「こ、これは一体どういう事か!?」
「おや……何か、可笑しい事がありますでしょうか……?♡」
ホテルの一室、その
空間を弄っているのか、外見よりも広い部屋に巨大なベッドとこじんまりとしたチェストが一つ、後はフレーバーの如き調度品程度。
むしろ、普通の規格の部屋よりも殺風景と言えるかもしれない、そんな部屋であった。
扉は固く閉ざされて出入りが出来なくなっている事以外、特に部屋に変わった所はない。
そう、変わった所はない。
「わ、私の服は、祭服は……」
「何を仰いますやら。あれは【霊装】――紛れもない
異常があるのは、その部屋に居る唯二人、メシア教のテンプルナイトであるハーヴィン・ロクスとガイア連合の黒札である佐久間 すみれ。
その二人の恰好、様相であった。
彼の恰幅の良い腹が出た中年体型も、彼女のやや小柄ながらも豊満な女性らしい身体つきも。
何一つ隠す物なく、一糸纏わぬ全裸体となって部屋の中に放り出されているのであった。
当然、それを予期していなかった彼は慌てふためく。
が。
「ふふ……♡
それに、私達の服は、ちゃんとそのチェストの中に入っていますよ。……勿論、取り出せませんけど♡」
その言葉に即座にチェストを開ける。
確かに、その中には彼や彼女の衣服や装飾らしき物が綺麗に畳まれ収納されていた。
……そして、彼女の言葉通りに、取り出すどころかそれらに触れる事すら叶わない。
見えない柔らかい壁があるかの様に、手は空を切った。
ぴとっ。むにゅ~~♡
「す、すみれさん!?」
狼狽していた彼の裸の背中に、
そのまま、その熱を、豊かさを、柔らかさをを、重みを伝える様にゆっくりと擦り合わされ、動いて行く。
たぷんっ、むにゅ、ふにゅん――
「駄目ですよ、ハーヴィンさん。ちゃんと私達二人で理解し合える様に
その為に、この為に此処に来たのでしょう?」
「……ッ!」
ハメられた。
今回の交渉は罠だったのだ。
そう思い勢い良く振り向き、彼女を跳ね除ける。
――跳ね除けようとする。
〈楽園プログラム・作動 他者を傷付ける行動は抑制されます〉
「きゃんっ♡」もみっ♡
「はっ!?」
しかし、その行動は急激に力が抜けた事により、覚醒者らしい速度も力も失ったその手は――彼女の豊満な胸にすっぽりと収まった。
もみもみっ。むにゅん♡
「んっ♡ 大胆ですね……♡」
「あ、いや。これは違――」
慌てて手を引く――事すら抑制され。
その隙にすみれさんにその両手で、総身で抱擁され――裸の肉と肉が重なり合う。
むぎゅ~♪
「あ、ちょ、うっ!?」
「ふふ……♡ こちらに♡」
くいっ
そのまま、重心を変える様に身体を動かされて……いつの間にか、ベッドに横倒しにされる。
――マズい。
そう思った時には、既に彼女に馬乗りにされた後であった。
最早、この態勢にされてしまったら、脱出は出来ない。押し退けようとする行動そのものが禁止されているのだ。
まな板上の鯉、と言う奴だ。
せめてもの抵抗として身体を捩る、が。
むにゅっ、ぐにゅぅ~~♡
そんな儚い抵抗は覆い被さる様に圧し掛かる柔肉と雄肉を絡み合わせ、より彼女の女体を感じさせる結果にしかならない。
押し付けられる乳肉だけではない。
