リクエストしてくださった方々、本当にありがとうございました!
ご希望に添えているかは不安ですが、楽しんでいただけたら幸いです。
???「どこからか降ってきた電波!これはきっと実際に起きたに違いない!ということで、体験談ですよー!むふふ~♥️」
1.おっとり穏やか自然の守護者の場合(EN)
(麒麟にもあった発情期、その一部始終とは……)
セレス・ファウナは海外における伝説の生物である麒麟である。日本にも鬼や妖怪などの伝説の生き物は数多く存在するが、一様に言えることは詳しい生態が不明であることである。そもそも分類すら怪しい物も多いし、そこから生態を調べるとなると、はっきり言うと研究のために存在を捕らえることすら困難な希少性の高い物だらけといえる。たまたま見つかった存在が、たまたま人間に好意的で、たまたま研究させてくれたりする幸運が重なったりした時に、初めて取っ掛かりが掴めたらいいな位の幻獣の1人、それがファウナである。
さて、そんなファウナだが幸運にも1人の愛する人を捕まえてからといえば、日々の配信活動もますます捗り、たまの日本への来日中は彼との濃厚な愛を育んでいる。もちろんそれに不満を感じたことはなく、今回の来日もまた、そのように過ごすつもりであった。
『……身体が重い?自然じゃないですね……』
今日は珍しく彼女の方が休みであり、部屋主の彼の方が仕事で部屋に居ない状況だった。もちろん昨夜は無理のない範囲で彼とイチャイチャしたし、朝もまるで新妻であるかのように彼を見送った。その後、同期達とチャットで会話しつつ、部屋でストレッチを行っていたところ、先の異変を感じたというわけだ。
『熱、はなし。なのに、身体は熱い……?』
自己分析をするが、これといった病気の症状とは一致せず、首を傾げるファウナ。
『とりあえず横になりましょうか……』
ここで無理をしてもしょうがない、と判断し、彼のベッドへ横たわる彼女。
『……!?』
しかし、次の瞬間身体に走った衝撃に、思わず弾かれたように立ち上がる。
『……???』
一瞬視線を周りに向けるが、特に何もないことを確認、その後、恐る恐るベッドシーツに指先を触れさせると、
『……(ビクビクッ』
再度衝撃が走った。
『なんででしょうか……?しかも、今のはまるで、彼に抱かれているかのような……?』
その衝撃に甘いものが混じっていることを感じたファウナ。さらに、身体の熱が高まっていることも感じた。
『んー……、これは、なんでしょうか……』
分からないことは調べた方が早い、ファウナは素早くネットの検索で簡単に症状や反応を打ち込んだ。その結果、
『……induction of estrus(発情誘発)?』
見たことない言葉に眉を潜めることとなった。
『……発情期ですか。麒麟にもあるんですね。今まで知らなかったです』
調べていくと、ファウナが感じていた熱は、相手を求める渇望感が引き起こしていたんじゃないか。ベッドに触れた際の衝撃は、彼が密接に触れているものを感じた身体の驚きからくる反射的な反応だとのこと。
『……つまり、彼が欲しいと思っているということですか?』
ファウナは決して馬鹿ではないが、この場合は単純な言葉の方が理解しやすかった。
『おー、なら、それは自然なこと、ですね?早く帰って来て欲しいです』
彼の帰宅予定まではまだ時間がある。それまで、高まるドキドキをどうすべきか、ファウナは考えるのだった。
一方の彼はというと、
「……!?」
仕事が終わり、家路についている最中から物凄い寒気が走っていた。
「……風邪でも引いたかな?」
まだまだ残暑厳しい季節、部屋の内外で寒暖差が激しい時期なので、風邪を疑っていた。
「……ん?」
しかし、家に近づくにつれて目に見える形で異変を感じた。
「……なんか、甘い匂いする。それに、この辺こんなに緑だったっけ?」
道中の木々や家に植えられている草花が異常に成長しており、その匂いが甘く漂っていた。
