当日に間に合ったので許してください。
今回はタイトル通りの小話です。
R18要素のある人とない人がいますが、ご了承ください。
2月14日。それは、1年で1番甘い香りがする日。女性が一世一代の勇気を振り絞る切っ掛けにする日。男性が意中の相手からの贈り物にそわそわする日。それは独りでも恋人がいても変わらない。そして、それはアイドルであっても……。
1.マリンメイドの場合
「あ、あの……」
「……?」
背後からか細く聞こえた声に男が振り替えると、後ろ手に何かを持った恋人がいた。
「あくあさん?どうしました?」
「き、今日って、その……」
優しく尋ねると、あくあは男をチラリと見上げて逆に聞いてきた。
「……ああ、バレンタインデーですね」
「う、うん」
男がカレンダーを見て気づいたように答えると、あくあはそっと持っていたものを差し出した。
「その、手作りしたかったんだけど、時間作れなくて……」
見れば、確かに国内で有名な菓子店のシールが貼ってあった。
「でも、渡したかったから」
「ありがとうございます、嬉しいですよ」
男がにこやかに微笑んで受けとると、あくあはホッとした様子だった。
「来年は、て、手作りするから!」
「わかりました、楽しみにしてます」
あくあが手をぐっと握って宣言すると、男は頷いた。
「では、そんなあくあさんにこれを」
「……?」
男が自分の机の引き出しから小箱を取り出して、あくあに差し出した。
「なにこれ?」
「ネックレスです。ホワイトデーには早いですが」
あくあが箱を空けると、銀の鎖状の意匠のネックレスが出てきた。
「前に壊れてしまったと言っていたので、同じものではないですが、何にでも合わせやすいものにしました」
「あ、ありがとう……。大事にするね」
あくあから受け取って彼が付けてあげると、あくあは嬉しそうに首もとを触っていた。
「うー、あてぃしがあげる日なのに、また貰っちゃった」
「でも、あくあさんから貰えるものは何物にも代えられない、大切なものですから」
あくあが彼にそっと抱きついて不満を溢すが、彼は頭を撫でてそう答えた。
「折角なら、一緒に食べましょう。コーヒー煎れてきますから」
「なら、食べさせてあげる!」
「楽しみですね」
彼が部屋を出ると、あくあも慌ててついていくのだった。
2.天才魔女っ子の場合
「ほらほら、これがほしいなら何か言うことあるんじゃないのー?」
「ぐっ……」
ドヤ顔で勝ち誇る小柄な女性を前にして、悔しそうにする男。
「まさかとは思ったけど、シオンが人を頼るとは」
「ふふん。あんたをギャフンと言わせるためなら、手段なんか選んでられないってば」
数日前に手作りのチョコが欲しいかと聞かれ、そもそも作れるのか?と男が聞いたのが始まり。売り言葉に買い言葉でぎゃあぎゃあと言い合い、当日になってみれば、綺麗に飾られた小箱を持ってドヤる『紫咲シオン』の姿があった。
「そーれーでー?こんなに苦労して作ったお菓子があるわけですけどー?」
「……わかったよ、ごめん。欲しいです」
男が観念したように頭を下げると、シオンのドヤ顔がすっと引いて、可愛らしい笑顔になった。
「それでいいのよ。はい、ハッピーバレンタイン」
「ありがとう」
素直に受け取り、蓋を開けると大きさは少々不揃いながらも一つずつ並べられたチョコがあった。
「ま、まあ流石に完璧にとはいかなかったけど。初めてにしては上出来じゃない?」
「十分だよ、こんなにあるとは」
男が驚いたように言うと、シオンは少し顔を赤らめた。
「普段、なんだかんだたくさん世話になってるし?色々考えてたら分量間違えただけよ」
「……なるほど?」
ひとつ摘まんで口にいれる男。
「……うん、おいしい」
「当たり前よ、誰が作ったと思ってるの?」
言葉とは裏腹な安堵の表情のシオンを見て、普段なら煽る男も素直に誉めることにした。
「なら、お返しは張り切らないとな」
「ほー、精々失望させないでよ?」
「普段、誰の飯を食ってるのか忘れたとは言わせんからな」
