TS転生して最強美巨乳魔道士になりましたが、精液が無いと魔法が使えません 作:ウッディ勃興
ひとつは貴重な宝物を隠すため、もうひとつは自分たちのコミュニティを外敵から守るためだ。ドラゴンなどは洞窟の奥深くで集めた財宝を自らの腹の下に置いて眠るというが、あれも自然のダンジョンと言えるだろう。
そしてダンジョンで侵入者を防ぐのは複雑な構造だけではない。徘徊する
つまり、何が言いたいかと言うと──
「発光」で生み出した光球を手元に戻す。
「……参ったわね」
自分をここまで滑り落した
磨き上げられた石壁は爪を立てられないほどにツルツルで、落ちてきた距離が不明な以上、精液のストックに余裕があるとしても「
「まあ、
上に残された同行者の事が少しは気になるが、あいつは身の守り方を心得ている。少なくとも死にはしないだろう。
少し前に古書店の主・ジェラに解読を依頼していた異国の魔導書。判明した内容に無視できない個所を見つけた俺はそこに記されていた古代神殿の遺跡に来ていた。王都から南に結構行った、もう少し南下すれば砂漠が見える場所だ。
入り口周辺にたむろしていたゴブリン等は容易く蹴散らす事が出来た。だが奥の探索中に俺は落とし口の罠にかかり遥か下まで滑り落ち──今は石壁の小部屋の中にいる。俺が落ちてきた以外にも幾つかの穴があり、ここはそういった罠にかかった人間が纏められるところのようだ。正面にはやはり石造りの扉があるが、普通に押しただけでは開かなかった。
さて、まずは部屋から出なければ話にならないがどうしたものか。「
「えっ?」
僅かな音が耳に届き、俺は意識をそちらに向けた。俺が落ちてきたのとは別の穴、そこから何か聞こえてくる。
何かが金属音を立てながら滑ってくる。それは次第に大きくなり、同時に声も。
『……ぉぉぉぉおおおおお”お”お”お”!?』
「きゃ……!」
巨大な黄金の玉が穴から飛び出てきたかと思うと、勢いをそのままに壁に激突する。
『お”ぉあ”っ!?』
それが黄金の鎧を纏った人間である事に気付いたのは、壁に激突したその玉が手足を生やして起き上がったからだ。おそらくは落下中に身体を丸めていたのだろう。
そしてその黄金人間は腰に差していた
『くっ! 私としたことが、このような罠にかかるとは……ム?』
「……あれ?」
黄金の兜にすっぽりと包まれた頭部が俺の方を向く。そこで俺はようやく、その鎧が見覚えのあるものである事に気が付いた。
「貴方、確か聖堂騎士団の……」
『リィリィ・ベルガノン? 何故、貴様がこんな所にいる!?』
俺が尋ねる前に眼前の聖堂騎士団長「
「私も貴方と同じよ。探索中に罠にかかって、ここに落とされたの」
『……なるほど。しかし王都からかなり離れたこの遺跡にわざわざ探索だと? 何が目的だ』
「まあ、この遺跡じゃないと無いお宝の情報があってね。そっちこそ、聖堂騎士団の団長自らダンジョン探索?」
『機密事項だ』
俺の問いかけにリュクスは掠れ声で短く答える。
まあ、じっくり探るつもりも無いしそんな状況でもない。俺は石畳に腰を落として言った。
「落ちてきたところからは戻れないわ。そこの石の扉から出られそうなんだけど、どうやって壊すか考えていたところ」
『……ふむ』
黄金の鎧をガチャガチャ云わせつつ、リュクスが扉に触れる。コンコンと叩いて反響の度合いを確かめた後、彼は言った。
『この程度の薄さならば造作もない。下がっていろ、リィリィ・ベルガノン』
そう言うとリュクスは扉の前に立った。何を始めるのか分からず、俺は一応は尋ねる。
「何をするつもり?」
『「神の愛」の力を得た私には、こんなもの薄板と変わらん。まあ見て……ぬうっ!?』
疑いない口調が急に曇り、腰の皮袋を探っていた動きがふと止まった。
見てみれば袋は内側から濡れ、何かの液体が滲み出ている。呻き声と共にリュクスは中からヒビの入った硝子瓶を取り出した。
『おのれ、滑り落ちる際に割れたか!? 仕方ない、ならば……』
