ようやくたどり着いた、隣町にある公衆便所の個室に、最寄りの駅のロッカーから回収した包みを、学生鞄から取り出し、置いておく。
なぜこのような場所にいるのか、と言えば……学校が終わり、アプリに届いていた、組織からの
時間的な余裕を鑑みて、家には戻らず直に電車を乗り継ぎここまで来たのだ……が。
「とりあえず――これでお仕舞いか」
はあ、とため息をつく。
何度も確認したから、場所も時間にも間違いはないはずだ。
手筈通りであれば、程無くしてまた別の誰かがこれを回収に来るだろう。
しかしまあ――怪人からの連絡を受けるときにも似たような場所を使ったことはあるが、荷物を運ぶ先としては珍しい
それに、いつもよりはいくらか遠い
その分、提示されていた金額には色が付けられていたから、稼ぎとしては悪くはないのだろうが。
『清掃中』の看板を避けて、公衆便所から出るときに、素知らぬ顔で中に入っていくスーツ姿のサラリーマンらしき男とすれ違う。
こいつが
と、頭に
勘繰るだけ無駄だろうし、要らない事に気付いてしまえば心労が増えるだけ――下手を打てば、命すら危うい。
「……さっさと帰るか」
用事も済んだ事だし――と、がりがり頭を掻きながら、駅に向かって帰路を急ぐ。
その道すがら通った商店街周りを眺めてみるが、見るべきものもなさそうだ。
俺の生活範囲からは外れている、普段あまり足を運ばない
ただ、
適当にホットスナックでも食うかね、と自動ドアを潜る。
チキンとか、アメリカンドックとか、フランクフルトとか。
どれにしようか、いやいっその事、全部?
まったく考えるほど、どんどん腹が空いてくるな……と膨れ上がっていく食欲に身を委ねようとした、その時。
店内に見覚えのある、ブレザーの制服の女子高生が一人が、うげ見つかった、と言わんばかりの表情でこちらを見ていることに気付いた。
さらりとした、肩まで伸びた黒髪のセミロング。
細身にも見える体躯に備えた
その中に、暴力的な
「……あ、みーくん、奇遇だねえ」
幼げで整った顔立ちに備えたぱっちりとした瞳を見開いて、いかにも、今こちらに気付きましたと、わざとらしいリアクションを見せてくれている彼女は、
一年ほど付き合いが途切れていたのだが……最近、再び関わる事になった女。
はあ、とため息をついてから、すっとぼけた調子のそいつに、告げる。
「別に
電車代だって余計にかかっただろ、
「だって、せっかく
なのにみーくん、先に帰ってろ、ってだけ言って一人で行っちゃってさ」
俺のぼやきに、口をへの字に結びつつ、恥ずかしい台詞を憚ることなく口にする彼女は、
こうして見る限りでは、とてもそうは見えないが――
彼女は、
ちなみに、先刻こなした
そして更に付け加えるなら……
曰く、無意味に痛めつけたりしなければ、好きに扱っていい、との事。
それも、大凡若い男であれば一度は考えるような、下卑た意味で。
今までの働きが認められた、
元々、
ともなれば、猿の様にそれを求めてしまうのも、致し方なく。
まだ一週間ほどではあるが――毎日のように
先の恋人発言も、その一環になるのだろうか。
それも思う所があった女と、四六時中そばでべったり、と言うのは……正直悪くはない気分だ。
「えーっと、まあ……ともかくさ。
みーくん、
一緒に帰ろうよ。
……あ、駄目だよ買い食いとか。晩御飯食べられなくなっちゃうよ」
「いや、お前なあ……」
めっ、と人差し指を立て、こちらを咎めるように距離を詰めて来る鈴音。
何をしにここを訪れたのか、読まれていたらしい。
食い損ねたホットスナックに後ろ髪を引かれつつも、身を擦り寄せて来る鈴音と並んで、コンビニを出る事にした。
ふと、触れた指先から絡めとられ……きゅ、と繋がれた手から感じる温かさに覚えた感傷に気付き、笑ってしまう。
例え真似事に過ぎないとしても、これが只の人形遊びのようなものだと分かっていても――