「この辺で獣人でも暴れたのかな?」
冒頭でも上げた伝説の生き物や獣人でも特に力の強い者なんかは、興奮すると周りの環境に影響を及ぼすものもいたりする。
「……うちに近づくとますます凄い。え、もしかしてファウナさん?」
考えながら家に向かえば、ますます強まる匂いと影響力。さすがに自宅にいる麒麟さんを疑わざるをえなくなっていた。
「連絡はなし。朝は特に変わりなかったはず……」
思い起こしてみても特にこれといった違いが浮かばない彼。
「……とりあえず帰るか。万が一ってこともあるし」
立ち止まっても仕方ないので、家へと向かう彼。
家に到着し、ドアの前。
「ふぅ……、よし!」
既に周りの環境が凄いことになっており、最早彼女の仕業であることは疑いようもない。彼も分かっていたので、ドアの前で気合いをいれるしかなかった。
「ただいまー……、うわっ!?」
ドアを開けて、中へ。声を掛けてドアが閉まった瞬間、部屋から無数の蔦が飛び出してきて、彼の手足を拘束した。
「な、なんだこれ!?ちょっと!?うわわっ!!」
そのまま引きずりこまれる彼。行き先は彼の寝室だった。どうやら、ファウナが彼の部屋に置いていた観葉植物が蔦の正体らしい。
『あー……、やっと、帰って、きましたね……』
『ファウナさん、あの、どうし、た……』
明かりが僅かに付くだけの薄暗い部屋、そこに鎮座するベッドの真ん中に座り込んだ彼女。彼の存在に気づいたようにノロノロと顔をあげ、その目を見た瞬間、彼は言葉を失った。
『ずっと、待ってました……』
目は爛々と光輝き、目に見えるくらいの謎のオーラを身に纏う彼女。衣服は既に脱ぎ去られており、豊満な肉体を全てさらけ出していた。
『あの、どうしたんですか……?』
『落ち着いて、聞いてくださいね……?』
『落ち着くのはどちらかというとファウナのほう……っ!!?』
蔦に軽く放り投げられ、彼女のそばに着陸した彼。しかし、次の瞬間、再度手足に絡み付いて拘束されたかと思いきや、にじり寄ってきたファウナに馬乗りになられたまま口を塞がれた。
『……ふぅ』
『あ、あの?』
満足げに笑うファウナをみて、再度恐る恐る声をかける彼。
『私、発情期みたいです』
『……発情期?』
その口から初めて紡がれる言葉を聞いて、耳を疑う彼。
『えと、麒麟って……』
『私も、なってみて初めて知りました。朝、貴方を見送ってから、ずーっと身体が熱くて……』
身をくねらせるファウナに合わせて、むせ返るほどの熱気が溢れだす。
『熱はないんですよ?調べたら、獣人特有の発情期にありがちな症状でした』
『な、なるほど……』
頷く彼だが、空気に当てられたか汗が止まらない。
『おまけに、このベッドに寝ようとしたら、貴方を感じてしまってこの有り様です』
『それは……』
うねうねと動く蔦を見て、言いたいことを察した彼。
『なので、ずーっと待ってました。でも、貴方に迷惑かけないために、この部屋で我慢してました。誉めて欲しいですね?』
『あの、その割には結構漏れだして……』
彼の細い反論は、即座に唇を塞ぐことで黙らせるファウナ。
『貴方が、私を落ち着かせてくれたら、鎮まると思います。自然なこと、ですね?』
『えーっと、それはつまり、今から?』
『もちろんです。今日は夕飯を外で食べてくると言っていました。つまり、今の貴方は、体力に、満ち溢れていますね?』
『あの、仕事で疲れてることは……』
『それと、これとは、別ですね』
『アッハイ』
会話が成り立っているようで成り立っていないことを、彼は理解してしまった。
『安心してください。私は、今から貰う貴方の精気で、満ちる予定です』
『そ、それは僕のほうが大丈夫ではない……!』
『たくさん、ご奉仕、しますから』
すでに準備万端の肢体を淫らに揺らしながら、ファウナは妖しく笑うのだった。
「イタダキマース♥️」
本人感想:ゴチソウサマ、デシタネ?