余程貴重なものなのだろう。リュクスは瓶を投げ捨てると皮袋を腰から外した。そのまま顔当てを上げ、袋の中身を吸い出すように嚥下する。
「ずずっ、ングッ、ん、はあっ……!」
「……え?」
その瞬間、俺は強い違和感を覚えた。
「ねえ、貴方。ちょっと今……」
「うぅむっ、不完全だが補給完了! 見ているが良い、リィリィ・ベルガノン!」
だが、俺の問いかけをかき消す雄叫びと共にリュクスは顔当てを戻し、腰の剣を引き抜いた。
『神の道を阻むこと、何びとたりとも叶わず! ハァァァ!』
「きゃ……!」
部屋が揺れたかと思う程の轟音と共に剣が叩き込まれると、果たして石扉は彼が言った通りに薄板のように吹き飛んだ。それなりに質量を持った石だった筈だが、なんとも無茶苦茶な剛力だ。
『行くぞ、早く上階の者たちと合流せねばならん』
剣を納め、リュクスは息切れひとつせずに俺を促した。扉の先はやや天井が高くなった通路が続いている。俺はその黄金色の背中に続いた。
「驚いたわ。今のが貴方の言う『神の愛』の力?」
『如何にも……とはいえ、誰でも使えるという訳でもないがな。代々の聖堂騎士団長のみに継承される奇跡だ』
俺の問いかけにリュクスは誇らしげに言った。本人的にも自慢の技のようだ。ハンスの依頼の時には尊大さばかりが目立ったが、こいつもこいつで俗っぽいところもあるようだ。
石畳の廊下を警戒しつつ俺たちは進む。場所としては神殿の地下になるのだろう。湿り気を帯びたひんやりした空気が身体に纏わりつく。俺は前を歩くリュクスに言った。
「この先だけど、気を付けた方が良いわ。たぶん……何か厄介なのが待ってるはず」
『どういう事だ?』
「さっきの罠よ。侵入者をただ殺傷するだけなら落とし口の道中に刃を仕込むなり、落ちた先に針山を用意するなりで済むわ。でもアレは
『……つまり?』
重々しく言ってはいるが、ここまでの言動からしてひょっとすると全く分かってないのかもしれない。
そんな事を思いつつ、俺はリュクスの問いに答えた。
「ここが神殿だったならその侵入者は儀式的な生贄か、あるいは生きた『何か』への捧げものとして使われてたんじゃないかって事よ。だとするなら、この先に私たちを殺すための仕組みがあるはず」
『ふむ……まあ、だからと言って此処でじっと待つ訳にもいくまい。立ちはだかる者があるならば薙ぎ払えば良いだけのこと』
「薙ぎ払うために突っ込む前に、ちゃんと一回は立ち止まれって言ってるのよ」
なんとも呆れた脳筋ぶりだ。
「……ん?」
ふと、鼻がひくついた。
『どうした?』
「臭うわ」
兜に遮られて臭いが届かないのだろう。まだ「それ」に気付いてないリュクスに俺は言った。
腐臭に混じる血の据えた匂い──冒険者にとって嗅ぎ慣れた「死臭」というやつだ。俺はローブの内側の精液のストックを取り出し、嚥下して備える。
「ング、ング……げぷ」
『噂には聞いていたが、醜いものだな』
「……否定はしないわ」
明らかに引いた口調で言うリュクスの言葉に精液臭混じりのため息で答える。
とはいえ、ここでの探索が成功すればこの体質から抜け出る事が──せめて、その抜け出る切っ掛けが得られる筈だ。
一本道の通路を進むごとにその臭いは強まってゆく。やがて俺たちは扉の前にたどり着いた。先程とは異なる、木製の両開きの扉だ。
『蹴り開けるぞ。下がっていろ……ハアッ!』
剣を抜いたリュクスが俺に退くよう促し、片足を上げた。そのまま思い切り戸板を蹴りつける。
「うぶっ……!」
弾けるように扉が開き、一気に強まった死臭が軽い吐き気を覚えさせる。俺は口元をローブで覆いつつ室内を見た。
『むう、これは……!?』
前に立つリュクスが言った。
広い室内だった。吹き抜けのように天井は高く、ここまでと異なり円状に壁が続いている。ちょっとした闘技場のコロシアムのようだ。
そしてその壁周りには無数の髑髏が転がっていた。髑髏と骨の山の隙間には朽ち果てた剣や鎧の残骸もあり、ここに到着した者の末路を無言で伝えてくる。
