――
「うわああああぁぁっ!? 連れてきた『ナンバーズ』が、全員海まで吹き飛ばされたぁ~!?」
「全員が『古代巨人族』――並の巨人の数倍はある巨体なんだぞぉ!? それを、本当に『拳骨』だけで……!!」
「一体、どんだけの腕力――どんだけの『覇気』なんだ!? ガープの奴!?」
「クイーン様! 腕が……!?」
「ハァ……ハァ……! 馬ぁ鹿っ! おれは『サイボーグ』だ! これぐらいなんてことねえ――が、クッソ……! 流石は『海軍の英雄』ってところかぁっ!? これほどの数を相手に、よくもまあここまで……!」
「ペロリン♪ ……おいカタクリ! お前の「
「難しいな――ぺロス兄の「
「倒れた『豊拳』のことを、何層もの分厚い氷壁で覆ってやがる! 多少の銃弾や砲撃じゃビクともしねえぞ!?」
「『豊拳』は基本的に生け捕りの方針なんだ! どんな攻撃をしても『うっかり』が起こらずに済むっていう意味では、むしろ好都合だが……!」
「畜生っ! 何が『伝説の英雄』! 何が海軍大将――相手はたったのふたりだぞ!? 早く誰か何とかしろぉっ!!」
「お前がやれよ馬鹿っ!!」
「なんでこれだけの数を相手に一切怯まねえんだ!? こっちには
「恐すぎだろ! あのふたりぃ~~!!」
悲鳴と怒号と破壊音が断続的に響き渡る『海軍本部』駐屯地――否。
今となっては「跡地」と言わねばならぬほど荒れ果てたその場所で、世界にその名を轟かせる女海賊『ビッグ・マム』ことシャーロット・リンリンは、大いに苛立っていた。
「ちいぃっ……!」
心底忌々しそうに舌打ちしながら、改めて状況を整理するビッグ・マム。
相手はたったの3人。既に意識不明の「
対してこちらは、先述した意識不明の「
相手の援軍――元々は、先立って『天竜人』に手を上げたフレイを捕らえる為のものだったに違いないそれらを
要するに、間違いなくこちらの優勢で勝勢には違いないのだが、にも関わらずビッグ・マムが苛立っているのは、それだけの戦力を展開しつつも、いまだにたった3人の「死に損ない」を仕留めきれずにいるから――フレイは「生け捕り」の予定だが――というのは勿論のこと、更にはもうひとつ。
先述したように、共通の獲物を確実に「
だからこそビッグ・マムは、
「おい――カイドウ!」
と、血走った両目を、右手側の上空5、6メートル辺りの位置で滞空している、『青龍』の姿となったカイドウに向けると、
「このクソガキが……! さっきから何をモタモタしてやがるんだ――あぁっ!? お前さえ『本気』になってりゃ、今頃はとっくにクザンもガープも始末して、フレイを連れて『新世界』に向かってる筈だったんだ……!」
「あぁっ……? そういうテメェこそ、何を焦ってやがる……!?」
ギロリッ……! と剣呑な眼差しでビッグ・マムを見下ろしながら、カイドウが言った。
「ここまでの戦力差……! いくらガープでも、『
「らしくもねえ屁理屈を並べてんじゃねえよ――オメェが手をこまねいてるのは、それが理由じゃねえだろ!?」
カイドウの口上を遮る形で、ビッグ・マムが吠えた。
「オメェがあからさまに手を抜き始めたのは、『豊拳』が
そのように叫びながら、
約10分前後。
それが、こちらの援軍が到着し、倒れたイングナル・フレイを守る姿勢を見せたクザンとガープを相手に、第2ラウンドの戦いを始めてから現在に至るまでに経過した時間だった。
突如、伏したフレイの身体から、金色の波動と共に島中に響き渡っていた謎の鐘の音も、今となっては鳴りやんでおり――それと入れ替わるようにしてかの者の身体から噴出した金色のオーラと、それを素に生成された金糸の繭……のような物。
正確な正体はわからない。わからないが、フレイが絶命したならば当然起こる筈のない現象で――まああくまでも「生け捕り」を狙っているビッグ・マムからすれば、そこは別に問題ないしむしろ好都合でさえあるのだが――問題は、その繭の内から感じるフレイの『
金糸の繭の内側からハッキリと感じ取れるそれが、時間と共に段々と強くなっているという点で――要するに、クザンとガープは確信しているのだろう。そう遠くない内に、イングナル・フレイが復活することを。
