TS転生して最強美巨乳魔道士になりましたが、精液が無いと魔法が使えません 作:ウッディ勃興
「この本の解読なら、このくらいは必要だねェ」
【ジェラ・ガルド古書店】と書かれた、構えから内装から店主まで古臭さを感じる店の中。カウンターに積み重ねられた本の山の僅かな合間。俺が渡した書物を暫く見分していた初老の男はそう言うと算盤を弾き、こちらに見せた。
「……ちょっと待って、これは流石に暴利よ。前にお願いした本はこれより厚かったのにずっと安かったじゃない」
「アレは他言語とはいえエルフ語からの翻訳で、決して難しくはなかったからねェ。ただ……今回のは厄介だねェ。ざっと見ただけなので多分だけど、正確に訳するには二言語か三言語を経由しないとダメっぽいねェ」
この店の店主であり唯一の店員であるジェラはそう言うと外した眼鏡を丁寧に胸ポケットに戻し、白い口髭を撫でた。なんでもかつては王立学院で教鞭を取っていた程の賢者だったそうだが、ある時「僕は知識が好きなんじゃない、本そのものが好きなんだ」と悟って退職して古書店を始めたらしい──まあ、なかなかの変人だ。
とはいえその知識量は本物で、俺が冒険で得た本の解読や翻訳などを幾度も任せていて、信頼できる相手ではある。あるのだが──
「それなら私の持ってる魔導書を下取りに出すから、それでお願いできない?」
「リィリィ。君はウチの常連客で、長い付き合いだからその提案も受けたいんだけどねェ……」
「何か問題があるの?」
俺の問いかけに、ジェラは僅かに目線を逸らしていった。
「君の所で下取りした本。『臭い』ってクレームが多くてねェ」
「………」
「そんな怒りの目線を僕に送られてもねェ……いいかい、リィリィ。例えば僕は君が日頃から香草茶を常飲していたり、強い匂い袋を買い集めたりと自分の臭いを気にしてるのを知っているから何も言わない。だが他のお客様にとっては、君の努力とは関係なしに臭いの残った本は『臭い本』でしかないんだねェ」
呑み込むことは難しいが、ジェラの言葉は正論だ。返された本を受け取り俺は言った。
「話は分かったわ。金額を用意してから、また来る」
「すまないねェ」
店を退出しつつ俺は考える。以前のミノタウロスの一件の際に見つけたこの魔法書に何が書かれているかは分からないが、身体を治す方法のヒントの欠片だけでも書かれている可能性はある。とはいえ自力で「
「稼ぐしか……ないわね」
ここ最近の探索は赤字続きで、正直懐具合も厳しくなってきている。
何か稼げるような依頼が来てはいないか。俺はそんな願いと共に「腐り龍とあばずれ」へと足を向けた。
「ねェな」
「……あっさり言わないでよ。あの壁に貼ってあるの、探索依頼でしょ?」
余りにも素っ気ないドゴの言葉に食い下がり、酒場の壁に貼られた何枚かの紙を示す。
「依頼そのものはあるさ。だが、アンタ向きのはねえって話だ」
そう言われ、改めて詳しく依頼の中身を確かめてみる。
「『貴重品運搬の護衛・馬車数台による輸送のため6人パーティであること』『カジノの用心棒・男性のみ。格闘家優遇』『錬金術師ゴーリーより・被験者求む、危険性を了承できる健康な肉体の持ち主であること』『村の近くのゴブリン討伐任務・報酬、芋10㎏。前払いあり』……芋?」
「ウチの野菜の仕入れで世話になってる村の依頼だ。本当に食うに困ってる奴が案外引き受けてくれる」
「この錬金術師の被験者ってのは?」
「やってみるかい? 何をされるのかは知らねえが二人に一人は帰ってこねえし、戻ってきた奴も『紫のオークが空を飛んでる』とか言ってるがな」
「………」
なるほど、確かに今の俺が求めている依頼は無さそうだ。
「それに、カミさんから聞いたがこの前の探索もくたびれ損だったと聞いたぜ。
「今はストックなし。そっちも調達しないといけないわ」
当たり前だが、精液というのは
