秘書艦である吹雪が、司令官の弱い部分を肉体的にも精神的にも受け止める存在になるお話です。
ある夜、司令官に呼び出された私は彼の私室へと向かいました。
要件については半ば理解していたので、心の準備と身支度は済ませてあります。
中にいる人にだけ聞こえるような控えめなノックの後、小声で呼びかけます。
「失礼します、司令官。吹雪、参りました」
カチャリ、と鍵が外れる音がして司令官が無言で私を招き入れてくれます。
中に入って鍵を掛けていると、おもむろに彼が後ろから抱きついてきました。
一瞬の動揺と同時にやっぱり、と自分の予想が合っていたことを理解しました。
「し、司令。その、まずベッドまで行きましょう?ねっ?」
拒絶するのではなく諭すようにして司令官を連れ、ベッドに隣り合って腰掛けます。
そして受け入れるように両腕を広げて、彼に迎え入れる意志を表現します。
すると彼は驚くような早さで、私の身体を抱き寄せました。
「っ……!」
彼は私の胸に顔を埋めて、ぎゅっと身体に腕を巻き付けるよにして抱きついています。
少し苦しいですが、必要とされている満足感もあって不快な感情はありません。
そのまま数分間、何も言わず彼の頭を抱いてあげました。
「………」
沈黙が続いている内に、ふと司令官とのきっかけを思い出してしまいました。
確かあの日もこんな風に静かで、吸い込まれそうな夜だった記憶があります。
司令官と"こういう"関係になったのは数ヶ月ほど前、真夜中に偶然見かけた司令官に声を掛けた時の事でした。
「司令官……ですか?こんな夜中に、どうかされたんですか」
私の呼びかけに振り向いた彼は、これまで見たことがないような表情をしていました。
仕事で辛いことがあったのか、あるいは過去のトラウマを思い出してしまったのか。
ともかく普段の精悍な彼からは想像もできない、今にも崩れてしまいそうな憔悴しきった顔でした。
「………司令官」
そんな彼を見て、無意識の内に私は司令官に近づき、抱きついたのです。
部下として、あるいは異性としての憧れもあったのでしょう。
しかしそれ以上に、ともかくあの時はただ、彼を支えてあげたかったのです。
「大丈夫です。私がここにいますから。大丈夫ですから……」
彼は驚いたようでしたが、拒絶されることはなく、ややあっておずおずと無言でこちらを抱き返してきました。
そのまましばらく、二人で抱き合ったまま、お互いの体温を感じ続ける時間を過ごしました。
一体どれだけそうしていたことでしょう。数分だけだったかもしれませんし、あるいは1時間近くそうしていたのかもしれません。
しかし私にとっては決して不快ではない、忘れられない一時になったのでした。
翌日彼は何時も通りの時間に起き、いつものように皆に指示を出し、私もいつも通り仕事をこなしました。
表面上は何も変わらず、普段通りの日々。
変わったのは、週に1度個人的な呼び出しを受けるようになったことです。
内容は抱きついたりキスだけを一晩中する日もあれば、最後まで"致す"時もありその時々です。
「……?」
そこまで思い返していた所で、司令官の呼びかけに我に返ります。
「す、すみません!ちょっと考え事してて……だ、大丈夫です、すぐ脱ぎますねっ」
幸い彼は怒っている様子は全く無く、むしろ体調でも悪いのかとこちらを気遣ってくれて、申し訳無さに胸がチクチクと痛みます。
目の前の司令官への対応が疎かになってしまったことを詫び、慌てて行為の続きへと戻ります。