女性らしいお腹も、華奢な腕も、細身な足と対照的な肉感的な太腿も、自らの上に完全にその身を預ける総身も。
あまりにも、自分自身とは違い過ぎる、心地良い柔らかさを伝えてくる事を感じる事にしかならないのだ。
する、しゅる……
「うっ、くぅっ!?」
「ハーヴィンさん。
言葉とは裏腹に、彼女の左手がいきり立った私の男根に優しく触れる。
そのまま、触れるか触れないかの絶妙な匙加減で小さく動かすフェザータッチだ。
――そして、そんなに優しい触れ方であると言うのに、それまでは全く別次元の快楽につい身体が震えてしまう。
……この加減で“これ”なら、彼女の“全力”では、一体どうなってしまうと言うのか。
恐怖と驚愕と不安と、……そして、隠しきれぬ期待が脳裏に過ぎる。
「……♡ ふふ♡ びっくりするのも良いですけど、
「あ、ああ、勿論だ! だから、一旦退いてくれないか……!」
ぎゅむぅ♡ ……ちゅっ♡
その反論への返答は行動によって齎された。
更なる抱擁と……耳元への口付けとして。
思わず、羞恥と、興奮と、劣情と、快楽によって急速に頭にも血が昇る。
脳内が、彼女一色に染められる。
だからだろうか。
続く彼女の言葉に、抵抗出来ないのは。
「ハーヴィンさん、私は支援の話、受けても良いと思っているんですよ?」
「……ッ!?」
それは。まさか。
混乱した状況で、混乱した頭で、そんな反応しか出来なかったのも無理は無いだろう。
何せ、今まで支援して貰う所か、殆どの場合交渉の席に着く事すら出来なかったのだ。
その度に自らの交渉能力の無さを嘆き、天に祈る日々を送っていた、筈なのに――
「勿論、タダではないですよ?
「そ、それは勿論だ! 私が出せる限りは出すと約束しよう!」――キィィィィン
頬に、唇の端に、愛しの人に向ける様な
冷静には答えられない。出来る訳がない。
このあまりにも淫猥な状況から少しでも早く脱する為に。
苦境に悩む同胞達を救う為に。
何も抵抗する力を持たない、無辜の人々の為に――!
――ぎゅっ
「うっ!?」
「ふふ、嬉しいです♪
――ハーヴィンさんなら、そう言ってくれると思っていました……♡」
答えた直後に、完全に勃起していた肉棒を握られる。
にちゃ、にちゃ、ぬちゃ、ぐちゃ……
その刺激、快楽だけで男根からは先走り汁が溢れ、彼女の手とシーツを汚す。
……そして、彼女はそれを気にせず、微笑みを湛えたままにその手を上下に扱き動かす。
その度に、淫らな水音が部屋に響き、それを気にも留められない程の快楽が迸る。
「すっ、すみれさん! それは――」
「――でも、私が欲しい物は、望む物は即物的な物じゃないんですよ」
ふぅ――……
耳元に唐突に吐息を吐かれ、思わずびくりと震える。
その間にも、ゆっくりとだが彼女の左手の扱きは止まる気配を見せず、快楽は段々と更なる高みへ昇ろうとして行く。
そんな最中にも残っていた僅かな思考力がフル回転する。
――黒札であり、どんな物でも手に入れられる筈のすみれさんが望む物とは……
「――“愛”、ですよ♡」
「……は、え……?」
愛。
愛、とは……
「ふふ♡ 私達覚醒者では珍しい事じゃない、でしょう?
