また、独自設定多めです。
「我輩を連れて歩いたら職質、もう何度目だ?」
「僕が聞きたいよ、全く……」
ホロライブのアイドル兼秘密結社holoxの総帥たる『ラプラス・ダークネス』は、年齢こそもはや数えきれないほどの長命種(ラプラスの悪魔)だが、見た目は角の大きな子供である。
一目見て分かりやすすぎるため、街中で堂々と歩こうものなら、1発で身バレしかねない。その対策として、日頃の生活においては角を隠して、見た目では分からなくしているのだが、そうなるともはや髪の長い子供にしか見えない。無論、多種多様な種族の生きる現代においては、見た目と年齢が一致しない者も多く存在するため、一定の理解は得られているが、それはそれである。
「全く、日本の警察は有能だな!我輩も頼りたいものだ!」
「実際有能だしね。というか、最近は物騒なことも多いし、仕方のない事だよ。仕事熱心なことは誉められるべきだ」
「職質された奴が言ってたら世話ないだろ!」
夜中に彼女を連れて歩いていると、度々警察に声をかけられる彼に、ラプラスは呆れたような声をかけた。
「なら出掛けるの止めるかい?」
「それは嫌だ」
「なら受け入れるしかない。なにも悪いことはしていないのだから、堂々としていればいいんだよ」
「まあお前がそういうならいいけどさあ」
「見た目がこれだしね。まあ、ある程度は受け入れてるさ」
自分を指す彼の顔にはいくつかの火傷痕があった。子供の頃に隣人の不始末から家が火事になり、逃げ遅れてしまったために出来たもので、幸い命に別状はなかったものの、見た目は少し不気味に思えるのも仕方がないと彼は受け入れている。ちなみに、過去の経験から接客等は草々に諦めており、彼は引っ越し業者として働いているため、肉体労働も相まって図体がデカい。それも職質の頻度の高さに拍車をかけている要因。
「見た目で判断するのはアホのすることだ。我輩はお前がどれだけいい奴なのか、よーく知ってるからな」
「そうやって知ってくれている人がいるから、俺もこうして生きられている。ありがとうな」
「ふふん。もっと敬ってもいいんだぞ」
「夕飯は手作りのハンバーグだな」
「あっ、大きくしてくれな!」
どや顔で胸を張っていたが、その後の彼の言葉に破顔して纏わりつくあたり、以前ラプラスに連れられて挨拶した幹部の方が言っていた、『子供っぽいところもありますが、よろしくお願いします』という言葉は強ち間違いでもなかったなと密かに思う彼だった。
「幹部のハンバーグも美味しいが、お前のハンバーグも最高だな!」
「それはよかった。今日は少しいいお肉が買えたからな」
「そうなのか?言ってくれればいくらでも出すのに。美味しいものの為なら我輩糸目はつけんぞ?」
「たまにだから美味しいんだよ。これに慣れたらそれこそ普段の飯が美味く感じられなくなる」
ご希望通りの彼特製の巨大ハンバーグを食べた2人。
「確かに。高級品はたまにがいいな」
「言っててなんだが、一応秘密結社の総帥なんだろ?立場があるなら豪遊しててもおかしくなさそうだが」
納得しているラプラスに首を傾げる彼。
「うちはとにかくお金がないんだよ!幹部もいつもしかめ面してるしな。ホロライブにまとめて加入したのも、全員でお金稼ぎする一面もあったくらいだ」
「そうなのか」
「主にこよりが研究と銘打ってよく分からんものを作ってるのが大きいらしいぞ。よくルイから雷落ちてるし」
「あー、研究者ってそういうの度外視しがちだよな」
「変形する仮面とかはかっこよかったんだけどなー」
お茶を飲みつつ遠い目をするラプラス。
「あ、でも最近は大口の収入源が多数って言ってた気もするな」
「スポンサーでもついたのか?coverとは別に?」
「あー……。まあお前ならいいか。別に無関係でもないし」
一瞬迷ったが、まあいいかと座り直す。
「……アイドル活動しながら、なんだかんだ皆付き合ってるのは知ってるだろ?」
