コーディネイターの生殖能力につきましては、後々言及をする予定です。次回からは舞台が宇宙へと戻ります。それでは。
薄暗い艦長室の中、背を向けたまま一枚のシーツに包まり、事後の心地よい余韻に浸るキラとマリュー。
「キラくん、凄かったわ。」
「マリューさんこそ、あんなに激しくて……」
全てを曝け出した行為を終え、恥じらいを見せたまま言葉を交わす2人。どちらかといえば、その最中はマリューが積極的であったものの、現在では彼女の方が羞恥に襲われているようであった。
「あの、僕……どこか変だったりしました?」
「えっ……!?そ、それはどういう意味で……」
キラの言葉に過剰な反応を示すマリュー。それを意に介そうとはせずキラは事後特有の平静を維持したまま言葉を続ける。
「いえ、その……こういうことは初めてで……マリューさんとは違うから……」
「違うって……あっ……!?」
マリューはまたしても忘れていた。彼が年下の異性というだけではなく、本来は関係を持つことはおろか、接触の機会すらも稀であったコーディネイターであるということを。
ここまでのことをしていながら、遺伝子操作の有無を気にする必要があるのか。彼女はそう思いながらも、キラの言葉に答えていく。
「私も経験が多いわけじゃないから何とも言えないけど、別に変わったことなんてないと思うのだけど……」
「でも、僕のこと……凄かったって……」
「あ、あれはその……別にコーディネイターだから凄いなんて意味ではなくて……!」
自らの最中を振り返り、さらなる羞恥に頬を染めるマリュー。決してキラがコーディネイターだからでない、彼に対する想いの強さが自身を狂わせていた。そう本音を吐露することも出来るわけがなかった。
「でも、ありがとうございます。僕、マリューさんが初めての人でよかったです。」
「うぅっ……!お、お礼なんて、別にいいのよ。」
キラの律儀な言葉に困惑するマリュー。彼を戦いへと駆り立てた対価が、男女の関係を持つことで支払えてしまった形となり、彼女は心身が満たされながらも複雑な心境となる。そして彼女は改めて彼と向き合い、互いに顔を見つめ合ったまま口を開く。
「でも、一つだけお願いしてもいいかしら。」
「はい。なんですか?」
「これから何があったとしても、絶対に私の前からいなくならないこと。」
「それって、一体どういう……」
「難しく考えなくていいわ。ただ、いつも無事で帰ってきてほしい……それだけのことだから。」
しかし戦場においては、それが何よりも難しいことであった。戦いに出ることとなれば、キラもマリューもいつ命を落とすかは定かではない。だからこそ、彼女がキラにそう願うことは、彼に対する想いが溢れている証でもあった。
「……わかりました。マリューさんの言葉、絶対に忘れません。」
「ええ……ありがとう、キラくん。」
願いを聞き容れたくれたキラに感謝するマリュー。そして、事後の余韻に別れを告げ、想いを確かめ合うための口付けを交わす。
かつては軍人と民間人、少し前までは上官と部下、そして決して崩すことは出来ないナチュラルとコーディネイターという関係。2人はその全てを越えて、互いに心を通わせるのであった。
◇
「代表の心中はお察しします。しかし、彼らと敵対する道を選ぶということは、この地球上に住む者全てを敵に回すのですぞ。」
「ぐぅぅぅ……そこまでして世界を2つに分けたいのか……連合も、ザフトも……!」
オーブ近海へと大挙して押し寄せてきた地球連合艦隊。最新鋭のモビルスーツを備えた艦隊を誇り、彼らはオーブに対して協力要請という名で政治、軍事双方の圧力を加えに来ていた。
オーブの実権を握っていたウズミ・ナラ・アスハは要請を拒否。しかし、ウズミを除く国内の氏族名家はサハク家を中心として、連合への協力に前向きな姿勢となっていた。
「もし中立を堅持して連合と戦火を交えても、それによって利するのはザフトです。とりわけ、我が国の技術が無秩序に流れ出るようなことがあれば……」
「わかっておる。それ故に、あの艦とクサナギだけは……」
「ええ、わかっております。もし連合が手を出そうとすれば、その時はギナとミナに行動を起こしてもらいますので。」
サハク家主導による連合との同盟交渉が決まり、ウズミは政界から引退。弟のホムラに大西洋連邦を始めとする連合各国との交渉を任せ、実権は他の氏族へと譲るのであった。
◇
「えっ?私たちを宇宙へ?」
「追い出すような形になって申し訳ない。しかし連合の艦隊が間近に迫っている以上、この本土に脱走艦である君たちを置いておくわけにもいかないのだ。」
秘密裏に修繕を受けていたアークエンジェルのもとを訪れたウズミ。艦長であるマリューに己の不肖を詫びつつ、最大限の誠意を見せようとする。
「連合との同盟までにはしばしの猶予がある。その間に君たちとクサナギは宇宙へと向かい、この世界の行く末を見届けてもらいたい。」
オーブの理念を継承するものとして、あるいは真に戦うべきものを見極めるものとして。ウズミはマリューたちと自らの娘に、未来への『種』として宇宙へ向かうことを求めていた。
「わかりました。アスハ代表の意思、そしてオーブの理念、確かに受け取りました。」
「うむ、頼みましたぞ。しかしラミアス艦長、以前にオーブへ訪れた時よりも良い目をしている。」
「そ、そうでしょうか……?」
連合の軍人であった頃のマリューと、軍を離れたマリュー。かつての現在の顔つきを見比べ、ウズミはその違いに喜びを示す。
「迷いが消え、真っ直ぐと未来を見据えている。今のあなたになら、アークエンジェルを任せても良いと心から思えるよ。」
自らが戦うことに対し、一切の迷いがなくなっていたマリュー。身命を賭して戦う覚悟と生き抜く意志を持った彼女は、多くのものを背負って宇宙へと戻るのであった。