今俺と郁代とひとりの3人は下北沢にいる!理由は郁代にひとりのギターを聴かせてあわよくばバンドに入ってもらおう!と考えたのたが、何故か仲良くなってる2人に正直、困惑していた。
え?なんか仲良くね?俺ハブ?悲しい。まぁ俺はバンドメンバーでもなんでもないしとか思いながらついて行ってたんだけど……。
「何でもしますからあの日の無礼をお許しください!!どうぞ私をめちゃくちゃにしてください!!」
なんと郁代が逃げたバンドは結束バンドだったのだ。何これめっちゃ凄いやん。世界って狭いわぁ…。
そして公共の道のど真ん中で誤解を生みそうな発言を大声で言える郁代に関心する。すげーなこいつ。漫画みてーだなあ。というか俺のことを見てヒソヒソと話すそこの女子二人組俺は無実だし無関係だから…!彼女達の出来事だから!!!
「喜多ちゃんギター弾けなかったんだね」
逃げるようにライブハウスに入り、話を続ける。虹夏先輩、怒ってると思ってたんだけど案外軽いな。俺なら何逃げてんだこらぁ!ってとっ捕まえてボコボコにしたくなるけど…優しいな。
「…はい」
「死んだかと思って最近は毎日お線香あげてた…」
「殺さないでください」
リョウ先輩も勝手に殺してるけどどちらかというより心配が勝ってる感じか…?いやこれ無関心か?リョウ先輩の感情は読みにくいしわからん……。
「……ふむ」
虹夏先輩もリョウ先輩もフラットだ。俺と同じく、もっと怒られるもんだとおもってたのか郁代は罪悪感が募っている顔をしている。分かる。自分悪いのに周りが優しいとマジでモヤモヤするよな。いや優しいのはありがたいんだけどね?
「…あのもっと怒らないんですか…?」
「気づかなかったあたし達にも問題あるし、あの日はなんとかなったからね!」
眩しいっ…!これもう人間じゃなくて天使だな。マジで泣きながらお金貸してください…って言ったら貸してくれそう。なんなら返さなくていーからとか言ってくれそう。もっと仲良くなったら言ってみよーかな。
「…っ」
そんな最低な考えをしている俺の隣で郁代はさらに顔を歪ませる。やっぱり優しさは薬であり毒だ。しかもこれは無意識の優しさ。打算や理屈での優しさじゃない純粋無垢の優しさだ。虹夏天使による救いの手だ。
罪の意識がある人がその手を自分から取ろうとは思わない。
「…まぁなんか罪滅ぼしでもさせましょうよ虹夏先輩。可愛い服着せて辱めよう」
「…私の気が収まらないのでやります!!お店の手伝いでもなんでも!なんでもさせてください!」
何か罪滅ぼしをしたいっ!と叫ぶ郁代にうーんと唸る虹夏先輩。確かに今させることってあんまりなさそうだもんなぁ。俺ならえっちなお願い沢山聞いてもらうけどね。
「じゃあ今日一日ライブハウス手伝ってくんない?忙しくなりそうだから」
くだらない事を考えていると虹夏ちゃんの姉であり、このライブハウスの店長である星歌さんが提案をしてくれた。さすがだ。てかめっちゃ綺麗。ちょー可愛い。
「おおー、いいっすねーそれいくむがっ……何だよ」
「喜多ちゃんね???」
「……はいはい喜多ちゃん喜多ちゃん」
すげえ怖い。郁代でいーじゃん。どうせバレてんだろ。
「田中。お前もやれ」
「……ええ…はい」
ちくしょー俺働いてばっかだな。
「おにーさんドリンクくださーい」
「あとロインのIDもー」
「いいよー……ってあ?ロインのID?」
郁代が手際よく仕事を覚えていく中、俺はドリンクを渡すだけの仕事をしてる。ちなみにひとりに教えてもらった。ありがとう。めっちゃ楽や。アニキのとこより超絶楽。最高。ライブハウス神。
「スマホ見ねーから返信おせーけど」
「えーいいよー」
「あ、てかグループつくろ」
えぇ。良いんかい…ひとりは返信ないだけでボロボロだったと言うのに……こいつはそういう人なんだって認識されたら大丈夫っぽい?顔は可愛いし別に交換してもいいか。
「オッケー、遊ぶとき連絡してぇえええっ!?!…なにすんすか!虹夏先輩!」
ロインを交換しようとスマホを取り出してQRコードを見せようとすると後ろから虹夏先輩にチョップをされる。ふいうちだ。案外痛え…。
「駄目に決まってるでしょ!」
「はははーじゃ、虹夏先輩が遊んでくださいよー」
「仕事はできるんだからちゃんとやって!」
「ちぇー……。はーい、てか俺にも受付教えてくださいよー」
「まあ良いけど…あ、ぼっちちゃん喜多ちゃんにドリンク教えてあげて?」
虹夏先輩いーなー。お母さんみたいだ。母親いた事ないけど。
受付についての説明をされて、指示されたことをこなしてる中で俺は虹夏先輩に聞いてみた。
「……どう思います?郁代…じゃなくて喜多ちゃん」
「?可愛いよねー。ただちょっと変なところあるよね」
「それな?…いやじゃなくて、バンドにもう一回入るとしたら…の話です」
