TS転生して最強美巨乳魔道士になりましたが、精液が無いと魔法が使えません 作:ウッディ勃興
「ボクのパートナーになってくれ、『精液臭のリィリィ』。ボクと共にいれば、キミは本当に世界最強の魔導士になれる」
西日が注ぐ隣国首都、俺とハンスの影が長く伸びている。これが普通の男女の告白の場面であれば絵になるシチュエーションなのだろう。
しかし俺は常に精液を必要とする魔導士で、ハンスは睾丸に聖痕を持つ、聖化された精液で孕まされた魔物の仔を堕胎させる堕胎騎士だ。ロマンチックと称するには余りにも生臭い。
「……どういう意味?」
「文字通りの意味さ。ボクと共に居て欲しい。キミへの護衛依頼を通したように、ボクはこの身体のお陰で聖堂騎士団では特別扱いで発言力もそこそこはある。キミを騎士団専属の魔導士に任命させる位ならサインひとつで片付くだろう」
静かに聞き返す俺に、ハンスは再び笑みを浮かべて言った。
聖堂騎士団の専属魔導士。王に仕える宮廷魔道士や銀龍ギルド上位勢ほどではないにせよ、魔法で身を立てようとしている者であれば誰もが憧れるエリートだ。少なくとも、非公認ギルドで日銭を稼ぐ魔導士とは比べ物にならない。
「勿論、ただ騎士団としての任務をこなせと言っている訳じゃないよ? 『有力者の妻や娘が魔物に犯されて孕まされた』なんて頻発するもんじゃないし、ボクの派遣の為には高額な寄付金も必要だ。空いてる日も多い。そこを使って、キミの冒険には全てボクが同行する」
「なるほど……ね」
実際、悪くない話ではあった。
ハンスの精液はひと舐めで俺の魔力を八分目まで満たす。確かに彼が傍にいれば、今までの冒険で偶に陥っていた「ストック切れ」の心配は解消されるし、残りストックを計算しながら魔力の消耗を抑える必要もなくなる。遠慮なく上位魔法を使えるようになれば高難度が予測され後回ししていた遺跡の探索も進むだろう。
だが──俺の心の中にはまだ引っ掛かりがあった。理由は言うまでもなく、このハンスという男の底が見えない事だ。
「それは今、この場で答えなければ駄目?」
「まさか! ボクだっていきなりこんな話をしてキミが『素敵! 私、ハンス様に一生ついてゆきます!』って言ってくれるとは思っちゃいないさ。最初の町に戻るまでの数日間じっくり考えて貰って、最後に返事を出してくれれば良いよ」
つまり、答えを出すまでの余裕は今日を含めて四日ほどか。色々と調べるには難しい時間だ。俺はもうひとつの疑問をハンスに投げた。
「話は分かったわ。確かに貴方と居れば私は最強の魔道士になれるかもしれない……でも、それで貴方にはどんなメリットがあるの?」
そう、ここまでの話で俺にとっての利益についてはハンスは話したが、彼が得る利益は謎のままだ。
「メリット?」
しかし、ハンスは俺の言葉に「何を言っているのか」とでも言いたげな表情で小首を傾げた。どう答えたものかと腕を組み、しばらく考える。
「いや、メリットと言われても……強いて言うなら、キミがそれで幸せになってくれるなら嬉しいというか……ねえ?」
「……?」
何か、ズレが生じている。俺とハンスとの間で認識のズレが。
俺は今のハンスの発言を改めて自分の中で反芻し、その意図を探り──ある可能性に至る。思わず俺は額に手をあてて言った。
「ちょ、ちょっと待って。つまりこういう事? 貴方の言う『パートナー』って、
「むしろ君の言う、そっちの方がメインなんだけどね……逆にショックだよ、ボクがビジネスパートナーとしてのドライな関係だけでこんな事を言ってると思っていたのかい?」
組んでいた腕を解き、ハンスは寂し気なため息をついた。
「ボクが求めているのは公私共のパートナーさ。リィリィ、プライベートでもボクはキミと一緒に居たい」
「初対面から三日の私と?」
「ああ、キミにとっては勝手な話かもしれないけど、ボクとしては運命の相手だと感じている」
