「おーアー写?良いねー!みんな可愛い……っぱ可愛い子って見るだけで癒されるわー」
「そうでしょ?他にもこれとかこれ…」
季節が春から夏に変わろうとするちょうど境目。梅雨の時期。
暑くもねーけど寒くもなくてジメジメとしただるい日が続いてマジうざい。てかだるい。マジでだるい。
そんなうざい時期でも学校は毎日のようにある。まさに青春。こんなだるい日常でさえ、大人になったらエモくなるらしいからよっぽど大人の人生ったつまらないんだろーな。マジ大人やだ。一緒子供がいい…いや車乗りてーし大人になりてーな。ってか18になりたい。選挙とか行きたくねーけど。
まぁ、サボるのも良いけど、サボったってやる事ないし、と思って学校に来ていつもの様に授業を受けたり友達と喋ったりしてたがあることに気づく。
「てかなんでお前ここいんの?別クラスじゃん。なに俺のこと好きなん?!」
「あ、確かに喜多ちゃん今日ずっといるね…てか何そのノリ、今日湊テンション高め?」
「ちょいキモいよな」
「ありがとう」
明らかにというか登校の時間から一緒にいたわ。え、怖い。溶け込みすぎて怖い。まぁ、前のカラオケだったり、スポッチャとか案外遊び行ったけどさ…。マジで何?怖いんだけど。え、ほんとに俺のこと好きなん?照れちゃうわーあはは
そう考えていると、郁代はうーんと唸り声を出す。
「…そうね、湊くんの近くにいたくて…」
とんでもない爆弾発言に昼休みで賑わいきっていた我がクラスは静寂の時を迎え、時計の針の音しか聞こえなくなる。
まるで時限爆弾のカウントダウンみたいに、数刻時を刻み、爆発するかのごとく各々が悲鳴に近い声を上げていく。
「は?」
「お」
「ま?」
「うええええーー?!!喜多さんっ!?!そんなぁ!僕…の初恋がぁ…」
「喜多ちゃんまで!?!!なんで…!!」
「まって!?どゆこと!?!なんで!!」
「ま、また!?わ別れたんじゃないの!?!」
「喜多ちゃん別れたって!!え、何?!嘘!?」
「湊くん嘘だよね!!?ね?!彼女作らないみたいなことこの前言ってた…」
「…ぇ!!嘘…湊くんが?!…あの、誰の告白も受け入れる湊くんが!?」
ある者は悲しみ、またある者は喜び、ある者はその状況を楽しみ、ある者は意識が飛び、まさに阿鼻叫喚。
うるせぇーーー。彼女作らないなんて言った覚え……あ、好みじゃねーから言い訳として言ったな…。やっべ…まぁほら、スキンケアとかしてなさそうだし…他になんか努力してそうな事もないしな、ボケェ。
ひとりはギターがあるからオッケー。
何にも熱中してなくて努力してないやつに言ってるからね?ひとりはギターもえっちも努力家だもんなー。
てか何だこのクラス。騒がしいにも程があんだろ…。でもあれだなおもれぇなコイツら。っぱクラスはうるさくなきゃなぁ!!
