クラスではスカート捲りが流行っていた。
時代は物を隠し捨てることで奪うよりも、何も隠さず、奪わず、ただ他者に辱めを与える方向に進んでいた。
とても平和で良いことだろう。
村の風通しが良くなったかもしれない。
地味な少女、田舎の村にしては多少派手な少女。彼女たちは大抵数人がかりで一人のスカートを捲り上げて男子たちの目を楽しませる。
男たちはパンツの色合い、柄と、恥ずかしがる少女の羞恥に歪み震える姿を楽しめる。まだその良さが分からない子も徐々に性癖を拗らせていく。
そんな流行、女子たちの行動に対して一つの暗黙の了解があった。
男子が直接手を出さないことだ。
力の強い猿が同意していない女子に手を出せば、それはレイプでイジメだ。暴力と同等の最悪な行為だと僕は考えていた。
男子学生にそんな理性は期待できない。
もしも彼らがケダモノになってしまったら。
もしかしたら教師たちは見て見ぬふりをする可能性もある。学校ぐるみで隠蔽するかもしれない。そんな事態に陥らないように、クラスメイトたちの手綱を握る必要があった。
流石に教師や村の住人が性的行為を千景にする素振りも無い。
これで突発的に村の外から強姦魔がやって来るような突拍子もない事態に陥らない限り、千景の身体は僕が何かしない限りは大丈夫だろう。
それはそれとして、今日も僕は千景を目で追う。
今日の千景の私服はクリーム色のセーターに長い黒のパンツだ。舐めたくなるようなすらりとした脚の千景には似合う。
あれは父親が購入したのか、僕が購入した物を村人が格安で与えた物の一つか。
ただ一つ理解できるのは、どんな服でも似合う千景は美少女だという事だけだ。
「――――」
同時に千景ニストである僕には分かった。
アレは、スカート捲り対策として着用したのだと。
クラスメイトに自らの下着を晒された哀れな少女。
一度目の時は呆然とするしかなかった。
二度目の時は運が悪かったと思い、赤面しながらの無表情を装った。
三度目の不意打ちで狙われている可能性に気づいたのだろう。
判断が遅い。だがそれがいい。
虐められなくなって、最近は俯く事が減った彼女は今更ながらの対策をする。
ありきたりで、対策の対策をしやすい格好だ。
親には言えなかったのだろう。あの家庭だ。
きっと自分で必死に考えた末の格好をした千景は、油断と隙だらけだった。
あの澄ました顔が、これからどう歪むのか楽しみだった。
休み時間。廊下を歩いている最中の千景の横を女子が通り過ぎる。
見知った女子だ。明るくノリの良い子で男子には人気を勝ち取っている少女。
だが僕にとって千景以外はどうでも良い駒でしかなかった。
特等席は決まってる。いつも通り、壁に背中を預けて、腕を組む。
さて、彼女、ノリ子だが明るい表情で友人と話したまま、千景と擦れ違った途端に急停止。近くにいた僕に目配せすると、背中を向けたまま両手で千景のパンツを掴む。
そのままその場で座り込むように素早く腰を落とすと、
「隙あり~」
「ひ……きゃあ!」
脳が溶けるような甘い悲鳴。千景の悲鳴だ。
薄ピンクのショーツが露わになった。
ずるりとパンツをずり下ろすと、まずは彼女の白い美脚が目に入る。
日に焼けていない肌は染み一つなく、思わず視線を吸い寄せられる。
今回はちょうど、僕から見た千景は背中を向けていた。
だから正面からの彼女の表情の変化が見えなかったが、代わりに薄い尻肉が見えた。
「ゃ、……ちょっと」
悲鳴を上げた千景は咄嗟に屈み込む。
その際に僕の方向に向かって薄い尻を突き出す。
ピンクの生地に包まれた臀部、薄っすらと見える割れ目と、ショーツのウエスト部分に付いたタグが目につく。生活感漂うエロスと日に焼けていない色白の肌が劣情を抱かせる。
「今日の郡さんはピンクか~!」
「ちょっ……大声を出さないで……離しなさいっ……」
淫売の子は淫売なのか。
そんなことを考えてはいけないと分かっていても、その魅惑的な脚の曲線美から、ショーツからはみ出た尻肉を見て、同じく桃源郷を見た男子が前屈みになる衝撃があった。
「尻……いや、脚フェチが増えたか」
数人の無垢な少年の脳を破壊してフェチを植え付ける。
なんて罪な女。なんて魔性の女だ。やはり天才か。
