り込む形で、また更に別の声が言った。これで5人目だ。当然と言えばそうだが、やはりこの電伝虫の向こう側では、『五老星』全員が勢揃いしているのだろう。そう思うと緊張した――と言いたいところだが、それよりも更に緊張するべき者たちが、こちらに向かって「同時」に急接近していて、

 

『……まあ、その辺りのお前たちの事情は正直どうでもいい。どうでもいいが――とにかく』

『海軍大将、カイドウ、ビッグ・マム――この者たちの襲撃を、何とか「攻略」して見せろ。ただし、「撤退」だけはなしだ。それをしようものなら、もう2度とこういった「慈悲」はないと思え』

『返り討ちにするでも、負けを認めさせるでも――とにかく、今言った3人から逃げずに立ち向かい、「攻略」して見せた暁には――お前の望み通り、「七武海」の一席を約束し、例の親子を含めた仲間たちにも恩赦を与えよう。それほどの功績を挙げれば、同胞たちにしても、見せしめに処罰するよりも、七武海(みかた)として引き入れたほうが良いという思いが勝つ筈だ』

『……というよりは、我々がそのように説得してやる。無論、先ほども言ったように、「歴史の本文(ポーネグリフ)」の探求と研究を諦めるのが絶対条件だが――その辺りの仔細は、後でまた改めて詰めればいい。……今はとにかく、目の前の戦いに集中することだ』

『では、健闘を祈る』

 

 ――と。

 5人全員のリレー形式でそれだけのことを言って――こちらの返事もロクに聞かずに、ガチャリと電話を切る5人の賢人たち。これによってフレイの手中にある子電伝虫の意識が途切れ、「ZZZ……」と穏やかな寝息を立て始めた。憎らしい程に安らかな寝顔だった。

 

 フレイは嘆息し、子電伝虫を黄金のオーラで包むと、そのまま遠隔操作によって遠くのほうへと逃がしてやった。……結局のところ、やるべきことは変わらない――フレイは覚悟を決めた。既に何度も述べたように、先の天竜人の一件がなくとも、こんな本部に近い場所で「あのふたり」と戦う以上は、どの道「大将」が差し向けられることは決まっていたのだから。

 

 それらをどうにかできれば『七武海』の一席を約束してやる、と――他ならぬ政府の最高権力者たちから――言質を取れただけでも僥倖(ぎょうこう)とするべきだと、そう思って。

 

「……っ! 来たなっ……!」

 

 フレイは身構えた。周囲の海兵は全員無力化した上に、天竜人の怒りを買った犯人(じぶん)66番GR(ここ)にいることは既に島中に知れ渡っているのか――とばっちりを恐れた付近一帯の住民たちは漏れなく避難済みで、不気味な程の静寂が支配しているそこから見える水平線より、巨大な氷の波が迫って来ていた。

 

 どこかの「冬島」から分離して流れてきた氷山などが近づいてきているという訳ではなく、猛烈な勢いで海面が凍り付いており、それを実現させている「何か」がこちらに向かって突貫してきているのだ。

 

 軍艦の出撃準備も待たずに単身飛び出した、という先の五老星の発言は本当らしい――そう思いかけたフレイではあったが、すぐに、厳密には単身(そう)ではないということに気がづいた。

 

 ()()()()()()()……! 現在、海を凍らせながらこちらに向かってきている「あの男」とは別に、もうひとり! ……既に19年近い月日が経とうとも、フレイにとっては忘れようにも忘れられない、あまりにも強大な「(オーラ)」を放つ傑物が――!

 

「マジかよ……っ! アンタまで来るのか……!?」

 

 今回の「コレ」は間違いなく、天竜人に手を出した自分に対する報復の為の出動だろう――が、かの「英雄」が天竜人(れんちゅう)を毛嫌いしていることは、フレイも風の噂で知っていた。誰もが顔色を伺う世界の「創造主」の末裔たちに、平気で「ゴミクズ」などとのたまいながらも、常人には及びつかない程の「人望」と「実績」によって()()()()に済んでいる剛の者。それもまた、フレイが彼を尊敬する理由でもあるのだが、そんな彼がなぜ――? と、ゆっくりと疑問に浸っている暇もなくて、

 

「――『豊穣の樹(ユグドラシル)』!」

 

 僅かに腰を落とした上で肩幅に開いた両脚。その右側(かたほう)のつま先に力を入れた上で黄金のオーラを顕現させてみれば、そこから現れるは巨大な黄金樹。

 