腕を離してもらい、彼に背を向けて上着に手を掛けて一気に脱ぎ去ります。
そしてきちんとたたまないことに若干の罪悪感を抱きつつ、脱いだ服をベッドの脇へと置きます。
「ふぅ……」
もう何度も繰り返していることなのですが、未だに服を脱ぎ彼に裸体を晒す時は緊張してしまいます。
ホックに手を掛け、最近ワンサイズ大きくしたブラジャーを外し、彼に向き直りました。
そして羞恥心を振り切り、胸の前に隠すようにして出していた手をどけて呼びかけます。
「司令官、その……どうぞ」
露わになった私の胸へ、司令官が顔をうずめます。
そして右側の乳房へ、赤ん坊のように吸い付いてきました。
「んっ……!ふ、ぁっ……!!」
男性は胸を触ったり揉むものだと私は聞いていたのですが、彼はそれよりも顔を埋めたり乳頭へ吸い付く方が好みのようでした。
曰く、そちらの方が落ち着くのだとか。
「ふふ…おっきな赤ちゃんみたいですね。いいですよ、そのまま……ぁんっ」
私の胸に夢中になっている様を見ていると、先程抱きつかれたのとは別の感情が溢れてきます。
さっきまでが女としての悦び、いうなればこちらは母性本能と言うべきなのでしょうか。
彼のゴワゴワする後ろ髪を梳くようにして撫でていると、本当に母親になったような気さえします。
「ふぁ、ふっ、んぁ……んっ、ぁんっ」
妊娠していないのでいくら吸い付いても母乳は出ないのですが、司令官が言うには仄かに甘い風味がするとか。
ちんちくりんの私でそうであるならば、母性の塊である愛宕さんや鳳翔さんはもっと甘かったりするのでしょうか。
気になりましたが、自分の胸を吸うことはできませんし永遠の謎ですね。
……彼に他の女性に甘えてほしくない、という個人的な願望もありますが。
「きゃっ、んっ、ぁっ……!しれぇ、激しすぎ、ます……っ!」
先程の勢いのある抱きつきから察していましたが、彼はずいぶんと欲求が溜まっていたようです。
普段よりも大きな音を立てて吸い付き、空いている方の乳房を右手で激しく揉みしだいて来ます。
この所任務続きで、久方ぶりの逢瀬だから仕方がないのかもしれません。
少し怖いですが、両方の乳房から与えられる刺激は確実に私に快楽と興奮をもたらしていました。
「やぁっ……そんなに、音立てちゃ……はぁ、あんっ!」
司令官も我慢できなくなってきたのでしょうか。
先程までの彼が私に抱きついている体勢から、少しずつ私が押し倒されている体勢へと変わっていたのです。
ベッドが背中に当たり、司令官から逃げられない状態であることを理解し、その支配されている、屈服させられているという認識が更に私を興奮させました。
下腹部が熱を帯び切なくなり、もじもじと太ももをすり合わせるのを抑えることができません。
「ふっ、んっ……ゃっ、そこっ、乳首、つねらないでぇ……ひんっ!」
司令官とこういった行為をするようになり女としての悦びを教えられる内、私の身体は少しずつ変化していきました。
年相応の大きさだった胸は女性らしい膨らみを帯び、先日ブラのサイズを一つ大きくしなければいけませんでした。
入渠時に同僚にからかい半分に色っぽくなったと言われ、いなしつつも内心焦ったのは記憶に新しい出来事です。
といっても夕立ちゃんや浜風さんほどではなく、少し膨らんだ程度なのですが……そこに僅かな優越や喜びがないと言えば嘘になります。
「ふぅっ、あぅ、痕、ついちゃっ……噛むのも、駄目ですってばぁ……っ」
司令官は右利きなので、私の右の乳房に吸い付きながら左胸を揉むことが多いです。
