前回の後書きにおいて、今話からまた戦闘回に突入するとかそんな感じのことを書きましたが、ハイ、全然そんな展開にはなりませんでした。かといってエロという訳でもなく、強いて言うなら説明回ですね。何なら次の話も戦闘回と言えるかどうか……(汗)。
でも早くドンパチさせたいという気持ちは本当にありますから! それはそれでR18小説としてどうなんだとも思いますけども! ここまで来たらエロも戦闘も両方全力で書き切る所存です。どうか最後まで見届けてやって下さい。
それでは最新話、どうぞ!
『望むなら、好きなだけ“ここ”にいさせてやる』
男は――幼き日のフレイが食した『悪魔の実』。
頭の内側で何度も反響するような、不思議な声色で――あなたが「
『お前を慕う
「その代わり、お前の
フレイが
「『悪魔の実』の『覚醒』については、前にステューシーから聞いたことがある。
『望むなら、と言った筈だ』
淡々とした口調で、「先代」が述べた。
『他の「同類」がどうかは知らないが――少なくとも、私はお前の意思を尊重する。……が、お前が心のどこかで「現実」を捨て、この夢幻の世界に移り住みたいと願っているということは、自覚する必要があるだろう……』
「ふざけんな」
吐き捨てるようにフレイが言った。
「いいから、さっさと元の世界に戻せ! このまま
『ああ、それ“も”間違いない』
相変わらず「先代」の台詞は、腹が立つ程に淡々としていた。
『だが、お前も知っているように、人の心というものは、実に多様且つ重層的なもので――先ほどまで、お前が享楽に耽っていたあの世界こそが、その証左だ。……あの夢幻こそが、お前の無意識下の望みを反映させた上で、私が創造した
「…………っ」
フレイは口を噤んだ。荒唐無稽だと断ずるのは極めて簡単な筈なのに、何故か反論できなかった。「先代」が言うように重層的な心のどこかで、彼の言葉に嘘はないと確信している自分がいることに、フレイは気づいていた。
……が、しかし、それでも腑に落ちないところがない訳でもなくて――具体的には、
「さっきの夢幻に出てきた女たち……。ロビン、オルビア、ステューシー……それからハンコックとグロリオーサ、ヴィオラはともかくとして、それ以外の女たち……。『カリファ』とか『ナミ』とか『ビビ』とか、それ以外にも大勢……。おれが今まで見たことも聞いたこともないような美女たちが大勢出てきたが……。
『――いいや、存在はする』
ピシャリとした口調で、「先代」が言った。
『……というより、存在することになる、と言ったほうが正確だろうが――とにかくあの女たちは、いずれこの世のどこかで生まれ、お前に出会い、愛されることになる者たちだ。自覚がないようだが、お前はそれを予見した。私はその内のいくつかを汲み取ったに過ぎない』
「何だって――?」
『お前が囲っている女の中に、「シャーリー」という「予見者」がいるだろう?』
わずかにやきもきした口調でそのように言うと、「先代」は更に、
『私たちの「
「……つまり?」
『心と身体が深く繋がることを条件にしてそういったことが起こるのか――とにかく、そういった女たちからは、「生命力」だけではなく、そこに情報として刻まれた「固有の能力」さえも読み取ることができる。「
「…………」
『……先ほどまでお前が堪能していた世界は、お前が現在囲い、将来囲うことになる女たちと、お前の心の奥で息づいていた望みを反映させて作った世界で、まったくの虚構という訳ではない。……とりあえずは、そこだけでも理解してくれればいい』
途方に暮れたような表情を見せるフレイに対して、ため息混じりにそう言った「先代」は、そこから更に、
『……それに、お前は先ほど「さっさと元の世界に戻せ」と言ったが――少なくとも、無理に「さっさと」戻る必要はない。気づいているかもしれんが、この精神世界の時の流れは、現実のそれと比べて遥かに進みが遅い上に、あの「ガープ」や「クザン」といった「海の憲兵」たちも、何故かお前を守ってくれていることだしな……』