 崩れゆくオハラの『全知の樹』を縛って支えて見せてから約2年。その頃とは比べ物にならない程の成長速度と規模を実現させるに至ったフレイのその技によって、地面を這うように増殖、展開された黄金の根が、周囲で気絶していた海兵たちを縛った上で遠くへと移動させ――同時に、ひときわ大きく、津波を連想させるような規模で生成された黄金樹の氾濫が、氷塊の侵攻を迎え撃った。

 

 凄まじい轟音、島中の大気が震えたのではないかと思うほどの衝撃波が発生すると共に、氷塊の侵攻が止まり――20メートル以上の高さはあろうという、氷塊と黄金樹が衝突した部分、そこよりも更に上空を目指して、左手で握り拳を作りながら跳び上がったフレイは、同じく、氷壁の向こう側から、自分と並んで跳び上がったひとりの男の姿を目の端で捕らえた。その男は、こちらとは逆に、右手で作った拳を脇に構えていて――。

 

 3メートル近い体躯を誇る筋骨隆々の肉体に、モミアゲ部分が白くなりつつある短めの黒い頭髪。口周りに蓄えた同色の(ひげ)に、左のコメカミから左目の下側にかけて縫合された、三日月型の傷痕が特徴的なその男の名は――『モンキー・D・ガープ』。

 

 『海軍の英雄』、『ゲンコツのガープ』といった異名を持つ、海軍の生きた伝説。

 

「――――っ」

 

 こんな状況であるにも関わらず、19年振りになるその姿を目で捉えた瞬間、フレイの心臓が肋骨の内側でバクンッ! と大きくバウンドし――しかし、すぐにその『英雄』から目を切ったフレイは、上空から迫りくるふたり分の人影へと目を向けた。

 

 ……そう、フレイもガープも、始めからそのふたりを目指して跳び上がっていたのだ。先ほどからフレイが『見聞色』で気配(こえ)を捉えていたふたりを――下手をすれば、この辺り一帯を消し飛ばしかねない程の『覇気』を纏って下りてくるふたりを!

 

天下の(ヘブンリー)――」

 

 ふたりの内の片方――5メートル近い巨体を持つ、大量の脂肪を蓄えつつあるふくよかな身体と厚い化粧、そして長い桃色の髪が目立つ女海賊『シャーロット・リンリン』、通称『ビッグ・マム』が、急降下しつつも、右手で()()()巨大な炎塊を振りかぶれば、

 

(ラグ)――」

 

 もう片方――ビッグ・マムに劣らぬ巨体と筋骨隆々の肉体に、青い鱗を纏った、『ウオウオの実』幻獣種、モデル『青龍』の「人獣型」になったカイドウが、バチバチと黒雷を迸らせた、その体躯に見合う巨大な金棒を振り上げた状態で迫ってきていて――それらに対するフレイとガープの対処法は、シンプルだった。すなわち、

 

「「拳骨(ギャラクシー)――」」

 

 上空より迫りくるふたつの「凶星」。

 それらに対抗できる程の威力を持つ技によって、全力で迎え撃つ――!

 

「――(フォイア)アァッ!!」

「――奈落(ならく)ぅっ!!」

「「――衝突(インパクト)おぉっ!!」」

 

 ドッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!! と。

 

 『王の資質(はおうしょく)』を纏った炎塊が、金棒が、拳が、空中で衝突し、それによって発生した埒外の衝撃波によって。

 諸島を構成している79本もの超巨大な樹木――ヤルキマン・マングローブが、もれなくバサバサバサっ! と激しく揺れた。

 

 

  ◆          ◆

 

 

 後に語られる『シャボンディ諸島の戦い』。

 カイドウ、ビッグ・マム、青雉(クザン)、ガープ、イングナル・フレイの5名によるサバイバル。

 ここに――開幕。




 ジャンプ本誌でワンピ最新話を追いかけている身としては、「こんなに優しい五老星なんかありえへん!」と思わなくもありません。

 あと、その最新話で『太陽の盾(スヴァリン)』という技が出てきて超ドキドキしてます。……そうですよね。巨人族の設定って当然のように北欧神話のアレコレが多々出てきますし(『ゲルズ』という女性巨人しかりロキ王子しかり)、こういったことも当然起こり得ますよね……(震え)。

 また、『真・女神転生VV』の発売が楽しみ過ぎてヤバイです。自分はアトラスの奴隷なので、完全版商法でも問題なし。まあ、PS5版を買うつもりなので、スイッチのデータを移せたらな~、と思わなくもありませんが。流石に無理か……。

 それまでに沢山書いておかないと! では!
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