「…ふぁああっ…終わったー!!」
「…うっしゃあ!放課後は遊ぶべー!!」
「「「うぇーーいっ!」」」
帰りのHRが終わり静かだった教室は一気に賑やかな場所へと変わっていく。これから部活がある人は教室の端に置かれたラケットや部活着を入れたナップサックを持って走って部活へ向かう。
するとすぐさま廊下から先生の大きな怒鳴り声が聞こえてくる。
ありゃ反省文だな、知らんけど。
これから放課後遊び行く人は別のクラスの友達と合流したり、教室で少し駄弁っている。このクラスにはあんまりぼっちはいない。結構ウェイ系のクラスらしい。だからやっぱり放課後の教室はとてもうるさい。まじおもろい。
ま、そんな感じで各々が次への行動へ移っていく。俺は放課後遊び組。友達と駄弁りながら支度を済ましていく。そしていつものように皆でカラオケ…なんだけど今日は少しだけ変わったことがある。
「ひとり、がんばれよ。」
後藤ひとりの存在だ。何故か机に突っ伏しているので髪を撫でてみる。改めてこれが地毛なのおかしーだろ。俺もピンクに染めよーかなぁ。
「う、うん。虹夏ちゃんとリョウさん2人とも兄弟レベルに仲良くなってくる……っ!!!」
やはり後藤ひとりは先走り癖があるようだ。普通徐々に仲良くなっていくもんだろ。……俺が言えたことではないけど!
「いや、普通に仲良くなれ?…じゃまた明日なー!」
「………はい」
少し目を伏せ悲しそうな顔をされる。…いやこれ違うな。行きたくねーって顔だ。私なんかが行っていい場所じゃねぇみたいになるやつだな。うーん大丈夫な気ぃするけどな。……うん。ひとりは案外上手くやりそうだし大丈夫か。虹夏先輩達とは相性良さそうだし。
「…うぉーい!はよカラオケ行くぞー」
てか今日はカラオケ行きてえしな。すまんひとり頑張れ。健闘を祈る。
心の中で健闘を祈り、いつメンの奴らの方へと走っていく。
「おっけーい。」
「ウチ、最近のバンド調べてきたよ」
「私もだわ〜」
「まぁ、結束バンドに影響されるよなー」
「友達がバンドしてるとかめっちゃ自慢できる」
「分かる〜これから楽しみー」
話題はやはり結束バンド。俺達はあの日ら彼女達の初めてのステージを見た。人も多くなかったし、ミスもあったみたいだけど俺にとっては結構心に残るものがあった。これから成長していく姿を見れると思うと、楽しみでしかない。
「あ、でもボーカルいなかったよねー…どうするんだろ」
「それは、探すんじゃね?ひとりは…まぁ無理だろうけど。虹夏先輩とかならきっと見つけるでしょ。ひとりも虹夏先輩が見つけたんだし」
「あーね、ひとりちゃんは無理そ」
…ボーカルなぁ……お節介かもしれないけど…俺も探してみよっかなぁ。
というかアテがあるしなぁ。あいつ歌上手いし。
そんなこんなこと考えてる内にカラオケに着く。
「っぱフリータイムでしょ」
「今日バイトないん?」
「俺ないー」
「ウチもない。てかカラオケ終わったら湊んち直行だから」
「おけーい」
受付の人から伝票を受け取り指定された部屋へと向かう、その途中。別の部屋の扉が開かれて俺たちは立ち止まった。
いや正確には部屋の中から出てきた人物に見覚えがあったから立ち止まった。
「湊じゃん。」
「…あれ、さっつー…ってことは…」
「え?……ぁ、湊…くん」
「郁代じゃーん。お久〜〜っ」
「だ、誰のこと!?!あははっ!!」
喜多郁代。社交的で友達が多く、SNSなども積極的に活用する美少女。運動神経もよく、部活の助っ人としても駆り出されているしマジで行動力のバケモン。
なんでこんな親しげかというと…いや若干郁代、引いてるわ。会いたくねーって顔しとるんだけど。傷つくぅ…。
…まぁなんと言うか………元カノである。
「良い名前だけどなぁ…可愛いじゃん」
「…っ!湊くん、誰彼構わずそういうこと言うの良くないわよ?」
「…えー…可愛いよな?さっつー」
「そうだね、喜多は可愛いよ」
「もーーーっ、2人してからかって…」
頬を赤くしてふいっとそっぽむく郁代。っぱ可愛いな郁代は。けど丁度タイミング良いな。いま声かけてみるか…?