「そうだな。当初はお前も先輩達のを聞いてびっくりしてたって、前にいろはさんから聞いた」
「まあ、いつの間にか我輩もお前とこうなってるから分からんものだが。それは置いておいて」
指摘されて顔を少しだけ赤らめるラプラス。
「ほら、こよりが色々作っては提供してるものがあるだろ?」
「……ああ、お薬やら道具やらか」
「そうそう。んで、最初はあいつが勝手にうちの金で作ってて、もちろんルイがぶちギレてたんだが、試供品を貰ってそれを気に入った先輩達が、こぞってこよりにお金を出し始めてな」
「あー、ホロメンがスポンサー化したと」
納得した彼。
「そういうことだ。といっても、あくまで研究費用として貰ってるから、あいつも遊んだりはしてない……、とは思うぞ」
「なんでそこだけ自信がないんだ」
「いやー、たまーに変な目で笑ってるの見たらなあ」
何を思い出したか、微妙な表情のラプラスだった。
「ま、こよりは天才だからな!我輩が見つけた才を楽しく使ってるならなんの問題もない」
「……ほどほどにしとけな。ルイさん怒ったら怖いんだろ?」
「超こわいぞ。目を黄色に光らせて淡々と理詰めで責めてくるのマジでこわい」
「その時は遠慮なく突き出すからそのつもりでな」
「そこは庇えよ!」
彼の冷たい言葉にウガーッと威嚇する総帥。
「そうならないように、お前が手綱を握っておいてやれって話だと思うが」
「いやー、我輩も長く生きてはいるけど、あんなに頭ピンクだとは露知らず。出会ったばかりの頃はそうでもなかったはずなんだが。特にここ数年はヤバイからな」
「……お相手は生きてるのか?」
「あ、それは大丈夫らしいぞ。なんでも、やりすぎるとこよりが後でオシオキされるらしい。といっても、あいつも割とどMだから、それも好きとか宣ってたけどな」
「……まあ、本人が楽しいならいいか」
深く考えることを止める彼だった。
「今日は良いものを食べさせて貰ったし、我輩もお礼をしたいんだが」
「何をするつもりだ」
「無論、ナニでもいいけど。とりあえず、最近お前の目が割と死んでることが多いからな。どーせ疲れでも溜めてるんだろう」
下ネタ混じりだが心配そうな言葉をため息混じりに言われて、彼は肩を竦めた。実際、最近の引っ越し業界の人手不足は深刻であり、彼も日々限界まで身体を酷使していた自覚はあった。
「ま、我輩も先輩達も引っ越しする度にお前に世話になってるし、大変なのは重々承知してる」
「そうだな。差し入れはありがたく受け取ってるぞ」
ラプラスの言うとおり、ホロメンが引っ越しをする際に優先的に彼の職場に連絡が来るため、彼は割と引っ張りだこであった。ラプラスが彼を含めて会社に売り込んだらしいと聞いたが、詳しくは彼は知らない。ただ、事実こうしてお互いに頼っている現状が出来たのは、彼にとっても良いことなので何も言うことはない。そういった意味では、彼が一番ホロメンに対して顔が広いと言える。
「そうでなくても引っ越しシーズンになるとてんてこ舞らしいじゃないか。我輩が少し揉んであげるよ」
「そうか。それなら甘えるとしよう」
ラプラスは見た目の割に力がある。そもそも、見た目が幼く見えるのは力の大半を封印されているかららしく、本人も今さら外す気はないのだとか。そして、彼女の手の小ささと力強さが、患部に押し込む際にはいい塩梅になるので、時折お礼と称して彼にマッサージをしてあげていた。
「それなら、してもらう前にお風呂先に用意しておくか。ラプラスも終わったら汗かくだろうし」
「お、なら前にもらったバスボム入れてくれ!」
「はいはい、用意しておくよ」
嬉しそうにはしゃぐラプラス。
「なら、こちらもタオルとかを用意しておこう。何時もの場所か?」
「ああ。勝手に出してくれていいぞ」
「うん。なら、寝室にいるからなー」
そのまま寝室へ消えるラプラスを見送り、彼も浴室へと向かうのだった。