久々の一致団結のうるさくておもろそうなイベントに俺は悪ノリして声を上げる。
「野郎共!郁代姫をかえして欲しけりゃ俺と戦えぇ!」
「んだてめぇこの野郎!!後藤さんだけじゃなく、喜多さんにまで手を出して…っ!俺たちから盗るのか!許さねーぞ!!」
「あ?元々てめぇのじゃねーだろ。一方通行の想いで友達でもねーのに、でしゃばってくんなモブが」
「……」
「いや。嘘だから。黙んなって………あのー、今日スマブラしよ?俺んちでさ…な?」
「……うん………とでも言うと思ったからぁくらぁ!!」
「てめ、…おらぁっ!!」
「あいつ酔ってる?」
「昨日廣井さん?って人とずっと酒飲んでたぞ。俺は帰ったけどあの後も飲んでんじゃねぇかなぁ」
「確かに香水の匂いで誤魔化してるっぽいよな」
いや俺は酔ってないけどな?きくりがキスして飲ませてくるからね?そりゃあもうしゃーないみたいな?シャンパン最高ー?みたいな……というか本当に酔ってはない…。いや酔ってないって言うやつは酔ってるって言うけれど…実際マジで酔ってない。ちょっと感情表現豊かになってるだけ。マジで信じて皆。
「……まぁいいんじゃないかしら…?私は守ってもらってるみたいで嬉しいわよ」
チラリとひとりの方を見てそう言う郁代は怖い。何?女の戦い?興味ないんだけど…はよバンドの曲作ってくれよ。
「…ぁーー、ひとりぃ…!バンドの曲まだ出来ねーの?はよライブ見たいんだけどー」
「……ぁ、え、あ…あ!?湊くんっ!?ど、どうしてこっち来るの…っ目立つから…放課後とか…にして」
ひとりの方へと駆け寄りダル絡みすると両腕で顔をバッてして自分の顔を隠した。何コイツ可愛いんだけど。
「…へー放課後なら良いんだ?」
ひとりの前にしゃがみ込んでコテンと頭を傾けて聞いてみる。するとひとりの顔がにやけ始めて、気持ち悪くなった。何コイツ可愛くない。
「おい、顔キモくなってるぞ。大丈夫か」
「………ぇ、ひどい……」
「……っぱいつメンだなぁ!!」
「うわぁ!ちょ、こっちくんな!!アンタ対処してよ!!」
「俺は昨日散々ダル絡みされたから嫌だ。マジで酒強くて飲む量ぱないのに酔ったらえぐいからついていけねーよ」
「ウチもまぁまぁ強いよ!」
「……先生来たら終わる会話しとるわコイツら」
「実際ウチらまぁまぁ終わってるでしょ」
「それはそう」
とまぁこんな感じで騒がしく、学校が終わる。なんだかんだ学校って楽しーな。本当ならこのまま帰るか皆と遊び行きたいのだが、星歌さんに呼ばれているので郁代とひとりと一緒にライブハウスに行くことになった。
「……ひとり?ちょっと腕痛いかなー…」
「……喜多さん、離れてください」
「後藤さんも離れたら離れるわ」
「……わかりました…」
この前とは違い別の気まずさが俺の中で渦巻いている。これ良くねーな。バンド崩壊の危機にならないと良いんだけど。てかひとり結構自分の意見言える様になったんだな。成長してるし凄いぞ。
そう考えながら目の前で起こる2人の女の無言のいがみ合いから目を逸らす。
「おはようございますー」
「お、おはようございます」
「はざまーす」
三者三様の挨拶をしてライブハウスに入っていく。下にはPAさんと星歌さんと……きくりがいた…。え?何してん。
「あー!みなくんおはー…!もう全然家帰ってこないから来ちゃったよー!」
「お前、田中に会いに来たのか…」
「え、星歌ちゃん知り合いなんすか?」
「おい、ちゃん付けすんな。こいつ大学ん時の後輩なんだよ」
やべ、勢い余ってちゃん付けしてしまった。…てか星歌さんときくりが知り合いぃ??マジで世界狭すぎるだろ…。
「……廣井さん、なんでいるの…っ」
「……後藤さん…あの人誰なの?」
「…この前から…湊くんの家に同居してる人です…」
「…………はぁ…」
「………私たちダメですね…」
「………そうね」
こそこそと2人で話してるが真後ろだから全然聞こえてんだよな。ちなみに全然ダメじゃない。何なら俺がダメなんだよな。だからそんな落ち込まないでほしい。
「……あの〜?お姉ちゃん私とリョウよく分かってないんだけど…どーゆーこと?」
「私も田中とこいつの絡みなんて知らねーよ」
虹夏先輩とリョウ先輩も困惑…いやリョウ先輩めっちゃサイン貰おうとしてるな。知ってんのかきくりのバンドのこと…やっぱすげーんだなきくりって。
「私が教えてあげてもいいーけどー…湊くんは言ってもいいの?」
