『Ninomae Ina'nis(一伊那尓栖)』は愛称イナと呼ばれる、ホロライブEN1期生に所属する人間である。本人曰く『古き神』の司祭であるのだが、そんな事より大体の人が一目見て気になるのが、彼女の背負う大量の触手だろう。
ある日拾った本を読んだらいつの間にか現れていたらしく、なぜかイナの意のままに操れるのだとか。時折イナの意に反した動きをしたりもするため、どうやら意思があるようだが詳細は不明。もちろん過去には研究しようとしたものもいたらしいが、心優しいイナは協力しようとしたものの、この触手を長い時間直視すると精神に異常をきたしてしまうらしく、耐えられる者がいなかったために不明のままとなっている。なお、ホロライブには神性を持つもの、またはそれに関わりを持つものが何名か所属しているが、皆口を揃えて「あれは私たちとは違う」と述べているため、どうやら系統の違う神の力の一端ではあるようだ。
「新しい本、たくさん買えました」
「それは良かったね。今日の買い物を楽しみにしてたのは知ってるから」
イナは読書が好きであり、日本文化も好きなオタクの一面も持つ。故に1年の殆どを日本で過ごしている彼女は、頻繁に漫画や小説を買い漁っているのである。今日も日本に移住しているENの友人と買い物へ行ってきた所だった。なお、現在日本にいるメンバーはイナも含めて日本語堪能であるため、どこへ行くにも不自由しないのである。
「貴方が、新書を教えてくれるから、いち早く買えるの。いつもありがとう」
「仕事のついでにこっそり教えてるだけだからね」
イナのパートナーは日本でも有名な、アニメ等の2次元に精通している書店の店員であり、彼女が好きそうな新刊が入る日程がわかると、それとなく教えてあげていたりする。ちなみに、イナの買う本の大半は彼の家に収納されていたりするが、彼も後で読んだりしているのでその辺は気にしていないようだ。
「お絵描き用の道具も新調出来たから、今度また新しい絵を描くよ」
「それは楽しみだね」
イナはホロライブ全体でもトップクラスの画力の持ち主であり、お絵かき配信は人気のコンテンツである。過去にはイナの描いたイラストをグッズに採用したメンバーも居たりする位である。
「私、何かお礼してあげたい」
「僕に?」
「うん。いつもお世話になってるから。何でもいいよ?」
ニッコリ笑って腕を広げるイナ。彼女曰く1番楽だというデビュー当時の格好は、肩や脚などの肌面積の露出が多く、彼にとって色々と目の保養になっている。
「んー……、じゃあ折角だし甘えようかな」
「わぷっ!」
彼も素直にイナを抱き締めた。彼女はやや驚きつつも、彼の胸元に顔を埋めた。
「珍しいね。いつもなら私の格好みて恥ずかしがるのに」
「恥ずかしいのは変わらないけど、それはイナもそうじゃない?今日は随分とグイグイ来てる気がするよ」
イナは自他共に認める引っ込み思案であり、オフコラボの際にもかなり控えめである事を他メンバーにバラされている位である。実際、普段のイナは彼の前で通常の格好をするのはなかなか珍しく、所謂睦み合う際に景気付けで着る程度である。
「カリやべーが最近グイグイいって上手くいったって言ってたの。私も羨ましいなって」
「そうなの?」
「うん。ほら、私そんなに恵まれた身体つきしてないからあんまり自信はないけど。BOINなカリは兎も角、同じようなべーが思い出しただけで蕩けた顔してるの凄いなって」
「僕はイナの蕩けた顔好きだけど」
「そ、それは貴方にしか見せないからいいの!」
赤らめた顔をグリグリと彼に埋めつつ、時折見上げては目を逸らす事を繰り返しているイナ。
「それで2人に相談したら、『イナの最初の格好がすでにHだから、それ着て彼に迫ったら十分よ!』って口揃えて言うからやってみたの」
「なるほど。効果覿面だね」
「てき、め……?なにそれ?」
「僕にはしっかり効いてますってこと」
「おー……」
ギュッと抱きしめる力を強めた彼に、呆けた声を出すイナ。
「……つまり貴方も、私のこの格好はHだと思ってるの?」
「聞かれたから答えるけど、そりゃあもう。こんなにスベスベな肌たくさん出してて、そう見ない男は居ないよ」
「わぁ、アイドルの衣装をそんな目で見てるなんて」
「ダメかい?」
「他の人ならうーんってなるけど、貴方ならいいよ。触る?」
「もしかして誘ってる?」
「うん」
「なら遠慮なく」
彼の手が、肩口を優しく撫でるのに合わせて、イナの呼吸が少しだけ荒くなった。
「擽ったいわ」
「でもこうやって焦らされるの好きだよね」
「うん」
剥き出しの背中などに触れると、その度にピクリと反応するイナ。しかし、堪えている彼女を差し置いて、より顕著に反応しているものがあった。
「……あの、君の背負ってるものがだんだん」
「貴方が私を焦らしすぎるのがいけない。この子もそういうのは理解してるからね」
普段は彼女が出そうとしなければ出てこないはずの触手が、いつの間にか勝手に出てきており、彼の事をグイグイとイナに寄せようとしていた。
「随分献身的……、というか、力強くない!?」
「もっとしてほしいみたいだよ。私と感覚共有してるし」
「それはイナもって事じゃ」
「それは言わないお約束」
ただでさえ露出の多い服が自然と捲れており、慎ましやかな胸や、しなやかな脚、さらには背中を通り越して綺麗なお尻までもがこれでもかと顕になっていたが、イナは一向に気にすることなく、彼へとしなだれ掛かっていた。
「あの、もしかしてだいぶキてる?」
「えへへ、あの2人に相談ついでに色々と聞かされちゃって」
「あっ……」
「この子もちゃんと使えるように色々とお話して試してきたから」
スリスリと頬を触手に寄せるイナ。触手も嬉しそうにウネウネしている。それを見た彼の背に少しだけ冷たいものが走った。
「あの、僕が知ってるそれは、どちらかというと女の子が責められるんじゃないかなって」
「そうだね。私もそういうの読んだことあるから分かる。後でそれもさせてあげるよ。私もこの子達を自分に使ったことないから楽しみ。貴方の言うことなら聞いてくれるよ?」
「そ、それはよかった……?というか、なんでそんな乗り気なの?」
「体格的にいつもは私が啼かされてばかり。でも、この子で捕まえちゃえばヤりたい放題って聞いた。だから楽しそうだよね」
「誰だ、そんな事吹き込んだのは……!」
言っている間にゆるゆると彼の腕や足に纏わりついてくるモノ達。彼も若干顔が引けてきている。
「えへへ、明日は貴方も私もお休み。たくさん出来るね」
「あの、せめてお手柔らかに……」
「手は柔らかいよ。たくさん触ってあげるね」
「絶対意味わかってる……!」
目を爛々と光らせて、妖しく笑うイナをみて、彼はこの後の自身の色々な意味での無事を願うのだった。
少しメタい話ですが、彼女を担当されているママの絵がとても好きな筆者です。