やりすぎたかも……。
ホロライブ2期生『大空スバル』といえば、Vtuberとしてはかなりの古株に数えられ、純粋な人族でありながら、色々あってアヒルとして認知されているアイドルである。本人もほぼ公認しており、グッズや衣装にも取り入れたりしている程だ。なぜか、鳥類の獣人が集められたユニットに『アヒル!?』として加えられたりもしている。
ホロライブにおける貴重なツッコミ役の1人であり、司会、雛壇問わず爆音の声量から放たれるツッコミほしさにボケまくる同僚もいるくらいである。
さらに、加入時点でインドア関係のネタがまるでわからなくて、同期達に対して若干の孤独を感じていたが、『なんか皆が楽しそうだったから』と、その後の活動で知らないネタをどんどんと吸収し理解する、まさにオタクが思い浮かべる『オタクに優しい陽キャ』を地で行く存在だ。
そんな彼女は普段は比較的ボーイッシュ寄りなキャラなのだが、アイドル活動になると持ち前の愛嬌と努力で培ったダンス能力を遺憾なく発揮し、スバ友達の脳を焼きに来る。特に、何気ない一つ一つの動作がホロ屈指の女の子らしさに満ちており、それだけで通称『メスバル』と呼ばれて切り抜き動画が作られるほどだ。
そんなスバルだが、つい最近周年を迎えてまた新たなスタートを切った。そして、その彼女が密かにお付き合いをしている彼の家に行った時の話である。
「いや、それはエッチすぎるだろ」
「お前なに言ってんの!?」
スバルは部屋に入ってきた自分を見た彼の第一声に思わず叫んだ。
「いや、お披露目のネットの反応見たろ?『これはむしろスバルが捕まるべき』『叡智すぎるだろ』『さすがういママ、エッチすぎる』『犯人がスバル見たさに自首しそう』等々」
「見たけどさあ!なんでお前ら皆そういう目でしか見ねえんだ!?」
「とりあえず落ち着け、ここは防音室じゃない。声が貫通するぞ」
「誰のせいで……!」
どうどうと宥める男に、荒い息を吐くスバル。
「いやしかし、これは何時にもましてメスみが強いと思うぞ?露出が多いってわけではないが、見せてる部分がこう刺激が強い」
「勝手に触りながら力説するんじゃねえ!」
「オウフ」
近づいたスバルの太ももや肩口をスリスリしてくる彼に遠慮のない回し蹴りを炸裂させるスバル。その格好は、周年記念で披露した警察官衣装の上着を脱いだスタイルだった。
「だけど、そんな格好で彼氏の部屋にわざわざ来たってことは、触られるの覚悟してたろう?」
「そ、そんなわけないだろ!見てほしいなとは思ったけど……」
「図星突かれると顔真っ赤になるのは相変わらず可愛いな」
「可愛いとか言うな!馬鹿!」
もじもじとしながらも顔は照れているスバル。
「だ、だってトワとかマリンが、『この衣装は確実に彼氏のドストライクだから、自信もって着ていけ!』って力説するから……」
「ありがとう。今度菓子折り贈らせていただきます」
「なにお礼言ってんだお前!」
空間に向かって土下座する彼に吼えるスバル。
「つーか、企画に向けてなのは知ってるが、上着脱げるスタイルはなんなの?男を○したいの?」
「意味わかんねえから。単に私服として着られるようにって母ちゃんが気を遣ってくれたんだよ」
「おまえ、そんな格好で外歩いたら、皆の視線釘付けだぞ?下手すりゃ連れ込まれかねんの分かってるか?」
「さっきからどうしたの?頭壊れた?」
「ちなみにオレは絶対に連れ込む、断言するが」
「ドヤ顔でとんでもねえこといってんじゃねえ!ば、馬鹿じゃねえの!?」
「ちょっと想像してドもるの可愛いな」
「う、うるさい!」
先程から顔が赤いのがおさまらないスバルだった。
「しっかし、前々から思ってたんだが」
「なんだよ」
最初のやりとりから少し落ち着いたところで、ソファに横並びで座った彼がふと切り出した。
「デビュー初期の頃から比べると、随分女の子っぽくなったなって」
「おい、スバルは前から女なんだが?」
「そんなことは知ってる。そうじゃなくて」
彼はピッとスバルの胸元を指した。
「ボーイッシュ感から可愛い感じなのが増えたなって。あと、確実に胸はでかくなってるだろ」
「……後半は聞かなかったことにする」
