今や人族以外の多種多様な種族が共存する世界において、実は昔から存在していた種が明らかになったケースも実は結構存在する。
特に日本において、古来から伝わる種として有名なものは狐、猫、狸、犬等の獣人だが、昔においても伝説の生き物として扱われていた者としては『鬼』がいる。
頭に生えた角が特徴的で、純粋に圧倒的な力を持ち、生命力も強靭、享楽的な性格で宴が好きと明るい性格が持ち上げられる一方で、粗暴かつ強欲な生物として、悪役として扱われることもしばしば。お酒が好みでそれを基とした話も幾つか存在するほどだ。
また、鬼と言えば人拐いの逸話が幾つかある。目的としては食糧としていた説がまあ大半ではあるのだが、特に女性の鬼が若い男を拐って誘惑し、そのまま子を為す事が目的だったとされる説も存在する。真偽のほどは定かではないが、現存する鬼の大半に人からの遺伝と考えられる特徴が多くあるため、信憑性はそこそこあるようだ。この事から、鬼は特に女性の方が性欲に関しては強いのではないかと言われている。
さて、そんな鬼に関してだが、ホロライブにも1人所属している。2期生の『百鬼あやめ』である。二本の刀を背負い、着物を着た見た目は少女だが、実は1500歳と超高齢であり、隔世と呼ばれる現世とは違う場所にある学校において生徒会長をしている程の優秀な人だ。ただ、普段の配信やホロメンからの情報によると、随分と抜けた性格をしているようであり、本当に生徒会を仕切れているのか不安がよぎるが……。
高齢とは言うが、本人は鬼としては若輩と言っており、実際若者に流通するものへの適応は極めて高い。アイドルとしても非常に人気であり、リスナー(百鬼組)からは『お嬢』と呼ばれている。
「はい、今日も配信観てくれてありがとー!おつなきりー」
恒例の挨拶で配信を閉じたあやめは、いつもの椅子の上でうーんと身体を伸ばした。
実は色々あって現在服装が乱れており、それを取り繕うために、今日の配信は機材の不調ということで立ち絵を使った雑談にしていた。それを思い出したあやめは少し顔を赤くしていた。まあVtuberの機材不調は往々にしてよくあることなので、誰も気には止めていなかったが。
「もー、こういうのはよくないです余、うんうん……」
誰にともなく呟いたあやめは、よしっと椅子から立ち上がると部屋を出た。
「お疲れさまでした。夕御飯はうどんです」
「おおー!いつもありがとうだ余」
そのまま隣室へ向かえば、テーブルの上に湯気を立てて置かれた丼と、それを用意してくれた彼がいた。
「って、その格好で?」
「ん?なにか変ですかね……?」
彼は今時珍しい割烹着を着ていた。
「いや、変ではないですけど、珍しくないかなって」
「先程、着ていた服をどなたかに放られてしまったので、やむ無く……」
「あー……、左様でしたか……」
彼の言葉に視線を逸らしたあやめ。良く見れば、彼の首もとや肩口に赤い痕がついていた。
「も、もう!恥ずかしいから思い出させないで余!」
「いや、私は何も言ってませんが……」
「そもそも配信前ギリギリまでしちゃだめって言ってるでしょ!」
「むしろ、私は止めた側なんですが……」
「分かってる余!」
あやめの言葉に対する彼の返事で完全に自爆したあやめ。
「の、伸びちゃうから食べよう!いただきまーす!」
「はい、どうぞ」
誤魔化すように席に座って食べ始めたあやめを見て苦笑すると、彼も自分の分に手をつけるのだった。
「ふぅ、おいしかった余!御馳走さまでした!」
「お粗末様でした」
あやめが食べ終わると同時に彼は二人分の食器を持って片付け始めた。
「あっ!余も手伝う!」
「大丈夫です、すぐ終わるので休んでてください」
慌てて立ち上がろうとしたあやめを制して、ささっと洗い物を始めた彼を見て、あやめは諦めて座り直した。
「いつもだけど、早すぎるってばー。余も少し位手伝いたいのに」
「休みの日ならともかく、配信したばかりの人を動かしたら駄目でしょう。何のために私が居るの?ってなりますし」
ぶーっとむくれるあやめだが、彼はいつも通りといった様子。
「それはそうだけど……。隣同士で手がくっついちゃった♥️とかしたいじゃん余!」
「洗い物が遅くなるのは駄目ですね」
「そーいうところは真面目なんだから」
あやめもこれが我が儘だということは分かっているので、特に食い下がることはなかった。
