―――そう遠くない、ありえるかもしれない
何処かの路地裏まで相対するのは、二人の少年。
片方の少年は強烈な侮蔑と嘲りを含んだ笑みを隠そうともしない。
もう一人の少年の表情に浮かんでいるのは……明確な、恐怖だ。
「よう、随分と待たせちまったな。
まさかあの程度の連中を片付けるのに一週間もかかっちまうとはねえ。
まったく俺も衰えたもんだ」
やれやれ、と肩をすくめながら――相対する。少年の片割れ、
いや、その肉体を支配する別の
「まさ、か……本当に、全ての、組織を――」
「ああ。お前の
第一
その言葉に、相対するもう一人の、怯えを色濃く見せる少年は恐怖した。
虚言やハッタリの類では……ない。
それでも、その少年は、にわかには信じられなかったのだ。
――まさか。まさか、これ程の短期間で……全ての悪の組織が、たった一人に、こうも容易く滅ぼされるなど……!
「ま、そういう訳でだ。
この世界ともさっさとおさらばしても良かったんだが……
俺は義理堅くてね。最後に相棒が抱えた恨みは、しっかりと最後まで晴らしてやらなきゃ可哀そうだろう?
なあ。
同時に掲げる様に取り出したのは、金や銀の派手な色彩なパーツが組み込まれている、漆黒に染め上げられた金属質の
それを目にした事で、あの時の光景が道雪の脳裏に蘇る。
忘れようにも忘れられない――絶望に沈んだ
「やはり人間はつくづく、何処の世界でも愚かだよ。
悪の組織
――僕……いや、俺を裏切った全てに、地獄を、絶望を見せてくれ。
あの正義感に満ちた少年が、怨嗟に満ちた血を吐くような声で、■■■に告げた
道雪が手に入れた
その悉くを一方的に
≪EVIL DEVICE !≫
地の底から響くような低い男の声を模した、不気味な
「お前みたいな賢しいつもりの間抜けがな」
凱の身体にベルトで固定された
更には、その
≪SET――DARKNESS CUBE≫
電子音が
≪――READY?≫
機械に備え付けられたボタンを押し込むことで、音楽の一節にも似た
それらを囲うように異なる色彩の、天使の輪を思わせるエネルギーが僅かに遅れて現れた。
凱の姿のまま、■■■は嘲笑と共に短く告げる。
「装身」
四つの人型のエネルギー体が凱の身体に重なる形で収束。
異なる色の四つ輪のエネルギー体も、凱の身体を中心に置いたまま高速回転。
全身を覆う装甲が紫電と共に一瞬のうちに実体化されていく。
その過程で生じた黒煙が、姿を覆い隠すが、それも装甲の構築完了と共に霧散。
≪ARMORED EVIL KNIGHT――DARKNESS BODY !≫
現れたのは、禍々しくも、無機質さと機能美を兼ね備えた漆黒を基調とした、金と銀が混じった色彩。
その
黒装騎エビルブレイバー。
組織が壊滅したあの日、■■■が取り戻した……
「――ひっ」
道雪の喉から、自然とひきつった声が漏れる。
ただの一般人に過ぎない道雪ですら感じとれるほどの――そこに立っているだけで理解できてしまう、させられてしまう、本能に直接訴えかけてくる
『十分すぎるくらいに、絶望してくれたみたいで何よりだ。
……じゃあな。
≪CHARGE≫
黒装騎が腰部に据え付けられた機械のボタンを一度だけ叩くと、その右腕から黒い
装甲で覆われた手がゆっくりと握り込まれる事で、纏わりつく
上位の改造体すら紙屑の様に吹き飛ばし得る必殺の一撃。
生身の人間一人を殺す程度ならば必要のないだろう威力の込められた、
それをわざわざ、道雪
いずれにせよ、喰らえば絶命は免れないだろうそれを前に、道行は、
「……ぁ」
何も、出来なかった。
ただ茫然と立ち尽くすだけ。
当然といえば当然だ。
もう彼には――何も、誰も残っていない。
それに他でもない彼自身が――今の状況を招く一端を担ったのだから。
恐怖、後悔、絶望。
流されるまま、欲望のままに事態を悪化させ続けた男が、それらに立ち向かう気概などある筈もなく。
ただ目の前の脅威に怯える事しかできない。
(だれ、か、だれか、たす……け―――)
言葉を発する事さえできず、硬直する道雪の身勝手な懇願に応じる
もう、いなくなってしまった。
力の