一応の最終手段として道行く適当な男性を路地裏に誘って口淫で一発という方法もあるのだが、可能な限りこの手段は避けたかった。薄かったり量が少なかったりするハズレなら口が疲れるだけで終わるし、「精液臭のリィリィ」の二つ名をこれ以上は広めたくない。
「何だい、随分と辛気臭い顔をしてるねえ」
「わっ……!」
その時、店奥から酒瓶を手にしたババロガが顔を出した。居るのは知っているとはいえ、いきなり人型サイズの蜥蜴の頭が出てくると軽く驚いてしまう。
「それならいい方法があるよ。金も稼げて、ついでに精液も集められるおまけ付きだ」
「何、それ?」
興味を惹かれた俺はババロガに顔を向けた。一方、何のことを言っているのか分かったらしいドゴは苦い顔をしている。。
酒瓶を置いたババロガは腕を組み、二の腕の鱗を撫でつつ言った。
「リィリィ、あんたウチの宿で
「……は?」
「前から声かけようと思ってたの。胸も尻もかなりのモンだし器量もいい。絶対に稼げると思うよ? なんなら一週間の試しでもいい」
口調こそ軽いが、ババロガの目は至って本気だ。
「女将さん……悪いけど、それは」
確かに金も欲しいし精液も必要だが、そのために体を売るのはまた別の話だ。
何よりそういった性を仕事にすることで、時折引っ張られる俺の中の「女」の部分が強くなるのではないか。そんな不安もあった。
「そうかい? 残念だねえ」
「残念じゃねえよ。こいつにウリが務まる訳がねえ」
ドゴが鼻を鳴らして言う。無意識にぴくりと眉が動き、俺は思わず彼に反論した。
「ねえドゴ、確かにやる気は無いけど、それでも今のは言い過ぎじゃない?」
「事実だ。確かにお前はテクニックはあるんだろうさ。だがそれ以外の、サービス精神とか、あー、なんだ、男を悦ばせようってぇのが全く無え。勤めたところで、一人目の客で泣いて帰って終わりだよ 」
「アタシはそうは思わないけどねえ。男を悦ばす芝居のひとつも打てるだろ、リィリィ?」
横からのババロガの言葉。何だか話が変な方向になってきたが、ここで彼女の言葉を否定すればドゴの言葉を肯定することになる。
「……まあ、ね。そのくらいは出来るよ」
「ま、言うだけなら誰でも簡単だ」
「出来るわ。この体質になってから、何人の男を射精させてきたと思ってるの?」
小馬鹿にしたドゴの声。自分のこれまでの経験を馬鹿にされたように感じた俺はこれにも反論してしまう。
すると、老ドワーフはニヤリと笑って俺に言った。
「そんじゃ、賭けようじゃねえか」
「賭け?」
「そんなに出来るって言うなら一週間とは言わねえ、三日やってみな。そこでお客を満足させられたなら俺は素直に謝るし、何なら詫び賃に金貨1枚も付けるぜ」
「私がその三日間で根を上げたら?」
「金に困ってる奴から巻き上げようとは思わねえよ。そん時ぁ『ドゴさんの仰った通りです。もう生意気は言いません』って俺に頭を下げな」
一瞬だけ考える。勝てば頑固なドゴに頭を下げさせて更に金貨1枚。負けても俺はその場で頭を下げるだけ。ならば──
「……分かったわ。女将さん、いい?」
「え? いいのかい?」
「そこまで言われて引き下がれないわ。やってやろうじゃない」
急に話を振られて驚くババロガに、俺は言った。
──その時のドゴとババロガが互いに「上手くいった」と目配せを交わしていた事を知ったのは、後になってからの話だ。
「……あの、女将さん。上から何か羽織っちゃ駄目?」
「なに言ってんの。アンタ自身が商品なんだから『私はこれだけデカい乳と張りのある尻を持ってて、肌もスベスベです』ってアピールするのは当然だろ? 市場の野菜が、見えないように箱に入れられてるかい?」
この酒場はドゴたち夫婦の家でもあり、住み込みの売春婦たちの宿舎も兼ねている。構えは小さいが、実は奥の造りは広いのだ。
その奥の休憩所らしき部屋の中、俺は普段のブラウスにローブという服装から彼女の言う「仕事着」に着替えさせられていた。
「だからって、これ、もう只の下着じゃ……」
「下着……ああ、そうだ。それも用意しないと。メルチ! 人間用の下着を持ってきとくれ」
「あーい! どれ出します?」