そっと下腹部に手を置いて微調整しながら、彼女たちの動向を見守る。
ノリ子は千景の悲鳴を聞きながら、仰け反った体勢でパンツを掴み続けていた。ブリッジのような体勢になるも決して離さない。
その熱意に、組体操か何かをやっていた子だったという記憶が頭を過った。
「本当に、組田さんっ、はな、離して……ッ」
「可愛いの履いているのね。誰かに見せるつもりだった?」
「ちがっ、これはたまたまで……」
「ふーん」
千景の言葉にノリ子は静かに頷く。
法悦に達したのか、凪いだ水面のような顔で千景のショーツを見上げる。
至近距離、そして周囲のぶしつけな眼差しから自らの下着を、下半身を隠す為に上着のセーターの裾を引っ張る千景が睨みつける。
「はなっ……離してッ!」
だが、所詮は上着だ。履いていたパンツではない。
隠せる範囲などたかが知れており、前を隠そうとして尻を出し、尻を隠そうとして鼠径部を見せていた。なお暴れる彼女の動きで前面も見えた為、パンツの柄が判明した。
ピンクの生地に、黒のリボンと可愛らしい。
「ううッ……!」
千景は必死だった。
羞恥に瞳を揺らし、片手でセーターの裾を下げながら、足首で固定されたパンツを引っ張ろうと足掻く。
震える両脚をきゅっと閉じて、せめて少しでも見られまいとする姿は、可愛らしい。
「ぅ、ぅぅっ、みな、いで……うう……ッッ」
「あらら……」
ついに羞恥の限界に到達したのだろう。
可哀そうに。しゃがみ込み、片手で目元を覆い泣きじゃくる姿は加虐心を……庇護欲を誘う。
見ていられないとばかりに男子生徒はトイレに向かう。
女子生徒は頃合いだろうと、目線を向け合う。
あのセーターも剥ぎ取ったらどんな表情を見せるのだろうか。
僕はそう思ったが、ノリ子も周囲の女子も千景にとどめを刺すことは無かった。
「くみたちゃ~ん! えいっ!」
話は終わっていなかった。
他のノリの良い少女たちが、未だにブリッジしたままのノリ子の上着を捲った。この年齢にしてはやや豊かな乳房、それを包む緑のブラが晒された。
「確か、年上の彼氏がいたような……だからあんな大人な感じなのか」
いつの間にか僕の隣に戻って来たクラスメイトが小さく呟く。
男にとっては眼福。だが、晒された本人にとってはどんな思いだろうか。
この村で隠れてそういった事をしているのならば、彼女の男慣れした態度も頷ける。
「……ッ! ちょっ、ちょっと、も~」
照れ隠しに笑うノリ子。
その内心がどうであれ、無垢でない花にこれ以上の用は無かった。
パンツを履き直す千景に笑みを抑えて僕は近づく。
「郡様。大丈夫?」
「……大丈夫。……えっ、様?」
「今度のクリスマス会だけど参加するんだよね?」
「……私は」
「えー、郡さんも参加しようよ」
蜜に群がる蟻のように、少女たちが千景を囲む。
多少鬱陶しそうな表情を見え隠れさせる千景だが、やがて小さく頷いた。
数の暴力に屈したかのように、顔を伏せた千景は呟く。
「私……クリスマスとかそういうの、初めてで……」
知ってる。だからやるのだ。
数日が経過した。
学校の空き教室を使ってクリスマス会が開催された。去年までは無い催しだが、それは僕が家の力で捩じ込んだからだ。
田舎の村の学校だからできる技である。
村の公民館を借りる事も考えたが、村民の目がある以上、千景が萎縮する可能性があった。
一応、安全の為に教師が一人付き添いとして残るが、すぐに立ち去る。彼らも仕事があるのだ。
後に残るのは参加者全員に配られるお菓子が入った袋を持つ子供たち。それなりの大きさだ。
時間制限はあるが、先生が次に教室に来るまでは子供たちの自由時間である。
ちなみに少年たちの参加人数は少ない。
猿たちは浅慮ゆえに、女子と何かをする思考にはならず、寒い外で遊ぶ選択をした。その結果、やや古い教室にいる人口比率は少女が圧倒的だ。
その中には千景の姿があった。
参加しなければ碌でもない目にあうと考えたのだろうか。
彼女はぼんやりとした表情で菓子の入った袋を見つめていた。その横顔に何を思っているのだろうか。直接問い掛けるのは憚られて、僕は今日も壁に背中を預けて腕を組む。
クリスマスということで、菓子の他に必要な物はある。
