※この作品はR-18です。

幼馴染洗脳改造済戦闘員物   作:べっこう飴02

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8-4 決断の時

「いやまさかこっちが観ていた事に気付かれるとはねえ。

 ……どこまで化け物なんだか」

 

 映像(イメージ)はそこで途切れ、女の呆れた様な声と共に意識が現実へ帰ってくる。

 

「っ……いま、のは……?」

 

 幻覚、白昼夢?

 それで済ませるには、あまりにも生々しすぎる。

 

「あれ……は、いったい……」

 

 今まで、幾度か確認されてきたた強化(アップデート)とは違う。

 只の強化形態と呼ぶには、余りにも不吉で禍々しい。

 あの、馬鹿げた力を持つ――漆黒に変じた銀装騎(シルバーブレイバー)の姿は一体なんだ。

 

「んー、強いて言うなら、数あるうちの未来(ルート)の一つ――ってやつだね。

 これから君が進む分岐(ルート)()()()()()()()()()()()()()()()、誕生するかもしれない怪物だ」

 

 いや、分岐(ルート)……未来の、可能性……?

 ぽりぽり、と頬をかきながら、眼前の女はさらりと俺の胸中に生じた疑問に答える。

 

「まあ――選択によって展開は多少変わりはするよ?

 怪人とか、幹部に収まる分岐(ルート)とか……稀少(レア)なとこだと、シュリョウさまに成り変わる分岐(ルート)もあるみたいだけど。

 ただ、どんな過程(ルート)辿ろうが……一度そっちに行っちゃうとね。

 成功に傾ぎ過ぎた場合、最終的にはあれ(・・)に叩き潰されて殺される、九割九分ね。

 運命の強制力が如何こうとかじゃない。

 そこまで周到に、かーなーりー慎重に立ち回ってるんだよね、あいつ(・・・)

 

 女の口からぽんぽんと情報が追加されつつ、俺の頭に過る疑問を即座に補足していく。

 口に出してはいない筈だが。まさか、心が読まれている?

 いや……予め、こちらがどういった反応(リアクション)を見せるのか……分かっている、のか?

 

「対抗馬としては、あれ(・・)の戦力を学習して新たに生み出された守護者(カウンターガーディアン)くらいか。

 と言っても、もし生まれたとしても、世界の敵であるアクのソシキの味方なんてしてくれないし、君にとっては敵が増えるだけになるかな?

 他のは……こっちの分岐(ルート)じゃ発生する可能性はほぼ零だし……

 つまり、お手上げって訳だ――ああ困ったねぇ?」

 

 こちらを小馬鹿にするように、目の前の女はケタケタと嗤う。

 道化じみた振る舞いではあるが、黒装騎と呼ぶあれ(・・)に言及するその時だけは、少しだけ声が震えているように感じた。

 気のせいかもしれないが……こいつも、あれ(・・)に怯えている、恐怖している……?

 

「……そんな事を聞かせて、あんたは俺にどうしろっていうんだ」

 

「いや、それを避ける選択肢が君にはまだあるって話をしてるのさ」

 

 女が、制服の胸ポケットから摘まんで取り出したメモ用紙を、ぴん、と弾いてこちらに寄こす。

 

「この後――すぐに、そこに書いてある場所(とこ)に行きな。

 それほど時間に余裕がある訳じゃあないが、まだ分岐(ルート)修正の出来事(イベント)には、ぎりぎりで間に合う」

 

 放られた咄嗟にそれに手を伸ばし、掴む。

 その内容に目を通すと、電車に一時間程乗れば着くだろう場所が記されていた。

 

「最終的には、君の組織(バイトさき)も潰れるし、幼馴染ちゃんもお友達も、ちゃんと元に戻るよ。

 何だかんだで上手くいって、皆めでたくハッピーエンドだ。

 ああ、その後の関係性までは保証できないけど……さっき観たみたいに、皆纏めて無惨に殺されるよりはいいと思うけどね」

 

 ……どうする?

 

 どう考えても、この女は怪しい。 

 この場は信じたふりをしてやり過ごし、組織に目の前のこいつの事を報告……すべき、なのだろうか。

  

 だが――先ほど見せられた光景(イメージ)が、どうしても頭から離れない。

 

 あれ(・・)はこちらが観ている事に、気付いていた。

 世界すら隔てた状態で、ただ意識を向けられただけだというのに……未だに寒気が止まらない。

 

 俺の本能が全力で訴えている、そちらの分岐(ルート)に行くなと叫んでいるのだ。

 

 ――あの黒装騎(ばけもの)を絶対に生み出してはならないと。

 

 あれと相対するという事は、確実な破滅と同義。

 

 ただ……あの退廃的な快楽に溺れる日々も、抗いがたいものとして俺の中に刻み込まれている。

 もし仮に、元の生活に戻る事に出来たとしても。

 あの二人を、今更失うことに……耐えられるのだろうか?

 

 こちらの逡巡に、ん、と首を傾げ、じっと見つめて来る目の前の女を前に、俺は―――

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