「お布団は?」
「もう敷いてありますよ。お風呂も水は張ってるので沸かせばすぐ入れます」
「いつもながら完璧だなあ。お礼に背中を流してあげる余!」
「おや、配信後はのんびりしたいっていつもなら言うのに、珍しいですね」
彼が不思議そうに言うと、あやめは少しだけ顔を赤らめた。
「……さっき、ちょっと不完全燃焼だったから、早く続きがしたいんだ余」
「……え、さっき私かなり搾り取られたんですが?」
身体をくねらせるあやめを見て、彼は少しだけ顔を青くした。
「だって、お預けって言われたもん」
「そもそも時間無いのに続けたそうにしてたから、あの時はそう言うしか無かっただけで、あの時点で普段より回数多かったですよね?」
あやめは鬼としては、性に関して奥ゆかしい性格をしており、付き合いの長い彼を相手にしても裸になることに恥じらいを未だに持っていたりする。が、それはそれとして、始まってしまうと興が乗ってどんどん求めてしまうという二面性もある。
「最近、なんだか皆色々ノリノリみたいでさー。集まって話すとそう言う感じなんだ余」
「皆さんというと、同僚の方々ですか?」
「うん。うちらで言うとあのスバルですら、たまにだけどそういう話するくらいなんだから」
「……おぉ、それは凄い、のかな?」
あやめと同期の元気そうな女性を思い出して首を傾げる。
「だけど、余はそんなに普段からガツガツしてなかったでしょ?」
「毎日ではないですが、2、3日置きにしてたら十分だと思うのですが……」
「人間様たちはそうかもだけど、本来鬼って種族はそれこそ毎日しててもおかしくないんだ余。といっても、余はそんなにしなくても今で十分幸せだけどね」
隣に来た彼に抱きつくあやめ。
「ただ、最近貴方としてたら我慢できなくなってきちゃって……」
自分のお腹を撫でながら見上げるあやめの目は潤んでいた。あまりの可愛さに思わず目眩がしそうになる彼。
「お腹の奥が疼くというか、もっと欲しいって」
「えっと、それは……?」
彼が遠慮がちに聞くと、
「母様曰く、その、本能的に貴方を伴侶として求めてるんだって……」
「は、伴侶ですか」
ビックリして固まる彼にますます強く抱きつくあやめ。
「鬼にとって、異種族の相手を娶るのはおかしな事ではないんだけど、相手に求める条件として、身体の相性は大切なんだ余。一発で分かることもあるけど、普通は何度も身体を重ねて馴染ませていくものなんです余」
「つまり、私の身体とあやめさんが馴染んだ、ということですか?」
「うん。そもそも、相性が駄目なら最初にしたときに拒絶しちゃうんだって。鬼にとって、相手の精はお酒と同じだから……」
あやめは内容が内容だけに恥ずかしそうにしていたが、彼からは離れようとしなかった。
「だから、貴方とした後にフワフワしてたから、きっと大丈夫って思ってたんだけど、その、ここまで馴染むとは思ってなくてですね」
にっこり笑うあやめ。だがよく見れば、目が少しだけ据わっていた。
「さっきも言った通り、貴方の精は余にとっては最高級のお酒と同じ。鬼にとってお酒って言うのは無くてはならないものなんだ余」
「馴染むってそういうことですか。なんだか、ちょこさんが前に似たような事言ってませんでしたか?」
「あながち間違ってない余。悪魔も鬼も、精を得る事は大事だからね」
そういうと、徐にあやめは彼を抱えて立ち上がった。
「うわっ!?」
「くっついてたらちょっと我慢の限界が来ちゃった……。シよ?」
「あの、お風呂は……!」
「終わった後に一緒に入る余」
彼の身じろぎもなんのその、見た目に反した力で絶対に逃がさないという強い意志でもって彼を連れていくあやめ。肌はすでに赤くなっており、この後の展開に期待していることがありありと見て取れた。
「余が動くから安心して、身を委ねて、ね?」
そのまま彼を布団に転がして跨がったあやめの爛々と光る目を見て、彼は無事に朝日が拝めることを祈るしか無かった。
その日は結局、あやめの限界が来るより先に彼が気絶してしまい、慌てたあやめの看病によって何とか回復したが、その日以降、ずのー印の強壮薬を常飲するようになったという。それにより、ますますあやめの求めに応じることが出来るようになってしまい、どんどんと深みに落ちていってしまうのだが、それはまだまだ先のお話。