チラッと俺を見て気遣うきくりって結構ちゃんとしてんだな。こういうところは大人って感じるなー。
「…まぁ、良いんじゃないっすか?ひとりは知ってるし」
本当は嫌だけど…、しゃーない。
「え、ぁ……あ…」
「なら良いか〜〜…みなくんね、両親いないんだ〜」
「…ぇ…」
「……は?」
「……」
「……ぇ」
知らなかった人たちが様々な反応を示す。やっぱり両親がいないって事実はとても重たくて他人に気を使わせてしまう。
「それでね〜変なおじさんに引き取られてね、一人で寂しい生活しててねーそこで私が現れて!運命の出会い!お互いに寂しい気持ち無くすために同居することになったんだ〜」
「…湊くん…」
「…いやそこまで重く受け止めないで下さいよ?…たまに寂しくなるときあるっすけど…ほらきくりとかいるし…」
「…ぁ…待って湊くん…っ!だって…私が聞いた時は…寂しくないって」
「酒とか入ってなかったしな。ありのままなんて誰に見せんだよって話。俺は案外ビビりなんでねー……でもごめん。嘘ついて。……結束バンドのライブとか学校とかバイトとか今はめちゃくちゃ楽しみな事沢山あるからさ。マジで気にしないでほしい。」
「…と言うわけで!バンドの先輩である私がみなくんの頼みで結束バンドを見てあげよう!って話…!」
「…それはすごい嬉しいです。…湊ありがとう」
「俺は何もわかんないんでね…きくりに言ってくれ」
リョウ先輩は少し気まずそうな顔をしながらも切り替えて空気を戻そうとしてくれた。いや無意識かもしれないけど。リョウせんは結構こーゆーことできるよね。
「……ま…っ…」
「……湊くん…」
…けれど郁代とひとりの2人は動揺が目に見えてわかる。2人とは仲良いし、ひとりには寂しくねーって嘘ついてたもんな。ほんとごめん。
「……おい、というか酒奢る代わりにだろ。何いい奴ぶったんだよ。」
「あー!みなくん!良い感じに終わらせてよ〜〜!!!」
「…はいはい、とりまバイトっすよね?はよやりましょー」
「あ、おい田中……今日は大丈夫だから」
「…そっすか」
気まずい雰囲気を壊したくてなんとか気丈に振る舞ってみるけど空気は変わることはない。あーやっぱり想定通りの嫌な展開だ。なんか無性に逃げたくなって外に出ると雨が降り始めていて、傘を忘れていたことに気づく。
「…とりあえず!1人一万円!ライブ代回収ー!そして湊くん戻っておいでー!」
「……はーい」
「…やっぱりバンドってお金かかるんですねー」
やっと落ち着きを取り戻したのか郁代が空気を変えてくれる。
ありがたい。
「……自分たちでもMV撮影とか諸々はできるかもだけど…クオリティ低くなっちゃうもんねー」
「そういえば…ぼっち、曲作ってきた。」
「え、マジで?俺も聞きたい」
良かった。俺の話からは完全に逸れて、リョウ先輩の曲をきく。
音楽的な知識はないからおーバンドっぽくて良いじゃーんしか感想は言えないが…まぁ良いと思う。普通に聞いてても素人の作曲とは思えん。
「歌詞ってひとりが考えんの?ほらギター上手いし」
「え、うん…作詞なんて朝飯前で…いたっ」
「調子乗るなー」
すぐ調子乗るひとりは可愛いけどストッパーが必要だよな。
「ふ…ふへへ…叩かれちゃった…」
頭を抑えて不気味に笑うひとりに俺は恐怖する…コイツ…っ大丈夫か!?普段からおかしいとこあるけど、いよいよやばいんじゃねーか?
「まぁ頑張れよ」
「うん。青春ピュアピュア応援ソング。ナイトプールで流れてそうなバイブス上がる歌詞にする!」
「これもう失敗だろ」
_____________________________________________________________________
それから約一週間。歌詞ができたからリョウ先輩に見せたいけど2人きりは無理。とひとりに連れられてカフェに着く。そしてなんで相合傘?別に良いけどさ。
「へ、へい大将やってるぅ〜?」
「ぶはっ…っ!…」
ひとりマジでぱない。本当おもしれー。
俺はリョウ先輩とひとりを挟んで座る。なんで?2人で話し合うんじゃないの?後カレー食べたい。下北はカレーだよなぁ!
「これ歌詞です…」
ひとりは俺がカレーを頼んで食っている間に、そう言って歌詞ノートをリョウ先輩に見せる。
「お、おお」
珍しく狼狽えてる…!そんなすごい歌詞なのか
「見て湊。個人的にこれは子供っぽいと思う」
そう言われて見せられたのは歌詞ではなくひとりのサインだった。ぼっちってサイン悲しくない?大丈夫?