「はぁ?」
フレイはポカンとした。
「ガープさんはともかくとして……クザンまで? どうして……?」
『何故か、と言っただろう。私も知らんし――正直、あまり興味もない。……とにかく……』
言って、「先代」は改めてフレイの目を正面から見据えると、
『とにかく……焦る必要はないから、今は私の話を聞け。どの道、
「…………」
しばらくの間、フレイは「先代」のことを無言で睨みつけていたが、やがては――如何にも不承不承といった様子で――コックリと頷いた。それを受けた「先代」は、『それでいい』と言って首肯を返すと、
『私自身の紹介がまだだったな。既にその必要はなさそうだが――それでも、私自らの口からハッキリと言っておく。私は、「
「『
フレイは眉をひそめた。先の台詞の後半以降はやたらと含蓄が凝っていて正直理解が及ばなかった為、彼が関心を示したのはその固有名詞だけだった。
「何を言ってるんだ? アンタは『アマゾン・リリー』の……」
『私が建国した当初は、そういう――「
「先代」――フロディは、サラリとした口調でそのように言うと、
『その辺りの事情も含めてすべて話すから、とにかく最後まで聞け――かつての私の大いなる「過ち」……。今はお前の身に宿っている「力」、その「危険性」について』
「危険性、って……?」
『私は、お前が思っている以上に長い間、この時を待っていた。こうしてお前と話す時を』
フレイの疑問に答える気があるのかないのか――そのように述べたフロディは、更に、
『私が――私の意思を伴った
やっぱりそうか、とフレイは納得した。薄々察していたことだった。
『そして、今回の戦いで致命傷を受けたお前に色々と「隙」が出来たことで、そこに入り込み、利用することに成功した私は、こうしてお前と話せる場を作るに至った。……私の話、私の
「……ああ、わかったよ……」
いいかも何も、自力で戻れないのなら、選択肢なんて始めからないようなもんだろうが――という文句をすんでのところで飲み込んだ上でフレイがそう言うと、そんな彼の心情を知ってか知らずか、フロディは満足そうに何度かその場で頷き、その上でこう言った。
『800年という長い月日のせいか、記憶のあちこちに欠落があるが、それでも、重要な部分はまだ覚えていて――かつての私も、幼い頃のお前と同じように、奴隷の身だった。800年前にもそういった制度はあった。そして私は――過程は覚えていないし、何なら、生まれた時から
フレイは思わず閉口した。フロディが言うように、彼自身も同じ境遇の出身だった為、幼いフロディが
『永遠にそのままだと思ったし、いつしか、それに絶望することさえなくなってしまった。諦観……いや、もはや達観と言っても良いだろう――単に運が、生まれが悪かったと、何か前世で悪いことをしたのだと……。そう思い、精神の安定化を図った。それがいいことかどうかはさておき、いつしか私にとって、そうした苦痛の日々は単なる日常となった。死ぬまで――飽きて殺されるまでそれが続くのだろうと思い、にも関わらずそれをどうにかしようとする考えさえも抱かなくなった。……が、そんな時だ。「彼」に救われたのは』
「彼……?」
『「ジョイボーイ」という、当時世間を……いや、世界を騒がせていた「英雄」だ。その「自由」且つ強大過ぎる力から、「解放の戦士」――「
「…………」
「英雄」という単語を聞いてフレイが真っ先に思い浮かべたのは、かつて、フロディがそうされたように奴隷だった身の自分を救い、今も現実の世界で守ってくれているらしいひとりの海兵の姿で――お陰で、フロディが言う『ジョイボーイ』という男の人物像を何となく想像することができた。
そして、