2.原点にして頂点の場合
(ライブ後に控え室で高まりすぎちゃって……)
「お疲れさまでしたー!」
「お疲れさまでした」
ときのそら周年ライブといえば、ホロライブの、そしてVtuber全体で見てもかなりの規模のイベントである。V界が一体となってお祝いする雰囲気に包まれるのは、やはり新しい世界の先駆者の1人として見られていることの証しでもあるだろう。
「楽しかった!貴方も、応援にきてくれてありがとう!」
「むしろ、無関係の私がここまで入っていいのか?と今でも疑ってますが……」
「貴方が無関係なわけないよ。私の恋人は貴方しか居ないんだから。そらともさん達公認なんだから、胸張って、ね?」
花束を多く抱えて控え室に入ってきたそらは、そこで待っていた最愛の人に満面の笑みで語った。
「……そうですね」
「むむ、信じてないの?」
「そうではなくて。改めてそらさんが凄い人だなって思っただけです」
「そうかなあ?好きなことしてるだけなんだけどなー」
「それにこれだけ大勢の応援や、後を追う人が生まれてるんですから。凄い人です」
「……えへへ。貴方に言われると、なんか恥ずかしいな。色々な人に同じ事を言われてるはずなんだけど」
お姫様のような衣装を着たまま、顔を赤くして照れるそら。彼がスーツを着ていることも相まって、今からダンスをすると言っても違和感のない景色だった。
「ねえ、わがまま言ってもいい?」
「もちろんです。私に出来ることなら」
「貴方にしか出来ないことだよ」
そういうと、そらは花束を机に置いて腕を広げた。
「ぎゅって、抱き締めて欲しい。今が、夢じゃないって、思わせて欲しいな」
「……わかりました」
照れたように笑うそらを見て、彼もそっと近づくと、そのまま腕にすっぽり彼女を迎え入れた。
「あ、汗とか平気かな」
「ええ」
僅かに身じろぎするそらだが、彼の返答に安心したように動きを止めた。
「えへへ、温かい」
そのまま彼の背中に手を伸ばして、そらの方からも抱き締め返すと、2人の間の距離が0になった。
「…………」
そのまましばらく静かな空気が流れた。
「……ねぇ?」
そらの方から小さく呼び掛けると、彼はその意を察した。
「んっ……」
僅かに上を向いて目を閉じるそら。すぐに唇に当たる感触に目が緩んだ。
「……ふぅ。えへへ」
どちらからともなく顔が離れると、照れたように笑うそら。
「普段、こういうことしないから、なんか恥ずかしいかも」
「……たしかに。アイドルしてるそらさんにしては珍しいですね」
「なんでかな……?控え室に貴方がいるのが珍しいからかも。自分でも境目が曖昧になってるのかな」
そういいつつも、密着した身体を離そうとはしない。むしろ、ぐいぐいと無意識に抱き寄せているのは気のせいではなかった。
「そらさん?」
「あっ、ごめんね?嫌だった?」
「まさか。少し驚いただけです」
彼が気付いて呼び掛けると、慌てたように止めるそら。だが、すぐに元通りになるあたり、いつもと様子が違うのは明らかだった。
「ね、このあと予定空いてるよね?」
「ええ、そらさんのお祝いですから。お休みにしてますよ」
「……なら、連れていって欲しいところがあるんだ」
再度、彼を抱き締めるそら。
「どちらまで、でしょう?」
「……今日泊まってる、私のお部屋」
「……送って欲しいということですか?」
「…………」
無言で首を振るそら。
「……そのまま、一緒に、泊まって欲しいなって」
「……あの、ホントに珍しいですね。随分直球と言いますか……」
「……えへへ」
彼の言葉に、いつもよりも赤い顔で笑うそら。
「わかりました。仰せのままに」
「うん。エスコート、よろしくね?」
彼が頷いて手を引くと、そらは嬉しそうに笑ってそのまま付いていくのだった。
本人感想:こういうのも、たまにはいいかなって。えへへ。あ、この後のお部屋ではちょっと盛り上がりすぎちゃったかな♥️
3.クールな甘えん坊のぐうたらホワイトライオンの場合
(なんの変哲もない甘えてるだけの1日だよー)
「んふー」
「だらけてるなー」
「そりゃあ、あんたの貰った後だし」
獅白ぼたんは、恥ずかしげもなく言い放つと、隣で転がる男にすり寄った。
「いやー、なんつーかだらけて、欲しくなったら求めるって、すげーな」
「そういうのがしたいって言ったのはぼたんだけどな」
「いやー、まさかホントに出来るなんて思わんやん」
2人して休みを合わせて、買い出しも予めして、家から一切出ないつもりで、ぐーたらイチャコラするためだけの予定を数日分確保した結果である。