そして、そのコロシアムの中央に
「ウオォォォン!」
巨大な蝙蝠の翼を広げつつ金色の
『何だこいつは、
「違うわ。
『強いのか?』
「……簡単な相手ではないわね」
また珍しいのが出てきたものだ。俺も知識としては知っていたが、直接遭遇するのは初めてになる。
ともあれ、この広さは幸いだ。以前に狭い空間内でミノタウロスと遭遇した時は範囲系の魔法を使えず難儀したが、この場なら存分に打てる。
「私が魔法で牽制するわ。貴方は隙を見て攻撃を」
『背中を任せて良いのだな?』
「好きで『精液臭のリィリィ』って異名で呼ばれてる訳じゃないわ。今日はストックも十分ある」
『……良かろう』
『グオォォン!』
マンティコアが再び吼え、地を蹴った。こいつからすれば俺たちは久々の餌なのだろう。だが当然、食われるつもりはない。
「『
リュクスが横に跳んだのに合わせて手をかざし、詠唱する。即座に数十本の炎の矢が出現してマンティコアに向けて飛んだ。やはり銀雷の精液は質がいい。
『ウォォン!』
だが、マンティコアは即座に翼をはためかせて宙を舞う。炎の矢はマンティコアの爪先を軽く炙った程度で掠め、石壁に当たって消えた。
やはり動きが速い。ならばその速度を落とす。
「これはどう、『
『グオォ!?』
がくん、とマンティコアの姿勢が崩れて地面に墜落する。消耗は激しいが、対象に自重の数倍の負荷をかける魔法だ。
『でかしたリィリィ・ベルガノン! これならば……!』
すかさず幅広剣を振りかざしたリュクスがマンティコアの首を狙う。しかし、
「……ウオォォォン!」
「え!?」
『なっ……!』
むくりとマンティコアは姿勢を戻し、突進していたリュクスに前足を持ち上げて薙ぎ払った。黄金色の光を放ちつつ兜が吹き飛ぶ。
「リュクス!」
「問題ない、やられたのは兜だけだ! それより何をやってるリィリィ・ベルガノン! 何故魔法を……!」
「……あ」
その時、死闘の最中だというのに俺は先ほど感じた違和感の正体に気付いた。
素早く後方に跳び下がり俺を怒鳴りつける、褐色赤毛の少女の顔。
「ちょ……ちょっと待ってリュクス! 貴方、女だったの!?」
「この状況で何を言っているリィリィ・ベルガノン!? そんなもの、見て分かるだろうが!」
「分からないわよ!」
黄金の板金鎧は身体のラインの出ない作りだったし、兜が取れた彼──彼女の声はそれでも中性的だ。おそらくは、それが兜内の反響で更に男のそれに近くなっていたのだろう。
とはいえ彼女の言う通り、今はその事を考察している余裕もない。俺はリュクスに言った。
「確かに魔法はかかってた。多分だけど……あいつ、
「ならば貴様は只の役立たずという事か?」
「動きを鈍らせるくらいは出来るわ。あとは貴方の強化も。ただそこから一回『補給』が……」
「グオォン!」
だがマンティコアは俺たちの話を待つ気はないようだ。俺の方を警戒しつつもこちらの主戦力をリュクスだと判断し、彼女に向かって飛び掛かる。
「く、はあっ!」
左右から襲ってくる鋭い爪をリュクスは剣で弾き返す。しかし真上から蠍の針が彼女の頭を狙う。
「あぶなっ……『束縛』!」
「ぬおぉっ!?」
やはり効きが悪い。蠍の尻尾は完全には止まらなかったが、紙一重でリュクスはそれを避ける。
「頼むわ。『筋力強化』『魔力付与』!」
「ぬうっ……!?」
「オオオォ!」
リュクスの身体と剣を薄い光が包む。しかしこれで俺も流石に打ち止めだ。次の精液を補給する必要がある。俺はマンティコアとの距離を取ろうと小走りで下がろうとした。
「グオォン!」
「え……?」
ふと、俺の身体に大きな影がかかった。何が起きたか理解できたのは次の瞬間だ。
マンティコア、やはりこいつは戦術を理解している。俺が一時的に無力化したのを見抜き、リュクスを無視して一気に飛び掛かってきたのだ。眼前に毒液を垂らす巨大な針が迫り──
「おぉあぁっ!」
「グ、ギャアァッ!?」