「アレがいいね。あの、大事なトコだけ剥き出しになるやつ!」
「………」
どうやら余計なことを言ったらしい。
俺は改めて自分の着せられた服を見た。ドレスと言うよりは寝間着のベビードールに近く、色は黒。銀髪赤眼の俺との色合いは悪くない。
とはいえその布地の面積はかなり際どいものだった。まず胸回りはV字に深く切り込まれており、谷間どころか下乳が僅かに除くくらいまで剥き出しになっている。おまけに肩紐も細く、俺の胸のサイズにはやや小さいからか乳房の半分──いや、六割か七割くらいは剥き出しだ。背中は背中で大きく開けており、おそらく肩甲骨辺りまで見えているだろう。
そしてひざ丈も短い。90㎝オーバーの俺の胸に布地が持ち上げられているのもあるだろうが、辛うじて下着が隠せているくらいの丈しかない。たぶん何かを拾おうと上体を傾けただけで俺の尻は丸見えだろう。
「はい、下着お待たせ。似合うと思うよ!」
ここに勤めている娼婦のひとり、
「……!?」
「少しスースーするけど、すぐ慣れるさ。さてと……メルチ、アタシは彼女に教えることがあるから、その間にお客さん来たら相手してくれる?」
「あいあい。いやぁ、お試しとはいえ、久々の新人で更に人間ってのは新鮮だねぇ」
艶やかな黒毛を整え、嬉しそうにメルチはカウンターに向かってゆく。この店の娼婦は亜人種が多い。人間中心社会で路頭に迷っていた彼女らをババロガが拾ってきては食わせているのだそうだ。
「リィリィ、とりあえず下着を履いて、ここに座りな」
ババロガに木製テーブルへ促され、俺は手早く下着を取り替えてから椅子に座った。向かいにババロガも座り、ポリポリと頭を掻く。
「正直、アタシ自身も実践で覚えてきたクチだから『新人への指導』ってのは苦手なんだけどねえ……ま、テクニック的なモンは教える必要は無いだろうし、初めてのアンタに『心得』ってのだけ教えておきたいと思う」
「心得?」
「ああ、お客さんをお迎えする上での心構えってのかね? そんなヤツさ。アンタも知ってる通り『
自分の店の事なのに随分と辛辣に言うものだ。
しかし、そこまで言ってからババロガは鱗に包まれた指を立てた。
「でも……女を買う客は誰しも『癒し』を求めて、自分の中の溜まったモンを……精神的なものも、汁的なモンも含めて吐き出したいと思ってる。アタシ等がやるのは、それを出し切ってやる事。そして終わった後の客にスッキリして出て行ってもらう事さ」
「癒してあげろって事?」
「シャシャッ、そう言われてもピンと来ないだろ? アタシが言いたいのは二つ。『相手のペースに合わせて、自分の都合でことを進めない』『お客の話には、例えどんなくだらない話だろうと最後まで付き合う』。これを守ってさえいりゃ、余程のことがなけりゃ上手くいくさ」
「……分かった」
「あ、だけどホントにヤバい客の時は迷わず逃げてアタシや旦那を呼びなよ? 多少の過激なプレイは仕方ないけど、商品を壊されちゃあ堪らないからね」
最後に気遣いを残し、ババロガは立ち上がった。彼女に付いて俺も部屋を出る。酒場で交わされる声や笑いが普段と違って聞こえる。
「まあ、お呼ばれがかかるまではここで適当にしてな。新人はみんな注目するし、アンタならすぐにお呼ばれがかかるよ」
カウンターの奥、娼婦たちが寛ぐスペースに俺は連れられてきた。ここで娼婦たちは客と他愛ない会話で時間を潰し、自身の身体をアピールしつつ客を待つのだ。
「……ふぅ」
ババロガの整った背中を見送り、俺は小さくため息をついた。客として彼女たちを眺める側で酒を飲んだりは日常的にしていたが、逆の立場となると意外と落ち着かないものだ。
「まぁまぁ、そんな緊張することないよ。すぐ慣れるって」
俺の真横、客から見えるように踏み台に乗っていた子供──否、
「……お客さんも、常連さんが、多い。大丈夫」
更にその横に立つ娼婦が静かに言った。一見は少女に見えるが、鼻から上が包帯で巻かれている。
「貴方、ケガしてるの?」