「あんたまで裸族になるとは」
「家から出ないなら、服着なくてもいいよねって言うから実践してるだけだぞ」
「お陰さまで、あんたを見るたびに疼くんだが」
「そりゃ困った弊害だな。俺もナイスバデー眺めてるから乾く暇がない」
「むふふ、あんた専用だぜぇ?」
朝からずのー印のドリンクを何本空けたか分からない。ちなみに、中身は特別製の方なので、ぼたんの性欲も増進させられているのだが、それはそれでいいんだろう。
白い肌にいくつもの痕を残しているぼたんだが、それをなぞってはむふふと笑っている。
「まあ、たまにはいいよなー」
「結局そこになるんだな」
「あんたもあたしも、こんなに意図的に爛れたことないもんな」
「……隣にはいつもいるが、たしかに言われてみたらそうか」
普段から割と距離感の近い2人だからこそ、その事で特に何か起きたりもしない。今日の出来事で強いて言えば、ムラつく度に部屋のあらゆるところで求め合うくらいか。
「台所って意外にヤりにくいんだな」
「まあ、基本立ちっぱだし、乗り上げるにしても色々物も置いてあるしなあ」
なぜか、家の中でしやすい場所を探したりしてる。
「やっぱり布団が1番か」
「らみちゃんはお風呂もいいぞって言ってたよ」
「湯船の中はいけたけどな」
「洗い場はうち狭いからねー。あんたんちならいけそう」
そんな事を言い合いながら、彼にすっぽり包まれてむふふと笑うぼたん。
「とりあえず昼ごはん食べよーぜ」
「大体なんでも揃えてあるが、何がいい?」
「えー、肉!」
「ライオンだなー、わかった。適当に焼くか」
「火を使うのは危ないから、後ろから眺めてるなー」
「そうしてくれ」
だらんと起き上がり、そのまま部屋を出る2人。まだまだ日は高い。だらけた連休はこれからだった。
本人感想:さすがにこの後もヤりすぎて腰いわしたのは反省してまーす。でも、なーんも考えないのはそれはそれで楽しかったわ。
4.超有能女幹部の場合
(諸事情で子連れ家族と勘違いされたので、いっそのこと……ね♥️)
「珍しいわね、子供なんて」
「親戚だしね。顔馴染みだよ」
たまの休みに、彼の部屋へ訪れた鷹嶺ルイ。そこで見たのは、彼と遊ぶ子供の姿だった。
「親戚?」
「ああ。この近くに住んでるんだが、急遽仕事で預かって欲しいと」
「ああ、そういうこと」
彼の言葉に納得すると、しゃがみこんで視線を子供に合わせた。
「はじめまして。鷹嶺ルイといいます」
「……ルイ?」
「そう。よろしくね?」
手を差し出すと、おずおずと握り返す子供。
「おや、この子なかなか人見知りするんだが」
「そうなの?素直な良い子じゃない」
ニコニコとしながら握られた手を振るルイ。
子供も楽しげにニギニギと指を握っていた。
「お名前、何て言うの?」
「はな!」
「はなちゃんって言うのね?自己紹介出来るなんて凄いわね」
ルイに誉められて嬉しそうに笑う彼女。
「ルイねーちゃん。おじさんのお友だち?」
「ブフッ!ククッ……。んー、そうよ。大事なお友だちです」
彼をおじさんと呼ぶ子に吹き出しながらも、自己紹介を続けるルイ。
「ルイ?」
「ご、ごめんなさい。おじさんって呼ばれてると思わなくて」
「……お兄さんってむきになって呼ばせるのもどうかと思ってね」
「な、なるほどね……」
少しぶすっとした様子の彼に、再度込み上げる笑いを堪えるルイ。
「……?どうしたの、おじさん」
「んー?いや、なんでもないよ」
キョトンとして見上げる子に手を振る彼。
「ごめんね、せっかくの休みに」
「大丈夫よ。なかなかない経験だし。これはこれで楽しいわ」
それぞれの手を子供と繋いで、3人で歩く。
「ごはん、美味しかった?」
「うん。ハンバーグすき!」
「そうなのねー」
お昼ごはんを近くのファミリーレストランで食べた帰りである。
「いつもあのお店つれてってくれるの」
「へー、そうなの?」
「うん。お子さまプレート好きって両親から聞いてるから。あと、おもちゃ集めてるらしいし」
「ああ、嬉しそうに受け取っていたわね」
子供が背負った小さなリュックに入っているおもちゃを思い出して頷くルイ。
「ふうせんだ!おじさん!ねーちゃん!ふうせん!」
「おっとと!」
「あら?」
突然走り出す子に引っ張られてよろける彼。ルイも僅かに揺らいだが、すぐに付いていく。
「くじ引きか」
「風船は参加賞みたいね」
商店街のくじ引きらしかった。
「ふうせんほしい……」
手をぐいぐい引っ張る子にどうしようかと悩む2人。すると、
「お、お嬢ちゃん。くじ引いてくか?」
