※この作品はR-18です。

幼馴染洗脳改造済戦闘員物   作:べっこう飴02

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8-3 有り得た末路

 ―――そう遠くない、ありえるかもしれない未来(ルート)

 何処かの路地裏まで相対するのは、二人の少年。

 

 片方の少年は強烈な侮蔑と嘲りを含んだ笑みを隠そうともしない。

 もう一人の少年の表情に浮かんでいるのは……明確な、恐怖だ。

 

「よう、随分と待たせちまったな。

 まさかあの程度の連中を片付けるのに一週間もかかっちまうとはねえ。

 まったく俺も衰えたもんだ」

 

 やれやれ、と肩をすくめながら――相対する。少年の片割れ、荒銀(あらがね) (かい)……

 いや、その肉体を支配する別の何か(・・)は余裕と共に告げる。

 

「まさ、か……本当に、全ての、組織を――」

 

「ああ。お前の組織(とこ)の残党も含めて、全部滅ぼして(エネルギー)に変えてきた。

 第一計画(プラン)で予定していた十分の一以下だが……まあ、最低限の量は確保できたよ」

 

 その言葉に、相対するもう一人の、怯えを色濃く見せる少年は恐怖した。

 虚言やハッタリの類では……ない。

 

 何か(・・)が振るった圧倒的なまでの力は、既に目にしていたし、所属していた組織が遺した機構(システム)から、ある程度の情報も得ていた。

 それでも、その少年は、にわかには信じられなかったのだ。

 

 ――まさか。まさか、これ程の短期間で……全ての悪の組織が、たった一人に、こうも容易く滅ぼされるなど……!

 

「ま、そういう訳でだ。

 この世界ともさっさとおさらばしても良かったんだが……

 俺は義理堅くてね。最後に相棒が抱えた恨みは、しっかりと最後まで晴らしてやらなきゃ可哀そうだろう?

 なあ。三村(みむら) ――道雪(みちゆき)君?」

 

何か(・・)――否、■■■(くろまく)は、更なる嘲りを言葉に込めて――道雪へ告げる。

 同時に掲げる様に取り出したのは、金や銀の派手な色彩なパーツが組み込まれている、漆黒に染め上げられた金属質の機械(デバイス)

 

 それを目にした事で、あの時の光景が道雪の脳裏に蘇る。

 忘れようにも忘れられない――絶望に沈んだ勇者(ブレイバー)を核に、最悪(・・)を生み出した、始まりを。

 

「やはり人間はつくづく、何処の世界でも愚かだよ。

 悪の組織ごっこ(・・・)に夢中になってた間抜け共もそうだがねえ」

 

 ――僕……いや、俺を裏切った全てに、地獄を、絶望を見せてくれ。

 

 あの正義感に満ちた少年が、怨嗟に満ちた血を吐くような声で、■■■に告げた言葉(のろい)を、道雪は覚えている。

 

 道雪が手に入れた専属戦闘員(にくにんぎょう)も、堕ちた星隷操士(エレメディア)も、幹部級の怪人も、首領さえも。

 その悉くを一方的に鏖殺(おうさつ)した、太陽を背に蒼空(ソラ)に浮かぶ漆黒の――

 

 ≪EVIL DEVICE !≫

 

 地の底から響くような低い男の声を模した、不気味な電子音声(コマンド)が道雪の回想を中断させ、意識を現実に引き戻す。

 

「お前みたいな賢しいつもりの間抜けがな」

 

 凱の身体にベルトで固定された機械(デバイス)

 更には、その機械(デバイス)に供えられた用意されていたスロットに、漆黒に染まった正六面体の(コアキューブ)が、凱の手で装填される。

 

 ≪SET――DARKNESS CUBE≫

 

 電子音が(コアキューブ)の名称を読み上げる度と同時に、重なる様に現れる印章(エフェクト)

 

 ≪――READY?≫

 

 機械に備え付けられたボタンを押し込むことで、音楽の一節にも似た待機音(システムサウンド)と共に、朧げな人型のエネルギーが男の四方に構築されていく。

 それらを囲うように異なる色彩の、天使の輪を思わせるエネルギーが僅かに遅れて現れた。

 

 凱の姿のまま、■■■は嘲笑と共に短く告げる。

 

「装身」

 

 四つの人型のエネルギー体が凱の身体に重なる形で収束。

 異なる色の四つ輪のエネルギー体も、凱の身体を中心に置いたまま高速回転。

 全身を覆う装甲が紫電と共に一瞬のうちに実体化されていく。

 その過程で生じた黒煙が、姿を覆い隠すが、それも装甲の構築完了と共に霧散。

 

 ≪ARMORED EVIL KNIGHT――DARKNESS BODY !≫

 

 現れたのは、禍々しくも、無機質さと機能美を兼ね備えた漆黒を基調とした、金と銀が混じった色彩。

 その意匠(デザイン)は、銀装騎(シルバーブレイバー)のそれによく似ていたが――呼吸する事さえ苦しくなるほどの、邪悪な気配がそれを否定する。

 

 黒装騎エビルブレイバー。

 

 組織が壊滅したあの日、■■■が取り戻した……銀装騎(もぞうひん)原型(オリジナル)たる姿。

 

「――ひっ」

 

 道雪の喉から、自然とひきつった声が漏れる。

 

 ただの一般人に過ぎない道雪ですら感じとれるほどの――そこに立っているだけで理解できてしまう、させられてしまう、本能に直接訴えかけてくる威圧感(プレッシャー)

 

『十分すぎるくらいに、絶望してくれたみたいで何よりだ。

 ……じゃあな。並行世界(どこか)で覗き見している間抜けも、精々こう(・・)ならないように身の程を弁える事だ』

 

 ≪CHARGE≫

 

 黒装騎が腰部に据え付けられた機械のボタンを一度だけ叩くと、その右腕から黒い(エネルギー)が吹き荒れた。

 装甲で覆われた手がゆっくりと握り込まれる事で、纏わりつく(エネルギー)が拳に収束していく。

 

 上位の改造体すら紙屑の様に吹き飛ばし得る必殺の一撃。

 生身の人間一人を殺す程度ならば必要のないだろう威力の込められた、過剰戦力(オーバーキル)

 それをわざわざ、道雪程度(・・)に用いるのは……ただ恐怖を煽る為か、それとも凱への義理立てか。

 

 いずれにせよ、喰らえば絶命は免れないだろうそれを前に、道行は、

 

「……ぁ」

 

 何も、出来なかった。

 ただ茫然と立ち尽くすだけ。

 

 当然といえば当然だ。

 もう彼には――何も、誰も残っていない。

 それに他でもない彼自身が――今の状況を招く一端を担ったのだから。

 

 恐怖、後悔、絶望。

 

 流されるまま、欲望のままに事態を悪化させ続けた男が、それらに立ち向かう気概などある筈もなく。

 ただ目の前の脅威に怯える事しかできない。

 

(だれ、か、だれか、たす……け―――)

 

 言葉を発する事さえできず、硬直する道雪の身勝手な懇願に応じる英雄(ヒーロー)はいない。

 

 もう、いなくなってしまった。

 

 力の充填(チャージ)を終え、黒装騎から今まさに放たれんとする漆黒の拳を前に、道雪は―――

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