「去年の年末のトレーニング衣装なんか、ヤバすぎたもんなぁ。見たとき『デッッッ!?』って感想多かったし」
「聞かなかったことにっていってんのに、追撃すんな!」
ウンウンと1人頷く彼の頭をしばくスバル。
「まあ、そのあと着てきたスバルをオレが美味しくいただいたけどな!」
「馬鹿野郎!」
「いや、あれは完全に誘ってたろう?」
「そ、そういうことを本人に聞くなよ!?」
再び顔を赤くして叫ぶスバル。
「あー、もう!なんでこんな話題ばっかりなんだよ!」
「そんなエロいって言われまくった格好で彼氏の家来たんだから、そうもなるだろ。このやり取りもう何度目だか覚えてないぞ?」
「そ、それは……」
俯くスバルをそっと横から抱き締めると、少しだけ強張った後にすぐ脱力して寄りかかった。
「うぅー、毎度やり込められてる気がする……」
「他人行儀だけど、もう少し特定の方々な同僚の言葉には気をつけるべきじゃないか?完全に遊ばれてるだろ」
「そりゃそうなんだけどさあ……」
スバルは寄りかかった頭を少しだけ上に向けた。
「あたし、こういうの良くわかんねえから、毎回色々聞いてるんだよ。実際従ってみれば、お前も可愛いって言ってくれるしさあ」
スバルが油断したときにしか出ない一人称『あたし』。どれだけ心許しているか分かるというものだ。
「だから、まあ……」
するりと彼の腕に絡ませながら目線を逸らすスバル。
「こ、こういうのも悪くないというか……」
「……これが、メスバルか」
「う、うるさいなぁ」
語気が弱くなっている。
「あ、あと1つ」
「なんだ?」
スバルは彼の手をサワサワと撫でながらじっと見つめた。
「す、スバルの胸は!お、お前が揉みまくるから大きくなったんだからな!?」
「……ほう」
顔真っ赤で叫ぶ彼女を見て、納得したように頷く彼。
「か、母ちゃんには衣装相談でサイズ計ったら『幸せそうやねえ』ってニヤニヤされるし!おかゆにはスタジオで着替えてる時に何にもいわずに頷かれるし!かなたとかすいちゃんには睨まれて詰められるし!」
「前2人は想像つくし、後ろ2人は血の涙流してそうだな……」
実際、衣装にもよるが膨らみや激しい動きに伴う胸元の揺れなどは顕著になっており、度々話題になる程だ。
「うぅ……」
「嫌なら止めようか?」
「嫌じゃないけど、恥ずかしいだろ……」
彼の手がスバルの胸にそっと被さったが、ピクンと反応するだけで止めることはなかった。
「しっかりあるし、柔らかいし、スバルは最高だな」
「人の胸揉みしだきながら語るな、馬鹿……」
そう言いながらも、スバルから身体を彼の方に寄せてよりやりやすくしている辺り、このやり取りも慣れたものなのだろう。
「ねえ……」
「おう」
スバルの小さな求める声に、彼はそっと顔を寄せて口づけた。
「……っ、……ふっ、んっ!」
その最中に少し激しくなる彼の愛撫に、漏れるスバルの声。それでも舌を絡ませて離れようとはしなかった。
「……なんというか、ホントにエロくなったな」
「……だ、誰がそうしたと思ってるんだよ」
「俺だ」
「胸張るな、ばか……」
長い密着からようやく離れ、息を整えつつ涙目で彼を見るスバル。
「お前だって、こんなになってるくせに。こんなの当てて、スバルをどうしたいんだ?ん?」
身体を寄せた時に腰に当たっていた彼の下半身を撫でながら、いつもよりも妖艶に笑うスバル。その表情は、彼以外に見せることはない。
「……煽りまで覚えるとは」
「スバルだって、いつまでもやられてばかりは嫌だからな」
「……なら、次は実戦か?」
「……(コクリ」
彼の言葉に小さく頷くと、スバルの方が彼の手を引いた。
「ん?」
「……き、今日は遠慮しなくていいからな」
「……えっ」
思わず聞き返す彼。スバルは顔を真っ赤にしていた。
「だ、だから!今日は、調整してあるから!こよりからも貰ったし……」
「……おいおい、準備万端じゃないか。珍しいな」
彼があまりの手際の良さに苦笑すると、スバルも少しだけ笑って、
「……スバルだって、女の子なんスよ?」
あまりにも有名になった殺し文句を、上目遣いで言うのだった。
あの衣装を見たら筆が早かったです。
6周年おめでとうございます。