『そうして、他の大多数の奴隷と同じように、ジョイの手によって自由を手にした私は――気づけば、今はお前の身に宿っている「異能」を手にしていた。過程は覚えていない。あるいは、お前とは違う道筋を経て手にしたのか――下手をすれば、生まれつき備わっていた力の可能性もある。……曖昧な記憶でスマンな。既に、記憶を留めておくべき脳を持たぬ、精神だけの存在となって800年以上も経った影響か、あるいはそれ以外にも理由があるのか――とにかく私は、お前と同じく「豊穣」の力をその身に宿していた。良き女たち……当時の私と同じように訳有りの女たちとも出会い、情を通わせ、それまでに感じたことも、想像したこともない人生の潤いを手にした。これもまた、ちょうど今のお前と同じだな』
フロディが言った。
『それでも、元奴隷――今でもそうかもしれないが――世間では「人間」として見られていない私たちを害そうとする輩は大勢いた。私たちを捕らえ、改めて奴隷として売ろうとする者……。人間として認められていないということに目をつけ、暴力的な欲求を満たそうとする者……。そうした者たちに対抗し、女たちを守る為――そして、再びあの地獄の日々に戻らぬように済む為に、私は努力した。不遜な物言いかもしれんし、そうでなくともお前には劣るかもしれんが……相応に才能もあった。戦いの才能が……。気づけば私は「異能」と併せて強大な力を身に着け、その庇護を求めて、より多くの者が――身に宿る「豊穣」の
「……?」
山岳の頂に作った『アマゾン・リリー』の前身国が、今は『
『安全で肥沃な土地と、そこを治める私の強大な力を求め、更に多くの女が庇護を求めてきた。「外敵」に対抗する為、私たち……私の女たちが直々に「外」に出向いて勧誘することも多々あった。気づけば私たちの総数は「国家」と呼ぶに相応しきものとなり、「
何かを咎めるような表情で口を開こうとしたフレイを片手で制したフロディは、更に、
『実の娘たちと繋がり、子を成すことの危険性については、当然私も認知していた。認知していて――にも関わらず、私は自身の欲を抑えられなかった。否、抑えようともしなかった。娘たちは私を求め、私も娘たちを求めた。そんな彼女らに負けじと愛情を向けてくる女たちも手当たり次第に孕ませ――その末に生まれた子らも
ここまで終始ロボットのような表情で淡々と言葉を並べていたフロディに、初めて明確な変化が起きた。眉根を限界まで寄せ、目を伏せ、歯を食いしばり――明らかに、何かを深く悔やんでいる様子で、
『――「侵略」だ。「外」に出向いて有望そうな
フロディは、自らの顔を両手で覆った。フレイは、何と声をかければ良いのかもわからずに途方に暮れていたが――ややあってフロディは手を離し、それをじっと見つめながら次のように述べた。
『――そして、「彼」が来た。「ジョイ」が。当然、友好的な意味ではない――いや、あるいは友好的と言えるのかもしれない。かつて救った私の行いに心を痛め、それ以上罪を重ねさせない為に来たというのなら、だが……。とにかく、全ての弱き者たちの味方、「解放の戦士」であるジョイは、当然の摂理として、際限なく「支配」の手を広げていた私たちと対立し――そして、私たちは敗れた。完敗だ。力と権力による「支配」がどれだけ残酷なものなのかを知っていた筈の愚者の
食いしばったフロディの奥歯から鳴るギリギリとした音が、フレイの耳にまで届いた。この時に至ってもまだ、フレイは、今や涙さえ滲ませている、長く、波打った髪と口髭が特徴的な男になんと声をかけてよいのかわからず――今度はそこに、何とも気持ちの悪い胃もたれのような感覚が加わった。たった今聞いたことを綺麗サッパリ忘れられたらどんなに良いだろうと、そう思った。
『敗北し、傷つき、疲れ果て、心まで打ちのめされた私は、奪った土地を放棄し、まだ犯していない
「保険?」
フレイは眉をひそめた。それを受けてフロディはああ、と再度首肯を返して見せると、
『まずは、残された
「――残された女たちの身にいずれ表れることになる、『恋煩い』について、だな……」
フレイがフロディの言葉を奪った。ここからシャッキーが語ってくれたことに繋がるのかと思い、その内の一部を想起した。具体的には、
――禁断症状が出るの。一度『