それを享受している内に、私自身もそれが性癖となってしまったのか、自分を慰める時に右の乳首を弄ることが多くなりました。
そのためか一見するとわかりませんが、私の胸も右の方がやや乳首が大きく、左胸の方が膨らみが大きかったりします。
自分の身体の変化に最初は戸惑いましたが、彼好みの身体に変えられていると考える内に戸惑いは消え、やがて喜びへと変わっていきました。
もっと私を使って欲しい、支配して、自分好みに作り変えて、ずっとずっと私に欲情してほしい。
……歪んだ喜びであることは、わかっていました。それでも私は、司令官の傍を離れるつもりは毛程もありませんでした。
「ひゃっ、そこは駄目、だめですっ……やっ、はぁ、んっ……ゃあっ……!」
彼の右手が私の乳房を離れたと思った次の瞬間、スカートの中へと突っ込まれます。
脱がすのももどかしいとばかりに、下着越しに既に濡れている秘所を指でグリグリと容赦なく責められます。
私はビクリと身体を仰け反らせ、為す術もなく彼に己の秘所を弄ばれることしか出来ませんでした。
時折、太ももにズボン越しに分かるくらいに勃起した彼自身が擦り付けられ、今日は”最後までする日"なんだということを熱に浮かされた頭でぼんやりと理解します。
「ふぁ……しれい、かん……?」
不意に彼の手が止まり、確認するかのように私の目を見つめてきます。
すぐに何を求めているか察し、私も無言でこくんと頷きました。
そして自らスカートを脱ぎ捨て、下着をずらして自身の秘所を露わにします。
散々焦らされたそこは既に薄暗い照明でも分かるくらいに濡れそぼっており、彼の侵入を今か今かと待ちわびているのが丸わかりです。
(やだ……こんなに濡れてる……)
司令官もカチャカチャと音を立てベルトを外し、反り返った男性器を取り出しました。
既に先走りで亀頭がてらてらと光り、射精したくて堪らない様子を伝えてきます。
いつより大きく、獣性を剥き出しにした凶暴な目の前の肉棒を前に、私は無意識にこれまでしたことのないことを試みたのです。
「司令官……」
普段通り大人しく挿れられるのを待つのではなく、自ら脚を開き、秘所を指で広げ、迎え入れるようなポーズをしてみせたのです。
彼の激しい情欲にあてられたのかもしれません。あるいは、私も欲求不満だったのでしょうか。
目の前の彼の瞳に、ぎらついた欲情の光が宿ります。ふぅー、ふぅーと歯の隙間から押し殺したうめき声が漏れ、今にも飛びかかってきそうな彼の様子は正しく獣のようでした。
ダメ押しとばかりに、経験の足りない頭で必死に男心を誘う文句を考え捻り出します。
「もう、我慢できないんです。来て下さい、貴方のものである吹雪のことを、滅茶苦茶にしてください……っ!」
我ながら何てはしたない格好と台詞でしょうか。
しかしそう思う一方で、その痴態を好きな人の前で晒している事実がどうしようもなく私自身を興奮させました。
そしてそれは目の前の彼も同様のようで、辛抱たまらないとばかりにこれまでにない勢いで私を組み組み敷いてきました。
すぐさま股を押し広げられ、私の中に音を立てて彼自身が突き立てられます。
「はあっ……んっ!!」
挿入されると同時に、彼はすぐさま腰を前後に動かし始めました。
最初から容赦のない激しい腰使いで、私の中にずんずんと衝撃と快楽を叩きつけてきます。
ベッドがギシギシと唸り、下腹部から淫猥な水音が室内へ響き、行為の激しさをこれでもかと伝えてきます。
「んっ、あっ、あっ……や、あぁんっ!!
