「最近出久君付き合い悪いなぁ」
3年生になってから出久君は早朝のトレーニングを私ではなく別の誰かと行うようになったらしい
早朝だけでなく夕方のトレーニングも断る回数が増えた
ただサボっているのではなく何か別のトレーニングをしているのは確かだし、ビデオ通話をしながらの夜の勉強会にはちゃんと参加してくれる
気になったので探ってみると、引子さんがここ最近浜辺に出掛けるようになったと聞いたので行ってみると、不法投棄が問題になっている海岸のゴミを片付けていた
「ヤッホー出久君」
「わわ! アメさん! なんでここに」
「つけてきちゃった。酷いよ出久君、私に黙って秘密のトレーニング?」
「う、うん。ごめん」
「サボってる訳じゃないから別に良いけど……私とのトレーニング飽きちゃった?」
「いや、そういう訳じゃなくて……」
「私が彼を鍛えていたんだ。すまないねお嬢さん」
声をかけられたので振り返ってみるとガリガリの骸骨みたいな男性がそこに居た
「大丈夫ですか?」
「大丈夫! かは!」
「吐血してる!!」
とりあえず話を聞いてみると、彼の名前は八木さんといい、出久君に可能性を感じ、プロヒーローにするために鍛えていたとのこと
「緑谷少年から話は聞いているよ。地母少女! 緑谷少年をここまで鍛えたのは君のお陰なんだって」
「いえ、全ては出久君の頑張りによるものですよ」
「緑谷少年! 青春しているね!」
「は、はい!」
トレーニングメニューを聞くとまずはこの海岸の掃除をし、様々な大きさの廃棄物を運んだり持ち上げたり、押したりすることで全身の筋肉隅々まで鍛える
それを2ヵ月以内に行い、そこからはヒーローに必要な技術を叩き込むとのこと
「緑谷少年には眠っている個性がある。それを私が呼び起こす!」
とのこと
出久君の体の隅々まで調べた私が言うのはなんだけど、出久君に個性は無いと思うが……
まぁ八木さんは何か確信しているらしいが
「ちなみに緑谷少年のトレーニングメニューを聞いても良いかな地母少女!」
「わかりました」
そう言って私は腕からレシートみたいに紙をべべべと印刷した
「わお! 面白い個性だね! 【印刷】の個性かい?」
「いえ、私の個性は【アメリカ】です。第二次大戦までのアメリカに有るものなら体を変形したり、こうやって物を出すことができます」
「ユニークな個性だね! 特にアメリカなのが良い!」
「まぁ個性なんて付属品ですよ。心や精神力こそ、その人の本質なのですから!」
「み、緑谷少年! 凄くできた彼女だね」
「僕には勿体無いくらいに」
「どれどれ……おお!」
100メートル坂道ダッシュ100本、15キロ走、腹筋・背筋・腕立て伏せ・スクワット×50を10セットに、3分組み手20本
「濃密! これに勉強もだろ! ……そりゃ緑谷少年の体がほぼ出来上がるハズだ」
「無個性でも雄英に合格できるように色々と考えましたから」
「うーん! マジで良くできた彼女だね! 緑谷少年マジで大切にしろよ」
「はい!」
オールマイトこと八木俊典は悩んでいた
緑谷少年の体は自身が思っていたよりも出来上がっている
それこそすぐに個性を譲渡しても良いとは思えるほどに
しかし、2ヶ月間彼の様子を見てから個性譲渡しようと決め、トレーニングを初めて2週間、緑谷少年の彼女こと地母少女に出会い、話を聞いて考えを改めた
無個性でも本気でヒーローを目指してほぼ実る可能性の低いながらも必死に体を2年間も鍛え続けてきた継続力は継承するに値する
ただ、自身は常に自分が第一線で活躍することにより皆を支えてきたヒーローなだけに育成に関してはド素人
「……あまり心は進まないが」
オールマイトは筆を取る
宛先はグラントリノ
グラントリノに自身の個性を継承するに値する肉体と精神力を持った少年を見つけ、自身の指導力では彼の潜在能力を引き出すには時間がかかるとし、応援を要請した
手紙は直ぐに返答が返ってきて、夏休みに個性を継承した状態で俺の所に緑谷という少年を連れてこいとのことだった
夏休み、出久君は本当に個性が発芽して、八木さんに個性を重点的に鍛える為、自身の師匠のところに連れていかれ、私は暇になっていた
「1人で鍛えるの……こんなに寂しいものだっけ……ヤバい、いつの間にか出久君依存症になってる」
「そんなに寂しいなら幻想郷に一旦戻りますか?」
「……いや、幻想郷に帰ったらこき使わせられるだけだろうしここは……」
スマホを取り出し電話をかける
「もしもし日程?」
『お、絶賛青春色ボケのアメ姉じゃん! どうした?』
「いや、彼氏が別の師匠をいつの間にか捕まえてきた話はしたじゃん。夏休みその師匠の更に師匠に会いに山梨県に行ってるから暇になって……そっちも鍛えてるでしょ。久しぶりに手合わせしない?」
『良いよ。どこでやる?』
「鳳翔さん、どこか良いところ無い?」
「富士樹海とかどうかしら? どれだけ暴れても問題ないわよ」
『OK、明日そっち行くから殺ろうや!』
ということで妹の日程と殺り合うことになった
駅で待ち合わせをしていると、『一殺入魂』という独特なTシャツを着た妹が飛び付いてきた