「あ、喜多ちゃん…!喜多ちゃんならボーカルできんじゃない!?」
「あーー!確かに!歌上手いもん」
そう、なんとこの喜多郁代という少女。とんでもなく歌が上手い。声が綺麗ってのもあるかもだけどマジで聴いてて飽きない。えぐい。盛り上がりだけの俺らの歌と違ってマジで黙って聴いてしまう。だって見た目も良いし、声も綺麗だしでそりゃぼーっと眺めてまうわ。
「え、と?」
「郁代歌めっちゃ上手いじゃん?丁度友達がバンドのボーカル探してんだよね」
「そう!喜多ちゃんなら絶対映える!かっこいいし!」
「それ!文化祭とかでやってほしいもん!」
「…うーーん……嬉しい誘いだけど遠慮しておくわ」
「えーーーみたいのにー…!!」
「まぁ、バンドって大変そうだしねー」
「…そっか。あ、でも、興味湧いたらすぐ連絡くれよ?」
「え…わかったわ…!」
実際バンドのボーカルしてって言われてすぐにやりますなんて人はいないだろう。バンドの練習で生活リズムはきっと変わるだろうし、友達ともあまり遊べなくなるかもしれない。
花の高校生が青春を捨て去りバンドに熱を注ぎ込むなんてそうそうできるもんじゃない。…これは長期の作戦になるだろうなー。他に候補がいれば良いんだけど…。
「…よっし!まぁ、とりあえず皆はよ歌おうぜ」
「そうね」
「それな」
「それ」
「それはそう」
「そうだね」
「まじでそう」
「ほんとそう」
というわけで俺らいつメンとさっつーと郁代でカラオケをすることになった。
店員さん。めんどくさいことしてごめんなさい…まじありがとう!
最近の人気のバンドの曲だったりTikTokでバズった曲やヒップホップ。ネタに走り切った演歌などジャンル問わずに歌いえぐいくらいに盛り上がった。
ラストの方はサビカラで鬼連チャンチャレンジ。まぁ、言うまでもなく郁代無双。上手ぇーーーー…。得点たけぇーー。
「まじ…うめえんだよなぁ。もったいねぇ…」
ドリンクバーで飲み物を注ぎながら郁代の歌のうまさに改めて感心する。うめえうめえと言いながら飲み物注ぐ俺はたから見たら異常者だな。なんて考えていると郁代もドリンクを注ぎに来たのかこちらの方へ向かってきた。
「…どうしたの?勿体無いって…」
同じ飲み物を注ぎ質問をしてくる彼女に俺は少し近づいて郁代の可能性について熱弁してしまう。
「いや郁代。マジでなんかオーディションなりなんなりして歌手とかアイドルやれば良いのに。声綺麗で歌うまくて、見た目も良くて、誰とでも仲良くなれるコミュ力もあるし…」
「……口説いてる?」
「いや振られてんだし口説かねーよ。」
「…………そう…」
「……一回さ、ひとりのバンド見てみてくれよ」
「…ひとり?…誰だったかしら…?」
「後藤ひとりだよ。バンドやってんのマジで演奏いいんだよ…!」
「2組の後藤さんね…ふーん…ギター…興味はあるけど…私ギター弾けないし、一回バンドから逃げちゃってるし………」
「え、郁代バンドやってたの…?」
「あれ…?言ってなかったかしら。バンドの先輩目当てでギター弾けないのに嘘ついて入ったの」
「マジでやべえ奴じゃん」
「湊くんほどじゃないでしょ…」
久々の2人の会話。特に気を張る必要もなく淡々と話せる感じ。懐かしいなあ。盛り上がるときは一緒に盛り上がれたし、高校で付き合った中じゃ1番相性良かったかもしれない。すぐ別れたけど。
「あ、もしかしてバンドの先輩に一目惚れしたから俺のこと振ったな?」
「………違うわよ…湊くんのこと…忘れたくて…。あ、もちろんその先輩の見た目に惹かれたのもあるけど。何よりも何もない私がこれ以上不安にならないようにバンドに入ったし、湊くんを振ったの。結局逃げちゃったけど」
「………。俺なんかした?」
「何もしなかったからよ…!湊くんのこと分からなくなったの…!確かにキスとか…その後とか色々行動はしてくれたけど…全然本心が見えなかった…私はもっとぶつかりたかったのよ!嫌なことは嫌って言って…お互いにそうやって擦り合わせて行きたかったのに…全部受け止めて…何も反発なんてしてこなくて…怖くなった。……不安になった」
それは多分彼女の本音。俺が歩み寄り本心を見せなかった罰。別に付き合ってるからってお互いに曝け出す必要はないし、それが原因で別れることだってある。今まで付き合ってきた人たちはそうやって本心を押し殺して爆発してた。…俺の本心か。