「………」
ここまで直球で好意を叩きつけられたのが初めてで、俺は思わず言葉を失った。まさか「運命」という言葉が出てくるとは。
ハンスは真剣な表情で言葉を続けた。
「最初にキミの事を知った時は震えたよ。かつて魔法大学院きっての天才児と言われながらも失踪した、精液を魔力に還元して戦う魔導士……ボクの聖化された精液と、余りにも相性が良すぎる。まるで最初から組み合わされる事が予定されたようにね」
「……そこは否定しないわ」
「で、まあ、ちょうど今回の任務の話が来てキミとこうして会えた訳だけど、その気持ちは確信に変わった。ボクの精液はこの人に捧ぐ為にあったんだ、とね」
──口説き文句としては余りに最低だ。しかし、最低ゆえにこれがハンスの本心の言葉だという事も伝わってくる。
いやまあ、確かにこの世界では俺は女なワケだし、何処かで彼氏やら恋愛やらを男性相手にするのだろうという気持ちは不確かながらあった。しかしこれは、シチュエーションにしても相手にしても余りに急すぎる。
「と……とりあえず、宿屋に行きましょうか」
速くなる動悸に自分でも戸惑いつつ、俺は辛うじてそう言った。
「そうだね! ここにはボクのお薦めの宿があるからそこに行こう。山菜をふんだんに使った山鳥の料理が絶品で……」
俺の言葉にハンスはあっさりと頷き、身を翻すと歩き始めた。何となく並ぶのが気が引け、少し後ろに続く。
「……ゆっくり考えてくれれば良いよ。焦って答えを出されるのは、ボクとしても不本意だ」
そんな俺の気持ちを見透かしたように、ハンスはそう言った。
ハンスの薦めた宿の料理は確かに美味かった。自分の気分が浮付いてなければ、更に美味かったのだろう。
道中はハンスの護衛という名目もあり基本的に同室で寝ていたが、この宿においては別室でも安全だと彼は言った。聖堂騎士団は神聖教会に属する越境的な組織のため、こちらの国で死んだ場合は責任の所在などがややこしくなるため刺客としても狙いにくいのだそうだ。
「……ふぅ」
そのような経緯があった後、俺はベッドに寝転びつつハンスの件について考えていた。
──困った。どうやら俺の心は思った以上に「愛情」というものに飢えていたらしい。
考えてみればベルガノン家を出奔する前後くらいから誰かに好意を向けられたり、親愛の情を感じたりすることは無かった。それから数年──精液を得るために多くの男性とオーラルセックスを中心に行ってはきたが、それは俺からすれば必要にかられてのもの、相手にとっては性欲の解消が主目的で「愛を交わす行為」とはとても言えない。
そんな俺にハンスの言葉は刺さった。正直、俺の中の「女」の部分がどきりとした。そして、彼のパートナーとなっても俺にデメリットはほぼ無い。
だからこそ迷う。俺にとって、この話は
果たしてあの男の言葉を信じて良いのか、この身体を任せて良いのか。
「調べるだけ、調べてみましょうか」
俺は呟き、ハンスの精液の小瓶を出してひと舐めした。継続系だけに普段は使うのが難しい魔法だが、今なら使える筈だ。
ローブの別のポケットから媒介である巻貝を取り出して、場所と人物をイメージして詠唱する。
「……『
数秒の静寂の後、角笛からは聞き慣れたババロガの声が聞こえてきた。
『はいよ、リィリィかい? コイツを使うなんて久しぶりだねぇ』
「女将さん……ちょっと、お願いがあって。ぺろっ……」
念のため、もうひと舐めして「腐り龍とあばずれ」に居るババロガに相談を始める。
この「通話」は遠距離の相手と話をするための魔法だ。発信者、受信者の両方に媒介が必要になる。声を送る場所を正確な場所を把握していなければならない等の制限も多いが、手紙などより遙かに早く連絡を取り合うことが出来る。俺は手短にハンスの事を伝えた。