しかも――恐らくは、相応の「強さ」を手に入れた上で。
単に復活するだけならともかく、何故強くなるということがわかるのか? 論理的な説明をするのは難しいが、長年に渡って
そしてそれが、下手をすればここからの逆転を許すきっかけになるかもしれないということを、ビッグ・マムは敏感に察していて。
だからこそ彼女は、「
そしてカイドウは、ビッグ・マムが見たところ、自分たちに加勢して
故に彼女は、
「
「…………」
「『ゴッドバレー』の時も言ったろうが――『夢』見てんじゃねえよ! とっとと奪うモン奪ってトンズラだ! おれは『豊拳』を、オメェはアイツが手籠めにした、ヤマトとかっていう自分の娘を――そうだろ!? あんまりモタモタしてたら、コングやセンゴク、おつるだって来るかもわからねえし、そうなったら流石にメンドくせぇ……! オメェも
ゴオォッ! という効果音がつきそうな勢いで、ビッグ・マムが叫び、カイドウの部下も含めた全員の注目を集めた。
その上で彼女は、続けて、
「『英雄』だろうが『大将』だろうが、こんだけの頭数を揃えて、いつまでもたったふたりの海兵を相手に手こずってんじゃねえ――距離を取った上で一斉にだ! いいな!?」
反対意見など出る筈もなかった。カイドウの部下の中でも、彼女に噛みつけるぐらいの気概を持つ『
『サイボーグ』として体内に埋め込んだ兵器のひとつを発動させようとして――他の面々も同様だった。ある者は「能力」の発動体勢に入り、ある者は手に持った銃を構え、ある者は携えた槍や剣を投擲する為に振りかぶり、カイドウでさえも――明らかに乗り気ではなさそうだったが、部下たちの手前、そうしない訳にはいかなかったのだろう――『
『大海賊時代』と呼ばれる今となっては、世界に星の数ほどもいる、海の荒くれたち――の中でも間違いなく、上澄みに位置する
その者たちによる一斉攻撃が後数秒もしない内に放たれるという状況下において、しかし、クザンとガープは逃げようとしなかった。
否、逃げたくても逃げられないのだ。ビッグ・マムにはそれがわかっていたし、だからこそ、こうした見え見えの遠距離包囲攻撃を周囲の面々に促したとも言えるが――前述したように、約10分。
これを長いと言うか短いと言うかは個人の判断に依るだろうが、自分とカイドウ、およびその部下たちを、既に脱落したフレイを守りながら相手取った点を踏まえれば、十分評価と驚嘆に値する時間だろう、というのがビッグ・マムの見解で――しかし、
だからこそ、今のクザンとガープの「状態」は必然と言えた。
いくら海軍大将であろうと、『英雄』と称される生きた伝説であろうと――無傷で挙げられるような戦果ではないのだ。
どちらもまだ意識は保っているし、その双眸からは決して諦めない、首だけになっても食らいついてやる、とでも言いたげな強い意思が垣間見えるものの、逆に言えばそれだけだった。全身を泥と血で汚したクザンは、その場で跪いた状態で、尚且つ両脚が半ばから変な方向に曲がっていたし、その前に仁王立ちするガープも重症だった。フレイが金糸の繭に包まれる前に、カイドウの金棒によって額につけられた傷からの出血はいまだ止まっておらず、そのせいで、
下手に動かすことができない「
自身が放てる遠距離攻撃の中でも、随一の威力を誇る『
それを放つ為に両手で持った
もっともクザンなどは、相変わらず跪いた状態で、一度チッと大きく舌を鳴らすと、
「……くっそ! ガープさん……! 残念だが、おれと『豊拳』はもうここまでだ……! だからせめて、アンタだけでも……!」
――と、ある種賢明とも言える提案をしていたが、それに対するガープの返答は、
「……必要ねえ」
というにべもないもので、更に、
「……
「「「「「……っ!?」」」」」
明らかに状況にそぐわない断定的な言葉を受けて、クザンは勿論、その言葉を拾ったビッグ・マムとカイドウ、およびその部下たちが怪訝な表情を浮かべたが――逆に言えばそれだけだった。各々の遠距離攻撃の予備動作が既に完了しており、後は放つだけの状態になっていたからだ。故に、