いくら歌がうまくても、郁代が一度逃げ出したのは事実だ。そしてギターをまだ弾けないのも事実だ。だからこそ現バンドメンバーからの評価はとても重要なものだ。
「正直…いいと思うよ?」
「あれ、そうなんすか?」
「もー湊くん反対するとでも思った?ボーカルがいないのはバンドとして痛いし、そのボーカル候補も今の所いないし……あ、喜多ちゃんならsnsで宣伝もできそーだしねー」
「…オッケーです」
虹夏先輩の言葉に安堵して俺はバイトを続けた。途中ひとりがちょい火傷したみたいだがそれ以外は問題なく、仕事をこなして終わらせることができた。
「じゃあお疲れ。今日はもう帰って良いぞ」
「おいーす。お疲れさんでー……ひとり。これ冷凍の飲み物とハンカチ。火傷したとこにあてとけ。ギター…って手ェ大事だろ?気ぃつけろよ?」
「う、うん…ありがとう…っ」
ひとりの手はまぁ赤く腫れてはいるけど2日ぐらいしたら治りそうだな。良かったー。ひとりにとってのギターって多分アイデンティティの9割担ってそうだし。
「あと喜多!」
「っ!!び、びっくりするじゃない!…な、何?」
メイド服から着替えて制服に戻り、帰りの準備をしている郁代に詰め寄る。
「本当にこのままでいいんだな?」
「っ…!……私は一度逃げ出した人間だもの…。だから」
引き留めたは良いものの、目線を下げて、俯く彼女に俺は何を言ってあげられるだろうか。彼女の納得のいく理由をあげられない…。ちくしょーっ…!あと一押しのはずなんだ。彼女がここで帰ってしまったら、きっと後悔が残る。それだけは確かだ。だから何か、あと一押し…
「あ、あああの!!」
声を上げたのは俺の中で一番。この状況を打破できないと思ってた後藤ひとりだった。震えながら、俯きながら…目線も定まってないのに郁代を止めるその意思だけは強く固まっているように見えた。
「き、喜多さんに手当てしてもらった時…指の先の皮が硬くなってました。かなり練習しないと…そうならないはずです…!」
おお、ナイス!!ひとり!!すげえ名探偵っぽくてカッケーじゃん!
ひとりの発言で流れは良い方向へと変わっていく。
「楽器を弾くのは…苦手なのかもしれないけど、努力の才能は人一倍あるから大丈夫です…っ!喜多さんもバンド好きってわかったし……それに……」
何でこっち見んだよ。やめろ。しっしっと手で目線を振り払うと郁代とひとりは2人して少し笑って話を続けた。
「もう一回入りませんか…?結束バンドに…!」
「……後藤さん…。…うん頑張る…結束バンドのギターとして」
案外…というか最高のオチではある気がする。誰も傷つかずにお互いぶつかり合って、いい方向にへと進んでいくのだから凄い。俺には到底真似できない。する気もないけど。
「でも本当に私、ギター全然弾けないのよね…」
和解ムードで彼女達のほんわかとした会話を聞いていると郁代はギターケースを開けて中身を見してくる。するとどうでしょう。中からはギターが…
「それベースじゃね?」
「湊くんバカにしてる?ベースって弦が4本のやつでしょ」
こいつ……とんでもねぇや。どう見ても弦全部太いやろがー!って気持ちを抑え込んで黙ることにした。うん。リョウ先輩言ってやってくれ。さぁ!
「弦が6本のとかもあります……それ多弦ベース」
リョウ先輩がベースに指を刺して敬語で答える。まさに神の一言。郁代を絶望へと落とし込むには十分な破壊力だった。
「ローン…30回残ってるのに…あひゅう」
俺は敬礼して差し込んだ光に吸い込まれていく郁代を見守る。あぁ、元気でな郁代。多分2年くらいは忘れないよ。天に召された郁代の魂はそのまま……消えることなく何とか生き延びた。
「俺金あるし、ローン払おっか?」
とりあえず、めっちゃ可哀想な郁代に救いの手を差し伸べようとするがリョウ先輩がその手を止めて俺に話しかけてくる。
「まって湊。私ベース欲しい」
「リョウ先輩ってギター持ってたりする…?喜多ちゃんに貸してあげてよ」
「ベースは湊が買い取って私にちょーだい」
やばいこと言ってるこの人。まぁ、良いや。お金はまぁまぁあるし…使い道あんまねーしな
「じゃあそれで」
「…冗談だったのに。湊は天才だね」
「こんな事で天才って言われたくねぇ……」
かくして、郁代はギターを手に入れ、リョウせんはベースを手に入れ。俺はリョウせんからの好感度を手に入れて結束バンドが本格的に始動し始める!
「……湊くん…っ」
と締めくくろうとした時にひとりから声がかかる。なんだと顔をひとりに向けると上目遣いで、こてん…と首を横に傾げて可愛くお願いをしてきた。
「…家、いかせて…?」
「………っ…」
こんなん、即お持ち帰りだろ。
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次回、えち