いつもありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
「今日はこれで終わりですね。お疲れ様でした」
「ありがとうございました!御先に失礼します!」
朝から始まった打ち合わせや収録が終わり、関係者やマネージャーに一礼すると、手早く荷物をもってホロライブ本社から出た0期生の『AZKi』は足早にタクシーへ乗り込んだ。目的地を告げるとスマホを取り出し、何かを打ち込んでは暫く目で追っていたが途中で目的のものが見つかったのか、嬉しそうに笑うとスマホを鞄にしまって窓の外を眺めていた。
「到着です」
「ありがとうございました!」
お釣りもなくぴったりの金額を支払うと、タクシーを降りたAZKi。目深に帽子を被り、口元を隠すようにマスクを着けて辿り着いたのは日本の空の玄関口とも言われる某空港だった。既に行き先も決まっていたのか、そのまま迷うことなく正面入口へと向かう彼女の足取りは軽い。すると、向こうから1人の男性がスーツケースを転がしながら歩いてきていた。
「!!」
それを見た瞬間、AZKiは嬉しそうに走りだし、その接近に男性が気付いた時には既に抱き付いていた。
「おっと!」
「おかえりなさい!」
何とか受け止めた男性にAZKiは声を投げた。
「ありがとうございます、わざわざお迎えなんて」
「だって1ヶ月ぶりだもん。私の仕事も丁度終わるタイミングだったから、折角ならすぐに会いたくなっちゃって」
悪戯っぽく笑う彼女に男性も笑顔を見せた。
「私も会いたかったです」
「ホント?嬉しいなあ」
そのまま手を繋ぐと、再度タクシーへ乗り込んだ2人。もちろん、目的地は彼の家だ。車内でも2人の話は盛り上がったが、その手が離されることは無かった。
「久しぶりの我が家なのに、凄く綺麗だ。いつもありがとうございます」
「いいのいいの。折角合鍵くれたんだから、このくらいさせてよ」
荷物を片付けて、リビング。AZKiが買い貯めておいた、彼がお気に入りのお茶を2人で飲みながらソファでのんびりしていた。
「今回はENだったよね?」
「ええ、今度来日する予定の人達との顔合わせとスケジュール確認、それと日本でのコラボ希望の方達へのアポやらENの事務所の様子確認とかでした」
「現地じゃないと分からないこともあるから大変だよねえ」
「後でAZKiさんへのメッセージも来ていたので渡しますね」
「ホント!?楽しみ!!」
そんな事務連絡をしつつも、2人の空気はゆるっとしている。仕事の際は極めて真面目な態度で評判の2人だが、二人きりの時は大体こんな感じであり、お互いにリラックスできている証拠でもあった。
「向こうでもAZKiさんの配信は観てました。歌もどんどん上手くなってますし、この間のライブも観てましたよ」
「ありがと!貴方も観てくれてると思ってたから気合入れたんだ」
男は今でこそAZKiの交際相手だが、元々はホロライブの社員でしかなかった。AZKiがホロライブ0期生として正式に移籍したあと、彼女が思わぬ才能を見せた地図のゲームに関する企画で関わったのが出会いである。というか、AZKiの一目惚れだったそうだ。その後彼女の猛烈なアタックの末に交際を始めたのだが、すぐに友人Aに知られることになり、色々と問答の末、語学と地理に強かった彼の才能を買って、ENやIDとの橋渡しとして尽力する事を条件に黙認されることになったのだった。ちなみに、AZKiと同じく途中加入組で、(紆余曲折あったが)社内恋愛という点では先輩になる、同期のスターの原石がかなり援護射撃をしたとかなんとか。
「でもさあ?」
「はい?」
何故かジト目で彼を見るAZKiに彼は首を傾げた。
「EN組ってみーんな美人だし、目移りとかしてなーい?」
「そんなまさか!AZKiさんが居るのにそんなことしたら、貴女のリスナー(開拓者)さん達に怒られますよ……」
慌てた様子で首を振る彼に、
「冗談だよ。貴方が私を大切に思ってくれてるのは一番知ってるもの」
またも悪戯っぽく笑ってそのまま彼に寄りかかるAZKi。からかわれたと気付いた彼も力を抜いて彼女を受け入れた。
「ふふっ、貴方はいつも私の言葉を真面目に受け取ってくれるから、たまーに悪戯したくなるよ」
「心臓に悪いので、ホントにたまにでお願いします」
「そこで駄目って言わないところも好きー」
肩に顔を預けて甘えるAZKi。
「今日はもう予定もないし、ご飯はウー○ーしちゃお?」
「いいですね。たまにはだらけても」
「明日は私が作るから、楽しみにしててね」
「それは嬉しいです」
そんな会話をする事しばし、またもジト目のAZKi。
「……ねぇ?」
「なんでしょう?」
「いつまで敬語なの?」
「……あっ」
しまった、と顔を背ける彼。
「向こう行く前に敬語止めて呼び捨てって約束したのに」
