秘書艦である大淀が、夜の生活では提督にリードされっぱなしで反撃しようとするけどなんやかんややられるお話です。
「ふ、あーぁ……もう、朝ですか」
欠伸を噛み殺すのに盛大に失敗して、はしたなく大口を開けてしまった。
普段ならこんなことはないのだが、昨夜は眠りに就くのがかなり遅くなってしまい、まだ眠気が残っているようだ。
(こんなだらしない姿、鎮守府の皆さんには見せられませんね)
身体を起こし、ぐっと伸びをする。
秋の終わりを感じさせる早朝の冷え込みに晒され、寝具の温もりが恋しくなる。
しかしおかげで眠気は大分マシになり、多少は意識が冴えてきたように思える。
(提督は……まだおねむですか、ふふ)
枕元の眼鏡を手探りで身につけた後、寝床を共にした隣人を見る。
普段精悍な顔つきで指示を飛ばす彼からは想像もつかない、無防備な寝顔。
他の娘は見られない、私だけの密かな特権。
(おっと、いけません。早く着替えて提督を起こす準備をしないと)
彼の微睡みを妨げないよう、出来得る限りそっと寝床から抜け出す。
すぐに起こさなかったのは、日頃忙しくしている彼を少しでも長く寝かせておいて上げたいという気遣い。
そして、多少なりとも身なりを整えてから起こしたいという女としてのプライドからの行動だった。
………
……
…
短めのシャワーを浴びた後、身なりを整え鏡の前でセルフチェックを行う。
「ネクタイ良し、カチューシャ良し、後は眼鏡の位置……良しっ。着替え完了です」
眼鏡を最後にするのは個人的なこだわりだ。
特に意味はないのだけれど、これをやらないと何だか落ち着かない。
「さて、提督を起こさないと……っ!?」
はっきりとした目覚めと、起床直後に比べて僅かに高く昇った日のおかげで明るくなった部屋。
それらの要因が重なり、先程は気が付かなかったある事実に気がついてしまう。
布団越しでもうっすら分かるほどにこんもりと盛り上がった、提督の下腹部。
生理現象だと頭では理解しているものの、直に見せつけられてしまうとやはり驚く。
(やだ……わたしったら、何考えてるのかしら)
まじまじと布団の膨らみを凝視してしまう。いけない、と理性が警鐘を鳴らすも目を逸らすことができない。
不意に、昨日の情事が脳裏に蘇る。
大規模な作戦が無事に終わった解放感も手伝って、いつもより激しく互いを求めあってしまった。
途中から記憶が朧げだが、良いように喘がされて、はしたなく乱れて、何度も彼への想いを叫んでしまったような気がする。
先程の大欠伸以上に他の子には決して見せられない部分を、いつも彼にだけは暴かれてしまう。
(それが嫌、という訳ではないけれど……いつもやられっ放しというのは気に食わないですね)
他に誰もいるはずのない室内を、後ろめたさから意味もなく見回してしまう。
提督とは公私共に良いパートナーでいるつもりだし、そうあり続けたいと考えている。
しかし少なくとも夜の性活においては、彼にイニシアチブを握られっ放しだ。
もちろん十分な、むしろ十分すぎるほどの快楽を得ているし奉仕している喜びや満足感も確かに感じている。
とはいえ、仮にも艦隊の頭脳を自称する以上は私生活においても提督をリードしていきたいというのが偽らざる本音である。
(特に昨日は良いようにやられてしまったことですし……提督、これは自業自得ですよ?起きない貴方が悪いんです)
先程抜け出した時とは違う意味で、彼を起こさぬよう静かに掛け布団の下半分を捲る。
「う、ん……」
捲った瞬間、提督が小さな唸り声を上げ思わず身構える。
しかし数秒後、再びいびきを掻き始めたのを確認してほぅ、と息を吐く。
目の前にあるのは、下着一丁の提督の下半身。
改めて下着越しに膨れ上がっている男性のシンボルを見せつけられ、思わずゴクリ、と音を立てて生唾を呑み込んだ。