同じく、フレイの「内」からシャッキーの説明を聞いていたに違いないフロディは、「そうだ」とフレイの言葉を短く肯定すると、
『まだ私が「ジョイ」に止められ、諭されるよりも前――手を広げ過ぎ、
「どうしてそんなことが――?」
『信じられないかもしれんが、当時の文明レベルは、今の時代よりも遥かに上だった。当然医学も……。『命の設計図』、すなわちDN――今は「血統因子」と呼ばれているのだったか? それを検査することでわかったことだ。時には命にさえ関わる「恋煩い」は私の死後も代々血の繋がりと共に継承され、そしてそれは、いつしか私の子孫たちを滅びの道に追いやるほど深刻なものになるであろうことも。更には……それを解決できる者がいるとすれば、それは、私と同じ「
「…………」
よくわからない単語が出てきた前半はともかく、後半の内容については先立ってのシャッキーの説明のお陰でおおよそ把握していた為、フレイは、次に続くフロディの台詞の内容をある程度は予測することができた。そして事実、直後に放たれたフロディの言葉は以下のようなものだった。
『故に私は、先に言った「組織」の首魁たちの目前で果てる前に、残った
「――その言葉を脈々と受け継いできたグロリオーサさんたちが見つけた『後継者』が、おれって訳か……」
と、2度目となる台詞の引き継ぎを行ったフレイと、そんな彼に対して何度目かの首肯を返したフロディは、続けて、
『そうだ……。愚かな私と、当時私に従った女たちの罪過を押し付けるような形になって申し訳ないが――それでも、お前はその役目を引き受けてくれた。言うまでもなく、そのことには感謝している。が……』
ここで一旦言葉を途切らせたフロディは、ハァっと小さく吐息をついて見せると、
『その前に立ちふさがった壁は、想像以上に強大だったようだな? ……「カイドウ」に、「ビッグ・マム」だったが――私が存命だった頃にも、あれ程の豪傑はそうはいなかったぞ。それを二人同時に相手するとすれば、敗北するのも致し方あるまい……。あの
「まだ負けた訳じゃない」
ギリギリと食いしばった歯の間から、フレイが言葉を漏らした。
「アンタがおれを現実に戻してさえくれれば、すぐにでも勝ちを拾って見せる。そうしてやる――そうしなきゃならないんだ! おれは!」
『……つまり、私の話を聞いても、帰還を望む心は変わらぬと、そういうことか?』
獲物を狙う肉食獣のように――フレイを中心とした円を描くようにゆったりと歩きながら、フロディが言った。
『既に気づいているだろうが、お前と私の生い立ちは驚くほど似ている。自分を想ってくれる女たちの為に「権力」……「名声」……どんな形であれ、「力」を渇望するその姿勢も……。つまり、このまま「現実」の肉体に意識を戻し、なんとかあのふたりを打倒せしめたところで、お前は、私と同じように「侵略」と「支配」の道を征く可能性が高い。あの日和という
相変わらず、円を描くように歩きながら自分を見つめるフロディの視線がわずかに細まった。フレイの頬に、ひと筋の冷や汗が伝った。
『……そうなればやはり、愚かだった頃の私の再来となる可能性は高い。別に、数多の女を囲うこと自体が駄目という訳ではない。そこまでの道筋を過激なものに変えないのかが不安なのだ……。過ぎた「権力」と物理的な「力」は、容易に人を変える。例え、当初の志がどれだけ崇高で純粋なものであろうとも……。私を
フロディがパチンと指を鳴らした。途端に、辺りの霧が黄金色に変わると同時に形を成し、数秒後には大勢の裸の美女がそこに佇んでいた。
オルビア、ロビン、ステューシー、ハンコック――更には、(フロディの言葉を信じるなら)フレイが将来抱くことになるらしいナミ、カリファ、ビビを含めた、その他大勢の美女たちがそこにいて――しかし、全員が不思議と虚ろな表情だった。まるで物言わぬ人形のようだった。フレイは思わず、脇に提げた両手を熊手の形にしてミシリと力を込めた。両の手の甲に血管が浮かび上がった。