「……死にぞこないの
――国』、と。
そのように続けた上で、自分がけしかけた面々の遠距離攻撃に合わせて、ビッグ・マムが確殺の斬撃を飛ばそうとした、まさにその時――その直前だった。
ドンッッッッッッッッッッ!! と。
脱落したイングナル・フレイ――彼を包んだ金糸の繭から、突如として
「――――っ!?」
「がっ……!?」
「なん……だぁ……!?」
「身体が……! 動かな……!?」
本来、『覇王色』と言えば黒……厳密には赤黒い稲光が特徴だが、フレイを包む繭から放たれたそれは、前述したように何故か金色で、そして、それに身体を貫かれた面々――ビッグ・マムとカイドウを含めた、クザンとガープ以外の全員――は、正しく雷に打たれた人間よろしく身体を硬直、痙攣させ、当然のように繰り出そうとしていた遠距離攻撃も中断せざるを得なかった。
カイドウとビッグ・マムおよび、両名の海賊団の『幹部』以上の面々は
全身を硬直させる痺れと、意識を揺らす衝撃に対してビッグ・マムが混乱の極みに陥ったところで、次なる変化。
今回の戦いにおいて、フレイがその能力でもって、地に這わせるような形で生成していた黄金樹――『
ここまでの激闘によって所々が凍り付き、砕かれ、斬られ、焼かれていたそれが、一斉に黄金色の光を放ったかと思うと、直後に膨張。
恐ろしい勢いで成長しては枝分かれしていき、それらが先の『覇王色』によって体を硬直させていた面々を絡め取り始めたのだ。
カイドウは、避けるというよりは『
これによって、『青龍』のままだったならば間違いなくその身体を絡めとっていた黄金樹による拘束をかわすことに成功したが――残念なことに、ビッグ・マムはそうはいかなかった。彼女の場合は、単純に跳躍した上で、
跳躍の為にわずかに身を屈めた、正にその時だった。脱落する前のフレイによって食らわされた『
直前に、例の『黄金の覇王色』――その稲光が貫いた部位が、まさにその場所であったことも大いに関係しているのだろう。気絶こそしなかったものの、そうなってもおかしくはない程の鋭い痛みが、
「……っ!? しまっ――」
――た、と言い切ることさえできなかった。何匹もの大蛇よろしく、幾本もの黄金樹が自身の身を拘束すると同時に、「それ」は起きた。
身体の奥の奥から、意識を保つ上で――否、生きていく上で大事な「何か」が急速に奪われていくような感覚が、ビッグ・マムを襲った。
無論錯覚ではない。実際に奪われていた――何に? と問われれば、言うまでもなく、現在進行形で自分を縛り上げている黄金樹の数々に相違なくて、そしてそれは、同じく
「ぎゃああああっ!? なんだコリャ――あっ!? あっ……あぁっ……!?」
「っ!? ま、巻き付かれた奴が一瞬でミイラみたいに――ぐああぁっ!?」
「逃げろっ! とにかく逃げろぉっ! 捕まったら最低でも戦闘不能……下手したら死――あっ!? あぁっ……!」
「こんなのアリかよ!? 1本1本が確実におれたちを狙ってきてやが――うわあああぁぁっ!? しまっ……! 捕まっ、て……!?」
「うおおおぉぉ~~っ!? あえて痩せないタイプのおれがぁ~~!?」
「く、クイーン様~~っ!?」
「ひいいぃぃぃっ!? カイドウ様ぁっ! 助けて下さいっ!」
「マ、ママ~~っ! プロメテウスでコイツらを焼き払ってくれ! マ、マ――あっ! ああぁっ……!?」
阿鼻叫喚の地獄絵図。
現在の状況を簡潔に表すなら、正にそれだった。あくまでも「こちら側」だけの話で、クザンとガープには1本の樹木も向かっておらず、前者はただただ呆然とし、後者は勝ち誇ったような笑みを浮かべていたが――その笑みを消し去る為の力も含めた自分の中の「すべて」が、巻き付いた根によって吸収されていくのを、ビッグ・マムは確かに感じていて、
「……っ!? かっ……!? は……あぁっ……!?」
と、大きく開いた口の奥から空
「なっ……何だぁ……!? コイ……ツ、は……!?」
マズイ――吸われているのが血液なのか水分なのか、あるいはもっと概念的な「何か」なのかはわからないし確かめている余裕もないが、とにかくこの吸収速度はマズイ!