『その聖堂の兄ちゃんの事を調べて欲しいってのかい? そりゃちょっと……いや、かなり難しいねえ』
声だけでも向こうのババロガがポリポリと鱗を搔いているのが分かる。
『噂レベルならともかく、確かな情報となると騎士団本部の書庫とかに潜入しないとダメだ。今からウチの店に依頼を貼り出しても三、四日でそれだけの腕前の盗賊が見つかって、おまけにアンタの欲しい情報を見つけてくれる可能性は相当に低いよ?』
「そこまでの事じゃないわ。調べて欲しいのは……」
俺は改めてババロガに自分が頼みたい事を伝える。
『……なるほど、その程度なら小回りの利く連中を使えば何とかなりそうだ。分かったよ、また連絡をくれるかい?』
「ええ、よろしく頼むわ」
そこから料金などの細かな話を済まし、俺は「通話」を切った。とりあえずの手は打った。後は向こうの首尾次第か。
集中を切ったからか急に眠気が来た、抑えようとしてもあくびが出る。
これで本当にハンスが信用に足りる人間だったなら受け入れよう、しかし、そうでなかったら──
「ダメね、夢に出そう」
そこで俺は考えるのを止め、目を閉じた。
そこからの数日は至って平穏に過ぎた。堕胎騎士として様々な国を訪れているハンスはこの国についても実際詳しく、観光名所となっている古城やらを回り、俺はあくまで護衛という名目上だが実質デートのようにそれに随行した。
隣国首都を出てからの帰り道もスムーズだった。俺に告白した時の真面目な様子を本人が忘れたようにハンスは陽気で、やはり突然に奇妙な行動に出たりもした。その間、俺に対して例の話の返答を急かすような気配は全く無く、それが逆に俺にとってはプレッシャーだった。
そして最初の街まで残り僅かまで来て──最後の夜になった。
「……スゥ」
木製のドアの前、俺は深く呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
ドアに手の甲を置き、一瞬だけ迷い、小さくノック。
「どうぞ」
中からの軽い返事。俺は開けて中に入った。
「随分と静かだね、今夜は」
ランタンの灯りが照らす室内、肌着姿のハンスはベッドに腰かけていた。
後ろ手にドアを閉め、俺は彼と向き合う。
「……そうね」
「それで、どうかな?」
ハンスはあえて「何が」と聞かずに俺の反応を待つ。俺は小さくため息をつき、答えた。
「この数日、色々と考えてみたわ。その結果だけど」
肩にかけていたローブを降ろし、ハンスに近づく。彼は口元の笑みを崩さず静かに俺を見つめる。
「結局、どうするか決められなかった。だから……ンッ」
「んっ……」
顔を近づけ、ハンスの唇に自らの唇を重ねる。互いの吐息を僅かに交換し、唇を離す。
「貴方を、試させてほしいの」
「……それは良い提案だ」
今度はハンスの方からのキス。それに応えつつ、スカートの留め具を外して床に落とす。
──ハンスに言った言葉は本当だ。
この数日、「通話」を使って行った情報交換で幾つかの材料は手に入ったが決定的な確信には至らなかった。
だからこそ、最後は俺の身体で確かめなければならない。推測が正しければ──なかなか難度の高い
「……凄いね。手はわりと大きな方だけど、全然収まらない」
「あ、んんっ……」
ブラウスが脱がされ、黒のブラの上から柔らかく乳房を揉まれる。ハンスはベッドに座ったまま、俺が上体を傾けて揉まれている格好だ。釣鐘型の乳房はより存在感を増して釣り下がり、それを持ち上げようとするようなハンスの手の動きでピリピリと刺激が伝わってくる。
「ね、ねえ、私だけじゃなくって、貴方のを……」
「そうだね……ボクも、精え……いや、リィリィのを味わいたい」
危うく二つ名を加えようとしたのを止め、ハンスが言った。少しだけ身体を離し、彼の足元に跪く格好になる。その間にハンスは上着を脱ぎ、パンツを降ろした。
