ふたなり淫獄女王の幸せメス奴隷な婿―冴えない男の娘冒険者の僕が貞操観念狂ってる淫獄でふたなり淫魔女王のメス堕ち快楽調教に屈して実質王妃な国婿になるまで― 作:暁深夜
そして、その後朝食を食べてから天界へと転移した。気軽に、誰も泣かせずに行ける。きっと近所に買い物に行く感覚なのだろう。なんだかんだ聞く限り、アスモデウス様の実家みたいなところだし。
「はい! 着いたよ!」
美しい景色だった。美しくはあった。でも、なんというか……花畑と聖堂といった感じ。淫獄の自然を完全に支配下に置いた風景とは違う。どこか不自然だったのだ。
白い羽を生やした天使たちが並び、その間を通り抜ければ聖堂に続く。天使たちは、よく見ればその体のほとんどが歯車が噛み合って出来ていた。
「ここがアスモデウス様の……?」
尋ねる。
「うん、故郷。なんもないでしょ? それに、時間が止まったみたいで私はここが少し寂しい」
僕もそう思う、でも言葉に出す気はない。この場所のいいところを言葉にしたい。アスモデウス様の故郷すら、僕は好きになってゆきたい。
天使たちは微動だにしない。ただ並んで、何かを待ち続けているだけだ。この美しい景色を、この美しい列を、止めるだけでこうまでも寂しくできるのだ。
「そっか……」
そう、まるで絡繰り人形を並べた倉庫。魂の無い演者たちの、舞台の無い一面。だから、寂しく思えるのだろう。
「さ、行こう! メタくんはちゃんと話せるから!」
そんな中をアスモデウス様に手を引かれて歩き出す。
こんなに空はどこまでも広がってるのに、響く音は僕とアスモデウス様のものだけ。
―――――
聖堂の中の天使たちは動いていた。規則正しく役割をこなす者、座って瞑想にふける者。その最奥に鎮座する黄金のオルガンと、数多の色の光を下ろすステンドグラス。僕の目には、ただ美しいだけの無機質な世界に見えた。
オルガンの前には顔の半分だけ人間の天使がいた。
その天使だけは特別なのだとひと目でわかる。周囲に数えるのが嫌になるほどの翼を持ち、その翼に生える羽毛は一つ一つが硝子で出来ていた。
「姉上サマ……?」
その天使は言った。それで、その天使が誰なのかわかった。
「こんにちは! メタくん! あ、こっちはアレンちゃん! 私の恋人だよ!」
そう、メタトロン。アスモデウス様の弟にして、この黄金天を支配する大天使。
「初めまして、メタトロン様! 僕はアレン、元人間です!」
人間の神話において、天使に謁見するのはこの上ない名誉だ。なのに、今僕はそんな風には感じない。初対面の相手に、緊張しているだけだった。きっと神秘に慣れすぎたのだ。
「ハジメマシテ。オ会イデキテ光栄デス。メタトロント、イイマス。ソレカラ、姉上サマ。ヨウヤクオ相手ニ恵マレタノデスネ」
その喋り方には一切の感情の抑揚がなかった。しかし、それでもなお半分の顔が優しく、そして嬉しそうに微笑んで見えた。だから、本心なのだろうと思う。
「うん! 結婚式には呼ぶから、来て欲しいなぁ……」
本当に、姉と弟なのだ。どこか和やかな空気が感じられる。
「モチロン、戒律ニ家族ノ結婚式ニハ可能ナ限リ参列スルヨウニトモアリマス」
そして、その言葉は天使の性質をよく表していた。
「楽しみにしてるよ!」
僕は二人の話を聞いていた。メタトロンがどのようなことを不快に感じるのか、まだどんな人かわからないから。
「姉上サマ、アナタハ淫ラデアリナガラモ、ソノ貞淑サニハオ変ワリナイノデスネ……」
貞淑を司る天使が、淫らな人を貞淑だと言う。それはつまり、神の定めた貞淑さが、性欲の強弱に関係ないと言っているかのようだった。
「変わりたくないところだからね……」
そう言ってアスモデウス様は少し寂しそうに笑った。
「シカシ、変カワリマシタ。恋叶ッテカ、笑顔ガ一層増エマシタ」
「楽しいと思えれば思えるだけいいからね!」
今度は、嬉しそうに笑った。
「誇リ二思イマス」
と、メタトロンが微笑むと、アスモデウス様はその顔を両掌でガシッと挟んだ。
「メタくん~? 私、お姉ちゃんだよぉ? 子羊じゃないんだよぉ~?」
どこかふざけ半分、怒りも半分。なんというか、肩も肘も脱力したような姿だった。
「ソウデシタ……」
天使は戒律の遵守を第一として、それ以外のことがあまり考えられないのかもしれない。
「それで!? アルトリアちゃんのことどうして言ってくれないの?」
きっとそうだ。
「報告ノ義務ハアリマセン。言イニ、地獄ヘ行ッテイイカ判断デキマセンデシタ」
だって、メタトロンはそんな答えを返すのだから。メタトロンの人間の顔が少し寂しそうな顔をする。
「忘れたの? 義務のない事をして怒られたルシくんが、その後神様から直々の謝罪を受けたこと。あーあ、神様も変わらないなぁ……。人間界から学んだはずなのに。お互いに欲望をぶつけ合って、そこに規律が生まれることだってあるんだって、学んだはずなのに……」
大体人間の法律にはそういう部分があると思う。財産を得たい人と守りたい人がいて、だから窃盗は罪で、でも取引という形で財産を作れる。欲望をぶつけ合ってみて、じゃあこうしようなのかもしれない。
「ソウ、デシタ。シカシ、姉上サマ。ソレハ、天使ニハ難シイコトデス。何ガ許サレル欲望カワカリマセン」
それが、天使のあり方。アスモデウス様のような奔放さを手に入れられない理由だった。
「そうだね。難しい。でも、だから戒律があるでしょ? 戒律に書かれてないことは、良くなかったとしても叱られて許される欲望だよ! 迷ったら地獄においで? いつでも待ってるからね! 私たちはマキネル、この世界で一番古い兄弟姉妹なんだから!」
アスモデウス様は僕が思った通りの人だ。寛大で同情的。こんなに優しい存在が悪なわけがない。全然悪魔じゃない。ちょっと奔放なだけの、ただのいい人だ……。