そう思ったビッグ・マムは当然の抵抗として、自分を締め付けている黄金の木々を力任せに引き千切り始めたが、それよりも明らかに、木々の成長速度のほうが速かった。
やがては、ご自慢の怪力を発揮することさえままならなくなり、それでも首を絞める木々の内の1本を両手で握り、何とか捩じ切ろうとした――その時だった。
ガープとクザンの背後。すべての元凶とも言える金糸の繭から、頭の中に直接響くような不思議な声が聞こえてきたのは。
『……何だも何も、「樹」っていうのは本来
ビッグ・マムは瞠目した。フレイの声に違いなかった。しかも、自分とカイドウの『覇海』によって死にかけていたとは思えない程に、ハッキリとした声色だった。
『光、水、土、空気……あらゆる物から栄養を吸い取り、それを糧に成長する……。もっともおれの能力で作ったコイツの場合は、糧とするのはお前らの「生命力」な上、
自分だけではなく、「彼ら」にも聞こえていたのだろう。ギョッとしたように目を剥きながらクザンが、ニヤニヤとした笑みを浮かべながらガープが、背後――件の金糸の繭へと視線を向け、それと殆ど同時だった。
金糸の繭が輝き、素となった黄金のオーラの塊に戻ったかと思うと、それがみるみる内に縮小していっては人の形を成していき――マズイ! 改めて、ビッグ・マムはそう思った。
海賊稼業を始めてから40年近く。数えきれない程の戦いを経験し、乗り越えてきたことによって備わった直感のようなものが、かつてない程の警鐘を鳴らしていた――「アレ」をあのままにしては本当にマズイ! と。
しかし、何とか阻もうにも、現在自分は、凶悪な速さで自身の「生命力」を吸収し、成長するこの忌々しい黄金樹のせいでろくに身動きが取れなくて――だからこそビッグ・マムは、こちらの陣営で唯一木々の強襲から逃れ、今も尚、数メートルほど横に離れた場所で、襲いくる木々を金棒で迎撃しているカイドウに向かって、次のように吠えた。
「ハァっ……ハァっ――オイっ……! カイドウ……! おれを縛ってるコイツも――ハァっ――何とか……しやがれ……! 何としてでも――ゲホっ……!
