魔法って便利で良いですよね。
ホロライブには多種多様なアイドルが所属しているが、その中でも『クソガキ』と呼ばれる者が何名かいる。
リスナーやホロメンなど、他者を煽るのが上手く、まるで子供っぽい振る舞いをするのが似合っていることからそう呼ばれているわけだが、その始祖は誰なのかと言考えると、恐らく2期生の『紫咲シオン』だという人は多い。
種族としては魔女であり、純粋な人とは微妙に違う。本人は色気溢れる大人と豪語しており、飲酒配信等もしたことはあるが、見た目はロリの美少女である。脊髄反射的なトークが多く、配信の雑談枠だと話題が多方面に跳び散らかすものの、なぜか収束するというある意味羨ましい才能を持っている。他人に対してウザ可愛いと言われる絡み方が多く、特に同期のマリンメイドとはホロライブ内でも屈指の人気なコンビとして日々煽りあい、てぇてぇを供給している。
海外の超有名難関大学卒と自称しており、割とネタにされているが頭の回転は早く、かなりの負けず嫌いな性格から努力を惜しまないタイプである。見た目と裏腹な大人な一面と言われることもある。
さらに、先輩後輩問わずホロメンから好かれやすいタイプであり、人たらしの才能に秀でていると言われることもある。本人も割と気安く求婚、結婚(重婚)等の発言をするのもこれに拍車をかけているだろう。
そんな彼女だが、デビュー当初と比べると大人になったと言われることが増えた。特に同期からは『きちんと話を聞くようになった』『行き当たりばったりな配信が減った』と割と明け透けに言われたりもしている。もちろん慣れや成長もあるのだろうが、ホロメン達はそれだけが理由ではないことを知っていた。
「もー!なんで勝てないのよ!」
「いつまでも負けてばかりいられるかっての」
画面には倒れた自分のキャラと、隣で勝ち誇る相手のキャラが映っていたが、見ていられないとばかりにテレビの電源を落としたシオン。
「あっ!いきなり消すなよ!」
「だーっておんなじ画面ばっかりで見飽きたもん。というか、そろそろお腹空いたんだけど!」
「……ったく。今準備するから待ってろよ」
「はーい」
隣に座っていた男がキッチンへ向かうと、シオンは2人分のコントローラーをまとめて片付けて、テーブルの上を退けた。タイミングよく彼が二人分の皿を持ってくると、そのまま受けとる。阿吽の呼吸とでもいうべきスムーズさだった。
「あんまり材料なかったから、サラダとオムライスだけだな」
「あんたのオムライス好きよ。シオンのより美味しいし、玉ねぎ多めなのも嬉しい」
「あんまり食べると腹壊すから程ほどにな?」
「女の子に腹壊すとか失礼って知ってる?」
「前にやらかしたって配信で聞いてるんだが」
「なんのことやら~?」
そっぽ向いて誤魔化すシオンを横目に見ながら、テキパキと支度を進める彼。
「さ、食べるか」
「いただきまーす」
小柄ながら、しっかりと食べていくシオン。彼はそれを見るのが好きだった。むしろ、そのために彼女の好物を美味く作る努力をしていた。
「うーん、相変わらず美味い!」
「そりゃどうも」
「あ、風呂の掃除は終わってるから、直ぐに入れるわよ?」
「ん?いつのまに」
「あんたが買い出しにいってる間によ。世話になりっぱなしは良くないでしょ」
「……そっか。ありがとな」
「ふふん、もっと誉めてもいいのよ?」
ドヤるシオンだが、顔は少し赤い。彼はそれに気づいていたが、何もいわなかった。
「なら、食べ終わったらシャワー浴びてくるわ。最近暑いし、汗流さないと」
「分かったわ。洗い物しておくから流しに置いておいてね」
「りょーかい」
お互い頷くと、食べ進めていくのだった。
「あ"ー、さっぱりした」
「なんでそんな変な声なのよ……、って、それ!!」
食べ終えた2人が予定どおりに行動し、食器を洗い終えたシオンがリビングに戻ってのんびりしていると、下着だけ身に付けた彼が、ぐでーっとしながら洗面所から帰って来た。その妙な声に怪訝な顔で振り向いた彼女だが、彼が手に持っていたアイスを見て目を輝かせた。
「買い出しついでに買っておいたぞ。シオンの分もあるから、シャワー浴びたら食べるといい」
「行ってくる!」
彼の言葉が終わらぬうちに、ピューッと服を脱ぎ捨てながら風呂へ突撃するシオン。当然下に来ていた紫の下着等も丸見えな訳だが、彼がそれを眺めていると服が独りでに浮き上がってそのまま洗面所へ向かっていくのを見ると、ため息をついた。
「わざわざ変なことするくらいなら、向こうで脱げば良いじゃねえか……」
向こうで恐らく自分のした行動を恥ずかしがっているであろうシオンが、そっと魔力で動かしたのだろうと予想して、彼は小言を言うのを止めてやろうと思った。
「出たわ!アイスありがと!」
「おう」
足音に振り返った彼は、アイスを持ってお礼をいうシオンを眺めた。
「な、なによ」
「……相変わらず、随分色っぽい物着てるなって」
「彼の家でシャワー浴びるってのがどういう意味か、今さら言うまでもないじゃない。なら、それなりに備えるのも女のたしなみよ」
彼と同じく下着のみだが、その覆っている面積が少し狭い。シオンの幼女体型には少々大人びすぎているようにも思えるが、彼女の勝ち気な表情と雰囲気がむしろその魅力を引き立てていた。
「漫画かなんかで読んだけど、こういうアイスって舐めたりするとエロいんだっけ?」
「あー、別にそういうつもりじゃなかったんだけど……」
彼女が持っていたアイスを舌先でなぞるように舐める。少し垂れた液体が口元につくが、それもまたナニかを想像させた。
「ふふっ、分かりやすいわねー」
「あのなあ、無反応だと怒るくせにその言い方はずるくないか?」
「当たり前よ。シオンがこんなこと、あんた以外にするわけないじゃない。それで無反応なんて失礼にも程があるわ」
「どう転んでも俺が火傷するじゃねえか」
「なら言い返せばー?」
ケラケラと楽しそうに笑うシオン。
「それとも……。ふふっ、シオンを理解らせてみる?」
そのまま彼の隣に座ると、耳元に顔を寄せて囁いた。
「……珍しいな、随分と直球じゃんか」
「さっき、ゲームでボッコボコにやられたから、負けたまんまは嫌なのよ。それに、なんだかんだ久しぶりだし」
彼の反応が予想通りだったのか、シオンの顔は笑ったままだった。
「ま、あんたがシオンを理解らせるなんて出来るとは思えないけどー?」
「……ったく、わかったよ。なら精々、男を煽ったらどうなるか、その身体でお勉強してもらうとしますか」
「きゃー、おしえこまれちゃうー」
「なんでそこだけ棒読みなんだよ……」
キャッキャとふざけるシオンと彼。アイスの棒をさっとゴミ箱へ投げ捨てると、彼はシオンを抱き抱えた。
「んじゃ、お仕置きの時間だな」
「ふふん、絶対に負けないんだから」
「……その手のゲームだと、盛大なフラグな台詞だけどな」
シオンも当然のように彼の首に手を回すと、そのまま2人で寝室へと向かうのだった。
ちなみに、寝台上のダイヤグラムは五分であるが、どちらも攻めているときは強キャラ、守りに入ると弱キャラな上に、シオンが彼に体格差で分からされるシチュエーションが好きと分かってからは、彼がやや有利になっているようである。