愛されたい、愛が欲しい――ハーヴィンさんも、そう思いませんか……?」
「あ、あぁ……」
ある。確かに――ある。
或いは、それはそれは“愛”という名称ではないかもしれない。
だが、確かに――
「“至上の神による無限の愛”を語る方々ですもの。
その信徒たるハーヴィンさんの心の中には、立派な愛がある筈、そうですよね……♡」
「も……勿論、です」
「ですから、私が満足するまで、ハーヴィンさんの……全ての“愛”を私に注いでください♡
――それで、
「そ、それは……んぐっ!?」
くりゅっ♡
亀頭を片手で包み込まれ、そのまま揉み転がされる。
激しい刺激にまともに思考が紡げないまま、翻弄される。
ぎゅっ、ぎゅっ♡ ちゅぅ♡
答えを急かす様に、抱擁と口付けが緩急を付けて繰り返される。
しかし、必要以上に刺激は与えられない。
――愛を与えれば、それらの快楽も与える、とでも言う様に。
「ハーヴィンさんも、ありませんか……?♡
そう――例えば、貰える筈だった愛を受け取れなかった、とか……♡」
――ある。
それは例えば、同じくメシア教の信徒であった両親の、息子である自分への愛。
だが、より熱心であった両親の愛は全て、メシア教の天使様の為に捧げられていた。
それは例えば、メシア教の信奉する偉大なる天使様からの、信徒である自分への愛。
だが、命の限り尽くし奉仕している筈の自分達へ向けるその視線と表情は…………
「例えば、働き、尽くし、助けた相手に、愛すら貰えなかった、とか……♡
それを行う為にどれだけの価値を積み上げ、修行を費やしたのかも知らないままに……♡」
――ある。
それは例えば、メシア教のテンプルナイトとして、悪魔を斃し、無辜の民を助け救った筈なのに、向けられる視線は……
助けられなかった者達と比べて、どれだけ幸運なのかも理解しないまま、無辜にして、無知無力なままに……
「――ハーヴィンさんも、ありますよね……?♡
ダメ、ですか…………?」
「だ、ダメではありません……」
即答する。してしまった。
確、かに。
彼女の言う通り、覚醒者と言うのは一般人とは外れた者。まともな形で愛を受け取れなかった者も、多い事だろう。
彼女が黒札と言う立場でありながら愛を欲すると言うのも理解できる。
ならば。
メシア教のテンプルナイトの一小隊長として、人々を救う者として。
そして、ハーヴィン・ロクスと言う一個人として――
「わ、分かりました。
「……えへ♡ ハーヴィンさんっ♡♡♡♡」
「わっ、ぷ、ちゅ……!?」
その
「んっ♡ ちゅ、じゅぷ、んちゅ、んあ……っ♡」
くちゅくちゅ、と口の中で互いの唾液と舌が混ざる水音が響く。
全体重を私に預け甘える彼女に、しかし私はそれを退けようとする気すら起きない。
されるがままに、ディープキスを繰り返していく。
本当に同じ人間なのか、とぼんやりとした頭で考えてしまう程に、彼女の唇は甘く、熱を放っていて。
とてもではないが男前、とは到底言えない私の身体に、彼女の柔らかな肢体が今まで以上に強く絡みついてくる。
絶え間なく重ねられる唇と同様に、
――愛らしい、愛おしい。嗚呼…………これが、本物の“愛”なのか。
じんわりと、そして猛烈に。
総身が“愛”で染められていくのを自覚する。
全力で駆けだしたくなる程に総身に活力と情熱が満ち溢れ、まるで若かりし頃に戻ったかの様だ。
頭の中では彼女の事以外何も考えられず、如何に彼女に尽くすか、彼女の愛を得るか、そして、この迸る熱狂を彼女に送る事しか思考できない――
「すみれさん――!!!!!」
「んっ♡ きゃっ♡」
初めて。
そう、初めてすみれさんを自らの意思で両腕で、全身で抱擁し返す。
彼女の熱を、愛を、独占する。
「ふふふ♡ 凄い表情、本当に純粋なんですね……♡」
「ふっ、ふぅ――っ、ふぅー~~……!」
彼女の心地良い肌を、胸を、腰を、尻を、腕を、夢中で撫で回し、彼女の感触を味わう。
全力で、全霊で。傷付ける心配もないのだと身体と心のリミッターが外れ、一心不乱に絡み合い睦み合う。
……しかし。
「大丈夫ですよ♡ 時間は一杯あるんですから、やりたい事、やり合いたい事、全部やって、良いんですよ……♡」
「ぜ、全部……」
まだ、まだまだだ。
この程度では、彼女がくれた愛のほんの一部にも満たない。
もっと、もっともっともっと彼女に愛さなければ――
大丈夫だ。彼女曰く、この
時間はある、時間はまだ沢山ある。
……無いのは、私の経験だけだ。
こんな事であれば、もっと
もっと、もっともっと私の愛を彼女に注がなければならないのに!