しかし、カイドウは応じなかった。相変わらず、水を弾く油よろしく、あらゆる角度から襲い来る黄金樹を巨大な金棒によって打ち砕き、払っていて――それでいて、人の形を取り戻しつつあるフレイがいる方向に向けられたその目は、まるでショーウインドーの向こう側にあるトランペットを目にした子供のように爛々と輝き、口元には疑いようのない笑みが浮かんでいた。ビッグ・マムは歯噛みした。
「オイ――カイドウっ……! ハァっ……! 聞いて……やがんのか……!? テメェ……!? これは、多分『覚醒』だ……! ただ復活するだけじゃねえ……! 相応に強くなって復帰してくる筈……! そうなる前に……グフっ……! おれとオメェで早く……!」
殆ど縋りつくような言い方だった。少しでも彼女の
それどころか、「ああ、わかってる……
それと同時に飛び出した両目を血走らせながら、彼女は、
「この……クソッタレの我が儘の恩知らずの『死にたがり』があああぁぁっ! もういい――来い! 『プロメテウス』!」
「は、ハイ! ママ――って、え!? マ、ママ!? まさかとは思うけど……!?」
こちらの意図を寸前で察したらしい、
だから、
「いいから……来いってんだよおおおぉぉっ!!」
と、叫ぶと同時に無理矢理右手を伸ばし、「ま、待ってくれママ! それじゃ本末転倒だって!」と大いに慌てるプロメテウスをむんずと掴み取ると、
「ま、ママ!? それ、もしかしておれも巻き込まれるヤツじゃ――」
「『
「うああああぁぁぁっ!? マジかよママ~~っ!?」
黄金の木々に巻き付かれた際に取り落とし、足元の地面に突き刺さっていた
当然、恐ろしい熱と衝撃が彼女の全身を駆け巡り、大部分の肌を焼き焦がすことになったが――見返りはあった。これによって彼女の身を縛り、その「生命力」を吸い取り続けていた黄金の木々も焼け崩れることになり――それが再び成長し、再拘束するよりも先に、彼女は「熱っ! 熱いいいぃぃっ!?」と悲鳴を上げている
「ハァっ――ぜぇっ――くそっ……!」
「だ、大丈夫? ママ……?」
しつこく再拘束を計る木々から逃れるのをゼウスに任せ、心配そうに声をかけてくるプロメテウスを無視しつつ、ビッグ・マムは舌打ちした。
自身を拘束した上で「生命力」を吸い上げ、いずれは死に追いやっていたかもしれない黄金樹の拘束からは逃れられたものの、「もうひとつのほう」は間に合わなかった。まず始めにビッグ・マムは、相変わらずニヤニヤとした笑みを浮かべながら、クザンとガープの背後に爛々と輝かせた双眸を向けている、地上のカイドウを殺意のこもった眼差しで睨みつけると、それもそこそこに視線を移動。
彼と同じようにクザンとガープの背後へと目を移して――やはり
既に金糸の繭――から、素となった黄金のオーラに組成物を変えていた光球のようなモノは消えており、代わりに、ひとりの男が立っていた。
それは誰か――当然、イングナル・フレイだ。しかし、姿が変わっていた。相変わらず黒のジーンズに同色のスニーカーを履きながらも上半身は裸で――という出で立ちではなく、何故かそれらの服装の色が金色に変わっていた。服だけではなく、髪の色とその長さも変わっていて。
まるで地を満たす
同じく金色の、羽衣のようなひと繋がりのオーラを、首の後ろから肩の前、そこからまた更に背中側へと伸ばしていて――ただでさえ色白だった肌もより白くなっている? 少し自信がなかったが――瞳の色も変わっているのは間違いない、とビッグ・マムは思った。
最後に見た時には、最高級のルビーを思わせる真紅だった双眸は、今やそれとは一転、底の見えぬ海面が如き透き通った青――サファイアを思わせる碧眼へと変わっており、その両眼でもって、フレイは、自身の身体のあちこちを見つめながもペタペタと手で触っていて。
「ハァっ……ハァっ……! な……なんだぁ、アレは……?」
と、援軍として駆け付けたカイドウの部下の中では、最高の戦力である巨漢――『クイーン』がそのように呟けば、
「ゲホっ――『覚醒』、か……!」
と、同じく
というよりは、あえて死なぬよう手心を加えられた? 見たところ、木々による「生命力」の吸収も止まっているようだ。
そうして取り上げた「生命力」が