「もうこんなに……期待していたの?」
「そりゃまあ、ね。ボクだって、キミを待ってた」
弾けるように現れたハンスの肉棒は既に固く勃起していた。眼前でそそり立つそれは血管を浮かび上がらせ、快感を求めて脈動している。俺の言葉にハンスは素直に答えると、脚を広げて俺が行為をやり易いように促す。
俺は改めて肉棒の下で存在を主張する聖痕付きの睾丸を見た。一見すれば痛々しいだけの傷跡だが、確かに何と言うか神々しさらしきものを感じる。
「んはっ、あ、あぁ……んっ」
大きく口を開け、俺はハンスの亀頭を呑み込んだ。僅かに滲んだ先走りが舌先を濡らす。
「っ!?」
俺の身体がびくんと跳ねた。ハンスが小さく呻いて俺を見下ろしつつ言う。
「うっ……ど、どうかな、ボクのは……?」
「……じゅる、ちゅ、じゅるぅ!」
「え、お、おおぉっ!?」
ハンスの言葉を待たず俺は口腔内の肉棒に蛇のように舌を絡め、更に頭を前後させ始めた。急な刺激にハンスが驚きの声をあげる。
「んぱ、ンッ、ンンッ!」
「どっ、どうしたんだい、リィリィ、ぐうっ!」
「ちゅばっ、じゅっ、ちゅうぅ!」
捕食行為のように肉棒を吸い上げ、亀頭を舐め回す。唇で緩急をつけつつ竿を締め付け、口の端に泡が立つほどに頭を動かし、溢れる先走りを唾液と共に嚥下する。
マズい、いや、不味くはないんだが、マズい。
──
舐めているだけで身体に魔力が満ち満ちてゆく充足感、先走りを飲むだけで身体に走る刺激、俺の身体全体を温めてくる熱の滾り。生臭さなど全く無い、例えるならば極上の蜜で出来た熱々の菓子。
これが神に祝福された精液の効果なのだろうか。思考を巡らせようとしても、不意打ちで食らったこの美味に身体が抑えられない。流石にちょっと息苦しくなってきたので一旦口を離したが、それでも俺の手は肉棒を握って扱き、息継ぎをしながらも舌で亀頭を舐めるのを止められない。
「ぷはっ……ちょ、ちょっと、ひきょ、ちゅ、卑怯よ……れろっ、何で、こんな、ンンッ、美味しいの、貴方の……!?」
「あぁ、よ、よく言われるよ……他の男を舐めた事がないからボクは、うっ、ぴ、ピンと来てないんだけど、多分、アレじゃないかな?
「じゅるるっ、ちゅ、んむぅ……!」
十分な酸素を摂り、再びハンスの肉棒を咥える。今度は喉奥まで亀頭を迎え、口腔内全体で肉棒を刺激してゆく。グッポグッポと音が鳴るような動きにハンスの腰の震えが断続的になってゆくのが分かる。彼から見れば今の俺は赤い瞳を蕩けさせて「ひょっとこ」のように口を細めてチンポを吸う、酷く無様な淫乱顔を晒しているだろう。
「あぁ、凄いよ、リィリィ。もう、イキそうだっ……!」
「……んぱ、じゅる、ンンッ!」
俺は上目遣いに「このまま出して」と伝えつつ、とどめの口淫を行う。ハンスの膝に手を置いて肩を固定し、亀頭ギリギリまで頭を引き、一気に根元まで呑み込む。喉奥に亀頭が当たるが息苦しさは無く、むしろ喉が爽やかになってゆく程だ。その動きを重ねる中、遂にハンスは絶頂に達した。
「で、出るっ、リィリィ、リィリィっ! あ、ああぁぁっ!」
「ングッ、ンッ、んッ!? ンーッ!」
どくん、と精液が迸り口腔内を満たす。
その瞬間、俺の身体には雷めいた刺激が走った。全身がガクガクと揺れる程の快感の中、その精液を嚥下する。
「っぱ、あ、うそ、わ、私、イっ……!」
最初に刺客に襲われた時にハンスは「ひと舐めでいい」と言ったが、それは確かに正解だった。あそこでいつも通りに全て嚥下していたら、俺はあの場で気絶していたかもしれない。
嚥下したその瞬間、膨大な魔力の奔流と共に俺は絶頂に達していた。
「あ、あー……あぁー……!」
ぺたりと腰を落とし、惚けたような声が漏れる。一方のハンスも俺の強烈なフェラの余韻に大きな息をついた。
「くぅ……はぁ……凄かったよ、リィリィ、流石、と言っていいのかな……?」
