【書籍化】大司教の権力を悪用して純真無垢な聖女とセックスしたら、毎晩イチャラブご奉仕されるようになった話 作:月見ハク
王都へ帰還して、三日。
晴れた日の昼下がり、俺は執務室でマイの修練に付き合っていた。
「では私に麻痺の術を掛けてみなさい。全力でな」
「あの、でも……」
マイがローブの胸元をつかみ、心配そうにつぶやく。
「大丈夫だ。私は防護魔法を展開している。麻痺の術はあくまで不意打ちに効く魔法だ。油断さえしていなければ防げる」
「わかりました。では、いきます」
マイが俺に向かって手をかざす。
――麻痺の術。
キイィィンと鋭い音が鳴る。防護魔法が魔力を弾いた証拠だ。
「これで全力か?」
「は、はい」
彼女の息が上がっている。
「そうか」
あの宿屋で放ったときよりも威力が小さいのが気になる。
いや、そもそも聖女であるマイが攻撃魔法を扱えることが驚くべきことなのだが。
威力にバラつきがあって不安定というのは、いざ使おうというときに危険が伴う。
「大司教さま?」
「ああいや、考え事をしていた。ふむ……マイ、私が授けた短剣は持っているか?」
「あ、はい」
マイがテーブルに置いた荷物の中から、布にくるまれた短剣を取り出す。あの宿屋で、刺客の聖騎士が落としたものだ。
「それを握ったまま、もう一度打ってみなさい」
布がはらりと落ちる。彼女は片手で短剣を握りしめ、もう片方の手を俺にかざした。
――麻痺の術。
ガキィィンとさっきよりも大きな反動があった。宿屋で放ったときと同等の威力を感じる。
「なるほどな。マイ、今後はできるだけ短剣を身に着けていなさい。そのほうが術の通りがいい」
「はい、わかりました」
マイが素直にうなずく。短剣をぎゅっと握りしめ、なにか決意を固めているように見える。
あまり肩ひじを張らせても魔力によくない影響が出でしまうだろう。
「今日はこのへんで終わりにしよう」
「えっ、えと……私まだやれます」
「適性があるとはいえ、聖女が攻撃魔法を扱うのは魔力の消費が激しい。あまり無理をするな」
言いながら白い肩に手を伸ばし、魔力を浸透させる。彼女の魔力の流れを確かめるいつもの習慣だ。
「ん……」
条件反射のようにマイが目をつぶり、小さい吐息を漏らす。
(……相変わらず驚きだな)
俺に――人に向かって攻撃魔法を放ったというのに、彼女の体内の魔力は安定していた。治癒の力と、攻撃的な麻痺の力が見事に同居している。
誰よりも優しいのに、誰よりも皆を守ろうという意思が強い。
そんな彼女の性質を表すような魔力の流れだった。
本当に、マイは魅力的な女だ。
華奢な肩から手を離すと、彼女がふっとため息をついた。ほんのり紅潮した頬が色っぽい。
だが、その瞳は沈んでいるように見えた。
「どうした? 浮かない顔をしているな」
「あ、ごめんなさいっ……あの」
「悩みがあるなら言ってみなさい」
優しく問いかけると、マイが目を泳がせた。
いくつもの言いたい思いを、取捨選択しているように見える。
やがて彼女の金色の瞳が俺を見上げた。
「大司教さま、私も防護魔法を使えるようになりたいです」
「どうしてだ?」
「みんなを、もっと守れるから……それに、大司教さまの力になりたいんです」
その瞳がゆらゆらと揺れる。
今にも泣き出しそうな強い思いの宿ったその眼差しを、俺はなぜか直視できなかった。
マイの胸元あたりを見つめながら淡々と事実を告げる。
「君には無理だ。治癒の力と防護の力は似ているようでいて、その性質はまったく異なる」
「……そう、ですか」
マイがまぶたを伏せる。諦めたように浮かべるその微笑みから、彼女もダメ元で言ったのだろう。
防護魔法は、聖女を守る聖騎士が編み出したと言われている。