「ケガじゃない……単眼族だから、怖がらせないようにしてる、だけ。ちゃんと前は、見えてる」
なるほど、色々な事情があるということか。
その時、遠くからババロガの声が飛んできた。
「お客さんだよ、『リリィ』!」
「え? あ……私か」
勤める娼婦たちは皆が源氏名として別名を使う。自分が呼ばれた事に気付き、俺はババロガの所へ向かった。
「流石だねぇ、もうお客さん一号だ。お相手は10番の部屋にもう行ってる。ちゃんとノックして、本名じゃなくって『リリィ』で通すんだよ」
「分かった。行ってくる」
──いかん、何だか緊張してきた。
カウンターを出て、階段を上る。上は宿屋も兼ねていて、廊下の左右に均一に扉が並んでいる。俺は指定された10番の扉を確認し、ノックする。
「どうぞー」
穏やかな男性の声。とりあえず怖い人ではないようだ。少しの安心と共に扉を開ける。
「ど、どうも。リリィ……です」
部屋はシンプルな造りだ。ダブルベッドにテーブルに椅子、荷物置き用の棚に服をかけるハンガーツリー。
テーブルの上にはワインボトルと二つのグラス。加えて客のものと思われる小さなカバンが置かれている。
「ああ、どうも。新人さんなんだって? 今日はよろしくね」
顔に巻いていたと思われる布をそのハンガーにかけつつ、中に居た男は俺に声をかけてきた。
何と言うか──普通の中年男性だ。小太りとまではいかないが若干お腹が出ていて、適度に肌がくすんでいて、特に目を引く特徴がある訳でもない。
着ているものも普通のズボンにシャツにベスト。しかしベストには金糸で刺繡が施されており、なかなかに高級なものなのが伺える。
「まあまあ、まずはお話でもしようじゃないか」
「えっ、あ、はい!」
そう言われ、俺は自分が部屋の入口に立ったままなのを今更気付き、慌てて扉を閉じる。
──参ったな。これは本当にドゴの言う通りだったかもしれない。
確かに男とするのは初めてじゃない。しかし考えてみれば俺は精液を魔力の源として得るため、基本的にこちらの主導で射精させてきた。相手のペースに合わせてセックスした経験は──無い。
緊張感が拭えないまま、俺は男に促されるままにテーブルに向かい合った。
「さ、とりあえず乾杯しよう。お酒は平気?」
「はっ、はい……」
グラスに赤ワインを注がれ、俺はそれを手にする。男は俺に気遣うように言った。
「……緊張してる?」
「その……少しは」
「分かるよ。初めてのお客さんに失礼するんじゃないか、上手くできないんじゃないか……私も、仕事を始めた頃は毎日そんな感じだった……ああ、そうだ。それなら丁度……」
柔らかい微笑みと共に男は傍らのカバンを開け、三角に折られた紙を二つ取り出した。
「何ですか、これ?」
「薬草を配合した、気持ちを落ち着かせる薬さ。私は医者をしていてね、落ち着かないお客さんとか、むずがる子供とかに使ってるんだ」
「………」
「はは、まあ怪しむだろうね。なら私が先に飲もう」
そう言うと男は紙を広げ、二つの粉薬が同じものを示した上で片方を手に取るとそれをワインで流し込んだ。
「……いただきます」
ほんの少し悩んだが、俺は同様に手に取るとそれを飲んだ。こちらの露骨に煽情的な服装にも男は卑猥な目を向けることなく、穏やかな笑顔でこちらを気遣っている。本当の気遣いならここで断る訳にもいかない。
「ぷはっ……」
「いい飲みっぷりだ。じゃあリリィ、君の事を聞かせてもらえないかな?」
「え? その……すぐに始めないんですか?」
「私は動物じゃないからね。今夜ひと晩だけの相手とはいえその人の事を知った上でしたいんだ。それに……私のような『おじさん』だとそんな回数も出来ないというのもある。ははっ」
何ともこの店に来たとは思えないくらい紳士的な人だ。ひょっとすると今日は楽な仕事になるのかもしれない。
そんな事を思いつつ、俺は言った。
「えっと……名前はリリィ。ちょっとした事情があって、女将さんの紹介で少しだけ働かせてもらう事になって……」
あまり自分自身に関わる情報は出さず、表面的な話だけをする。