「いいの!?」
受付している法被をきた気の良さそうな男が子供に話しかけていた。
「おじさん!くじ引いて良いって!」
「いいんですか?」
くじの前でしゃがみこむ子供を見ながら彼が聞くと、男は笑って頷いた。
「どーせ全部引かれることなんてねえからな!別嬪な奥さん連れてるんだし、お子さんにどうだい?」
「!!??」
奥さんと言われて驚くルイをチラリと横目で見た彼。
「ありがとうございます。ぼくには勿体ない嫁でして」
「ちょ、ちょっと!?」
思わず二度見するルイ。
「ハッハッハッ!良い惚気だなあ!おし、嬢ちゃんこれを回すんだぞー」
「うん!」
よくあるがらがらと回すタイプのくじのハンドルを握って、ゆっくりと回す子供。
「もうちょい……、おっ、出たなー?」
コロリと転がる玉の色は白。
「ざんねん、参加賞だな」
「ふうせん!」
しかし、その風船が目当てだった子供は喜んでいた。
「おう、これがほしかったんか?なら良かった。それじゃ、次は奥さんだな。これを回してくれ!」
「わ、私は奥さんじゃ……」
「ほーら、ルイ。好意を無駄にしちゃダメだよ」
身を引こうとするルイの腰をそっと支えて押す彼。
「……んもう、嘘は良くないわ」
「まあまあ、誰が損するわけでもないしね」
小声で言い合うが、すぐにルイが折れた。
「ありがとうございます。引かせて貰いますね?」
「おうよ。いいもの当たると良いな!」
コロリと転がる色は緑。
「おっ、4等!うちの商店街の引換券だ!家計の助けになるってんで、主婦に人気だぞ。おめでとう!」
「あ、ありがとうございます」
金券を渡されて、戸惑うルイ。
「今度、またここに来ようか」
「……そうね。何があるか見てみないと」
彼の言葉に微笑むと、子供の手を取って彼を押した。
「さ、次は貴方の番ですよ」
「おう、旦那さん。いいとこ見せないとな!」
「……よし、やってみるか」
「がんばれー!」
風船を振り回して応援する子に笑いかけると、彼も取っ手をもってぐるぐると回した。
「……おお!」
出てきた玉の色は、赤。
「2等だ!商店街の肉屋の親父が選んだ焼肉セット1万円分だ!期限内に店に持ってったら交換して貰えるぞ!持ってけ!」
カランカランと鐘を鳴らしつつ、引換券を渡してくれた。
「いいねえ!あんたも、いい旦那さん掴まえたもんだ!」
「……ええ、嬉しいです。本当に良い方ですから」
彼の肩をパシパシ叩きつつ豪快に笑う男に、ルイもにっこりと笑った。
「……今日は随分と良い買い物したね」
「あの子も風船握りしめて帰ってたわね」
帰りの途中で連絡を貰い、道中で子供を引き渡した後の2人である。
「ルイのこと、あの子随分と気に入ってたね」
「そうかしらね?」
「あんなに自分から人に話しかけてるの初めて見たよ。親御さんもビックリしてたろう?」
別れる時にまた合う約束をするくらいには気に入った様子の彼女を思い出して笑うルイ。
「可愛かったわね……。まさか、お母さんと呼ばれるとは思わなかったわ」
「あれは僕もビックリした」
「それを言うなら、くじ引きで家族と見られたのもビックリだったけど」
ジト目でルイが見ると、彼は笑った。
「あんなに慌ててるルイも初めて見たから、面白かったよ」
「いきなり言われたら、慌てもするわよ……」
はぁとため息をつくルイを見て、彼はそっとルイの手を握った。
「……あら?」
「気は早かったかもしれないけど」
彼は、ルイの目を真っ直ぐ見て、言った。
「僕は、ルイの旦那でお似合いって見られて嬉しかったよ?」
「……っ」
彼の言葉に、足が止まる。
「……ルイ?」
「……もう!そういうところが……」
焦れったそうに彼の手を握り返すと、
「私だって、嬉しかったに決まってるでしょ……」
顔を真っ赤にして、そう言うのだった。
「……なら、よかった」
「こういうとき外さずに、格好いいの、なんか狡いと思うわ」
「ルイも格好いいからね。負けないようにしないと」
「何言ってるのよ……」
苦笑するルイ。そのまま2人して手を握りながら帰っていく。
「……ねえ」
「なんだい?」
「……今日は、その」
「ん?」
「……妻として、抱いてくれないかしら」
「……というと?」
「……『そろそろ、落ち着いてきたし。2人の、子供が欲しい』ってこういう時は言うのかしらね?」
「……男心を擽るのが、上手いなあ」
こんな会話があったとか、なかったとか……。
本人感想:えーっと、まだ出来てないです、とだけ……。ちょっと、こより?これ、オフレコって言ったわよね!?
