お気に入りも400人越えました。
びっくりしてます。
いつもありがとうございます。
『疲れたー!』
『お疲れ様……?』
部屋に入ってきて開口一番叫んだ女性に対して、部屋の主はキョトンとした顔で応じた。
『彼女が来たんだから、ハグしてよー!』
『あ、ああ。ごめん』
そのままソファに倒れこんでじたばたする彼女が伸ばした腕を掴んで、抱き寄せた。
『……よし』
『落ち着いた?』
『うん。ありがとう』
しばらくじっとしていた彼女がそういうと、彼はそっと彼女を離した。
『おかえり、ムーナ』
『ただいま!』
満面の笑みで応じる彼女はホロライブインドネシアの一期生『ムーナ ホシノヴァ』である。
『今日は撮影?』
『そう。日本の雑誌?に載るって』
大学生にして、モデルとアイドルを兼任していた彼女がVtuberに興味を持ち、ホロライブに加入してから早数年。時折来日しては3D関係の仕事をこなしている彼女だが、今回もその一環だったようだ。
『最近はVの方も特集されること増えたよね』
『日本語勉強しててよかった。少しずつだけど一人で読めるのは嬉しい』
ソファに再度寝転がって嬉しそうに揺れる彼女だが、胸元が激しく揺れたり、服の裾が捲れて白い肌が時折見えそうになっているので、コーヒーを差し出す際に、彼はそっと目をそらした。
『オフコラボは?』
『この間までスタジオでJP先輩達としたよ!あ、でも今週末にぺこらシャチョーの家に行く!』
『おー、それは楽しみだね』
予定をワクワクした様子で話すムーナ。
『今回の来日も楽しい?』
『勿論!会いたい人達とたくさん遊べたし、貴方にも逢えたし』
『先月僕がそっちに行って以来か』
遠距離や国際恋愛に付き物だが、やはり会える期間が限られるのは辛いところだ。幸い、彼が比較的フットワークの軽い人であるため、頻度は普通の人と比べれば多い方ではあるが……。
『お仕事も楽しいけど、貴方と会うのが一番楽しみなのよ?』
『そう言ってくれるのは嬉しいよ』
いつの間にやら身体を起こしたムーナが彼を後ろから抱き締めながら囁いた。肩にホロライブ全体を通してもかなりの大きさを誇る胸が押し付けられている。
『あんなに何度もしてるのに、未だに目をそらしたり、恥ずかしがるのも可愛いわね』
『分かってるなら、やめよ?』
どうやら先ほどの乱れはわざとだったらしい。
『ふふふ、お風呂入ってくるわ』
『いってらっしゃい』
『あ、一緒に入る?』
『昨日入ったじゃないか……』
『冗談よー』
手をヒラヒラと振りながら脱衣所に歩いていくムーナに、彼は苦笑を返すしかなかった。
『ふぅ……』
『おかえり』
髪を乾かして出てきたムーナに、彼は声をかけた。
『貴方は?』
『先に入っておいたよ、はい』
『ワオ!アイス!』
有名な某高級アイスを差し出されたムーナは喜んだ。
『わざわざ買ってくれたの?』
『貰い物もあるけどね。君が前に好きだって言ってたから』
『嬉しい!ありがと!』
彼の頬にキスをして、ムーナはアイスを食べだした。
『……貴方は何をしているの?』
『ん?今週の仕事を先に片付けておこうかと』
ムーナの視線の先で、PCを叩いている彼はなにやら忙しそうだった。
『あー、もしかして邪魔したかしら……』
『そんなことないよ……、ほら、終わった!』
彼が伸びをしている先で、PCの電源が消えたのが見えた。
『これで、君がいる間は緊急以外に仕事はないよ』
にっこりと笑う彼の言葉に、ムーナは吃驚した。
『私のため?』
『それもあるけど、半分は自分のためだよ。君がいる時間は貴重だし、僕の都合で減らしたくないでしょ?』
隣に座った彼を、ムーナは抱き締めた。
『……ありがとう』
『どういたしまして』
彼もそっと抱き返すと、そのままお互い見つめ合い、どちらからともなくキスをした。
『……嬉しい』
『いつ見ても綺麗な目だ』
『貴方に誉められるの、もう数えてないけど、嬉しい』
顔を少しだけ赤くしたムーナ。女性としてはかなりの高身長な彼女。彼がそれほど大きくないこともあり、座れば目線はほぼ並ぶ。そのため、ムーナの上下に色の分かれた瞳が彼からは綺麗に見えた。
『もし君に子供が出来たら、この目は受け継がれるのだろうか』
『……///』
男の呟きに今度は真っ赤な顔になったムーナ。
『……?いきなり赤くなったけど、どうしたの?』
『あ、貴方が子供出来たらなんて言うから……!』
ムーナの返答にハッとした彼。
『い、いや!その、子供が欲しいとかそういう意味じゃなくて……!』
ハグしていた腕をバッと離して、慌てて弁解する彼。
『……(ムッ』
ところが、ムーナはそれを見て少し膨れ面をした。
『……あの、ムーナ?』
『子供、欲しくないの?』
『えっ』
グッと腕を引っ張り、彼を引き寄せたムーナは聞いた。
『私との子供、欲しくないの?』
『……いつかは欲しいです』
今度は彼が顔を赤くする番だった。
『ならよかった。そんなに否定しなくても良いじゃない』
『いや、色々すっ飛ばしちゃった気がしたから、悪いかなって……』
『……確かに』
2人して気付いて笑う。
『でも、アイドルしてるムーナも素敵だから、今すぐはダメかな』
『私もまだまだやりたいことあるから、その後かしら』
そう言いながら、抱き寄せた彼を離さないムーナ。
『……ムーナ?』
『今日は、大丈夫な日だから』
彼女の言葉に一瞬固まる彼。
『……えっ?』
『だから!今日は遠慮しなくていいの!』
そういうと、ムーナは彼を押し倒した。
『あの、せめて付けないと』
『大丈夫って言ったでしょ』
『ま、万が一が』
『その時は責任とってね?』
『そ、それはもちろんだけど、今さっきはまだだねって』
『それはそうよ?でも、嬉しかったんだもの。貴方も本気だって分かったから』
そういうムーナの目は光輝いていた。
『こういうの、日本だと据え膳って言うんでしょ?シャチョーから聞いたよ?』
『何を教えてるんだ、あの色ボケウサギ……!』
ムーナが連れてきた事のある彼女の顔を思い出し、思わず毒づいた。
『そういえば、こう言えば喜ばれるって言われたのある』
『……何?』
一呼吸おいて、満面の笑みでムーナは言った。
「ワタシを、オヨメに、シテクダサイ。ダンナサマ?」
「……それは、ずるいって!」
渾身の日本語にやられた彼は、ムーナ(と唆したウサギ)の予測通り獣になった。そして、恵体として産んでくれた両親に感謝しながら、遠くない将来に出来るであろう子供の名前を2人で考えるのが楽しみなムーナだった。