毎年恒例、甘さ漂うそれぞれの1日の一部始終である。
1.握力最強のスパダリPP天使の場合
「ん、これあげるよ」
「ありがとう。毎年なんだかんだ手作りしてくれるの嬉しいよ」
「ルーナが『こういう時くらいは頑張るのらよ!』って引っ張るからさ」
「流石はお菓子の国の姫様だ」
シンプルに型に入れて固めただけのチョコでも喜んでくれる彼にかなたは複雑そうな顔をしていた。
「おみゃーはさ、もう少したそになんかしてくれとかねーのか?」
「というと?」
「チョコだって、もっと手の込んだ奴が欲しいとかさ」
「これだって十分だと思うぞ?」
「溶かして固めただけなのに?」
「かなたが作ったんだろ?手作りなんて彼氏冥利に尽きるだろ」
「そうだけど!そうじゃなくてさあ」
「そもそもカップルだろうが夫婦だろうが、確実に貰えるわけじゃないんだからさ。こうして毎年くれるってだけで嬉しいぞ」
「〜〜!!///」
彼の言葉に赤面するかなた。
「こ、こいつ……!どんどん喜ぶことしか言わねえ……!」
「そんなに変なこと言ってないと思うが」
「うるせえ!黙ってかまえ!」
「彼女の天使がわがまま過ぎる件について」
彼の膝にどかっと座り込んでそのまま居座るかなたを見て、彼は苦笑しながら彼女のわかりやすい要求に応えるのだった。
2.ギリギリわるくないゆるふわ羊の場合
「はぁーい、今年もチョコレートたべさせてあげるねぇ?」
「あの……」
ここはベッドの上である。
「なあに?」
「毎年言ってますけど、わざわざビニールシート引くくらいなら、身体に塗るのやめません?普通に頂ければ嬉しいんですが」
「全身じゃないんだから進歩したよ?量もだいぶ減らしたし」
「あれは後始末ヤバすぎただけじゃないですか……。もう一度溶かすと味の劣化凄いですしね。あとその後数日間、肌痛めてましたし」
「正直痒かったよねぇ」
毎年恒例なのか、溶かした少量のチョコをボウルに入れて押しかけるわため。目的のために、もちろん裸である。彼の言う通り、ベッドにはビニールシートが敷かれており、汚れても大丈夫なようになっていた。
「これ、塗る時も地味にゾクゾクするんだよねぇ……、んっ!」
「変な性癖目覚めてるじゃないですか……」
「でも、なんだかんだ言いつつも舐めてくれる貴方が好きー。はい、どうぞ?」
「いやまあ、夢のあるシチュではありますけど……」
早速自身のたわわにブラシでチョコを塗るわため。そのままずいっと差し出すと、彼も大人しく顔を近づけた。
「……はむ」
「やぁん!ペロペロされてる!」
「わためさんって甘いんですね」
「今だけだよぉ!」
いろいろな意味で甘い一時を過ごす2人だった。
3.天使のような悪魔の場合
「毎年の事だけど、貴方も一緒に買いにくるのはどうなん?」
「でもホワイトデーも同じことしてるからいいんじゃないかな」
「それはそう」
この時期になると、大体どこの店でもチョコ商品の大売り出しや目玉商品で溢れかえる。トワと彼はこの時を狙っていつも新しいチョコ商品を買いに来ていた。
「今年の当たりは?」
「安直にチョコの飲み物かなあ。少し遠いけどね」
「あれ、PCしながらだと手も汚れないからいいよね」
当たり前のように手を恋人繋ぎし、なんなら尻尾まで巻き付けているトワ。彼も当たり前に受け入れている。
「このあとは?」
「んー、夕飯の買い出し位だよ。今日は長くなりそうだし、早めに帰ろうかと」
「よろしい、もうアレは飲んだの?」
「一応。朝搾り取られた後に飲んだよ」
「えへへ、それは良かった」
下腹部を撫でて喜ぶトワ。朝からナニをしたのかを雄弁に語っていた。
「……あんまり撒かないでね?僕はともかく、周りの人達が可哀想だから」
「……ん、気をつけないと」
食事の際に悪魔が撒く一種のフェロモンは、その手の欲を刺激しやすいため、対象を絞った意図的ならともかく、無差別にばら撒くと色々と大変なのである。
「夜は貴方から攻めてほしいな」
「そういう気分?」
「うん」
「わかった、頑張ってみるよ」
「楽しみにしてる……チュッ」
彼の耳元で囁いた後、人前で珍しく口づけるトワだった。
4.お菓子の国のお姫様の場合
「はーい、んなたんお手製のチョコケーキなのら」
「あの、2人で食べるにしても大きくないですか?」
彼の家に前日から泊まり込みで大型ケーキを作るのが、ルーナのバレンタインである。
「なんだかんだ言っても食べてくれるから、つい大きくなってしまうのらね」
「ルーナさんのケーキは美味しいですし、手作りを残すなんて失礼ですからね」
「んふふ、そういうところも素敵なのら」
彼に抱きついて頬をスリスリとするルーナ。満面の笑みである。
「いつか、ウェディングケーキを手作りするときの練習なのらよ?」
「な、なるほど……」
「もちろん、貴方に食べてもらうつもりだから、覚悟しておくのら」
「覚悟の必要なケーキってなんなんですかね……」
早速切り出して差し出されるケーキを食べながら、彼女の言葉に首をかしげる彼。アーンされているのはもはやいつものことなので、ツッコむのをやめたらしい。
「美味しいです。今年は甘さ控え目なんですね」
「流石にいつも並に甘いと、口当りがくどくなりそうだったから、チョコを苦み強めなものにしたのら。クリームでどうせ甘くなるしね」
「ありがたいです」
「彼の好みや状態を把握するのも、いい女の努めなのら」
「ルーナさんは、もう十分過ぎる位の女性ですけどね」
「まだまだ成長するつもりだから、貴方もついてくるのらよ」
彼に甘えつつも、さらなる飛躍を誓うルーナに彼も笑いながら頷くのだった。
「まあ、それはそれとして今はルーナをもてなすのら。流石に時間かかったから疲れたのらね」
「それはそうでしょうね……。後でお風呂沸かしてきます」
「頼んだのら〜」