5.仮想世界の歌姫の場合
(ノリノリでヤンデレしてたら、止めるために……)
「最近、ヤンデレの需要が激しいと思うんだけど」
「……やっぱり、そう思うよね」
自身の仕事の企画を割り振る役目でもある彼にむけて、ジト目を向けるAZKi。彼も分かっていたのか、PCから目を離すと苦笑するしかなかった。
「それだけ没入感のある台詞とか、雰囲気が出せてるって事で、企画部やマネさんからも太鼓判押されてるんだけどね」
「それにしてもじゃない?なんか、私ってそう見られてるのかなって」
「それだけではないと思うけどね」
彼としても、AZKiの新たな一面として押してはいるものの、根幹にはならないだろうという確信はあった。
「なんだか、そういう原稿ばっかり読んでるからか、最近他の子に会って話してると、たまに怖いって言われるよ」
「え、そんなに?」
「もちろん、私としてはそんなつもりないけど……。あ、でもほら、彼との話とかするときになると言われやすいと言うか……」
「えー……、独占欲でも出てるのかい?」
「皆相手がいるのに、独占欲も何もないと思うけどなあ……」
お互いに首を傾げる。
「まあ、あんまりにも気になるようなら、しばらくは控えてもらおうか?」
「うーん、偏るのも怖いし、そうしようかなあ……」
「わかった。ならその方向で話してみるよ」
「うん、ありがとう」
そういうと、彼は再びPCとにらめっこに戻るのだった。AZKiもそれを見て仕事の邪魔をしないように下がろうとしたところで、ふとPC画面に動画が映っているのが見えた。
「……ん?」
それは、ENやIDの子達のライブや配信だった。
よく見れば、彼はそれを見ながらなにやらメモを取ったりしているようだった。メモ書きはすでにびっしりと書き込まれており、何度も見ていることがわかる。
「…………」
しかし、それを見たAZKiの表情はなぜか、少しだけ暗くなっているのだった。
その夜。
「お風呂いただきました」
彼がそう言って部屋に戻ると、AZKiは居なかった。
「うーん、もう寝るって言ってたかな?」
彼がそう呟きながら寝室を覗くと、明かりがついていない部屋の布団の上でなにやら動いている影が見えた。
「……AZKi?」
彼が呼び掛けると、ビクンと影が跳ねた。
「……お仕事、終わったの?」
「うん。お風呂貰ったから、AZKiも入るかなって思って」
「……ねえ、こっちきて?」
ポンポンと布団を叩きながら呼ぶAZKiの声だが、それが少し固い事に彼は気付かなかった。
「どうしたの?」
彼が部屋に入り、布団に近づくと、AZKiはそのままぎゅっと彼を後ろから抱き締めた。
「……AZKi?」
「最近、お仕事って何してるの?」
「えっ?」
いきなりの質問に戸惑う彼。
「いつも通り、AZKiの次の企画準備がメインだよ?」
「……ホント?」
「う、うん。え、何か問題あったかい?」
彼の問いかけに、抱きつく力を強めるAZKi。
「あ、あの、少し苦しい……」
「さっき、お仕事してるパソコン画面が見えたの」
AZKiはポツリと呟いた。
「ENとかIDの子達の動画観てるのが見えたの」
「ま、まあ僕はほら、向こうの人達との橋渡しもしてるからね。彼女達の動向もみないと……」
「それだけ?」
どこかヒヤリとする空気が流れた。
「……AZKiに飽きた、とかじゃない?」
「ま、まさか!そんな訳ないよ?」
「だって、AZKiの企画を考えるのに、あんなに他の子の動画ばっかり見るの、変だよ」
「あんなにメモ取ってるのに」
「AZKiの企画は変わらないねって話してたのに」
「私に飽きたの?」
「最近出張増えてるのも変」
「向こうから来てるのは増えてないのに」
「まるで私から離れる準備してるみたい」
「どうして?」
「なんで私を言い訳にして他の子観てるの?」
「貴方の1番は私じゃないの?」
捲し立てるAZKi。