「す、すみません。仕事の口調が抜けてなくて、皆さんを同じように呼んでいたものですから」
「だーめ、なので今から罰ですー」
そう言うと、AZKiは彼の手を引っ張った勢いでソファに押し倒した。
「AZKiさん!?」
「まだ敬語」
「うっ……、あ、AZKi?」
「よろしい」
そのまま彼のお腹に馬乗りになった彼女。公式の衣装にもなっているスカート姿なので、彼の視点からだと見えてしまう太ももが眩しい。
「この間すいちゃんとご飯行く機会があってね」
「すいせいさん?」
「うん、でね?すいちゃんも私達と同じでしょ?」
私達と複数を指したことで彼も理解して頷いた。
「最近、すごーく綺麗になってたの」
「ん……?化粧とか……?」
「ううん、何て言うか、雰囲気?オーラ?」
なんとなくふんわりとした言い方だ。
「で、理由を聞いたらね?」
「う、うん」
「彼氏さんと最近すごーく盛り上がってるんだって。それも何日も」
「……」
咄嗟に何かを言いかけて、彼は言葉を飲み込んだ。
「一応確認するけど、なにが?」
「……言わせないでよ、エッチ」
ほんのり顔を赤らめて文句を言うAZKiだが、そもそもこの話題を振ったのは彼女である。それでも可愛いと思ってしまったのは付き合って惚れた男の弱味か。
「でも、実際皆それを聞いて色々と察したみたいで、最近だとトワちゃんとかもすごーく艶々してたの」
「へ、へぇ……」
何となく話題の終点が見えてきて、彼は少しだけ声が震えた。
「でも私、そういうことあんまり知らないし、貴方とお付き合い始めてから何度か経験したけど、お互いにぎこちなかったじゃない?」
「す、すみません。今まで経験無かったもので……」
「それは私も同じだから、気にしなーいの」
謝る彼の頭を指でつつく彼女。
「だから、勇気を出して色々と聞いてみたの」
「……彼女はなんと?」
「『彼を誘惑して、ガバッと襲わせればイチコロよ』って」
「……何を言っているんだ」
思わず真顔で呟く彼だが、AZKiは至って真剣な顔だ。
「実際、すいちゃんも最初こそ自分からだったらしいけど、最近は彼の方から手を出される回数も増えて、それこそ毎日がドキドキだって」
「な、なるほど……」
「それで、いつも充実してるからじゃないかーって言ってたの」
今をときめくアイドル達が集まって話す内容なのかは置いておいて、理屈は彼にも理解できた。
「だから、ね?」
そう言うと、少しだけもじもじとスカートの裾を弄って言い澱むAZKi。
「……?」
「……あんまり、引かないでね?」
そのまま裾を持ち上げると、見えてきた黒の下着。だが、『ホロライブの清楚枠』とも言われる彼女のイメージからは想像もつかない程、その布が隠している肌面積があまりにも少ないことに絶句した。
「……(パクパク」
「貴方に見てもらいたくて、この間相談ついでにすいちゃんと買いに行ったの」
既に真っ赤な顔だが、それでも目を逸らさない彼女。
「……似合ってない?」
「……びっくりしたけど、とても綺麗だよ。似合ってる、と思う」
何とか言葉を発した彼。
「良かった。なら……」
そのまま彼に覆い被さってキスをすると、
「……今から、私をたくさん可愛がってください。それが約束破った罰です」
そう耳元で囁いて、上着を脱ぎ始めるAZKi。
「その、なんというか……」
「……?」
「珍しい、ね」
「なにが?」
「こういうことにはあんまり興味無いのかと思ってたから」
普段の配信や日常の会話的にはむしろ、彼の印象の方が正しいだろう。AZKiもそれが分かっているのか、彼の言葉に頷いた。
「うーん、そうだね。さっきも言ったけど、貴方以外とも経験したこと無いし、周りでもそう言う話題があまり無かったから」
「……そりゃあ僕は人並みにはあると思うけど、だからといって無闇に手を出したいと思わなかったし、それで良いのかと」
「そういうところも素敵で好きなんだけど……」
「うん」
「そう言う話をしてる皆が幸せそうだったし、私もちょっと当てられちゃったのかも」
「……ああ、それは分かるかもしれない。身近だとなおさらだよね」
「それに、ね?」
「……?」
次の言葉は、男の自制を外すのには十分過ぎた。
「貴方となら、したいなって思うのは、ダメ?」
「……それは、ずるいなぁ」
「えへへ……。1ヶ月待ったんだから。男らしいところ、いっぱい見せてね?私も色々と勉強したし、頑張るから」
「……精一杯、努めさせていただきます」
AZKiを乗せた身体をそのまま起こすと、彼女を抱き抱えて寝室へと入っていくのだった。
後日、煽った成果を確認しようとご飯に誘ったところ、あまりの艶めかしさに少しだけやりすぎたと反省した同期が居たり、それを見てますます張り切るメンバーと、さらに増える特別注文の数に色々と察するずのーが居たりするのはまた別のお話。
名前だけなら断トツ1位の出演数、ずのーさんもいつか書きます。