「ん、は、あふっ……そ、それはこっちの台詞よ……なんなの、このオバケみたいなチンポ……」
「まあ、神様からの授かりものってヤツさ……それで、どうだい? ボクは試験に合格かな? 何なら『追試』してくれても良いよ」
そう言うハンスの肉棒は再び固さを取り戻しつつある。彼の言う通り、すぐに再戦も可能なのだろう。
「ンッ……!」
きゅっと子宮が疼いた。「薬屋」の一件の時と違い、素面で舐めるだけでここまで感じるチンポを挿入されたらどこまで気持ちよくなれるのだろう。どれほどの魔力を得られるのだろう。そんな期待感が否応なく湧き上がる。
しかし、俺は同時にひとつの結論に達していた。この推測が本当なら、俺は──
「くっ……『
「な!?」
自分の中の行為を継続したがる気持ちを懸命に抑え、俺はハンスに手を翳すと叫んだ。光の粒が彼を包み、そのまま身体を締め付けるように纏わりつく。腰かけたままの姿勢でハンスは彫像のように硬直し、光に包まれていない首だけを動かした。
「その、ええと……これはどういう流れだい、リィリィ? ひょっとしてそういうプレイが好きだったり?」
「残念ながら縛ったり縛られたりは好きじゃないわ。ハンス、貴方が素直に答えてくれたらすぐに解放する」
まだ力の入らない脚を踏ん張り、よろめきつつ俺は立った。
「……調べたのよ、貴方のことを」
「ボクの事を? いやいや、それは嘘だよ。戻り道でキミがボクと一緒に居なかった時間で調べられるワケが無い」
俺の言葉にハンスは首を振った。呼吸を整えつつ俺は答える。
「魔導士には『通話』って魔法があるの。遠くの相手でも、これで情報収集を頼むことが出来る」
「だとしても、サ。キミに知って欲しいから同行して貰ったけど、ボクのこの聖痕や儀式についての情報は本来は聖堂騎士団の中でも極秘に含まれる。誰かに頼んでも、その情報が入手できるとは思えないし、仮に手に入ったとしてもほぼガセネタ……」
「そうね、
ハンスの言葉に素直に頷く。
「でもね、
「……え?」
「貴方も言ってたわよね? 『有力者の妻や娘が魔物に犯されて孕まされた、なんて頻発するもんじゃない』って。そういった事件の資料は、防衛の参考として町の自警団などで保管される。旅人への注意喚起も含まれるから希望すれば誰でも閲覧できるわ。そして、そこを糸口に不自然な事に気付けたの」
ハンスの表情が変わった。こちらを宥めようとする笑みはそのままだが、明らかな焦りが浮かび始める。
「え、えーと、リィリィ。不自然な、事って?」
「それらの事件に巻き込まれた有力者や商人たちの家族なんだけど……少なくとも公的には大した被害は無かったと書かれてるのに、
「そっ!? それは……あー、ボクと関係ないと思うんだけど」
「……目が泳いでるわよ」
露骨に挙動不審になってきたハンスの様子に、こちらの興奮は逆に治まってゆく。
「そりゃあ確かに個人の事情だから、離婚のひとつもあるでしょうけど……流石に半数以上はあり得ないわ。答えて、貴方の精液を
「………」
「……答えないなら、貴方の肺まで『束縛』をかけて窒息させるけど」
「わ、分かった、言う! 言うって!」
俺の言葉が本気だと伝わったんだろう。ハンスは観念したように口を開いた。
「その……ボクの精液を子宮で受けると、ボクのでしかイケなくなる」
「は?」
思わず素の声が出た。
「それは、一生アンタのチンポでしかイケなくなるって事?」
「……ああ、たぶん『法悦』ってヤツなのかな? ボクが射精すると、今までのセックスが馬鹿らしくなるくらい凄い絶頂を迎えるらしいんだ」
「それを知ってて、教えずに儀式をやってたの?」
「いや、当然ボクも最初は知らなかったんだよ!? 解決してからイチイチその家族の事を調べたりしないし、何度かこなしている内に以前にお世話した家の奥さんがボクの所に来て、初めて知ったんだ!」