「……♡♡ ハーヴィン、さん♡」
「は、はい!」
至近距離で耳元に囁かれる彼女の声音に脳が、身体が震える。
同時に、彼女の手が優しく私の身体をさする。
全く官能的な部位に触れない、そんな優しい愛撫に逆らえない。
まるで子供みたいに撫でられて。
「――汝、隣人を愛せよ♡ 産めよ、増やせよ、地に満ちよ、って言いますよね……♡♡♡
とても良い言葉だと思います♡ ハーヴィンさんは、どうですか……?♡♡」
そう、飛び切り悪戯っぽくも淫蕩な言葉が脳に染み渡った。
♡
ギリギリで理性を保てたのはそこまでだった。
そこからは彼女の言葉通りに、彼女が望む通りに――
愛の営みを続けた。
何回も、何回も、何回も、何回も、何回も。
愛の営みを続けた。
何発も、何発も、何発も、何発も、何発も。
愛の営みを続けた。
何時間も、何時間も、何時間も、何時間も、何時間も。
愛の営みを続けた。
何日も、何日も、何日も、何日も、何日も。
愛の営みを続けた。
愛し合って、寝て、愛し合って、起きて、愛し合って、清めて、愛し合って、休んで、愛し合って。
愛の営みを続けた。
私から、彼女から、二人で一緒に、何時までも。
愛の営みを続けた。
愛の営みを続けた。
愛の営みを続けた。
愛の営みを続けた。
愛の営みを続けた。
愛の営みを続けた。
………………………………
♡
「本当にハーヴィンさんは可愛いですね……♡」
「ちゅぷ……こく……」
あれから一体どれだけの時が経ったのか。
それは最早忘却の彼方であった。
何故なら、今重要なのは彼女と愛し合う事。
それだけ、今の自分達にあるのはそれだけだったのだから。
「よし、よし♡ もっと、です♡ もっと愛してくださいね……♡」
こくり
幾度繰り返されたのかも分からぬ
そこには、既に中年ながらも敏腕テンプルナイトの一人として名を馳せたハーヴィン・ロクスの姿は無かった。
ちゅぱ、ちゅぷ、ちる、ちる、ぶちゅ……
まるで乳児の様に、女の乳房に吸い付き甘え、されるがままに愛おし気に頭を撫でられる男の姿。
傍から見れば不細工な中年の行う売春の様にすら見える。
しかし、果たして。
男は何も憂い無く、心の底から心の髄まで自らの心身全てを女に預け、それに応える慈しむ様な女の表情と言動。
間違いなく、二人は愛し合って――
――Prrrrr Prrrrr Prrrrrr
楽園に、機械的な音が響いた。
唐突な聖域への
しかし、それ以上は動けない。動ける程の心構えなんて出来ていなかったのだから。
「……んふふー♡」
音源は、部屋の隅に置いてあった簡易なチェスト、その中からだった。
所謂、携帯電話の様な物の音だ。
それに気付いた男は内心で胸を撫で下ろす。
自分達には関係無い事なのだと。
音も短くもう止まっており、また自分達の愛の営みが始まるのだと
「わ、ぷ」
「……♡」
むにゅり♡ ぱふ♡ ぱふ♡
互いに横たわった体勢のまま、彼女に後頭部を抱きしめられる。
勿論、私の顔は彼女の胸に挟まれ埋められる事になる。
幾度味わっても慣れない彼女の胸の柔らかさと甘い匂いに顔が熱くなる。
そして。
「ふふ……【コール】、してくださーい♡」
――Pi
「……ぇ」
何故、なんで、どうして、どうやって。
そんな纏まらない思考を他所に。
『マスター、連絡願います。貴女のシキガミです』
「はーい♡ 聞こえてますよー♪」
携帯から聞こえて来たのは女の声だ。
年の頃はすみれさんと同じ程度だろうか。
いや、発言を聞く限りはガイア連合の黒札特有の【シキガミ】の物なのだろう。
そうか、【シキガミ】なら連絡できるんだ……??
