「どーしたらいいと思う!?」
「もう手遅れだと思う」
「なぁーんでじゃあああ!」
ふわふわの服を着た女性が泣き崩れた。が、対面の男性は特に何もアクションを起こす気配はない。
「おい!そこは『大丈夫か!?』って支えに来るところじゃろがい!」
「狙いが丸分かりすぎて冷めるよ。いくらお酒飲んでるからってあざとすぎる」
「男ってこういうのに弱いって聞いたもん!」
「毎度やられれば慣れるってば」
「ウワーン!」
微妙にアクセントの異なる方言混じりのこの女性。ReGLOSSの自称破天荒枠『儒烏風亭らでん』である。
初配信で酒、タバコ、ギャンブルの全てを網羅していると宣言し、その後も繰り広げられた前例のない初配信の内容から、当初は久しぶりの狂人枠としての採用じゃないか?と見られていたが、蓋を開ければ同期がより狂人であったことが判明。さらに、本人が非常に芸術方面に博識、学力の高さもずば抜けており、落語家特有の語彙力の高さも相まって新規の客層の取り込みに成功するなど、とてもじゃないが狂人とは思えず、いつの間にかホロライブでもなぜか貴重な常識人枠として先輩やリスナーから見られるようになってしまったという不思議なホロメンである。
「というか、まだ諦めてなかったのか。そのエセ狂人枠」
「キャラが!キャラが薄くなるのはアイデンティティの崩壊なんだよ!あとエセっていうな!」
「別方向に際立ってるのに、今さら薄くなるはずもないだろ。それに立ち振舞いから常識人っぽさが出てるんだから、エセって呼ぶだろうよ」
「で、でも常識人は違うって!」
「少なくとも推しのために禁煙を続けられる時点で狂人ではないよ。今だってきちんと礼儀正しく座ったりしてるのに」
「ぐ、ぬぬ……」
言い返せなくなったらでんは、目の前に注がれたお猪口の日本酒をぐいっと煽った。
「き、君だけは味方だと思っとったのに」
「味方だよ。それはそれとして、嘘はつけないから言ってるだけで」
「嘆いてるんだからぁ!か、彼女が求めてる言葉くらい言ってくれてもいいじゃんか!」
「……『いよっ!この狂人!』とか言ったらいいのか?」
「それはなんか違うー!」
「なら駄目じゃないか」
男にすがり付くらでんの頭を撫でる彼。
「今となってはホロライブで常識人枠って居ないに等しいんだからいいんじゃないか?というか、無理しても辛いだけだろ」
「それはそうだけど……。あと、その枠がいるかどうかは後輩としては同意しづらいっちゃ」
「端からみた意見として聞いてくれ」
撫でられるがままにそのまま顔を埋めるらでん。
「あのさ、甘えたいならそういえばいいのに。なんでいつもお酒いれて、勢いつけてから来るんだよ」
「わ、私のキャラじゃないから恥ずかしいんよ……」
「誰に見られてるわけでもないのにか?」
「あ、あんたが居るじゃろう!?」
「え、俺でもか」
「むしろ、あんただから恥ずかしいところもあるっちゃ」
「へー……」
彼は撫でる手は続けながら、いつの間にか仰向けで膝枕しているじっとらでんを見た。
「……?なに?」
「いやあ、もうこの服の中とかも全部知ってるのに、今さらキャラで恥ずかしいとかあるんだなって」
「ば、バカ!!」
「お、あんまり言わない荒い口調」
思わず叫ぶらでん。
「な、何をいっちょる!?」
「いやあ、あんなに乱れたり何なりするより、キャラが似合わない方が恥ずかしいんだなあ、ウンウンって納得しただけだが」
「い、言うな~!!思い出しちゃう!!」
「おー、真っ赤」
「うるさーい!!」
彼の頬を手で挟んで黙らせようとするが、器用に避ける彼。
「うぅ……。辱しめられた……」
「言い方よ」
「彼女をこんな目に遭わせて楽しいんか!?」
「楽しいか楽しくないかで言えば、楽しいな」
「鬼!悪魔!」
「鬼も悪魔も先輩にいるだろうに」
「うぅー!」
飄々と流す彼に唸るらでん。
「な、なんでこんなに鬼畜になってしまったんだ……」
「言われて微妙に喜んでるの知ってるぞ」
「そそそ、そんなことないっちゃ!?」
「焦りが出過ぎてるぞどM」
彼の冷たい目線に、なぜが身体を震わせるらでん。
「先輩達から弄られても楽しそうだしな。弄るの苦手だからか余計にそう見える」
「ぐぬぬ、度胸が足りない……」
「いや、言われて喜ぶのは性癖だろうが」
「そ、それは!あんたに開発されたっちゃ!」
「だから言い方よ」
「あんたが色々シながら言葉で責めてくるから……!」
「わかったわかった。言いすぎた」
顔真っ赤で必死に反論するらでんに、参ったと手を上げる彼。
「ごめんな。反応が可愛いからつい」
「つい、で苛められたら困るっちゃ!」
「その割に離れようとはしないんだがな」
「ここは私の特等席じゃもん」
「なるほど?」
彼の膝に頬を擦り付けるらでん。
「今日は酔うまでが早かったな」
「酔うつもりで来たけん」
「それはそれでどうなんだ……?」
「そしたらお持ち帰りしてくれるじゃろ?」
上目遣い。赤らめた顔が綺麗に見えた。
「……どこでそんな悪いこと覚えたんだか」
「教えた人が何か言うとるなぁ。きゃー、純粋ならでんちゃんになにするつもりー」
「純粋なやつが持ち帰り希望なんざするかね」
彼はそう言いつつも、頭を撫でる手を止めなかった。
「いつも思うんだが、その服で横になるの苦しくないのか?」
「正直言うとくるしい」
「だよなあ」
「でも外に出るときは大体これだから、慣れちゃった」
彼女のトレードマークとも言える黒目のゴスロリ服を下敷きにしても、彼から退こうとしないらでん。ある意味お似合いの2人であった。
「酔いは?」
「うーん、話してたら覚めたかも」
「なら、先に風呂入るか?」
「えー、1人だと危ないから一緒がいい」
「今日は甘えたい日なのか」
「気分かな!」
「はいはい……」
側に置いてあったクッションをらでんの頭に差し込むと、彼は立ち上がった。
「なら、用意してくる。起き上がれるなら、タオルとか出しておいてくれ」
「何時ものところ?」
「ああ。どんどん置いていってるお前の私物も同じところに入ってるから、使うなら適当に出してくれな」
「りょーかい!」
彼の匂いがわずかにわかるクッションに顔を埋めながらサムズアップするらでん。それを見て苦笑しながら、準備に向かう彼であった。
この話でFLOWGLOW以外のJPメンバーを書き終えたので、前回好評頂いたリクエスト企画を行いたいと思います。
リンク先の活動報告をよく読んで、ご参加いただけたら幸いです。
リクエスト募集用の活動報告↓
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=320473&uid=30147