※この作品はR-18です。

幼馴染洗脳改造済戦闘員物   作:べっこう飴02

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4-1 日村 鈴音 (人格擬態/戦闘員)

 学校が終わり、組織からの呼び出しを喰らって訪れたのがここ、学校の近くにある寂れた神社に据え付けられた、古ぼけた公衆便所。

 申し訳程度に清掃中の看板がかかっているが、半ば管理が放棄され、廃れ切ったここに訪れる人間など、まあまずいないだろう。

 

 眼前に居るのはよく見知った、異形の怪人――の、立体映像(ホログラフ)

 

専属戦闘員(ぶか)と随分と楽しんでいるようだな。

 結構な事だ」

 

「……どうも。

 そういうのの記録とかって、やっぱり全部伝わってるんですか?」

 

 つい昨日の仕事(バイト)での荷物の届け先も便所だったな、と内心臭気に辟易しながら、極力それを表へ出さないようにして言葉を返す。

 これくらいは読まれているだろうが、それでもあからさまにそれを言葉に出して、怪人(コイツ)の不興を買う事もないだろう。

 

「いや、お前の戦闘員(鈴音)については専属戦闘員に配属が決まった時点で、管理権限は完全にお前へ移っているからな。

 俺程度では機構(システム)接続(アクセス)して記憶を調べる事は出来んさ。

 単純に、監視している別の戦闘員(ヤツ)からの報告があったんだよ」

 

「はあ……成程」

 

 前半の異形の怪人が語った内容の真偽はさておき――

 俺の行動を……監視している他の戦闘員?そんな奴がいたのか。

 

「そう警戒するな、別に咎めてる訳じゃない。

 むしろよく自制出来ているほうだと思うぞ?

 少なくとも、変に万能感に酔って暴走したバカよりはな」

 

「どうも、ありがとうございます。

 え……暴走?」

 

 不穏な単語を聞き返した俺の言葉に、怪人は、ああ、とげんなりとしたような口調で、答えてくる。

 

「まあ、以前な。一応お前の先輩ってことになるのか……

 色々とやりすぎて、与えた専属戦闘員(おんな)諸共、切らざるを得なくなったマヌケがいたんだよ」

 

 いた(・・)、か。過去形。

 こうまでボロクソに言われている辺り、よほどの事をやらかしたのだろうか。

 

「そりゃ何をさせても構わないとは言ったがな……

 素体の元彼だか何だかを相手に、半生体強化スーツ(しょうたい)晒して、しょうもないマウントをとったり、動画を送りつけたりとか色々、やらかしやがってな。

 少し考えれば、そんな事をすればどうなるかぐらいは想像がつきそうなものだが」

 

「―――何考えてたんですかソイツ。

 え、いや……マジで?」

 

 そっち方面の虚構(フィクション)ではよくあるシチュエーションなのかもしれないが、正気の沙汰とも思えない。

 あれは主人公に何もかもが都合よく進むだけの、お約束の茶番劇だからこそできる事だ。

 最大の障害(せいぎのみかた)の存在を思えば、自分から外部に組織の存在を漏らす真似をするなど、自殺行為としか思えないのだが……

 まさかあいつらの事までどうにかできる、とでも思っていたのだろうか。

 

 というか、最後の辺りは思わず素で突っ込んでしまった。

 

 ただ、それを無礼と咎められる事は無く、むしろ我が意を得たりとばかりに、怪人は愚痴を重ねる。

 ひょっとして――相当に鬱憤が溜まっていたのだろうか?

 

「……さあな。

 最後のあたりで脳破壊がどうとか喚いていたようだが……馬鹿の考える事は分からんよ。

 で、まあ案の定、連中(・・)にそれを嗅ぎつけられてな。

 組織(こっち)との繋がりをもみ消すのに、随分と苦労したんだぞ」

 

「……お疲れ様でした」

 

 案の定、件の先輩とやらはやらかすだけやらかして、英雄(ヒーロー)連中に嗅ぎつけられたあげく、切り捨てられたらしい。

 

 とりあえず、社交辞令として、ねぎらいの言葉をかけておく。

 まあ、怪人の語った最後の下りが、心底うんざりとしたものであったことを感じさせるほど、苦々しいものだったのに同情してしまった事もある。

 

「……ああ、というか話が逸れたな。本題に入るか。

 お前を今日呼び出した理由だが……また新しく専属戦闘員(ぶか)をつける事が決まった」

 

「……え、いや……もう、ですか?」

 

「ま、今回はつける人員は決まっているがね。

 さっき話した、お前達を監視していた戦闘員(やつ)のことだよ。

 素体はお前の通っている学校の女生徒だった奴だが――そいつをくれてやる。

 好みに合うか知らないが、使うならそれなりに楽しめる筈だ。

 ……何か質問は有るか?」

 

「あの……何度も同じこと聞くようでですが、この間、部下に一人貰ったばかりですよね。

 一週間とちょっとくらいしか経ってないのに、早すぎませんか?」

 

 俺のぶつけた疑問に、怪人はそんな事か、と笑った。

 触腕に包まれた異形(なり)のせいで表情の変化はいまいち判別がつきにくいのだが、声の調子でなんとなくだが、わかる。

 

「お前に今後新しく任せるかもしれない仕事(バイト)の、補助(サポート)用の人員だよ。

 別に前線に出す訳じゃないから、その辺は心配するな。

 まあお前にも十分に旨味のある仕事(バイト)だ、とはいっておくよ。

 報酬にも色はつけるし、今まで通り日程(スケジュール)に融通は利かせるつもりだが……

 受けるかどうかは、二人目を味見してから決めていい」

 

 どちらでも構わない、というような調子で答えた怪人だが―――まず、断る選択権はないだろう。

 仕事(バイト)の内容にもよるが……

 二人も専属戦闘員(エサ)を貰ってしまった時点で、上層部(うえ)からの覚えを良くして、立ち位置を確保しておかないと拙い。

 最悪、先の話題に出たような『先輩』よろしく、土壇場で切り捨てられる可能性もあるのだから。

 

「わかりました。じゃあその……

 新しい仕事(バイト)の内容を教えてもらえるのは、二人目と顔合わせが済んでから、って事でいいんですか?」

 

「珍しくやる気があるのはいい事だが……まだ先の話でな。

 新しい戦闘員(やつ)との顔合わせについては手配しておくから、連絡を待て。

 今日のところはもう帰るんだな。

 それに、外で戦闘員(ぶか)も待たせてるんだろう?」

 

 まあほどほどにな、と付け加えて――怪人の姿を映した、立体映像(ホログラフ)が掻き消える。

 最後に言いたい事だけ言って消えたな、とも思ったが、まあいつもの事か。

 

 それに鈴音の奴を待たせているというのも、事実ではある。

 俺は臭気の籠もった便所から出るべく、出口へ向かって一歩踏み出した。

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