「魔法を使えるんだ、凄いねえ。冒険とかはするのかい?」
「今はちょっと装備が足りなくって、それを買うためもあるんですけど……」
俺の話に男は程よいリズムで相槌を打ち、身体を傾けて興味深そうに聞いてくる。彼に促され、俺は更に話を進める。
「……あれ?」
違和感を覚えたのはその辺りだった。妙に身体がぽかぽかと温かく、肌が汗ばんでくる。
「身体が暑くなってきたかい?」
「は、はい」
「心配しなくていい。それは、さっきの薬が効いてきた証拠だ。人間は緊張すれば身体が硬直して血管の流れが悪くなり、冷えてくる。逆に身体が温まれば自然と緊張しなくなる」
「そう……なんですか」
「ああ。ただ……確かに暑くなってきたね。そろそろ脱ごうか」
そう言うと男は立ち上がってベストを脱ぎ、シャツのボタンを取り始めた。俺もそれに合わせて立ち、緩慢な動作でドレスの肩ひもを持ち上げて捲るように脱ぐ。
「……ほう、これは素敵な下着だ」
男からの感心の声。暑いせいもあってか、顔が赤くなるのが自分で分かる。
まず上、象牙色のブラは形こそ普通だが両のカップの中央のところにスリットがはいっており、着たまま乳首だけが剥き出しとなっている。白い肌にはうっすらと汗が浮かび、先端の薄桃色の乳首は艶やかに濡れている。
そして下はブラ以上に下着の役目を果たしてはいない。上と同じ象牙色のショーツは鼠径部周りの布地が三角に切り取られており、銀髪に彩られた秘所がやはり丸出しだ。
「その格好なら、そのまま相手してもらった方が良さそうだ。興奮してきたよ」
「あ、ありがとう……ございます」
くそ、頭がぼんやりする。本当にあの薬は緊張を解く薬だったのか? 落ち着いて考えようとしてもまるで陽炎のように集中が揺らぐ。
「それじゃ、お願いできるかな? 手でも口でも、君の得意な方で良いから」
上を脱ぎつつ男はそう言って俺を促した。それに従い、男の前に移動して膝立ちの姿勢になる。ともかく早く終わらせよう。肉棒の扱いをこちらに任せるなら、こちらのペースに持ってゆける筈だ。
あくまで表面上は従順な態度を取りつつ、俺はそう考えて待ち構える。
「私は大丈夫です。いつでも……」
「よろしく頼むよ。まあ、若い子とは違ってそんな立派なものじゃないけどね」
そう言うと、男はズボンを脱いで下半身を俺の眼前に晒した。
「っ!?」
──それは巨根だった訳ではない。単純なサイズだけならこの前のボルガノよりやや小さめ、平均的な男性と比べればやや上くらいだろう。
しかし、その肉棒が放つ熱量と見ただけで分かる硬度が俺を絶句させた。血管を太く浮かび上がらせ、赤黒い亀頭からむせる程の雄の臭いを放つ、灼熱の肉の槍。
「ンッ……!」
どくんと下腹辺りに疼きが生まれ、無意識に手が股の間に伸びた。表現しがたい未知の感覚だ。あるいは──「子宮がきゅんきゅんする」とは、こんな感じなのかもしれない。
「凄い、です、おじさまの……し、失礼、します……ちゅ、れろっ……」
「おぉ……」
肉棒の存在感に圧倒されつつも俺は銀髪をかき上げ、肉棒に唇を押し当てた。予想通り、唇が焼けそうな程の熱さが伝わってくる。そのまま舌を出し、根元から竿を舐め上げてゆく。
「じゅる、ちゅ、あふっ……火傷、しちゃいそう……何で、おじさまの、こんなに熱いのっ……!?」
「んむっ、き、君と同じだよ。薬で血の巡りが良くなったから、それだけコレに血が集中してくれて、くうっ、いるんだ……」
「んはっ……ん、あぁん、はむっ……じゅるぅ」
果たしてそれだけなのだろうか。そんな疑問を覚えることも俺は面倒くさくなり始めていた。竿全体が唾液に塗れたのを確かめ、今度は大きく口を開けて口腔内で肉棒を包み込む。
「んちゅ、ンッ、ンンッ……!」
肉棒の熱が粘膜越しに俺の身体全体を温めてくるようだ。くらくらする程に身体が熱く、疼く。なにか、なにかおかしい。
フェラチオを続ける中で感じる違和感。舌先で亀頭をつついた時、俺はその違和感のひとつに気が付いた。