『――それに、お前が心のどこかで、今の「現実」に辟易とし、ただただ女たちとの享楽に溺れる日々を過ごしたいと願っているのも事実なのだ。これは、私が捏造した、お前の身体を乗っ取る為の方便ではない。お前はそのことを自覚している筈だ……』
「…………」
フレイは無言だった。ただ黙って、周囲の女たちがゆっくりと自分に侍り、身体のあちこちを撫でたり唇を落としたりするのを抵抗せずに受け入れながら――フロディを睨んだ。不意にピタリと足を止めたフロディの視線が、それと重なった。
『今一度言う――望むなら、好きなだけ
わずかな間があった。フレイはあえて何も言わず、フロディの目を見つめ続けた。相変わらず色のない表情ではあったが、今のフレイには何故か、それが無理して取り繕ったもののように感じられた。
『ただし……それでも尚、現実に戻り戦うことを選ぶというのなら――いいだろう。私はそれに手を貸そう。お前の身に、「
「……アンタは、おれの身体を乗っ取りたかったんじゃないのか?」
フレイが言った。純粋な疑問だった。
『いや、ない』
フロディは即答した。
『他の「
フロディはそこでひとつの嘆息を挟むと、
『――いずれにせよ、私にはもうその「資格」はない。私と同じ道を辿る
「…………」
フレイは沈黙した。フロディは本当に、ただ自分の「答え」を聞きたいだけなのだと確信した。『見聞色』を使わずとも、そこに一片の虚実も混じっていないということがよくわかった。もっとも、この精神世界においても『
「……フロディ。悪いけどおれは、アンタが安心できるような答えを返すことはできない」
侍ってくる女たちをゆっくりと引き剥がし、押し退けた後でフレイが言った。たちまち、女たちの姿が黄金の粒子となって煙のように消失し、そんな中でフレイは、
「元々おれは――今回の『作戦』の件で特に痛感したが――そんなに頭が良い方じゃないし、口も上手くない。だからアンタが安心できるような未来設計は語れないし、そもそも今この場では思いつかない――けど……」
胸の前辺りで開いた自身の右の手の平を見つめながら、フレイは更に、
「……けど、ひとつだけハッキリと言えることがある。それは――こんな、奴隷上がりで大した教養がない野良犬みたいな
途端に、両の眼にキッと決意の炎を灯し、それを正面に来ていたフロディの顔に向けたフレイは、以下のように続けた。
「だから……おれには『責任』がある! 星の数ほどもいる男の中から、おれみたいな奴隷崩れの野良犬を選んでくれたアイツらを安心させてやる『責任』が――その決断に応えてやる『責任』があって、何より……!」
そこで一旦、フレイは一拍の間を設けると、
「……何より! おれ自身が、『責任』以前にアイツらを
フレイは口を噤んだ。語彙が尽きてしまったのだ。ここまでに述べたことはありのままの本心ではあったが、こんな口上でフロディが納得してくれるのか、正直自信がなかった――が、
『……「惚れた女たちの前でカッコつけたいだけ」、か――予想していたよりもずっと俗な理由で……且つ、純粋な理由だな。そして……』
だからこそ悪くない――と。
そう言いながらもフロディは目を閉じ、一旦顔を伏せて見せて――その直前に、フレイは確かに見た。フロディの口元に、満足そうな笑みが浮かぶのを……。同時に、「未来」がどうなるかはさておき、彼が望んでいた「答え」を示すことができたのだと、そう確信した。
更には、これまでの貼り付けたような彼の色のない表情が、そうした本心を悟らせない為のものであるということも――こちらの真なる胸の内を聞く為のものだったということを、フレイは確信し、そして、
『……いいだろう。言うべきことは全て話した。私の過ち、私の生い立ち……それと酷似した道を辿っているお前が行き着く可能性のある「未来」。それに対する危惧も全て説明し――それでも尚「現実」への帰還を望むというのなら、私としてもお前を引き留める理由はない。これ以上、お前の