慎重に下着に手を掛け、苦しげな膨らみを解き放つと、ブルンと音を立てて剛直が天を突く。
(すごい……提督は眠っているのに、まるで別の生き物みたい)
普段は薄闇の中で"致す"ので、こんな風に明るい内にじっくりと観察するのは初めてかもしれない。
重力に逆らいピンと孤立する、赤黒い巨大な肉棒。
凶悪に浮き上がった太い血管と不規則にビクビクと痙攣する様は、まるでこちらを威嚇しているようだ。
強烈な存在感を放つソレに、視線も意識も吸い寄せられてしまう。
(これが、昨日私の中に、何度も……)
手を添えると、両手を使っても隠しきれるかどうかという大きさに戦慄する。
こんなものが自分の中によくも入ったものだと人体の不思議に感じ入る。
手を介して男性器から躍動が伝わり、自分の下半身にもジンと痺れるような熱が帯び始める。
(それでは、お寝坊さんの提督に……少し強烈なモーニングコールをさせて頂きますね)
「んっ、はっ、ちゅっ……」
両手を包むように添えたまま、ペニスの先端にそっと口付ける。
ちらり、と提督の方を見るも、まだ起きる気配はない。
僅かにほっとする。起こすためといっても、まだ心の準備が出来ていない。
敵の反撃がないのを良いことに、ゆっくりと口撃を再開する。
「んちゅ、んぅ、ちゅっ……んっく、はぁっ、んぐっ……じゅぷ、じゅる……っ」
先端を口内に取り込み、舌で亀頭全体を舐め回すようにして重点的に舐る。
手は竿に添え、裏筋部分を優しく擦り上げる。
フェラチオは初めてではないが、いつも彼から頼まれる形で自分からすることはなかったので何だか新鮮だ。
攻めている感覚と寝込みを襲っている背徳感に、背筋にゾクゾクとサディスティックな悦びが走る。
(やだ……私の方も何だか……)
空いている片手を自らの秘所に滑り込ませると、そこは既に熱くうっすらと濡れていた。
一物を舐めているだけで愛液を溢れさせている事実に羞恥を感じつつも、興奮に手が止まらない。
2つの出処が異なる水音が室内にピチャピチャと響き、淫猥な雰囲気に包まれる。
「んっ、じゅっ、ちゅるっ、ちゅっ、じゅるっ、ちゅぷ、ちゅ、ぁんっ……!」
口で提督のものをしゃぶりながら、片手で自身を慰める。
我ながらどうかしている、そう頭では分かっている。分かっているのだ。
せっかく整えた髪や服装は乱れ、眼鏡はずり落ち、もう一度シャワーから浴び直しになるだろう。
「んくっ、んっ、ぁあっ……ぃとく、提督……あっ、んっ、やぁっ!」
ああ、それでも、ああ。
私は彼の前ではどうしようもなく乱れ、雌としての本能を剥き出しにされてしまう。
いつしか私は彼の肉棒を愛撫することよりも、自分を慰めることに夢中になってしまっていた。
声を抑えることも忘れ、火照った肉体の衝動を解き放たんと更に激しく自身の中を掻き回そうとした、その時だった。
「ずいぶん、派手な目覚ましだね」
一瞬で血の気が引き、どっと冷や汗が吹き出す。
無論、私の声ではない。
弾かれたように顔を上げると、声を掛けてきた部屋の主がにやにやとこちらを見て笑っていた。
「て、提督っ!いつからっ」
「ついさっき、君が僕のことを呼んだ辺り。起こされたような気がしてさ」
そういえば自慰に夢中になっていた時に、彼のことを呼んだ気がする。
こんなことをされればいずれ起きるに決まっているのだが、そんな当たり前のことを一瞬忘れてしまうほど、私は目の前の快感に夢中になっていたらしい。
「これは、そのっ」
「そんなに慌てなくてもいいよ。君がプライベートだと結構、好き者なのは知ってたし」
羞恥で頬がカーッと熱くなる。
それはまぁ、こんな場面を見られて今更呼称に拘るも何もないのだが、それでももう少し言い方というものがあるだろう。
よりにもよって好色、好き者とは。まさか、そんな風に思われていたなんて!