「…その時の俺の気持ちは…その時の俺にしか分からないけど…今は話してくれてありがとって思ってる。これは本当。そして欲を言えばマジで可愛い抱きしめたいって思ってる。」
「……いいよ…抱きしめて」
注がれたドリンクを置き、彼女を抱きしめる…このまま前のことを謝れたらなーなんて思うけど、それは罪悪感を無くしたいからだ。
流石にそこまで性格は悪くないから謝るのは辞めといた。
「この後どうする…?うちくる?」
「また…今度……。ふ、2人の時に呼んでくれる…?」
「はは、…おっけー」
そう言って2人でドリンクを持って部屋に戻っていく。もうみんなお疲れムードで本人歌唱のライブ映像を見てた。
「…ライブとかフェス行きてぇなぁ…。」
「ひとりちゃんのやつ行こうよ今度いつあんの?」
「いや知らん…。まぁ、そのうちあんじゃね?」
「せやな。」
推しのアイドルやバンドのライブ映像をひとしきり見て、最後に一曲歌ってカラオケを終え、伝票を持って会計へと向かう。
「……やべ……。」
チラリと鞄を見ると、そこには財布が入っていなかった。そうだ。朝はひとりと一緒にドタドタしてたから財布とかタバコ入れ忘れたんだ…やべー…怒られるー…。そんなことを考え俺はグループの最後尾へと下がっていく…。
その様子が不自然だったのか。郁代が声をかけてきた。
「…何かあった…?」
「…いや…」
目をウロウロと動かして何かを言い淀む俺に郁代はむっとした表情を浮かべて背伸びして俺に耳打ちしてくる。郁代、吐息がくすぐったいよ。
「………湊くんのことわからないって言ったけど、何も知らないわけじゃないわよ…?」
まぁ、確かに……いやでもなぁ……。と思ったがどっちみち会計の時にバレるし言っていいかと考え郁代に耳打ちする。
「……財布…忘れて…」
郁代が信じられないみたいな目で俺を見つめてくるので、ばつの悪そうな顔をしてしまう。そんな目で見んなよ!分かってるよ!ごめんなさい!
「……はぁ。……今日だけよ…?」
そう言って皆に見えないように…まぁ誰も後ろの方見ないから元から見えてないんだけど。郁代は俺の分のカラオケ料金を財布から取り出した。
「ふふ、貸し1ね」
イタズラっ子みたいな笑みを浮かべ、その後何故か気分が良くなった郁代はさっつーの元へと走っていった。一方俺は渡されたお金を握りしめてこう考えていた。
喜多ちゃんまじ天使…っ!!!!!
カラオケを終えた俺たちは郁代とさっつー達と別れてそのまま俺んちに行く。
特に何事もなく家につき、皆でお泊まり会だ。第20回目くらいだな。
「…あー…湊んちの風呂やっぱでけーわー」
「上がったよーん」
「うーい。何するー?」
風呂に入って一息ついたものの、まだ寝るには早すぎる時間帯。夜はこれからだ。俺はテーブルの上にお酒とおつまみ、それに家にあるボードゲームを置いて準備をする。
「まずは、ねぇ…」
「おう」
________乾杯っ!!
「ぷは…はー…うめー」
「久々に皆で飲んだな」
「それなー?3日ぶりくらい?あ、チャミスルちょーだい」
「ほい。ひとりちゃんもここに入れようよ。髪はアレだけど顔めっちゃ可愛かったよ」
「いやここに混ぜるのは俺が無理。ひとりに酒とか飲ませたくないわ」
なんだかんだひとり好かれてんだな。俺以外にもちゃんと話せる友達が学校でできたら、多分ひとりは結構中心的存在になるかもしれない。それは…まぁ良いんだけど。俺の中で少しだけ、ちょっと独占欲湧いてんだよなぁ……。
「何?セフレにでもなったん?」
「内緒」
「うっっっわ…引くわー」
めっちゃ引かれてるのは…しょうがない。でも恋愛が全てじゃないだろ。いくらそういう行為をしても別れる奴は別れるし、人間の感情なんてすぐ変わるし、なら曖昧でお互いの性を満たすだけの関係の方が心地がいいし、気が楽だ。
「まぁ、そういう訳でひとりはここに入れませーん。」
「…まぁ良いけど」
「……いや俺らは俺らで……な?」
「…クズだね」
「湊ーベッド借りるぞー」
「私めっちゃ汚すけどごめんねー?」
「…んだあいつら…」
「はは、もうそういう空気ってことじゃん…?」
…それからは何となく、そういう空気になって。
夜を過ごした。
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評価とかお気に入りとか諸々ありがとうございます。嬉しいです!
ハーメルンについてあまり詳しくないので、もっとこうしたほうが良くなるとかダメなところがあれば感想とかにくださると嬉しいです。