「お待たせ!」
「相変わらずへんてこりんなTシャツ好きだね」
「いやー、黙ってると話しかけられづらい堅物ちゃんに見られちゃうからね。服装で調和してるのよ」
「まぁ良いわ、で、日程は彼氏できた?」
「できないよぉ……皆喋ると残念美人って言うんだよ。酷くない?」
「残当」
「うわ、ひど! ……あ、鳳翔だ、ヤッホー」
「日程さんお久しぶりですね。加賀さんは?」
「幻想郷、肩こりが酷くて悩んでたからその調整に行ってる」
「あぁ、なるほど」
「鳳翔は体調に変化は無い?」
「問題有りませんよ」
「じゃあ鳳翔さん、私達樹海に行ってくるから家は頼むね」
「わかりました。お気をつけて」
オールマイトからワン・フォー・オールを継承した僕こと緑谷出久はオールマイトの師匠であるグラントリノの元を訪ねた
「俊典、そいつが9代目継承者か?」
「はい、グラントリノ……彼が私の個性を継承した緑谷出久少年になります」
「ほほぉ……緑谷と言ったな」
「はい!」
「どうだ。オールマイトの個性は」
「……今は100%か0%のオンオフしかできません。ただ100%だと体が壊れるのはわかっています」
「なら俺が教えるのは今お前さんの体で制御できる出力の調整だな……どれ」
バンバンと叩かれる
「ほお、学生時代のオールマイトには及ばねぇが十分だ。良い体をしているな。独学か?」
「トレーニングを組むのが上手い彼女が居まして……」
「青春! 青臭が……意地悪な質問をしよう。お前は彼女と一般市民どちらかしか助けられない時にどちらを取る?」
「わかりません。ただ両方を守れる様に動くと思います」
「いいか坊主、ヴィランはそういう大切な物を常に壊そうと動いてくる。なぜ俊典が妻子を持たないか……それはそれが己の弱点となるからだ。そして今、妻子ではないがオールマイトの弱点は坊主貴様だ。オールマイトはどんなに頑張っても継承した以上あと数年でワン・フォー・オールの残り火は消える。その時に新たな平和の象徴にお前はなれるか!」
「……僕の彼女が言いました。全員がヒーローのように互いを助け合う世の中こそが理想だと。ただ今の現状、誰かの手を引くヒーローが……オールマイトの様なヒーローが今の社会には必要です。僕は僕なりにオールマイトから受け継いだ力と僕の努力で……平和な世の中を実現させて見せます」
「良く言った! 俺の鍛練は厳しいぞ坊主!」
「望むところです!」
こうして僕はグラントリノの下でワン・フォー・オールを操るトレーニングが始まったのだった
バババババ
銃の発射音が響き渡る
「久しぶりにM60機関銃全力射撃したけどガツンと来るのが快感だわ」
「個性登録的に第二次世界大戦縛りをしているけど、実際は現代までの物をつかえるからねぇ」
弾丸を受ける側の日程は弾丸の攻撃を体を装甲化させて防ぎきる
「その気になればアメは新型極超音速大陸間弾道ミサイルでもレーザーでも撃てるじゃん。飛行形態だとマッハ5の戦闘機にもなれるじゃん! 羨ましいなぁ」
「日程は兵器の出力で劣る分電子機器類は滅茶苦茶強いじゃん」
「自衛隊の戦力だと色々と厳しいんだけどね。小型レーザー銃くらいならできるけど」
「というか私達は接続すればほぼ無限のエネルギーを産み出せる原子力モードがあるけどさ」
「あぁ、それだと日程が強くない? 『もんじゅ』があるし」
「ただあれやると死んだ時に周囲一帯を消し飛ばして更に放射能ばらまくから安全面からやりたくないんだよね」
「さて、第二ラウンドといこうじゃないか!」
「OK!」
全身からミサイルの射出口が生え、12本の小型ミサイルが発射される
「イージスシステム起動!」
対する日程はレーダーと連携し全指を機関砲に変形させ、ミサイルを打ち緒としていく
「複合装甲!」
ガンガンガンと装甲に砲弾が着弾するが、なんとか耐えるが、至る所が凹んでいた
「さすがに耐えるよね」
「一部凹んだからやっぱり複合装甲といっても400mmくらいしか装甲厚なさそうだね」
「でもエイブラムスクラスになれば1300mm装甲も実現できるんでしょ。攻撃通らないでしょそれだと」
「強個性の場合貫通しちゃうことがあるから油断はできないよ日程」
「うへぇ……さっきのミサイル発射モードとか名前はあるの?」
「まだ付けてないね。まぁ雄英行ってからで良いでしょ。必殺技は」
「まぁそうね」
地母アメと地母日程が戦った跡には半径50メートルが吹き飛んでぼこぼこの地面になっていた
「次どうする? 体内にスパコン作ってウイルス勝負する?」
「あー、その勝負もらったわ」
地母姉妹は樹海の中で100本勝負を繰り返すのだった
夏休みが終わり、出久君はボロボロになって帰ってきた
「出久君大丈夫?」
「だ、大丈夫だよアメさん。毎日実践的な訓練の毎日だったけど……強くなれたよ!」
「おお、凄い自信だね」
「アメさんにも見てもらいたいんだ! 強くなった僕を」
「OKOK、グローブは要る?」
「要らない。代わりにアメさんも装甲化とかで全力で守ってよ」
「そこまでか……よし、受けて立とう」
緑谷出久対地母アメの模擬戦が始まろうとしていた