ぁっ、いやっ……はぁっ、そこっ、ふかいぃ……っ!」
普段よりも遥かにハイペースですが、十分にほぐれきった私の肉体はぶつけられた欲望を喜んで受け入れました。
跡が残ってしまうのではないかと思う程強く掴まれた腰。
時折唇に振ってきて呼吸を乱す強引な口づけ。
まるで性処理のための道具のような扱いですが、そこに恐怖や不安はまるでなく、ただ快楽と圧倒的な喜びだけがそこにありました。
自身の肉体が求められている喜び、女に生まれた喜び、それを最高に感じている瞬間だったからでしょうか。
「司令、しれぇ……すき、好きです……!はぁっ、んっ、ぁんっ、もっと、もっと来てください……!」
彼への感情が爆発し、ただ己の内面を整理することもなく垂れ流してしまいます。
そんな拙い言葉でも多少は意味が伝わったらしく、彼の一物は私の中で更に膨れ上がり、私の膣内を容赦なく角度を付けてえぐってきます。
目の前の乱暴なまでのエクスタシーに押し流され、私はすぐに意味のある単語を口に出来なくなり、ただ身を捩らせ喘ぐだけの存在に成り果てました。
「あんっ、あっ、ああっ、やっ、やぁっ、司令官、わたし、もう……!!」
行為の激しさは、長続きしないことの表れでもありました。
普段よりも遥かに早く、私も彼も限界へ達してしまったのです。
最初に達したのは彼の方で、溜め込まれた精液を私の中へ躊躇うことなく吐き出しました。
びゅるびゅると熱を持った粘液が最奥へと注ぎ込まれるのを感じたと思った瞬間、私も絶頂していました。
「あっ、あああぁっっ!!!!!」
背中を仰け反らせ、自分の声と思えない悲鳴のような甲高い喘ぎを発して、ビクビクと全身が別の生き物のように激しく痙攣します。
しかし私の中の女はそんな意識が飛びそうな状態でも貪欲で、より多くの快楽を味わおうと、より多くの精液を搾り取ってやろうと、射精中のペニスを不規則に締め上げます。
最後の一滴が注ぎ込まれるまで、それは続きました。
「はぁ、はぁ……」
長い射精が終わり、荒い息を吐きながらお互いの視線が交差します。
乱れた髪とお互いの体液で濡れて光る裸体、荒く色っぽい息遣いと淫気に溢れた室内。
その時そこにいたのは上官と部下ではなく、ただ一組の男と女でした。
そして篭る熱を慈しむようにそっと下腹部を撫でながら、私は目の前の彼に微笑みます。
愛してもらえた喜びと幸せを伝えるため、そして更に行為を続ける意思があるのであれば、いつでも応じることを伝えるために――
………
……
…
酷い様子の室内の清掃が終わり、ベッドを整え終わったところでようやく人心地がつきました。
後始末が終わった部屋を眺めていると、行為の激しさと対照的な静けさに溢れていて、お祭りの後のような侘しさが胸中に湧き出します。
司令官はというと、行為を終えた後は普段の彼に戻ったように見えます。
「………」
しかしよく見ると、僅かに照れや自己嫌悪の色が混じっているのが読み取れました。
性欲に任せ乱暴にしてしまったことを気にしているのかもしれません。
憮然とした表情の彼をどこか可愛いと思ってしまうと同時に、表情の変化が読み取れるくらいの付き合いになってきたのだと思うと、感慨深さを感じました。
「司令官、ありがとうございました。"また"来ますね」
気にしていないことを伝えるために、そう言って彼に笑いかけて部屋を出ます。
彼は私との行為が終わる度に私に申し訳なさそうにします。
その度に私は気にしていないということを暗に伝えてきました。
本当に彼が気に病む必要はないのです。
何故なら私は、むしろ彼の弱い部分、素の部分に惹かれているのですから。
そういった脆い部分を普段は決して部下に見せない彼を尊敬し、私にだけ見せてくれることに幸福を感じているのです。
しかし司令官は、優秀で強い人でもあります。いずれ彼は、私を必要としなくなるかもしれません。
それならそれで、仕方ないことだと思います。そうなった時は、私が好きな彼がいなくなってしまったことでもあるのですから。
どんな形であれ、私は今の司令を受け止め続けるつもりでした。
しかしそれでも、少し、もう少しの間だけで良いので。
弱いままの司令官でいて欲しい、私の前でだけ本当の司令を晒して欲しい。
そう考えるのは私のワガママなのでしょうか。
悩んでいる内に、空が白んできていることに気が付きます。
皆が起き出してくる前に、入渠を済ませて部屋に戻らなければいけません。
「痣、残っちゃうかな……消えるまでは他の子と入渠できないから出撃任務控えなきゃ」
彼に乱暴に掴まれた部分をそっとなぞりながら、私は独り言を呟きます。
私にできる範囲で、皆にバレない努力は怠りません。
これからも、司令だけの吹雪であり続けるために。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。