「じゃあその後は、知っててやってたのね?」
俺の冷たい言葉にハンスはビクリと反応して、頷く。
「……まあね。関連性なんて当人しか分からない事だし、実際それで今も隠して上手くやってる
「上手くいってない人の方が多いようだけど。しかも、彼女たちを不幸にしたまま見捨ててるんでしょ?」
「いやいや、待ってくれ! それは流石に違う!」
俺の決めつける口調に、ハンスはそこで初めて強く否定した。
「違う?」
「そりゃボクだって責任を感じてるさ! だから、ボクの所にきた女性たちはちゃんと面倒を見て、世話もしてる!」
表情筋を引き締め、ハンスは俺に堂々と言った。それに対し俺は更に冷たい声で問い返す。
「……何人?」
「え?」
「それで、『キミをパートナーにしたい』と言っておきながら、今は何人の女を抱えてるの?」
ハンスの表情が「しまった」に書き換わる。暫くの沈黙の後、おずおずと彼は言った。
「その……五人」
「………」
「……わ、悪かった。えっと、十二……人」
「………」
「あぁ……観念するよ。この数年で二十二人。王都に五人、他の女は各地に用意した別荘で暮らしてる。みんなボクに世話されっぱなしなのを嫌って、自分で稼いだり逆に世話してくれたりしているよ」
──こいつに一瞬でもときめいた自分に腹が立ってきた。
もうここまでで十分だが、俺は最後に聞いた。
「分かったわ、それじゃあとひとつだけ……何で私に、その事を伏せていたの?」
「いやあ、言ったら流石に断られるかと思って。それに……一回ヤッてから、事後承諾でもいいかなって」
「ああ、そう」
俺はにこりと笑い、右手を握りしめつつ詠唱した。
「……『
「いやいやいっや、ちょ、ちょっと落ち着こうリィリィ! ボクの精液で得た魔力でボクを殴るのは流石に筋が通らないんじゃないか!? 確かに隠してたのは悪かったけどこれもキミがほんとに好きだからあえて伏せてただけでというかせめて殴るにしても顔だけはやめて欲しいんだけど一応は商売道ぐああぁぁぁっ!」
流石に死にかねないので束縛を解いた瞬間に拳を顔に叩き込むと、吹き飛んだハンスの身体は宿屋の壁に激しく叩きつけられた。崩れ落ちる彼の姿を一瞥もせず、俺は背を向ける。
「ふぅ……おやすみなさい、ハンス」
そのまま俺は部屋を出て、ドアを音を立てて閉めた。
──翌日、「腐り龍とあばずれ」。
「……ねえ、ひとつ聞きたいんだけど」
あれから宿屋を出て王都に戻っていた俺は、眼前の人物に仏頂面で問いかけた。
「ああいう別れ方をしたんだから、すぐに目の前に出てくるのはおかしいと思わない?」
「だってキミに報酬も払ってないじゃないか! あ、この顔は任務後に酔っ払いに殴られたって事にしたから、気にしないでね」
顔に大きなアザを残しつつも眼前のハンスはそう言って笑い、俺の前に革袋を置いた。袋の張り具合と重量感から中の金貨の量が推し量れる。
「………」
俺は少しだけ迷い、その革袋を手に取った。ここで突き返せれば良かったが、生憎とババロガへの依頼料が予想より高かったのだ。
せめて他の手段で追い返せないかと視線を巡らせ、カウンターのドゴに言う。
「ねえ、居座らせていいの?」
「いやぁ……それがなぁ」
珍しく歯切れ悪くドゴがカウンター裏の棚に視線を送る。その視線の先にはハンスの名が書かれた酒瓶。確かあれは──この店でもとびっきりに高い高級酒だ。
「まあまあ、今回は確かにボクが悪かったけど、キミのパートナーになりたいって気持ちは本当なんだ。だからまあ、今後はキミの方からボクに膣内射精をおねだりするように努力しようと思ってる。宜しくね、リィリィ」
「……ドゴ、一番強い酒を頂戴。これで飲めるだけ」
なんだかこの男とは腐れ縁になりそうな気がする。
確信に近いそんな予感を感じつつ、俺は革袋を開けて金貨を一枚弾いた。