訳も分からないままに、胸に顔を埋めたまま話を聞いて
『マスター、前回報告をすっぽかしたせいで幼馴染殿がお怒りです。お早めにご自分で連絡をお願いします』
「えぇー、うーん……♡ 仕方ないですね、その内に、と言う事にしておいてください♡」
『……了解しました。失礼しました』
――Pi
「……ぇ」
幼馴染殿……?
「……ふふ♡ 困っちゃいますよね♡ 私はそこまで積極的に働いてる訳じゃないのに……♡」
「あ、あのすみれさん、その……幼馴染殿、と言うのは……」
冷や汗が流れ落ちる。
ぽつり、ぽつりと。
とてもとても、嫌な予感がするのだ。嫌な言葉な気がするのだ。
その幼馴染、と言うのが……彼女に近しい、自分ではない、男なのではないか、と!!
「……ええ、はい♡ すー君って呼んでる、私の男の幼馴染ですよ♡」
「……ぁっ!」
どくん
ただその一言だけで心臓が破裂する程に早鐘を打ち始める。
冷たい。冷気だろうか。いつの間にか、彼女との距離が僅かに離れている。
たった数㎝の距離だ。ほぼ密着しているのと変わらないのに。
変わらないのに。
「ぁっ、ぁの」
「♡♡ ふふ、すー君も、私と同じガイア連合の黒札なので、昔の誼もあって良く話をするんですよ♡」
やめてくれ。
今は私と愛し合っているのだから、他の男の話は――狂乱する頭でそう考えるも、喉が貼り付いたかの様に言葉を出す事は出来ずに。
「すー君は凄いんですよ。まぁちょっと面倒な所もあるんですけど……私と違って積極的にガイア連合の黒札としてのお仕事もしてる、黒札の中でもエリートさんなんですよ♡」
――ハーヴィンさんと違って♡
言っていない。
彼女は当然そんな事は全く追加して言っていない。
だが、自分の心の中に自分が考えた、そんな妄想の言葉が矢のように鋭く突き刺さる。
黒札と比べて、自分が勝っている所なんて一つもないから。
彼女の言葉に、嘘は無いのだから。
「他の黒札の援助に行く事も多いし、方々からの信頼も篤いし、能力も使いこなせて将来有望なんですよね♡
……しかも、実は
ぶちり
「――きゃんっ♡」
そこまで聞いて。
気付かぬ内に私は彼女を押し倒していた。
疲れていた身体には噓の様に力が満ち、彼女に覆い被さる。
私が、自分が勝っている所は、ある。
それを示す為に。
――彼女への、愛を示す為に。
休んでなんていられない。
すみれさんに愛を示さなければ、愛を注がなければ、愛さなければ――もう、私は耐えられないのだから。
彼女を愛して、彼女に愛されて。
それ以前にはもう絶対に戻る事は無い。戻らない。
「……♡ ハーヴィンさん」
――いいんですよ♡ それでいいんですよ♡
♡
☆―――――――――――☆
そして。
「ん~~っ♪」
深夜。何日経ったかも分からぬ日頃。
例のホテルから一人の女が出て来た。
ガイア連合の黒札である佐久間 すみれである。
心地よさそうに身体を伸ばしながら軽やかにホテルを出る彼女の姿は、しかし普通ではない。
スケスケの黒いベビードールのみを身に纏った、隠すべき所を全く隠せていない、まるで痴女の様な装いである。
女性らしさを全身から放つ彼女がそんな姿で往来に出てくれば、数多の男性の目に留まりまたぞろ面倒な事になるのも必至だが――
「ふーんふふーんふーん……っと♡」
そんな格好の彼女を意識に収める者は、収められる者は、誰も居ない。
――何故なら、彼女はガイア連合の黒札。
常人からすれば超人も超人であるハーヴィン・ロクスをすら余裕で上回る程の化外、正しく
“彼女にとって、何ら問題のない恰好である”
“だから、この格好は何の問題はない”
まるで常識の通じない、そんな道理。
そんなモノを
しかし、それだけでは彼女の怪物性の一割も説明できない。
何故なら――
『――はーい。はろはろーすー君。私は今日も一人愛の道に御救いしたんですけどすー君は今日も非道な催眠三昧ですかー?』
『もしかしなくても喧嘩売ってるよね!? お前と違って俺はお仕事頑張ってるんですけど!?』
彼女は、黒札の覚醒者なのだから。
☆
『はぁ、それで
まぁ、ガイア連合としては助かるかもしれんがやっぱり趣味が悪い……』
『奴隷じゃなくて
『催眠エッチは邪道じゃない、王道だ!!!!』
『それは流石にないんじゃないですかね……』
彼女、佐久間 すみれは一言で言えば黒札の“自由行動勢”の一人だ。
ガイア連合の迷惑にならない程度に自らの思うが儘、気が向くままに活動している。
そんな霊能力者の一人だ。
尤も、その活動の内容の実態は
勿論、如何に“自由行動勢”とて彼女の様な行動をしているのは流石に少ない筈であるが。
『ところで、毎回聞いてるけど本当に奴隷……愛の人、は安全なのか?