「す、好き者ぉ!?」
「あれ、ムッツリ助平とでも言ったほうが良かったかな」
いけない、このままではすっかり彼のペースだ。
一度深呼吸する。それでもなんとか、なんとかしなければ。。
「わ、私はただ……そう!昨日の貴方が少々やりすぎでしたので、その……お返し、というか……むしろ忠告、というか?」
「ほうほう、忠告ねぇ」
我ながら苦しい言い分だ、それでも一度絞り出したものを引っ込める訳にもいかない。
「そ、そうです!それだけで、私がこうしたかったという訳では」
「男の寝込みを襲ってる内に昂ぶってきちゃって、オナニー始めちゃってるのに?」
直球の爆弾を放り込まれ、空気が固まる。
事実なのだが、こうもはっきり言われると自分の行為の凄まじさに軽く目眩がしてくる。
「っ……」
何か言わなければと、気は早るというのに口が追いつかない。言葉がまるで浮かばない。
頬がかあっと熱くなり、面白な自分の顔が間違いなく赤面しているであろうことを確信する。
図星という二文字にKOされた私は、敗北感に打ちのめされながら顔を伏せた。
喋らなくなってしまった私に、提督は布団から身体を起こした。
そして上体を近づけてきたかと思うと次の瞬間、今度は私の方が押し倒されてしまっていた。
「やっ、提督、駄目っ、遅刻しちゃいますよ……!」
これから何をされるのか瞬時に理解し、形だけでも抵抗を試みる。
形だけと言ったのはこれまでの経験上、この流れから事を済ませずに終わった試しがないのが一つ。
寝込みを襲った自分がこんなことを言っても説得力がないのが二つ。
とっておきに、絶頂前に梯子を外された私の肉体はだらしなく火照り、疼き、続きを渇望してしまっていた。
「大丈夫、もともと今日の午前は急ぎの仕事以外は非番の予定だったろう?それに、さ」
ずい、と顔面スレスレに怒張する男性器を突き付けられる。
私の唾液とカウパーでぬらぬらと妖しく光る目の前の肉棒に視線が吸い寄せられ、自然と息が荒くなる。
「……ひぅっ!?」
注意を男性器に引き付けられている内に不意に下半身に甘い衝撃が走る。
下着の中に手を入れられたらしく、一瞬、だが確実に濡れそぼった秘所の感触を確認されてしまった。
「お互い、ここで止めちゃっていいの?」
下着から抜き取られた指先をずい、と突き出される。
そのまま目の前で愛液でぬめる指をゆっくり意地悪く動かし、糸を引いている様まで見せつけられしまった。
全身をバラバラに弾け飛ばせてしまいたいほどの悔しさと恥ずかしさに、叫び出したい衝動を必死に押し殺す。
「それ、は……」
ここで私が『止める』と一言言えばおそらく彼は従うだろう。
それを目の前のニヤケ面の男に叩きつけられたら、どんなに痛快なことだろうか。
しかしそう思いながらも私は、そのただ一言を喉から絞り出すことが出来ずにいた。
(体調管理の一貫?このままだと業務に差し支えるから?)