軽い言い合いも、2人の顔は笑顔だった。
3.ポンコツ可愛い鬼っこの場合
「忘れてた」
「だと思ってました」
あっけらかんと言った鬼に男も当然のように頷いた。
「気づいてたなら言って余!」
「いや、欲しがるのもどうかと……。それに、この時期はめちゃくちゃ忙しそうにしてましたから、これ以上負担かけても悪いかなと」
男の言葉にぐうの音も出ない『百鬼あやめ』。
「たしかに、自分から欲しがるみたいになるのはあれか、なんか違うか」
「えぇ。それに、わざわざ特別感出さなくても、なんだかんだ贈り物しあってるじゃないですか」
「うん!この間のパンケーキは美味しかったな!また作って余!」
思い出して機嫌が良くなった彼女を見て、男も笑った。
「ちなみに、バレンタインデーで女性が渡すのは日本独自の風習なんですよ?」
「そうなのか?」
「ええ、元々日本には男性から女性へ物を贈るという風習がなかったらしく、キリスト教が広まる際に逆にしてみたら、徐々に浸透したのだとか」
「ふーん、難しいことは良くわからないけど、日本だけなのはわかった余」
実際海外では男性から贈ることの方が多いし、お菓子だけでなく花束であったり、貴金属類であることも多い。また、そもそもこのイベント自体も由来が諸説あり、お菓子会社の商法ではないかとも言われているが、真相は不明である。
「というわけで、私から贈り物です」
「んー?」
彼が差し出したのは大福が詰まった箱だった。
「見たことない……。これ、どこの?」
「私が作りました」
「え"」
変な声が出た。
「和菓子が好きでしたよね?なので、密かに準備してました」
「えぇ……」
何とも言えない顔で受けとる彼女。
「あれ、お気に召しませんでした?」
「ううん、そんなことない。でも、これじゃあ余が忘れてたのがなんか……」
落ち込むあやめ。
「なら、ホワイトデーに何か頂けたら嬉しいです。今から考えれば忘れないでしょう?」
「それでいいのか……?」
「もちろんです。楽しみにしてます」
あやめはそれでも何か考えていたようだったが、やがて頷いた。
「わかった。絶対御返しするからね!たのしみにしてて余!」
「はい、待ってます」
男の返事に満面の笑みを返すと、大福を一つずつ大切そうに食べるのだった。
4.悪魔の保険医の場合
「てっきり、『ちょこを食べて?』って言ってくるかと思ってました」
「なによー、そんな安直なこと、考えたけどさー」
「考えたんですね……」
目の前に置かれたチョコクッキーを見ながらそんな会話をする2人。
「お菓子作りは苦手って言ってませんでした?」
「細かく計ったりするのが面倒なだけで、やろうとすれば出来るわよ?人に作るなら尚更ね」
さくさくとした食感に甘すぎない味がちょうど良い。
「貴方も、私と同じで甘すぎるの好きじゃないって言ってたから。私の好きな感じにしたんだけど」
「ありがとうございます、美味しいです」
「良かった、たくさんあるから」
彼が食べる様子をニコニコと眺めるちょこ。
「……?どうかしましたか?」
「んー?美味しそうに食べてくれるの嬉しいなって」
「本当に美味しいですから」
その後も2人で色々話しながら手は止まらない。ちょこも少し食べていたが、ほとんど彼が食べるのをニコニコと見つめていた。
そして、それはちょこの作戦の内だった。
「なんか、暑くないですか?」
「んー?暖房効きすぎたかしら」
いつの間にやら、ちょこの黒インナーが消えており、手で扇ぐ仕草をする胸元の白い肌が開放的になっていた。彼もそれに気づいたが、視線がそこに吸い寄せられるのを何時もなら逸らそうとするのに、今日はむしろもっと見たいという欲求が湧いてきていた。
「どうしたの……?そんなに熱い視線向けられたら、ちょこも火照っちゃうわよ……?」
耳元に口を寄せて囁くちょこ。自然と胸元が近づいてくるが、むしろ彼女は彼に当てるかのように身体を寄せた。
「……クッキーですか?」
「ふふ、当たり」
彼が回らない頭で必死に考えて出した答えに、ちょこは笑顔で応えた。