契約もせずに愛だけで縛って情報もリソースも部隊としての行動も自由にとか、いつ離反されてもおかしくない奴にしか見えないんだが』
『すー君は“愛”の力を過小評価し過ぎですよ。真の愛があれば、人は大抵の事が出来るんですよ♪』
『ほーん……で、本当は??』
『本当ですのに……ただ、【虚言禁止】で【誓言確約】しているだけなのに……』
『お前良くそれで催眠を邪道とか言ったな!?』
念話で楽しく
彼女の装いと同様にその念話を聞き取れる者は誰も居ない。
むしろ、一人でも居てくれたらそれはそれで楽しめるのに、とすら思うのは何か深い考えがある訳でもなく、ただ単に彼女が
――それにしても、ハーヴィンさんは中々のアタリでしたね♡
連想する様に、きっと此処に居れば自分の姿を見つけられるかもしれない、ホテルの中に残っている
彼も少しすれば体力を回復させ、活動を開始してくれる事だろう。
その事を想像するだけで心が弾み快さすら感じるのだ。
自分も楽しく愛も快楽も得れてガイア連合の為にもなる。正にこれが天職ではなかろうか?
くすりと顔を綻ばせながらそんな事を心の中だけでひとりごちる。
『兎も角、成果はそんな所です。今回も良い人に巡り合う事が出来ました♪
天使部の人にも是非お礼を言っておいてくださいね!』
『それくらい自分で言うか新田さんに言ってくれない?
俺、何か微妙に避けられてるんだけど……』
『純真な天使や人達には催眠はちょっと毒なので、それはまぁ仕方ないでしょう。
どうしてこんな性癖に育ってしまったのか……』
『おまゆう』
そんな報告兼雑談の念話をしながら帰路に着く。
帰ったら留守と狩りを任せていたシキガミを待たせているし、
黒札たる彼女は忙しい。
決して帰路の電車でこの装いのまま乗客に身体を押し付けたいとか企んでいたりする訳では――
「……えっ!?」
「……あっ♡」
――視線が、交差した。
無意識の内に
前方30m、未覚醒男子童貞、歓楽街の店に入るか此処に来てすら迷っているある意味
「――
♡
『そういう訳で、戻るの少し遅れますね♪』
『……程々になー』
そうして、彼女は今日もまた淫蕩に耽る。
愛の為に、快楽の為に。
「ふふ♡ それでは、愛し合いましょう……♡♡♡」
・設定とか
例の部屋:
スケベ部特製
スキルや権能が封じられるのは勿論だが、人間の場合は霊装等も完璧に没収されるのが非常に効果的。
素の耐性は個人差が大き過ぎる為霊装で補うのが一般的であり、その守りが失われる事による動揺はとても大きい。
ちなみに
皆もこの部屋で意中のあの人を虜にして
……スキルは使ってないですよ? 本当ですよ?