何か固いものが砕ける音と、マンティコアの苦悶の声。
目を開けるとそこには俺の前に立つリュクス、そして切断された蠍の尾の先端があった。
「リュクス、助かったわ!」
「早く補給しろ、リィリィ・ベルガノン! たった今だが、悪い知らせがある!」
「悪い知らせって……ング、ングッ」
リュクスの作ってくれた僅かな時間、それを無駄にしないようゴム袋ごと口に含み、歯で破って一気に中の精液を飲み下す。
「げぷっ、何、一体!?」
「うむ。どうやらあの尻尾、思った以上に固かったようだ」
そう言った瞬間、彼女の手にしていた剣が半ばから砕けた。
「それは……確かに悪い知らせね」
「……グオォォン!」
痛みを堪えたマンティコアが先ほど以上の怒りの声をあげた。蝙蝠の羽根を広げ、遙か上空に浮き上がる。攻撃の届かない場所から一気に仕留めるつもりか。
直線的な攻撃魔法は避けられる。といって範囲系の魔法では高速で飛来するマンティコアを止められまい。ならば──
「オオォォォ!」
「くっ……『
「オォンッ!?」
詠唱の直後、俺とリュクス周辺に半球状の光の膜が出現した。一見薄そうに見えたそれはマンティコアの突撃を弾き返し、地面に落下させる。
しかしその程度でマンティコアの怒りは収まらないようだった。爪をガリガリと光の膜に立て、突き破ろうとしてくる。
「ぐうっ……と、とりあえずは大丈夫なのか? リィリィ・ベルガノン」
「ほんとに『とりあえず』だけど。数分は持つ……と思う」
緊張が解けたのか、リュクスが腰を落とした。その横で呼吸を整えつつ俺は答える。
とはいえここからどうしたものか。俺の魔法は効きが悪く、魔法強化した武器でさえ破壊された。そしてリュクスは丸腰となっている。
「むう……」
一方のリュクスも同じことを考えているのだろう。褐色の肌に汗を浮かべ、懸命に考えている。
改めて見ると「野性味ある美貌」と言って良い顔立ちの少女だった。年は俺よりやや上に見えるが、それでも十七か十八くらいだろう。豊かな赤毛は炎のように鮮やかで、薄褐色の肌や金色の瞳とよく似合っている。
「……やはり『神の愛』が必要か」
俺がそんな場違いな事を思っていると、リュクスはそう呟き俺の方を見た。
「おい、リィリィ・ベルガノン。貴様、ちゃんと身体は洗っているか?」
「え? えっと、まあ、人並みには」
唐突な質問に驚きつつも答える。
「ならば良し。いいか、生き延びたければ今から私のする行動には一切異議を唱えず素直に従え」
防壁の外ではマンティコアが相変わらず爪を立てつつ吼えているという状況でする質問ではないと思うのだが、それは彼女的には重要な質問だったようだ。そう言いつつ、何故かリュクスは自ら鎧を外してゆく。瑞々しい褐色の肌は汗を弾き、床に小さな染みをつくる。
「あの、ちょっと聞いていい? いったい何を……きゃ!?」
「生き延びたければ従え、と言っている」
流石に理解が追い付かず質問しようとしていた俺は、素っ気ない言葉と共に手首を掴まれてそのまま仰向けに倒された。
「こ、こら、リュクス!? だから何を……ン、ンンッ!?」
「ちゅ、んっ、ちゅ……黙って、私に身を任せろ」
抗議しようと開いた口が柔らかな唇に塞がれる。ブラウス越しに乳房を掴まれ、脚の間にはリュクスの腿が挟まりより足を広げようとさせてくる。
「ちゅ、んっ、んぱっ……ちゅる、ンンッ……」
「ン、だ、だか、らっ、ん、くっ……!」
口腔内にリュクスの熱い舌が侵入してくる。ここまでの猪突猛進ぶりからは考えられない程の丁寧な舌使いで、俺の歯茎をくすぐるように撫でてくる。同時に胸に伸びていた手はブラウスのボタンを流れるような動きで外し、隙間から直接に乳房を揉み始めた。こちらもまるで割れ物を扱うような優しい手つきだ。
「ン、っぱ……感度が良いのだな、リィリィ・ベルガノン。これならば、助かるかも、しれん……」
「あっ、はあっ……ま、待って、そこ、はっ!」
死の恐怖に耐えられず発狂したか?
