※この作品はR-18です。

幼馴染洗脳改造済戦闘員物   作:べっこう飴02

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幕間・世界の守護者とその傍に立つもの

 丘の上から見下ろすのは、表向きは地方の中小企業が所有している事になっている、廃工場。

 だが、それは所謂『悪の組織』が用意したダミー企業に過ぎない。

 奴らは、社会の――或いは、同類や僕達のような存在の目を欺く為に、度々そういった手段を使う。

 

「おい相棒、反応が近いぞ。

 こいつは……少なくとも幹部級の怪人(やつ)だな。

 なかなか喰出(くいで)がありそうなエネルギー量じゃないか」

 

「わかってるよ、EVY(エヴィ)

 それと何度も言うようだが、もし、助けられる人が居たら――」

 

「あいよ。ったく信用ねえなぁ。

 今までだって、出来る範囲ではやってきただろう?」

 

 僕――荒銀(あらがね) (かい)は、自身と同化している相棒の言葉に答えた。

 

 廃工場(あそこ)の地下に戦闘員や怪人を生産する改造プラントが存在している事までは判っていたが――幹部級の怪人が統括していたのか。

 

 だが今の僕達であれば、勝てない相手ではない。

 故に――焦ってはならない。万が一にも仕損じれば、その分被害者が増えるのだから。

 逸る気持ちを抑え、ぎしり、と拳を握り締める。

 

 あの時から、思えば随分と遠くに来たものだと思う。

 

 まるで虚構(フィクション)の世界から抜け出してきたような、所謂『悪の組織』と呼ばれる何か。

 奴ら(・・)がいつこの世界に現れたのか、そのいくつかを滅ぼした今でも、実のところよく判っていない。

 

 怪人、魔人、寄隷獣――組織、役割、改造工程によって呼び方は様々だが、多種多様な力を持つ改造人間。

 超技術を擁したそれらは、社会の裏に根を張って暗躍し、口にするのも悍ましい所業に今も及んでいる。

 

 だが、それを知るのはごく限られたものだけだ。

 ――奴らは表立って動くことを、酷く嫌っている。

 組織同士で牽制し合っているのか、それとも別に何か理由があるのか……それさえも、わからないが。

 

 故に『悪の組織』が実在することを知るものは単純に二通りに分かれる。

 

 僕や彼女達のように敵対するものか。

 或いは、飴と鞭をちらつかされ、傘下に加わったものか。

 巫山戯(ふざけ)た話だが……闇バイトの真似事で人員を集めている組織(ところ)さえあると聞く。

 

 僕にしても、人知れず自分と然程年の変わらない四人の少女戦士がそれ(・・)と戦っているという事を知ったのは、偶然だった。

 

 ――星霊選士エレムディア。

 

 『悪の組織』共々、世間ではただの都市伝説(オカルト)の類だと思われている、戦乙女(ヒロイン)達の呼び名を知ったのもその時だ。

 

 何時だったか相棒(あいつ)は、星霊選士(かのじょ)達を、世界そのものに選ば(のろわ)れた守護者(カウンターガーディアン)だ、と皮肉の様に口にしていたか。

 そのうちの一人が、幼いころからずっと一緒に過ごしてきた幼馴染の少女だった、ということを知ったのも、また。

 

 成り行きから彼女達を支援(サポート)する組織に所属する事になっても……結局の所、ただの学生に過ぎなかった僕が出来るなどたかが知れている。

 大切に思っていた幼馴染を……親しくなっていった三人が戦う姿を、ただ見ているしかできなかった自分。

 それを変える機会は、ある日唐突に訪れた。

 

 エレムディアの活動を支援する組織の中でも古株だという、皮肉気な振る舞いの幽霊(・・)

 正確に表現するなら――この地球とは異相がずれた並行世界から流れ着いて来たという、EVYを名乗る精神体。

 

 炎に包まれた研究所の中、起動しない銀の機械鎧(パワードスーツ)の前で、己の無力に打ちひしがれる僕に、契約を持ちかけて来たのは彼だった。

 

『――お前に選択肢をやるよ。

 護るために抗うか、何もせずに屈するか。

 単純(シンプル)な二択って奴だ』

 

 何処までも半端だった僕に、突き付けられた選択。

 

『抗う気があるってんなら、目の前の機械鎧(ちから)を纏う資格をくれてやる。

 ――対価は、ぶち倒した怪人(エサ)が持ってるエネルギーを、俺に寄こせ。

 何も複雑な事はない、簡単(シンプル)な条件だろ?」

 

恐怖も、躊躇もあった。

 

『どうした―ー戦う力が欲しかったんじゃなかったのか?