「んぱっ……はぁ、はぁん……お、美味しい、おじさまの、チンポ、美味しいっ……!」
「ふふ、嬉しいことを言ってくれるね……もっと、味わってくれ給え……」
──俺は今、この男のチンポを咥えることに全く嫌悪感を抱いていない。むしろ、この肉棒の汗臭さが、先走りの粘り気が、舌先に絡む陰毛が、全て美味しく、愛おしいと感じてしまっている。
ヤバい──何だか分からないが、とにかくヤバい。早くイカせて、終わらせないとヤバい。
「ふぁ、あぁ……んむっ、ンッンッンンッ!」
「おぉっ、く、くうっ……!」
得体の知れない焦燥感に押されるように俺は再び肉棒を根元まで咥え、じゅぽじゅぽと頭全体を前後させて竿を扱き始めた。口の端から泡が零れるほどの勢いで、しかし決して痛みを与えないように意識しながら一気に絶頂させようと試みる。
「ああ、いいよ、リリィ! もう、で、出るっ!」
「はぁっ……だ、出して、下さい。おじさまの、精液、私の口に、全部っ……っぱ、あ、あぁ……ん」
そしてその試みは上手くいったようだった。腰を震わせる男の反応を確かめてから肉棒を解放し、大きく口を広げたまま竿を手で素早く扱く。
「おぉっ、お、ああぁっ!」
「あふ、お、
亀頭から噴水のように精液が迸った。伸ばしていた舌先で受け止めようとするが勢い余った奔流は俺の顔まで汚してゆく。眼球にまで飛んできそうになり、俺は目を閉じた。
「あぁ……リリィ、まだ、呑み込まないで……」
「あ、ふぁ、ふぁい……」
暗闇の中、男の声と精液の味と感触。それだけがやけに明確に感じる。
呑み込む瞬間を見たいのだろうか。そんな事を思っていた俺の舌先に男の指が触れ、そこに何かが乗せられた。
「ふぇ?」
「
静かな、しかし強い言葉。
俺はその言葉のまま、「何か」と共に精液を嚥下する。喉を過ぎてゆく飲み慣れた白濁液の味と感触。そして飲み慣れない、異質の液体の感触。
咄嗟に俺は顔の精液を拭い、目を開いた。
「い、今のは……!?」
「ああ、大丈夫。いつも使っている薬さ。恥ずかしいが、私はそんなに女の子を悦ばせる技術とかは無くてね。どうしても頼ってしまう。今度のはすぐ効くよ」
「それって、どんな薬……んあっ、あ、ああっ!?」
最初に来たのは強烈な頭痛。続けて、その痛みを上書きするほどの鮮烈な快感。脚がガクガクと震え、触れられてもいない秘唇が潤み始めたのが分かる。
「気持ちよくなる薬さ。まあ、人によってはそのまま壊れてしまう場合もあるが……
「な、なに、それっ、いっ、うあっ!?」
暑い、いや、熱い。俺の身体が俺の制御から離れてゆくのを感じる。抑えようとしても声を止められない。
というか、最初の時点でそんなヤバい薬を俺に使ってたんだとしたら、何故この男は今も平然と話が出来るのか。同じように見えてダミーの薬だったのか?
「おな、おなじ、くすりっ……!?」
「ああ、私だけ偽薬だったんじゃないかと聞きたいんだね。誤解の無いように言うと、アレは同じ薬だよ。ただ私の場合……
「……!?」
ここに来てようやく俺は、眼前のぱっと見では温厚で紳士的なこの男がそこらの魔物以上に危険な男であり──本当の意味で「ヤバい客」だったのを理解した。膝立ちの状態から立ち上がり、扉へと逃げようとする。
「おっと危ない」
「ふぁ、あ、ああっ!」
しかし俺の足はつるりと滑り、背後から男に抱きかかえられた。まるで全ての肌が性感帯になったように触れられただけで喘ぎが漏れる。
「気をつけ給え。まともに歩ける状態じゃないんだから」
「は、放し、てっ、んあぁっ!」
剥き出しになった乳首をきゅっと摘ままれ、全身がビクビクと震える。
「感度が良いね。ここまで大きいのに形も崩れてないし、乳首も綺麗だ」
男はあくまで静かに、穏やかに俺の胸を責めてくる。それが逆に恐ろしい筈なのに、その恐怖すら快感が上書きしてくるのだ。
「やっやめっ、イっ、イクっ! 嘘っ、胸、だけで、わたし、イっ……!」
ぐにぐにとずっしりとした乳房全体を揉みつつ、指先で乳首をねっとりと責めてくる男の手。
