「……確認してから行動するって知ってるかい?」
「ご、ごめんなさいにぇ……」
仁王立ちする男の前で、しゅんとする女性。
「たまたま僕が駅に間に合ったから良かったけど、チケット忘れてたら収録行けなくなるところだったんだから。配信楽しいのは分かるけど、前日までに準備はちゃんとしておこうね」
「……35P達にも言われたにぇ」
「誰でも言うと思うよ。前から予定話してたのに、あんなギリギリまで耐久してたんだから」
ホロライブ0期生もとい、ホロライブ1のPONといえば、『ロボ子さん』か『さくらみこ』だと大体のリスナーが答えるだろう。ロボ子さんが突発的なPONだとすれば、さくらみこは計画的に考えたことが破綻するPONだ。どちらが上なのかはなんとも言いがたいところだが。
「も、元々この日にやる予定だったんだにぇ」
「知ってますよ。その後収録入ったのもね。なら、そこは折り合いをつけるべきだよね?」
「うぐっ」
配信者としてのプライドが耐久を譲れなかったのは想像できるが、仕事も仕事である。
「まあ、現場でもマネさんから言われたみたいだし、これ以上は言わないけど。あとは雑談で35Pさんに笑われてきなさい」
「なんでだよぉ!そこは慰めるところじゃねえのか!」
「いや、そこは反省しなさいよ」
思わず吼えるみこにつっこむ男。
「うう、彼氏が冷たいにぇ……」
「……ホントに冷たくしようか?」
「じ、冗談!冗談だから!止めて!」
ジトーッとした目を向ける男に慌てるみこ。
「全く、とりあえずお風呂入っておいで。汗かいたでしょ?暑かっただろうし」
「うん。……あの、今日はありがとにぇ」
「はいはい、いつもの事だから」
手をプラプラと振って部屋に戻る彼を見送ると、みこは荷物整理を再開してからお風呂へと向かうのだった。
「ただいまー」
「ん、疲れ取れた?」
「んー、とりあえずさっぱりはしたにぇ!」
少しぬるめのお湯に浸かることで身体を伸ばしてきたみこ。胡座をかいていた彼の前に座ると、彼も慣れた手付きでドライヤーを取り出して、みこの髪を乾かし始めた。
「この時間が至福だにぇ……」
「いつも言うね」
「女が髪を触らせるってのは心許してる証拠なんだよ?」
「はいはい、ありがとね」
彼の膝をポンポンと叩くみこ。
「今日はかなーり歩いたにぇ。いくらダンスレッスンしてるとはいっても、体力少ないって感じたよ」
「というと、今日の同行者は?」
「スバちゃんとぼたんたん。2人ともずーっと元気だったよ」
ロケの話を楽しそうにするみこ。
「……髪終わったよ。そのまま肩やってあげるから、首下げて」
「いいの!?ありがとー!」
白い首筋を差し出すようにしながら、嬉しそうに従う彼女。彼はその細い首筋を優しく探り始めた。
「……ここらへん?」
「お"お"……」
「何て声出してんのさ」
ピンポイントでヒットしたのか、謎の声を出しながら呻くみこ。彼も苦笑しながら周辺も含めて擦る。
「あー、気持ちいいにぇ……」
「こっち少し固いね。肩掛けは片方だけにしないようにね」
「はーい……」
「はい、背筋伸ばして……」
「お"お"お"!?」
「だから何て声だしてんの」
「いやこれ効く……っ」
「というか、固まりすぎだよ。もう少し柔軟しようね?」
「わ、分かったにぇ……!」
「はい、お疲れ様」
「はーっ、はーっ……」
「ダンスレッスンの後より息きれてない?」
揉みほぐしと柔軟により、みこの身体は癒された筈だが、少々ハードだったようだ。
「お風呂はいったのに、なんかまた汗かいた気がする……」
「もう一度入るかい?」
「んー、あとで……」
彼の問いかけに、しかしみこは首を横に振った。
「にぇー……」
そのまま彼にもたれ掛かるようにして甘えるみこ。
「今日は随分と甘えん坊だ」
「そうだよぉ、今日は甘えたい気分なの……。ね、チュウしよぉ?」
彼が後ろ抱きで受け止めたのを感じると、そのまま首だけで振り返ってキスをねだる。
「んー……、ふぅ……」
「ホントに珍しいね」
息をつくみこ。
「いやぁ、みこは幸せだなぁって思ったら、なんか甘えたくなっちゃったにぇ」
「急にどうしたの」
「何かあったとかじゃないよ。ただ、こんな風にだらけてもいい相手がいるって凄いなって」
「なるほど」
「女子校通って、男の子いない環境ばかりの中でギャルゲとかエロゲばっかりやってた身としては、なんか少し憧れてたりもしたしさぁ」
「ああ、それこそ二次元の話ってやつか」
「そうそう。まさか、自分にも起きるなんて思ってもいなかったにぇ。それを言ったら、そもそもアイドルやってるってのも不思議だなって思うこともあるにぇ」
「人生ってわからないものだね」
「そうだにぇ……」
時折口付けをしつつ、他愛のない話でのんびり過ごす2人。
「……なーんか、ムラムラしてるけど、今のこの感じもいいなって」
「ムラムラしてたのかい」
「そりゃあこんなに近くで抱きつかれてたらするに決まってるにぇ。でも、したいって程じゃなくて、くっついてるだけでホッとするのも悪くないなあって」
「なるほどね」
「おしりに固いの感じるから尚更かにぇー」
「まあ、それは許してくれ」
「みこの身体はナイスバデーですからにぇー」
実際みこの体つきは女性らしさに満ちている。付け加えると、平熱が高いらしく、彼専用の湯たんぽみたいになっていたりもする。
「ふふっ、もう少し堪能したら、スッキリさせたげるにぇ」
「あれ、しなくて良かったんじゃないの?」
「しようと思えば出来るにぇ。貴方が求めてくれるなら、それは答えないと」
「……言い訳?」
「そそそ、そんなことないにぇ!?」
「……はいはい、ならそういうことにしておくよ」
わざとらしい慌て方をするみこに、苦笑しながら抱きつく腕を強める彼。
「んっ、ギュッとされるの、嬉しい」
「……期待しておくね」
「……ふふっ、任せておくにぇ」
彼の言葉に少し顔を赤らめて頷くと、そのまましばらくゆっくりとする2人だった。
話は変わりますが、とうとう2期生が欠けてしまいましたね……。
我が最推しのスバルちゃんの言葉がかなり重くて、私もかなり辛かったですが、それでも彼女、そして2期生達の明るい未来を応援したいと思います。