滑舌の再現がだいぶ甘いので、大目に見てください。
「○✕△□※!!?」
「ごめん、落ち着いて話してくれるか?」
部屋に突撃してきて、何かを早口で捲し立てた女性に向けて、部屋の主たる男は首をかしげて答えた。
「……んんっ、今日は暇ですか?」
「あ、そう言ったのか」
「そ、そこまで分からなかった!?」
「興奮してたみたいだから、滑舌終わってたよ」
彼の反応に愕然とする女性。
かなり白よりの薄い紫の髪を短めに揃え、服装も白を基調とした服で揃えているため、美人な顔つきも相まって少し儚げな印象を受ける。だが、先程の声もそうだが非常に通る声を持っており、しかし緊張していたり興奮していたりすると滑舌が非常に弱くなるので、結果として何か分からない音が聞こえるという事態になることが多い。そんな彼女は『hololive DE_VIS』からデビューした新ユニット『ReGLOSS』の番長、『轟はじめ』である。
「あれ?というか、今日は収録だって言ってなかった?」
「それなんだけど、予定間違えてて、数が1個少なかったんだ」
「だから、夕方に帰ってきたのか」
頷くはじめ。
「青たんもりりかも予定あるって帰っちゃったから、折角ならって事で会いに来たで」
「まあ、家でゴロゴロしてただけだし構わんが」
「良かった」
勝手知ったる様子で上着をハンガーにかけながら、嬉しそうに笑う彼女。その間に、はじめ用にと置いてあるコップを用意しておく彼。
「今、うちにお茶しかないが」
「いいで。後で買いにいこう」
そのまま特に何もなく時間が過ぎる。時折はじめが同期や先輩ホロメンとのやり取りを話し、彼が相槌を打つ。なんともゆったりとした時間だった。
「そういえば」
「ん?」
何かを思い出したように言うはじめ。
「リグロスでこの間ご飯行った時に、ちょっと下ネタ話で盛り上がったんだけど」
「お、おぉ。いきなりだな」
「そん時に、りりかに妙なこと言われたで」
「社長さんに?何を?」
「『ばんちょーはぜったいにわからされるのが似合う!』って」
「……は?」
とんでもないことを言い出したはじめ(と社長)に呆けた顔を向ける彼だった。
「あの、それ意味わかってる?」
「んにゃ?言われたときはわからなかったで。でも、爆笑してた青たんにきちんと聞いてきたから、今はわかりゅよ」
「ああ、そうなのね……」
彼女の返事に何とも言えない感想を抱く彼。
「そもそも、なんでそんな話題に……?」
「青たんの家で集合して、オフコラボしたことあったでしょ?」
「だいぶ前だね、初期の頃じゃなかった?」
「そうそう。その時に、青たんの持ってた薄い本?ってのが見つかったーってなったじゃん」
「あー、そんなこともあったね」
彼は頷いた。
「その時はまあそんなに触れなかったけど、りりかが急にその内容について聞き出して」
「青さんが奏さんの耳塞いでそう」
「むしろ、きゃなでぃも興味津々だったで」
「ああ……」
「んで、そんなこと言ってたら、りりかにさっきのこと言われてさ」
「そもそもなんでわからせ?」
「はじめが番長やってて、普段から結構強気な発言多いから、逆に男の人にガッて押さえ込まれたりするのが似合いそうってのが理由だって」
「な、なるほど」
はじめは飲み干したコップを下げながら彼の隣に腰を下ろした。
「貴方はどう思う?」
「え!?それ聞くの?」
「そりゃそうでしょ。貴方以外にこんなこと聞ける人おりゃんで。じ、実際にうちを抱いた人も貴方以外おりゃん」
「う、うーん……」
はじめに聞かれた彼は考え込んだ。
「ま、まあ言われてみたら、その、割と色々と責めてみたりしたそうだけど、される側に回るとされるがまま……?」
「ぐっ、あっさり言ってくれるで」
心当りがあったのだろう、はじめも同意した。
「りりかに言われたときに、はじめもそう思っちまったから、なにも言い返せない……」
「あ、自覚あったんだ」
「しょーがないだりょ!あんなにワケわからなくなるなんて、思ってなかったし……」
顔を赤くして言い返すはじめ。
「でも、貴方だってうちが責める番だと喘いでばかりだで」
「なんか、小動物みたいで可愛いなって」
「かわいいはともかく、小動物ってなんだ!?」
彼の肩をポカポカと叩く。
「いや、でも急に上目遣いとかされるとぐっと来るから、そういうのもギャップで良いと思うけどなあ」
「誉めりゃれてるのか馬鹿にされてりゅのかわかりゃんで……」
「今は恥ずかしがってるのはわかりやすいけど」
「言うなぁ!ばか!」
完全に顔真っ赤で茹で上がってしまった。
「うー、顔冷ましたい……。お風呂借りていいか?」
「ん、ならお湯沸かしてくるから着替え取ってきな?前に置いていったのが仕舞ってあるから」
「手荷物しか持ってきてなかったから、貴方のシャツでも借りようかと思ってたけど、それなら助かるで」
はじめは立ち上がった。
「貴方は?もう寝るだけ?」
「そうだな。はじめは泊まるんだろ?」
「もちろん。折角だし、今日はうちがベッドの上で負かせてやるで」
「さっきの話の流れでなんでそんなに強気なんだ……?まあ、期待しておくよ」
「ならちゃちゃっと行ってくるで」
はじめは彼の頬にキスをすると、彼の寝室へと向かっていった。彼も、それを見てお風呂の準備を始めるのだった。