丘の上から見下ろすのは、表向きは地方の中小企業が所有している事になっている、廃工場。
だが、それは所謂『悪の組織』が用意したダミー企業に過ぎない。
奴らは、社会の――或いは、同類や僕達のような存在の目を欺く為に、度々そういった手段を使う。
「おい相棒、反応が近いぞ。
こいつは……少なくとも幹部級の
なかなか
「わかってるよ、
それと何度も言うようだが、もし、助けられる人が居たら――」
「あいよ。ったく信用ねえなぁ。
今までだって、出来る範囲ではやってきただろう?」
僕――
だが今の僕達であれば、勝てない相手ではない。
故に――焦ってはならない。万が一にも仕損じれば、その分被害者が増えるのだから。
逸る気持ちを抑え、ぎしり、と拳を握り締める。
あの時から、思えば随分と遠くに来たものだと思う。
まるで
怪人、魔人、寄隷獣――組織、役割、改造工程によって呼び方は様々だが、多種多様な力を持つ改造人間。
超技術を擁したそれらは、社会の裏に根を張って暗躍し、口にするのも悍ましい所業に今も及んでいる。
だが、それを知るのはごく限られたものだけだ。
――奴らは表立って動くことを、酷く嫌っている。
組織同士で牽制し合っているのか、それとも別に何か理由があるのか……それさえも、わからないが。
故に『悪の組織』が実在することを知るものは単純に二通りに分かれる。
僕や彼女達のように敵対するものか。
或いは、飴と鞭をちらつかされ、傘下に加わったものか。
僕にしても、人知れず自分と然程年の変わらない四人の少女戦士が
――星霊選士エレムディア。
『悪の組織』共々、世間ではただの
何時だったか
そのうちの一人が、幼いころからずっと一緒に過ごしてきた幼馴染の少女だった、ということを知ったのも、また。
成り行きから彼女達を
大切に思っていた幼馴染を……親しくなっていった三人が戦う姿を、ただ見ているしかできなかった自分。
それを変える機会は、ある日唐突に訪れた。
エレムディアの活動を支援する組織の中でも古株だという、皮肉気な振る舞いの
正確に表現するなら――この地球とは異相がずれた並行世界から流れ着いて来たという、EVYを名乗る精神体。
炎に包まれた研究所の中、起動しない銀の
『――お前に選択肢をやるよ。
護るために抗うか、何もせずに屈するか。
何処までも半端だった僕に、突き付けられた選択。
『抗う気があるってんなら、目の前の
――対価は、ぶち倒した
何も複雑な事はない、
恐怖も、躊躇もあった。
『どうした―ー戦う力が欲しかったんじゃなかったのか?
目の前で誰かを踏みにじられるのを、もう見たくないんじゃなかったのか!』
けれど、それ以上に何もできない自分が許せなかった。
『
いや……他の誰でもない。
お前自身が、今抱いている
だから――戦うと決めた。
たとえそれが修羅の道に踏み込む事になろうとも。
初めは力に振り回され、下級に
そんな僕が、幹部級、首魁級のそれとも戦い抜くだけの力を手にできたのは間違いなく、
何時の時か、壁にぶつかった時の
『だから、行き詰った時があったらうじうじ一人で悩んでねえで、
一々、難しく考えすぎなんだよ、お前らは。
まあ、もし暇だったら俺も聞いてやらんでもない――
っていちいちこんな事言わせんなよ、小っ恥ずかしい』
あれを言われたのは、然程前の事ではなかった筈だが、酷く懐かしく思えるのは何故だろうか、と自然と口に笑みが浮かぶ。
当のEVYに、急にどうしたと問われるが……何と答えたものか。
――と、そんな時に廃工場から聞こえる爆音。
どうやら、先に潜入した仲間が
『派手にやってるねえ―ーそろそろ出番みたいだな』
「判ってる」
手にした銀の部品で構成された、金属質の
聞きなれた起動音と共に、ベルトが伸びて、
≪INNOCENT DEVICE !≫
――最初は恐怖を誤魔化す、自分を騙す為の嘘だった――
続いて、駆動音で唸りを上げる
≪SET――SILVER CUBE≫
――例え始まりが贋物であったとしても――
電子音がはめ込まれたコアキューブの名称を読み上げる度と同時に、僕の四方に朧げな人型のエネルギーが構築される。
≪――READY?≫
――いつか、
更には構築された四つのエネルギー体を囲うように銀に輝く天使の輪を思わせるエネルギー出現。
――ただ、力強くこう叫ぶのだ――
「――装身!」
≪ARMORED INNOCENT KNIGHT――SILVER BODY !≫
――かつて憧れた、
僕の身体をくまなく包み込む形で現れたのは、無骨さの中に機能美を兼ね備えた白銀を基調とした装甲、
『じゃ、今日もぼちぼち行くか――相棒!』
「……ああ!」
漲る力のまま。銀装騎シルバーブレイバーと呼ばれる姿へと変わった僕は、背にスラスターのフレームを展開。
白銀に輝く翼を形成し、地を蹴って跳ぶ。
もう、これ以上取りこぼさない為に。
一刻も早く仲間の元へと参じる為に、戦場へと真っすぐに一筋の光となって、駆けた。