彼は相変わらず、まるで愛おしむように自身の身体のあちこちをペタペタと触っていて――それをひと通り終えたかと思うと、今度は、スウウウゥゥっ……! と身をわずかに反らす程に大きく息を吸い込むと、フウウウゥゥっ……! と細く、長く吐き出した。
そして、
「目に映る景色が……鼓膜を震わせる周囲の音が……肌を撫でる風の心地よさが……舌に触れる空気の味が……鼻の奥を通る草木の匂いが……何もかもが、倒れる前とはまったく違うものに感じられる……」
続いて彼は、自らの胸に右手を当てた上で、その奥にある心臓の鼓動を堪能するかのように目を閉じると、
「生まれたばかりの赤ん坊が決まって大声で泣くのは、初めて行う呼吸にびっくりしているからだっていうのは聞いたことがあるけど――案外、感動によるところが大きいのかもな……。そう感じてしまうほどに……」
やがてはその両瞼を、ゆっくりと開きながら、
「生き返ったような気分……
「ハァっ……! ハァっ……! おい……!」
――と。
何やら、今いちよくわからないことをブツブツとのたまっているフレイに対して、痺れを切らしたようにビッグ・マムが声をかければ、当然のように、フレイの碧き双眸がビッグ・マムの顔へと向けられて――そして、
ゾッッッッッッッッッッッッッッッ! と。
唐突に全身を駆け巡る、背中から冷水を浴びせられたような感覚。抗いがたい寒気。それによって冷やされた汗が頬を伝い、全身がカタカタと細かく震えていることに、他ならぬビッグ・マム自身が驚愕した。馬鹿な、これは一体どういうことなのか? と。
だからこそ、
「お前……は……」
気づけば彼女は、相変わらず金色の長髪を天に立ち上らせ、揺らめかせているフレイに向けて、次のように尋ねていた。
簡潔に。シンプルに。
ありのまま――心に浮かんだことを。
「お前は……
直後に、ビッグ・マムは改めて驚愕した――先のような疑問を唱えた自分自身に対して、だ。そこは「何だ?」ではなく、せめて「誰だ?」と聞くべきだろうと。
いやそもそも、姿が変わっているとはいえ、彼がイングナル・フレイであることは間違いないのだから、その質問さえも的外れだと、ビッグ・マムはそう思って――しかし、殆どすぐにそうなのだ、と心中で勝手に納得した。
自分の視線の先にいる「それ」がひとりの「人間」だと、ビッグ・マムは、どうしても認識できなかったが故に。
……まるで、地震や嵐、火山の噴火といった、
しかし、そんな己を叱咤するかのように、ビッグ・マムはブンブンと
(な……にを、馬鹿な……! だったらだったで、別に恐れる必要はねえだろ……! おれは……『天候』を操る女――『ビッグ・マム』だぞ!? 少しばかり『活き』がいいだけのガキを相手に、何をおれは……!?)
そのように、ギリギリと歯を食いしばりながら、自らに必死に言い聞かせるビッグ・マム――に対して、律儀にもフレイは、
「……おれか? おれは――イングナル・フレイ。
と、そこで一旦わずかな空白を挟んだかと思うと。
次には、ニッ……! と小さな笑みを浮かべた上で、以下のように続けた。
「……ただ、惚れた女たちの前でカッコつけたいだけの男だ」
どことなく誇らしそうな様子で、相変わらずの微笑みを浮かべながらそのように語るイングナル・フレイを見て、ブルリっ……! と再度全身を震わせるビッグ・マム。
その根底にあるのは、やはり
それとも――。
◆ ◆
『豊拳』イングナル・フレイ。
『百獣のカイドウ』。
『ビッグ・マム』シャーロット・リンリン。
海軍本部大将、『青雉』ことクザン。
『海軍の英雄』モンキー・D・ガープ。
5人の超人――から1名が脱落し、そこから数百人近い乱入者を加えた、シャボンディ諸島66番
数百人近い乱入者。その全てが脱落――からの。
イングナル・フレイ――『
……いや、コレ、アレですね。
スーパーな野菜の民と、ありったけを犠牲にしたゴンさんを足して2で割った的な?
まあ、フレイ君の場合は後で「酷いなんてモンじゃねえ」と言われるような姿にはなったりはしないので、その点はご安心を。……あの「て、て」の後のショッキングなシーン、アニメではどうやって表現したんでしょう? 後でアマプラとかで見直してみるか……。