思わずそんな事を考えてしまうリュクスの奇行とは裏腹に彼女の表情はきわめて真剣なそれだった。大きく息をつく俺の反応に満足したように頷くと、今度はスカートの中に手を差し込んでショーツをズリ下げてくる。
ここまでで、とりあえずひとつ分かった事はある──リュクス、彼女は明らかに女性相手のセックスに慣れていた。
「んは、はっ、あふっ、ちゅ、じゅるっ……」
「ンッンンッ! んあ、あ、ちゅ、んむぅ……!」
再び舌を俺の舌に絡ませながらリュクスは行為を続ける。強引さと丁寧さ、本来は矛盾するそれを両立させた愛撫はこんな状況にも関わらず俺の快感の扉を開こうとしてくる。
「ふあぁっ! だ、駄目ぇっ!」
陰唇を撫でられると同時に爪の甲でクリトリスを刺激され、身体が勝手に跳ねる。
いや──この状況だからこそ、なのかもしれない。生物は命の危機に瀕した時、自分の子孫を残したいという本能が最も強く発動する。それが今の俺にも──
「んぱ、はっ、ふぅ……そろそろ、か」
「ふぇ……?」
体の力が入らない俺を他所にリュクスは唇を離し、今度は身体を俺の下半身に移動させた。既にずり下がっていたショーツを完全に脱がし、スカートの中に赤毛の頭が消える。
「ちゅ、じゅるっ、ん、ぱっ、じゅるぅ!」
「ふあぁっ! な、何、やって、んああぁっ!」
唐突な激しいクンニリングス。
否、それは正確にはクンニではなく
「んぐ、じゅるっ、ちゅうぅぅ……プハァ!」
どれだけ続いたのだろう。全身をガクガクと揺らす俺に構わず、まるで麦酒を一気飲みした後のような呼吸と共にリュクスは顔を上げた。
「ふむ……ふむ」
自分の具合を確認するように手を開閉させる。起き上がることも出来ないまま、俺はリュクスを見上げた。不敵に笑う彼女と視線が合う。
「なかなかの甘露だった、リィリィ・ベルガノン。
「だ、だから、言ってる意味がさっきから……」
「グオォォォオン!」
その瞬間、ガラスが割れるような音と共に魔法防壁が砕かれた。鎧も脱ぎ捨てた、無防備な獲物となったリュクスに獅子の爪が食い込み──
「ギャオゥン!?」
雨のように血が飛び散る。
だが、悲鳴をあげたのはマンティコアの方だった。ボトリと俺の頭の横に何かが落ちる。地に汚れた、獅子の前足。
「……ククク」
リュクスの口の端が上がる。何が起きたのか、そこで俺はようやく理解した。
彼女は、襲ってきたマンティコアの爪を正面から受け止め、
「ククク、誇るがいいリィリィ・ベルガノン! お前の『
『ギャオォ!』
「おっと……どこへ逃げる、神の敵よ」
「グ、グオォン!?」
もはやマンティコアの叫びは悲鳴のそれに変わっていた。だが、翼を広げ逃げようとする魔獣に対しリュクスはそれを上回る反応速度で手を伸ばし、老人の顔を掴んだ。
「汝、神の愛の力により贖罪される事を感謝せよ!」
「……!」
マンティコアの口が開き、最後の言葉を何か言おうとする。
しかしリュクスの手はそれを待たず、強く握りしめられた。
「ふぅ……神よ、今回も貴方の偉大な愛の祝福により勝利できました……感謝致します」
顔面を無惨に潰されたマンティコアの遺体を前に恍惚とした表情で、返り血に塗れたリュクスは天を仰いで言う。
「……どうした、リィリィ・ベルガノン。貴様も服を直せ。すぐに再出発としよう」
ひとつだけ、ひとつだけ確信できた事がある。