「んああっ! おじっ、おじ、さまっ! おっぱい、だめ、だめぇっ!」
まだ股間を弄られてもいないというのに、俺はそれだけで何度も小さな絶頂に達していた。駄目だ、本当に、これ以上は──俺が本当に「
「やれやれ、ちょっと効き過ぎたかな。胸だけでこれでは……ここを責めたら、どうなるのか」
「ふぁ、あ、ああんっ!」
後ろから抱きかかえた状態で、今度は男は肉棒を太腿の間に差し込んできた。カリが陰唇をくすぐり、勝手にからだが反応して大きくのけ反る。そのまま男は腰を緩やかに前後させ始めた。
「んひっ、ひっ、いひぃっ!」
悲鳴か喘ぎか自分でも分からない声が漏れる。熱い肉棒が股間を擦る度に腰がとろけそうになり、それがより秘唇と肉棒を密着させてしまう。
もう何度目か分からない小さな絶頂。しかしそれは大波へと変わる事はなく、次第に俺の中に「もどかしさ」を作り出してゆく。陰唇がひくひくと蠢き、愛液が溢れてくるのが分かる。
「随分と、濡れてきたね……」
「あっひっ! いいっ! おじさま、のっ、ちんぽっ! もっと、もっとぉっ!」
抑えようとしても勝手に快楽の言葉が出る。擦られただけでここまで気持ち良いというのに、膣内にこの肉棒を突き入れられたらどうなってしまうのか。その期待感に子宮が疼き、挿入を求めて膣壁がひくつく。
「もっと、欲しいのかい?」
「はひっ、欲しい、ですっ! おじさまのちんぽっ、もっと、欲しい、ですっ!」
おそらく俺の赤眼はあり得ないくらいに蕩けた瞳をしている事だろう。逃げようとしていた事も忘れて喘ぐ俺を、男はベッドの方へ解放した。軽く押されるままにベッドに倒れ込み、仰向けになって男を見る。
「それじゃあ、ちゃんと『欲しい』ってお願いしないとね」
あくまで穏やかな口調と態度で、男は俺を促す。
これがおそらく、この行為の最終段階。ここで彼に屈服すれば、俺は完全に相手のものとなる。駄目だ、ダメだ、駄目だ。
「さあ、言ってごらん」
ずん、と男が一歩足を踏み出した。眼前に愛液と精液に塗れた肉棒がそそり立つ。むせ返るような淫臭が鼻をつき、それだけで脳が痺れる。
駄目だ、ちんぽ、駄目だ、ああ、チンポ、駄目だ、チンポ、チンポ、駄目だ、チンポ、チンポ、おじさまの、熱くて逞しい、駄目だ、欲しい、チンポ、欲しい、チンポ、欲しい──
「……ください、おじさまの固くて熱々のチンポ、リィリィのおまんこの奥までぶち込んで! おじさまの精液で、一杯に、してっ、下さいっ!」
──俺は喜々とした表情で足を広げ、自らの指で陰唇を広げると男に挿入を懇願した。
「偉いね、よく言えた」
おそらくは男も相当に我慢していたのだろう。俺の言葉を合図にベッドに上がると汗に濡れる太腿を抱え、一気に肉棒を打ち込んできた。
「いっひぃっ! おっおじさまっ! いいっ、ちんぽ、いいっ! こわ、壊れ、ちゃうっ! リィリィ、壊れ、ちゃうっ!」
「くうっ……本名は、リィリィ、なんだねっ……いいよ、リィリィのおまんこも、熱くて、凄く締め付けて、くるっ……!」
「あぁんっ! おじさまっ、おじさまぁっ!」
仰向けでも形を崩さない俺の乳房が遠慮ない腰の動きにたぷんたぷんと激しく揺れる。視界がチカチカして焦点が定まらない。本当に俺は壊れかけているのかもしれない。
「あひぃっ! おじさまっ、リィリィ、イクっ、また、イクっ!」
「何度でもイきなさい。そんなリィリィも大好きだ」
あぁ、こんな状況で「好き」って言わないで。本当に、好きに、なっちゃ──
「あぁんっ! 好きっ! リィリィもおじさま、好きっ! おじさまのっちんぽっ大、好きぃっ!」
「はは、それは私が、ぐうっ、す、好きなのかな? それとも私のチンポが好きなのかな?」
「りょっ、両方っ! おじさまもっ、ちんぽも、どっちも好きぃっ!」
俺は自らおじさまの背に腕を回し、顔を近づけてキスをした。そのまま舌を挿入させると、おじさまの熱い舌が応えてくれる。
あぁ、俺の膣内で亀頭が膨れ上がるのが分かる。