「こよりちゃん特製の素直になるお薬、らしいわ?といっても、毒じゃないから安心してね」
「素直……?」
ちょこの言葉に首をかしげる彼。
「普段自制している欲求とかを、少しだけ出しやすくするんだって。特に、本人が強く我慢しているほど効き目があるんだって」
「……」
「ちょこのこと、欲しいの?」
「!?」
彼は思わず動揺した様子を見せた。
「そんなに見つめられたら分かるわ。もっと素直になればいいのに」
「……そうは言っても、むやみやたらに求めるのは、よくないですよ」
苦し紛れな返答にちょこは苦笑した。
「なに言ってるのよ。ちょこは悪魔よ?貴方の出してくれる欲は全部御馳走なんだから。食欲でも、性欲でも、ね?」
「……!!?」
そのまま彼に口づけをすると、彼は硬直した。
「……さっき、貴方も言ってくれたことだし。私からちゃんと言わないと、ね?」
そういうと、ちょこは上着を脱ぎながら彼に纏わりつくのだった。
「私からのプレゼント、たくさん召し上がれ?」
5.ホロライブ随一のコミュ力お化けの場合
「はい、あげる!」
良く通る声と共に差し出された小箱を受けとる。
「ありがとう」
「ちゃんと作ってきたかんな!味わって食べるように!」
「もちろん」
男が嬉しそうに答えると、『大空スバル』はその場でジタバタしだした。
「どうした?」
「いや、今更改まって手作りしてあげたの思い出したら、恥ずかしくなってきた」
「それだけ俺を大切に思ってくれたんだろ?むしろ、こっちとしては嬉しいが」
「わざわざ言うな!ぼやかしたのに!」
男の言葉に鋭いツッコミをいれるスバル。しかし、その顔は真っ赤だった。
「うー、御返ししなかったら怒るからな!」
「当たり前だろ、しっかり考えるから」
「なんか、お前ばっかり余裕そうで腹立つなあ!」
「どうすりゃいいんだよ……」
会話のテンポが良すぎるが、これも2人の相性ゆえか。
「んで?ちゃんとデートした流れで渡すってことで、1日使って。家に帰ってからってきたけど、このあとは?」
「うぐっ」
男の問いに若干詰まるスバル。
「これで終わりなのか?」
「……それ、貸して。あと、目を閉じてそこに立ってて」
「お、おう」
微妙に圧を感じながら、男が言うとおりにすると、スバルは男に渡した小箱からチョコを受けとる。形は全て小粒な丸い形のものだった。
「い、言っとくけど!」
「ん?」
「これは、おかゆから『こういう日にはやれ!』って言われたからだからな!」
次の瞬間、スバルはチョコを口に含むと彼に抱きつき、そのままキスをした。
「ンン!?」
「……」
舌を絡めることで、スバルからチョコが伝わる。だが、チョコの甘さよりももっと甘いものがあった。
「……ふぅ」
「おぉ……」
短くない時間が流れて、二人の距離が離れると、スバルの顔は真っ赤だった。
「はい、終わり!あとは、自分で食べt……ひゃあ!?」
スバルが腕を解こうとした瞬間、今度は彼から抱きつきキス。そのままホロ内でも評判のスバルのお尻を揉みしだくと、甘い声が漏れた。
「ちょっと!?何して……んっ!?」
「あんまりにも可愛すぎる。ちょっと我慢できん」
真っ直ぐ目を見て言われて、スバルの方が視線をさ迷わせた。
「い、いきなりなんだよぉ」
「スバルもこうなるって分かってただろ?初めてじゃないんだし」
「そ、そりゃあそうかもだけど……」
そう言いながらも、スバルも腕を離すのを止め、いつの間にか自分の方から強くしがみついていた。
「こういうとき、ズルいよなぁ……。格好いいって思っちゃうスバルも大概だけどさぁ」
「スバルはいつでも可愛いけどな」
「だーかーらー!それ言うなって!はずいんだわ!」
照れ隠しの大声も彼には見透されているのだろう。
「どうする?」
「……腰抜けた、連れてって」
「おう、しっかり掴まれよ?」
「……うん」
小さな声でこの先を要求すると、スバルはそのまま彼に連れられて寝室へと入っていくのだった。
私のホロ最推しはスバルちゃんです。