ふたなり淫獄女王の幸せメス奴隷な婿―冴えない男の娘冒険者の僕が貞操観念狂ってる淫獄でふたなり淫魔女王のメス堕ち快楽調教に屈して実質王妃な国婿になるまで― 作:暁深夜
ひとしきり泣いた。泣いて落ち着くまで待って、アスモデウス様は言った。
「壊しちゃおっか? 教会組織。私ならできるよ、魔王だから」
でも、その言葉には慌てた。
「ダメだよ! 確かに、そんなすごくひどいこともする。でもね、たくさんの孤児を養ってるし、僕たち人間にはそれが当たり前なんだ……」
アスモデウス様なら当然にできると思う。それこそ人間界全部を、アスモデウス様のエネルギー資源として搾取し続けることだって。ほかの魔王や神様さえ許すなら。でも、許すかもしれない。あるいは、アスモデウス様をなだめるかも知れない。僕が見た神話の世界は、そんな世界だった。
「……ごめん、ちょっと我を忘れちゃった。ありがとう、なだめてくれて」
アスモデウス様は、今度はぽんぽんと軽く頭を撫でてくれた。
確かに怒りはくすぶる。ぶち壊したい衝動はあるし、そんな教会を恨んだりもする。でも、生まれた時からあるものを疑うのはすごく難しいんだ。アスモデウス様に出会う前の僕は、こんなにはっきりと疑えていなかっただろう。本当に魔女だったのかもしれないと、思ったことだってあったはずだ。
だから僕は、松明持ちへの加担で復讐を果たすことにしよう。殺して壊して終わりではこの心は晴れないんだ。だって、彼らに母がいて子がいる。その子らの悲嘆を想像したら、刃は必ず鈍る。
正しい教義を、聖典の原典を。隠匿を暴き、あるべき姿へと戻すのだ。
「ううん、ちょっと嬉しかった。一緒に怒ってくれてありがとう……」
そう、嬉しかったんだ。アスモデウス様が怒ることが。
「アレンちゃん、全然怒ってなかったよ?」
アスモデウス様の言うとおりだとしても、そういうことにしておく。
「怒ってるよ! 怒って、悲しくて泣いてる。だから、僕、松明持ちになりたい」
そう、彼女たちと一緒に松明を掲げ、秘された原典を照らし出す。灯火を手に、古びた遺跡の最奥から白日の元へとそれを運ぶ。
「じゃあ、私も政務がないときは協力するね!」
アスモデウス様は一国の王。その力をいつでも借りられるわけではない。でも、僕に淫紋がある。アルトリアに聖痕がある。十二分に、僕たちのそばには神話がある。
もう一度だ、マーリンとソロモンの物語をもう一度。僕とアルトリアには永遠の時間がある。だから、できないことなんて何一つ有りはしない。
例え、僕が一人でやるとしても必ずやろう。例え、幾度人の死に立ち会おうとも……。
「ありがとう!」
でも、アルトリアは協力してくれる。そんな気がする。だって、松明持ちがそもそもその目的の冒険者たちだ。僕はそこに加えてもらうだけだ。
「当たり前だよ! ただ、私たちは人間界に対して自分で行動を起こすことはできないの。私たちも、人間界から学ぶことがあって、それを守るためにね。だから、文化侵略も起こしちゃいけない。いろいろ悩ましいんだ……」
これまでずっと、興味がないものだと思っていた。でも言われてみれば、節々にアスモデウス様が人間界を気にかける言葉を言っていた。
悪魔とは欲望に忠実でもあるが、それでも規律や戒律を軽視するわけでもない。
「ちょっと気になったんだけど、どうしてそんなに戒律も大切にするの?」
その答えに、ちょっと感じ入るところがあったのだ。
「戒律を蔑ろにしすぎると、結局欲をみたせないんだよ! 欲は大切、でも急いで満たそうとすると失敗しちゃう。多分だけど、神様の言ってたベリアルってそういう事をしちゃったんだと思う」
身を崩す話は、歴史にこれでもかと転がっている。不幸を振りまく独裁者に、私腹を肥やすに注力しすぎた教皇。虐げた人たちの怒りに身を焼かれ、死んでいったのだ。確かに、欲をみたせたのか疑問が残るところもある。
「なんかすっごい腑に落ちたよ!」
他者から教訓を得ていく。それはきっと、どこかで終わるなんてものではないのだと思う。
「そっか! でも、アレンちゃんはそれでよく素直なままでいられたね……」
それに関しては、いくらアスモデウス様の言葉でも否定せざるを得ない。
「わりとそうでもないよ。だってさ、見下して利用して生きてきたから」
そう、素直なんかじゃなかった。僕の冒険者物語の話。
「え?」
そうは見えないと、疑いの目を向けるアスモデウス様。
「だってさ、僕を慰安目的で連れて行きたい人が居て、奴隷として売りたい人がいる。売り飛ばされそうになったら、連れて行きたい人に擦り寄って日銭を稼ぐ。肉体関係は、断りながら。逆に断りきれなさそうになったら、売り飛ばしたい人に擦り寄って圧力をかけてもらう。キズモノにするなってね!」
そう、そうやって生きていった。なんだかんだ言っても、その人たちの気持ちなんて考えたこともない。その人たちが、僕の気持ちを考えなかったとしても。
「うーん、仕方ないと思うけどなぁ……」
そんな僕の冒険物語、決して綺麗じゃない。あっちへフラフラこっちへフラフラ跛行して、爛れた物語を歩いてきた。こんな話をできたのは、アスモデウス様がどこまでも受け入れてくれる姿勢を見せてくれたから。
心のつっかえが取れた気がした。
「でもそれだって、あんな世界であんなふうに教えられて育ってきた人たちだからね。仕方ないよきっと」
僕が男らしい男として生まれてきたなら、そうなった未来だってあるかも。
「許してあげるの?」
許すもなにもだ。
「そういうこともあるかなって!」
そう思って、どうすることもできないことはそっちのけにして生きていこうということにした。