フロディがそう言うのと同時だった。彼の身体が、馴染みのある黄金のオーラに覆われ――いや違う! フレイは瞠目した。
フロディの
そしてそれが、細い金糸のように纏まった上で、フレイの身体……心臓の辺りから、その体内へと吸い込まれて行って――それと同時に感じる、圧倒的なエネルギー。決定的に欠けていた自分の中の何かが満たされていくような感覚を、フレイは確かに感じていた。
そして――必然的に、フロディの身体は、足元からその実体を失っていって……。
「……もう、会えないのか?」
短く問うフレイではあったが、内心、聞くまでもないことだとわかっていた。
案の定、フロディの答えは、『さっきも言った通りだ』というもので――その後で彼は、次のように続けた。
『もう2度と会うことはない……が、その前にふたつ程、言っておかねばならないことがある』
「……?」
『まずひとつに、現実のお前があのふたりから負ったダメージは、私の「すべて」を渡すことでようやく回復できるかどうかと言ったところで――要するに、私が存命の頃に授かった「オペオペ」の「不老体質」……。それも受け継ぐことになるし、それだけを除いて「力」だけを受け取るということはできない。完全に混ざり合ってしまっているからだ……。永遠の命と言えば魅力的に聞こえるかもしれないが、それによる苦難も相応に多いから、ちゃんと覚悟を決めておけ。そして――』
「……そして?」
『――「ゴムゴムの実」を探せ』
「え?」
フレイはキョトンとした。
『私を安心して「次」に行かせて欲しいという意味だ。「ゴムゴムの実」――本来は違う名前だが、私を止めてくれた「ジョイ」の
フロディは、一気にこれだけのことを言った。よっぽど、自分が同じ軌跡を辿ったりしないか心配なのだな、とフレイはそう思った。
フレイとしてもその気持ちはわからなくもないし、いずれにせよ、「遺言」とあらば無下にする訳にもいかない。フレイはコックリと頷き、フロディは心底安堵したような笑顔を浮かべた。
そして――その頃には既に、彼の身体に残されたパーツは、既に首から上だけになっていた。やがては口元も黄金のオーラへと変換されこちらの身体へと入り込んできたが、そんな状態でも彼は言葉を発することができるらしく、
『さあ、そろそろ行くといい。あのふたりを倒し、愛する女たちを守る為に――方法は、既にわかっている筈だ』
「ああ――確かに
『……?』
フロディが怪訝そうに眉を吊り上げ、そんな彼に対してフレイはひと言。
「――
「……っ!」
最早目元だけとなったフロディのそれが驚いたように見開かれた。
が、それも一瞬――彼はすぐに、その視線を、息子の成長を目の当たりにした父親のようなそれへと変えると、
『「イングナル・フレイ」……。800年の時を経て現れた、私の「すべて」を受け継ぐに相応しき心と身体を持つ者よ……』
「…………」
『
「……っ! ああっ……!」
『では……さらばだ。……「ジョイ」……「リリィ」……。ようやく、私も「そっち」に……』
――そして。
ゆっくりと目を閉じたフロディは――先代の『豊穣の王』、ユングリング・フロディは、その姿を完全に消した。
その身の全てを黄金のオーラ……「生命力」に変え、それらはフレイの糧となった。存命中に授かったらしい、『オペオペ』なる力から受けた「不老体質」も含めて……。
束の間の静寂。やがてフレイは、わずかに目元を潤ませた相貌を上に向けると、次のように
「『
……そして、彼は帰って行く。
「
その一方で、確かな実体を持った、愛する女たちが待つ――「現実」の世界へと。
ジャンプ本誌で現在回収されつつある、最大級の伏線に色々とガッツリ絡む話ですので、後から矛盾が出ること請け負いの最新話となりました(震え)。
まあアマゾン・リリーの成り立ちを含めて何を今さらって感じですが、今一度、本作品には「原作改変」、「独自解釈」、「独自設定」の要素が含まれることを念押ししておきます。根が小心者ですので……。へ、へへ……。
ではまた、次回の更新でお会いしましょう!