「あ、あの、話を聞いて……」
「貴方を理解してるのはAZKiのはず」
「なのに、貴方は私から遠ざかるの?」
「そんなのダメ」
「許さない許さない許さないゆるさな……っ!!?」
AZKiが狂ったように同じ事を言い出した瞬間、彼はAZKiを怪我させないように振りほどき、同時に布団へと押し倒した。
「AZKiさん!」
「は、はい!」
目を白黒させるAZKi。
「僕が、貴女から離れるなんて、あり得ません」
「で、でも……」
「不安にさせたのなら、謝ります。でも、理由があるんです」
彼はAZKiを真っ直ぐ見つめた。
「最近、海外組の躍進が凄いのはご存じですね?」
「は、はい」
「なので、その理由が掴めたら、AZKiさんの更なる飛躍に繋がるんじゃないかって研究してたんです。メモ書きがとんでもなかったのは、重ねて見ることで同じ事を書いていたなら、それが印象に残ったことだって分かるからです」
「……最近、出張が多かったのは」
「直に観ることで、空気を感じたかったからです」
「じゃ、じゃあヤンデレが増えてたのって」
「シチュエーション台詞の経験を増やして欲しいとお願いしたのは私です。内容が偏ったのは後から知ったんですが……」
AZKiの不安を解消するように、1つ1つ丁寧に説明する彼。
「とはいえ、忙殺されている間に説明が不足していたのは否定出来ません。その事でAZKiさんを不安にさせたのなら申し訳ないです」
真摯に頭を下げる。
「でも、先程も言ったように、僕から離れるなんて絶対に無いですから。そこだけは信じてください」
「…………」
AZKiは黙っていた。
「……AZKiさん?」
「……敬語、戻ってる」
「あっ」
ポツリと指摘する彼女。
「……お仕事、終わったんだよね?」
「え、ええ。今日やろうとした分はもう終わり、んんっ、終わったよ」
AZKiの問いかけに敬語を崩して答える。
「……早とちりしちゃって、ごめんなさい」
「い、いえ……」
「でも、私を不安にさせちゃったって、そう思ってるんだよね?」
「う、うん。そうかなって」
頷く彼。
「なら、今から私の不安を取り除いて。それが許す条件」
「……えっ」
押し倒された状態で、そんなことを言い出すAZKi。
「ほら、さっきとは逆だもん。私、このままじゃ逃げられないし」
「いや、これはたまたま……」
彼が思わず言い返そうとするが、AZKiは手を彼の口に当てて塞いだ。
「あー、このままだと、また不安になっちゃうなー。頭のなか、めちゃくちゃにして、忘れさせてもらわないとなー」
少し棒読みでわざとらしく言葉を紡ぐAZKi。
「……あの、もう少し感情込められるよね?」
「なんの事か、わからないなー」
彼が少しだけ指摘しても、なおも変わらぬ棒読み加減。この間ずっと、ハイライトが消えっぱなしなのは流石というか、なんと言うか。
「……わかった。なら、今から精一杯伝えるから」
「きゃー、動けない相手をめちゃくちゃにするつもりねー」
「……あー、もう!わざとらしいなあ!」
そう言って覆い被さる彼を、動けないはずのAZKiは優しく受け止めるのだった。
ちなみに、これは少し前からAZKiが嵌まっているヤンデレプレイの一環である。シチュエーション理解のために色々と研究していくなかで覚えた事なのだが、なぜか最終的に彼に押し倒されて、分からされるのがお気に入りであり、その際は決まって棒読みで始まるのが2人のお約束だったりする。
本人感想:なんか、最後無理して押し倒してくる彼が可愛くて、癖になっちゃった。うふふ。
???「いやー、いつもとは違った感じのお話が多くて、これはこれで面白いですね!また、機会があれば集めてみたいと思いますよ!」
書いていて楽しかったです。
こういう機会がまた得られるよう、細々と続けていこうと思いますので、応援していただけると嬉しいです。