 目の前で誰かを踏みにじられるのを、もう見たくないんじゃなかったのか!』

 

 けれど、それ以上に何もできない自分が許せなかった。

 

星霊選士(あいつら)が嗤われた時の怒りを――

 いや……他の誰でもない。

 お前自身が、今抱いている感情(こころ)を、お前は裏切れるのか!?』

 

 だから――戦うと決めた。

 

 たとえそれが修羅の道に踏み込む事になろうとも。

 

 初めは力に振り回され、下級に分類(カテゴライズ)されていた怪人にさえ苦戦していた。

 そんな僕が、幹部級、首魁級のそれとも戦い抜くだけの力を手にできたのは間違いなく、EVY(あいぼう)彼女(なかま)達のおかげだ。

 

 何時の時か、壁にぶつかった時のEVY(あいぼう)の言葉が、脳裏に過る。

 

『だから、行き詰った時があったらうじうじ一人で悩んでねえで、星霊選士(あいつら)に遠慮なくぶちまけてやれ。

 一々、難しく考えすぎなんだよ、お前らは。

 まあ、もし暇だったら俺も聞いてやらんでもない――

 っていちいちこんな事言わせんなよ、小っ恥ずかしい』

 

 あれを言われたのは、然程前の事ではなかった筈だが、酷く懐かしく思えるのは何故だろうか、と自然と口に笑みが浮かぶ。

 当のEVYに、急にどうしたと問われるが……何と答えたものか。

  

 ――と、そんな時に廃工場から聞こえる爆音。

 どうやら、先に潜入した仲間が闘争(はじ)めたらしい。

 

『派手にやってるねえ―ーそろそろ出番みたいだな』

 

「判ってる」

 

 手にした銀の部品で構成された、金属質の機械(デバイス)を腰に押し当てる。

 聞きなれた起動音と共に、ベルトが伸びて、機械(デバイス)を体に固定。

 

 ≪INNOCENT DEVICE !≫

 

 ――最初は恐怖を誤魔化す、自分を騙す為の嘘だった――

 

 続いて、駆動音で唸りを上げる機械(デバイス)に用意されていたスロットに、正六面体の、一際白銀に輝くパーツを装填。

 

 ≪SET――SILVER CUBE≫

 

 ――例え始まりが贋物であったとしても――

 

 電子音がはめ込まれたコアキューブの名称を読み上げる度と同時に、僕の四方に朧げな人型のエネルギーが構築される。

 

 ≪――READY?≫

 

 ――いつか、真作(ほんもの)に、届くと信じて――

 

 更には構築された四つのエネルギー体を囲うように銀に輝く天使の輪を思わせるエネルギー出現。

 

 ――ただ、力強くこう叫ぶのだ――

 

「――装身!」

 

 機械(デバイス)の中央に備え付けられたボタンを押し込むことで、四つの人型のエネルギー体が僕に重なり、同時にそれを囲う一つとなった銀の輪が高速回転しながら、眩い輝きの中で白銀の装甲を一瞬のうちに実体化させていく。

 

 ≪ARMORED INNOCENT KNIGHT――SILVER BODY !≫

 

 ――かつて憧れた、虚構(フィクション)英雄(ヒーロー)のように!――

 

 僕の身体をくまなく包み込む形で現れたのは、無骨さの中に機能美を兼ね備えた白銀を基調とした装甲、勇者(ブレイバー)を象った機械鎧(パワードスーツ)

 

『じゃ、今日もぼちぼち行くか――相棒!』

 

「……ああ!」

 

 漲る力のまま。銀装騎シルバーブレイバーと呼ばれる姿へと変わった僕は、背にスラスターのフレームを展開。

 白銀に輝く翼を形成し、地を蹴って跳ぶ。

 

 もう、これ以上取りこぼさない為に。

 一刻も早く仲間の元へと参じる為に、戦場へと真っすぐに一筋の光となって、駆けた。 

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