「アー、キョウは、ソト、サムカッター」
「ですね、最近は急に冷え込んで来ました」
「デモ、ミンナと、ゴハン、タノシカッター!」
「帰ってきた時、凄くニコニコしてましたね」
ホロライブENの3期生にあたるグループである『Advent』、そのメンバーである『古石ビジュー』は、獣人等や幻想種、果ては無機物生命体に至るまで存在するこの世界においても、特に謎が深いとされる『感情結晶体』と呼ばれる特殊な生命体である。悠久の時を経て、人々の善悪様々な感情が寄り集まって固まることで生まれる鉱石の生命体らしいが、無機物であること以外その他一切の事は分かっておらず、そもそも存在を確認された事例が、人類生誕からの長い歴史の中でほんの数例しかない。ビジュー本人も自身を鉱石と名乗っているが、石というには主成分も不明。鉱石の専門家ともいえる鍛冶屋であるIDのカエラも『仮に彼女を素材として渡されたとしても、加工出来るか分からない。砕くだけなら出来るけど』と述べているあたり、本当に謎に包まれた生命体である。
なお、当の本人は全く気にした様子もなく、楽しそうにアイドル活動を行っているらしい。
『日本語はホントに難しい!』
『でもどんどん話せるようになってるよ。片言な事もあるけど、それはそれで可愛いし』
『それは嬉しいけど、目指すはカリやイナみたいに自然に話すことだもん!』
日本に移住して一人暮らしをしているビジューだが、最近はパートナーの家に上がり込みそのまま泊まる回数が増えているため、いずれは同棲申請するだろうとは、先輩の混沌の化身の言葉だ。
『今日はお鍋食べてきたんだよ!カレーうどん!クロニーがはしゃいでいた!』
『おー、温かい物が美味しい季節になってきたからね』
『Yes!でもうどん?はちょっと熱すぎたかも?』
『火傷しないように、気をつけてね?』
舌をぺろりと出して笑うビジューに、彼も苦笑した。
「オフロ、ハイリタイ!」
「まだ準備中だから、もう少し待っててほしいな」
「はにゃ?モウ、ジュンビ、シテクレテタノ?」
「そろそろ帰るよって連絡くれてたからね。大体このくらいの時間かなって」
『素敵!愛してるわ!』
「おっととっ!」
感極まって勢いよく抱き着くビジュー。勢い付いた彼女の小さい体を、彼は少しだけふらついたもののそのまま受け止めた。
ちなみに自他共に認める子ども体型なビジューだが、子ども体温とも言うべき温かさと、鉱石とは裏腹の女子特有な肌の柔らかさを持っている。それを1番知っているのは本人と彼の2人だけだが。
『んー、流石ね!』
『少し危なかったけどね』
『警備員って皆このくらいの力はあるのかしら?』
『どうだろう?でも、体を使う仕事だから体力はあると思うけど……』
彼は警備会社に努めており、ビジューと知り合ったのも、彼女が自身の配信のためにロケを行ったとある敷地の警備をしていたからである。
『貴方はもうお風呂入ったの?』
『いや?というか、僕はこの後仕事だからね』
『あっ……、そうだったわね……』
『ごめんね、勤務時間は短いけどそれでも夜遅くなるから……』
しょんぼりしてしまうビジュー。背中をぽんぽんと叩いて励ます彼。
『……帰った方がいい?』
『まさか。むしろ、泊まってくれないと、帰った時に君に会える楽しみがなくなっちゃうよ』
「ホント?」
ふっと顔を上げるビジューに目を合わせて頷く彼。それを見てビジューは嬉しそうに微笑んだ。
「ワカッタ!マッテル!」
「ありがとう。あ、でも無理して起きてる必要はないからね?眠くなったらベッド使ってくれて構わないから」
『ううん、折角なら次の配信のサムネイル準備でもしてるから、たぶん起きてるわ!貴方のPC使っても平気なのよね?』
『いいよ。君なら変な事しないのは分かってるし、大事なファイルはちゃんと別保管してるから好きに使って。編集に使ってるって言ってたソフトは入ってるよ』
『ホント!?』
『前に教えてくれたからね。僕も社内のプレゼンテーションの資料作成で使うときに便利だったから助かったよ』
「エヘヘ」
彼の言葉に照れて、ビジューは胸元に顔を擦り付けた。
「アー、エート……」
「ん?」
「……ダイスキ!」
「ありがとう、僕も好きだよ」
拙いながらも日本語で愛を伝えるビジューは、そのまま伸び上がって彼に口づけ。
『……今日はまだしてなかったから』
『仕事前にありがとう。頑張れそうだよ』
『そう?なら、もう少し補給しておく?』
『そうだね、お言葉に甘えようかな』
『喜んで!』
そのまましばらく、お風呂の準備完了の音がするまで、座ったままの体勢でイチャつき続ける2人だった。