「まあ、ひとりがいいなら…」
「そのページじゃないです!!!」
あわあわとして歌詞ページへとノートをめくる。
……一生懸命考えたんだろうけど…。
「ひとりっぽくねーな」
「…え」
「…そうだね。ぼっちらしさがない。ぼっち的にはこれで満足?」
「そ、それは……」
言い淀む姿を見るとやっぱり満足はしていないのだろう。多分郁代が歌うから明るくて爽やかな歌詞でいかにも青春っ!て感じにしたかったんだろうけど…失礼だがひとりにそれは似合わない。
「私、昔は別のバンドにいて、そのバンドの青臭くて…でもまっすぐな歌詞が好きだった。でも売れるために歌詞は売れ線になっていって…嫌になったから辞めて…バンドそのものが嫌になるくらいのときに虹夏がもう一度頑張ろうって誘ってくれた。」
虹夏先輩めっちゃ天使じゃん。…まぁ売れる為に妥協するところも必要だとは思うけれど…個性は大事だ。
「個性を捨てたバンドなんて死んだのと一緒。」
「…確かにそれはそうかも。とりあえずひとりの好きに書いてみればいいんじゎね?」
俺もリョウ先輩の意見には同意する。誰かのこと考えて自分の個性を捨てるなんてうまくいくはずがない。
「バラバラな人間の個性が集まって、それが一つの音楽になるんだよ」
どうしよう…。リョウ先輩の言葉全部良いじゃん。超しっかりしてるじゃん。密かに俺と似てる空気あるなーって思ってたけどそんなことなさそうだな。
カレーを食べ終わり席を立つ。
「そろそろ出るか、雨上がってるし…」
「そうだね…」
「え、あリョウ先輩お金…」
「ごめん今金ないから奢って」
「え」
前言撤回だ。コイツ俺と同じクズじゃん。仲間だ!やったね!
ってやば…俺も財布忘れた…スマホ……現金のみじゃん…。
「…ひとりごめん…俺も…」
「…湊くんも…っ…。……あの廣井さんって人にも奢ってもらってるの…?」
「…いやお互い払ったり払わなかったり…財布忘れるのは…全然ない…本当ダメなとこ見してごめん…」
嘘はついてない。郁代に何回か奢ってもらってるけどあれは奢りたくて奢ってるからな…。みんなハッピーだよ。
「う、ううん…ダメなところは…私にだけ見して?」
そう言って気分の良くなったひとりは景気よく奢ってくれた。2人分だし相当な痛手だと思うがニッコニコで払ってくれてる。天使…だ。ありがとうひとり。お礼はなんかどっかでするわ。
「…ぼっちってあざとい?」
「それな…?…てかリョウ先輩はちゃんと返さないとダメですよ」
「湊だけずるい…」
「俺まぁ…仲良いんで。…今度金入ったらなんか買いましょうか?ちょうどお金の使い道探してて」
「ならシクハックのチケットと古着とディングウォールとルフェの新作ヘッドレスダークグラスのアンプヘッドがほしい」
結構高いのか?まぁどうせアニキんとこの店で働いて貰ってる金は減らないし良いや。
「オッケー、今度渡すわ」
「……やっぱり神様…?湊、好きだ」
「俺も自分と同じクズ人間は好きだよ」
「相思相愛、結婚して私のほしいエフェクターや楽器全部買って、ご飯も作って」
「うん。無理だ…ゴミカスぅ!」
ひとりの表情はどこか吹っ切れていていい歌詞が書けそうな顔をしている。
そして俺らクズ2人はクズ同士結構仲良くなった。
夏になると曲ができ、結束バンドの皆は暇さえあればライブに向けての練習をする日常になった。
全員で同じ方向に向かっている。ライブという目標に向かって。
それはきっと俺とは違った青春で、少し羨ましいとさえ思った。
______________________________________________________________________
ゴミカス共に奢らされるひとりちゃんは可哀想。
感想、評価ありがとうございます!!!!めちゃ励みになります!ちょっと更新頻度遅くなるかもしれないんですけどよろしくお願いします!!