脳裏に無意味な言葉の羅列が木霊する。
誰に聞こえる訳でもない、自分を納得させるだけの方便。
そして、さんざんじらされていた自分の身体ももう限界が近づいていて。
「……」
無言で、自ら股を開く。
スカートを上げ、下着をずらし、とうに受け入れ準備が出来ている秘部を自ら露わにしていく。
「……早く、済ませてくださいね」
目を反らしこれだけ言うのが精一杯の強がりだった。
彼が始めからこうなると分かっていた、としたり顔で笑うのを見たくなかったのだ。
そんなものを見せられてしまったら、肉欲を上回る怒りで彼のブツを蹴り潰しかねない。
「大淀のそういうところ、好きだよ」
「こんな場面じゃなかったら、もう少しときめく台詞でしたね」
それでも『好き』のただ一言で僅かに怒りが和らぐ自分がいることに辟易とする。
惚れた弱み、なんて本人には絶対に言ってやらないけれど。
提督が私の腰に手を掛ける。
「挿れるよ」
「はい……ぁんっ!」
唾液と愛液でお互いの性器がすでに十分濡れていたためか、前戯なしでも挿入はスムーズだった。
切望していたモノの到来を喜ぶかのように、膣壁がうねうねと轟き、提督自身を甘く締め上げる。
「ぁっ、ぁんっ!ていと、くっ、ふぁっ、あっ……激し過ぎっ、やぁ、あんっ!」
提督の方も我慢の限界だったらしく、挿入直後から容赦なく腰を振り責め立てて来る。
パンパンと音を立てて腰が打ち付けられ、その度に稲妻のような快感が全身に走る。
「っ……大淀、いつもより、キツい……!もしかして、恥ずかしい方が感じるのか?」
不意に耳元でそう囁かれる。
「あんっ……ち、違いますっ……提督のが、いつもよりおっきいんです…ぁんっ!」
どちらが正解かなんてわからないし、どうでも良かった。
どちらにせよ普段よりも私も彼も感じていて、貪欲にその時間を味わっていたい、それだけだった。
「あっ、そこ、んっ……いい、のぉ……っ!」
「っ、はぁ、はぁっ……!」
最奥を一突きされる度に背筋を反らし、髪を振り乱しては甲高い声で喘がされる。
はしたない、と一欠片残った理性が呟いた気がしたが今の私にはそよ風ほどにも届かない。
「はぁあっ……ていとっ、もっと、来て……!」
「ぐっ……大淀、大淀ぉ……っ!」
名を呼ばれる度、荒々しく口吻される度。
脳裏にもやがかかったような甘い痺れが走り、女としての悦びに支配されるのを止められない。
身体の内側から得体のしれない何かがせり上がり、ビクビクと肢体が痙攣する。
「もっと、もっとぉ……!私を、使って……っ!!」
「っっっ!!!」
そして唐突に、終わりが訪れる。
身体の内側に溜め込まれた熱が臨界に達し、爆発したと同時に全身に特濃の快感が流し込まれる。
目の前に火花が散り、脳がスパークしたかのように錯覚する。
機能不全に陥っている脳の僅かに残った部分で、下半身に纏わりつく熱い粘液と荒く息を吐きながら体重を預けてくる提督を認識する。
どうやらほぼ同時に、彼も達したようだった。
「っ、はぁ、ふぅ……」
「はぁ、はぁっ……!」
荒く呼吸をする内に、全身に酸素が巡り、ようやく思考が戻り始める。
それに従い、お互いの汗と愛液まみれの酷い格好に部屋の惨状、見たくないものまで見えてきてしまう。
しかし一旦それらは脇にどけて、身体を起こす。
「大淀……?」
怪訝そうにこちらを見ながら何か言いかけていた提督の口を、私の唇で塞ぐ。
そのままたっぷり数秒彼の口内を味わった後、離れ際に一言。
「提督、おはようございます。
……そういえば、まだ言っていなかったので」
負けっぱなし、言われっぱなしは癪だから、せめて朝の挨拶だけでも先に。
なんの意味もない、我ながら小さなプライドだ。
でも私は一生、このちっぽけな自分と一緒に生きていく。
時々喧嘩はするけれど、今はこのプライドに従ってやりたい気分だったのだ。
彼が何か言い掛けているのを尻目に、私は後ろ手に扉を閉めながら本日二度目のシャワーへと向かう。
(もし入ってきて二回戦、なんて言い出したらどうしようかしら)
受けて立とうか、追い出そうか。
それを決めるのは、その時々の私のプライドに任せるとしよう―――
最後まで読んで頂き、ありがとうございました