チキンの一つでも用意したかったが、食べ物系は色々と面倒ごとがつき纏う。なので簡単なクリスマスツリーと、少女たちのサンタ服を用意した。
所詮は少女たちだ。季節の可愛い服には余念がない。
可愛らしいサンタ服に着替え、キャッキャと騒ぐ。
場の雰囲気に着替えたのだろう千景もまた、ロングスカートタイプのサンタの恰好をしていた。
ちなみに男たちはトナカイの角を頭に乗せるだけだ。
教師という邪魔がいないため、少女たちはお喋りに夢中だった。千景は既に帰りたそうにしていたが、話に夢中になっていた少女の背後に悪戯好きの女子が迫るのを目にして顔を強張らせる。
「きゃっ!」
調子に乗ってスカートを短くしていた少女のショーツが晒される。黒だった。
悲鳴を上げ、慌ててスカートを押さえる少女が報復に走る。
報復の連鎖。社会の縮図があった。
悪戯好き、お調子者、男の目を惹きたい者。
少女たちが結託し、スカートを狙う。
悲鳴と歓声が部屋で広がる。
――その状況で千景は既にスカートを押さえ警戒していた。
経験による当然の警戒だろう。
だが数の暴力の前には無意味だ。部屋の隅に移動し息を潜めていたが遂に彼女の番が来た。背後から迫る少女の魔手に捕まるも、防御には成功した。
「い、いやッ……」
「ムッ……。やるねー。なら、であえであえー」
だが、防御の判断が正しいかは別だ。
少女は仲間を呼び三人で襲い掛かる。
「郡さん、なに抵抗してんのー?」
「もしかしてノーパン? キャハハ!」
「そんなわけ……」
スカートを押さえる千景の背中に回る女子A。彼女は背中を撫でるように手を動かすと、
「っ」
――プチッと小さな音が聞こえた。
それが彼女のブラジャーのホックを外した音と聞こえた瞬間に、千景の手の抵抗が緩む。
「隙ありー」
「きゃあ!」
硬直した隙を見逃さず少女Aが胸元に手を伸ばす。薄い胸元を弄られ、悲鳴を上げる千景のスカートを少女BとCの連携が攻めたてる。
赤いロングスカートを前後で捲りあげると、ショーツの全てが露わになった。
「封印〜」
さらに女子たちの悪戯は終わらない。
スカートの裏地を上に引っ張ると、ブラジャーを抜き取られた千景の顔より上で両手で縛る。
巾着袋を連想させる姿だった。
「~~~~ッッ!!」
そのまま倒れ込む千景の末路は悲惨だった。
サンタの衣服でくぐもった悲鳴は笑い声に変わる。
不特定多数の少女にくすぐられたのだ。
「くっ、ふふ……ひゃめ、やめて!」
黒タイツに包まれた白のショーツや太ももが、辛うじて千景だと認識させる。
怒りながら笑い声を上げさせられる千景は、陸に揚がった魚のように自由もなくもがいていた。
漁師の少女たちは、僕という客のために味付けをしていく。
鳩尾まで捲れた腹部をくすぐる少女。
暴れる脚を掴み、彼女の秘部に足を押し付けて振動させる少女。
捲ったスカートのウエスト部分から手を入れて胸元でゴソゴソと動かす少女。
「……あはは、それ、やめて……っ、ん……」
気のせいか、千景の悲鳴混じりの笑い声に艶が混ざったように感じた。
それを誤魔化すように暴れるが巾着袋から脚が生えたような姿では下腹部を振って異性を誘う事しかできない。
さて、関与するかどうかを考えていると僕に近づいてくる一人の少女。ノリ子だ。
「今日はクリスマス会楽しかったよー」
ちょうど僕と千景の間に立つ彼女が邪魔だった。
退いて貰おうとするが、その前に彼女から手渡しである物を受け取った。
「はい、メリークリスマス」
千景のブラジャーだった。
白だった。どこかくたびれた生活感と生暖かさが手のひらから伝わってくる。
Aカップの量産品だが、僕には百万ドルの夜空よりも高価な……いや、値段のつけられない価値があった。
「ありがとう」
彼女がなぜ僕に賄賂を渡したのか。
善意か。村で家の力が強いからか。
だがその理由は一体……。
「キョンチーと同じ理由よ。少し過激な二刀流ってだけ」
彼女の見つめる先にあるのは赤と黒の巾着袋。
僕が隠し撮りしているのを他所に、ノリ子は堂々とその痴態を携帯端末に収めていた。
それで大体察した。
愛に性別の国境はない。
僕たちは友達になれるかもしれない、そう握り締めたショーツが物語っていた。
……千景にはお礼として菓子の袋をプレゼントした。