ハーヴィン・ロクス:
今回の竿役兼被害者担当の中年太っちょメシア教穏健派のテンプルナイト。
日本にやって来ている穏健派戦力の一端。小隊を任され各地で人に害なす悪魔事件の解決に尽力していた。
テンプルナイトとしては後衛、いわゆる術師型。脳筋は
時期を考えればエリートもエリートの正道のテンプルナイト。だった。今ではすみれの
敗因は主にメシア教にありながら清貧且つ潔癖気味でありそういう経験が無かった事。
現在は愛の為にその地位や実力で得られる情報や
MAGも献上している為レベルアップはあまり出来ていないが、
すー君:
声しか登場していない外見
催眠は良いぞ。すみれとは幼い頃互いに転生者だと知ってからそこそこの付き合い。性癖の違いで全くそういう関係にはならない。
その能力や性癖とは裏腹に日夜ガイア連合の為に精力的に活動している優秀な黒札。
稀にすみれがやらかして
佐久間 すみれ:
本作主人公な愛を求める一般スケベ部所属転生者の黒札。自分の苗字は好きではない。
例の部屋での発言は【虚言禁止】にある様に嘘偽りない彼女の本音。
愛を与えられなかった影響か、自らの手で、自らの意思で、自らの力で愛を得る事に拘っている。
その為か無条件に“そういう物”として唯々与えられる専用シキガミの愛はあまり性癖には刺さらなかった模様。
主人を満足させられなくて泣いてる専用シキガミちゃんも居るんですよ!
その性癖から
曰く「神や天使に向けられた愛を頂くなんてこれ以上ない背徳感と達成感ですよね♡」との事。
真の愛なら洗脳催眠なんかに負けませんよね♡ とか嘯いているが……
既に敬虔で優秀な活動をしているメシア教信徒に改めてリソースを使って“天使の羽根”を使ってまで効率を悪くする程の余裕はメシア教には基本的には無いと言う事情もある。
勿論そうなる様に仕向け誤魔化すのは愛の人達の頑張りです♡
実は背徳感と達成感の為に日本に潜入している過激派にも手を出している事もある。勿論、お眼鏡に叶った相手のみだが。
ガイア連合ではスケベ部の友達仲間には連帯感や友情を、色々と頑張っている上層部には若干の尊敬を抱いているが、それ以外の黒札仲間は特別意識はしていない。
自分の活動の為にその付近を牛耳っている黒札に挨拶に行く事はあれどその程度。掲示板出没頻度は低め。
他者の性癖や欲望を否定はしないので自分の性癖や欲望も否定して欲しくない。そんな感情なのであった。
それ以外にもガイア連合内での立ち位置等もある為、同じ黒札を“そういう対象”には出来ない。
専用シキガミ枠も含めて、貴方の全てを私に捧げてください……♡ とか言ったら上層部に凄く凄く怒られるのは理解しているので。
【挿絵表示】
■ステータス(半終末時点)
佐久間 すみれ
人間 レベル50~ 魅力特化型
物理無効 破魔無効 呪殺無効 状態異常無効 精神反射 魅了吸収
セクシーアイ マリンカリン ファイナルヌード 他魅了系スキル多数
エナジードレイン メディア サマリカーム メパトラ サバトマ 他状態異常系魔法少々
魅了激化*1 魅了貫通*2 魅了反撃*3 アナライズ
誘惑 口説き落とし おねだり 洗脳
基本的には【魅了】特化に多少の支援デバフも込みで仲間や仲魔を頼りに戦う後衛型。
レベルは結構な部分が愛の人達のMAG献上による養殖ではあるが、レベル不相応に弱いと言う事もない。
転生者として極まった【魅了】能力は本来【魅了】が効かない相手や無機物の類すら虜にする。
分かりやすく例えればFakeの
仲魔は物魔遠近対応オールラウンダー魔法剣士型の堕天使(ビキニアーマー)型の専用シキガミ。
【COMP】内に【バイコーン】や献上された天使が何体か。
【サバトマ】である程度のLvまでの夜魔の召喚等が可能。
……そもそも、本人の気質や活動方針からして修行場とかでもなく誘惑や色仕掛けも出来ずに戦闘になった時点でかなり
可能な限り他の人や仲魔に任せるか、そうでない場合は逃走を考える事も多い。