「だ、出すよ、リィリィ! 中でいいの、かい!? 孕むかも、しれない、よっ!?」
「はっ、孕ませてっ! リィリィ、おじさまの精液、欲しいっ! おじさまの、せーえきっ! 全部、リィリィのおまんにっ、飲ませてぇっ!」
「そうかい、それ、ならっ……うっ、く、ああぁっ!」
「ひっいいっ! おじさま、おじ、さまあぁぁっ!」
俺の膣内がおじさまの精液で満たされてゆくのが分かる。幸福感に満たされてゆくのと共に、意識が薄れてゆく。
──ここだ。
「……『
「な……!?」
子宮を中心に発せられた光が俺を包む。男は驚き、肉棒を引き抜いたままベッドに腰を落とす。
ああ畜生。嫌な気分だ。頭も体も酷い二日酔いのように痛むし起き上がれもしない。だがもうひと頑張り必要だ。俺は続けて別の呪文を詠唱した。
「『
瞬間、耳が壊れそうな程の轟音が鳴り響いた。この魔法は大きな音を立てるだけの初歩魔法だが──
「開けるよ、どうしたんだい!?」
──こうして、助けを呼ぶことはできる。
近くにいてくれたのだろうか。あっと言う間に駆けつけてくれたババロガは部屋の様子と机の薬、そして男の様子を見て察したのだろう。爬虫類の鋭い視線で男を睨んだ。
「ちょいとお客さん、ウチの娘にクスリは……いや、待った。アンタ『薬屋』だね?」
男はベッドの上で座ったままババロガを見て、俺を見て、またババロガを見て言った。
「やれやれ、まさかこんな場末の臭い宿にまで私が知られているとはね」
その表情はあくまで穏やかで、静かで、微笑んでいた。
──海で遭難した時の生き残るコツのひとつに「波に逆らわない」というのがある。無理に波に逆らえば激しく消耗してしまうからだ。故に波に逆らわず、助けを求める方が生存率は上がる。
俺がしたのもそれだった。薬をキメられ、俺の身体は完全に意思を離れて暴走していた。あそこで無理に抵抗すれば俺の「男」としての精神は摩耗し、本当にメスになっていただろう。
だから俺は、快感に任せたままの身体が絶頂を超えて失神するのを待った。体の反応がゼロになった瞬間に「正気」、一時的な精神疾患や混乱を治す事ができる魔法で割り込んだのだ。
「はぁ……疲れた」
ようやく酒を飲める程度まで調子が戻った俺は、いつものぬるい麦酒を傾けて息をついた。
俺が相手をしたあの男は通称「薬屋」と呼ばれる、娼婦界隈では有名な要注意人物だったそうだ。温和な態度で娼婦の警戒心を解き、危険な薬物で相手を──前の世界で言うところのキメセク中毒にして何人も奴隷にしていて、指名手配犯みたいな扱いらしい。俺が入室してきた時にハンガーに掛けていたのはその変装道具で、ババロガは見抜けずに俺を危険な目に遭わせたことを本当に後悔していた。
まあその結果──俺の娼婦体験就職は一日で中止となったが、賃金や迷惑料や「薬屋」から奪った金などで懐は十分に潤うことになった。ジェラに解読を依頼しても釣りが来る額だ。
「それにしても……ヤバかったなぁ」
今回は本当に自分が女になるところだった。油断していたのもあるが、あんな魔物めいた人間が普通に表通りを闊歩しているのだ。今後は精液補給をするにしても、もっと相手を選ばなくては。
その時、酒場の扉が開いて見慣れた顔が姿を現した。
「よおよお、新しい娘が入ったって聞いたんだが……あれ?」
若干無精ひげが伸びた感のあるボルガノは、カウンターに座る俺を見てきょとんとした表情を浮かべた。
「どうしたの、私の顔に何か付いてる?」
「いや、あれ? アンタが魔導士を辞めて娼婦になったって噂を聞いたんで、そンなら買おうと思って来たんだが」
「どういう噂よ? 確かに一日だけやったけど、もう辞めたわ」
「……なんだよ。折角アンタを買って命令できると思ったのに」
露骨に残念そうに肩を落とすボルガノ。
──まあ、俺の相手はこのくらい緩い奴が丁度いいのかもしれない。
そんな事を思いつつ、俺は椅子から降りて彼を促した。
「丁度いいわ。ストックが切れてるから、三つ分くらい手伝って」