公にはされていないが、防護魔法は童貞の聖職者に発現しやすい。その情欲を、生涯を、聖女を護ることに捧げる。その覚悟の強さが防護魔法の適性につながると俺は見ている。
俺が防護魔法にこれほどの適性があったのも、聖女への執着の強さゆえなのだろう。
つまりは防護魔法で護られる対象である聖女が会得するのは、不可能なのだ。
もし治癒と防護、両方を使える者がいたら……それはもう人の域を超えている。
――大司教さまの力になりたいんです。
先ほどのマイの言葉を思い出す。
……気持ちを無下にするのも、彼女の精神状態によくないだろう。
「マイ、短剣を使った剣術を習ってみるか? 第二王子殿下の親衛隊に女騎士がいただろう。君の指南役としてこっそり召し抱えてもいい」
「え……剣術、ですか?」
思ってもみなかったのか、マイが驚いて目を見開く。
いくら護身のためとはいえ剣術には多少の攻撃衝動が必要になる。
だが、彼女なら大丈夫かもしれない。自身で身を護れるようになったほうが、より安全になる。
それに。
俺は純粋に、短剣を振るうマイを見てみたいと思った。
それはさぞや美しく、そそる姿だろう。想像するだけで股間がゾクゾクと昂る。
「ぜひ習いたい、です。……でも、よいのでしょうか?」
不安げに見上げてくる彼女を、見つめ返す。
「剣を使う聖女がいてもいいだろう。それに、その短剣は君によく似合っている」
「本当、ですか?」
マイは短剣を胸元で抱き締めると、嬉しそうに微笑んだ。
俺はその姿から目を逸らし、逃げるように思考を巡らせる。
マイの皆を守りたいという思いの奥には、怒りの情動が潜んでいる。その攻撃性を無理に封印するよりも、剣術という形で昇華させることで、うまく制御できるようになるのではないか。
彼女に視線を戻すと、まだ大事そうに短剣を抱えていた。
――あったかいなって、思って。
不意に、いつか桃色の聖女見習い――ニーナが言った言葉を思い出す。
「マイ」
俺は彼女に手をかざすと、再び魔力を浸透させてみる。
「ぁっ……」
彼女は一瞬目を見開いたが、すぐに目を閉じた。落ち着いた表情を浮かべ、俺の魔力に身を委ねているようだ。
やはりニーナのように感じ入った様子はない。
なぜだか、心に小骨が引っかかったような気分になった。これは些細な苛立ちだろうか。妙に子どもじみた感情のようにも思える。
「あの、大司教さま……ご気分が悪いですか?」
心配そうに見つめてくるマイと目が合う。
「いいや。……うむ、魔力に異常はないな。今日はもうゆっくり休みなさい」
「はい」
「ああそうだ、ニーナを呼んできてくれるか? そろそろ彼女の様子を見よう」
ニーナの治癒魔法が弱くなっているから見てほしい。
そうマイからお願いされたのが昨日のことだ。三日前に遠視の術で湯浴みを覗いたときに、確かニーナが彼女に相談していた。
「……はい」
無表情のマイが俺の胸元あたりを見つめながら、小さく返事をした。
***
「ではニーナ、君の魔力の流れを見よう」
「は、はいっ」
声を上ずらせたニーナが、なだらかな胸の前で両手を握った。
頬を桃色に染める彼女のおでこに手をかざす。魔力を浸透させていくと、小さい体がぶるりと震え両肩が縮み上がった。
「は、ぁっ……んぅぅ……」
絞り上げられるような声だ。目端に涙が浮かび、眉間にシワが寄っている。
以前、温室で掛けたときよりも反応が大きい。
魔力を解くと、ニーナは肩を下げてはぁはぁと胸を上下させた。
「ふむ、つらかったか?」
「い、いえっ! そのあのっ……全然大丈夫です!」
「そうか」
「ただ大司教様の魔力が、すごくてっ……」
「そうか」
泣きそうな表情で肩を抱くニーナを眺めながら、思考を巡らせる。
彼女の魔力は確かに弱まっていた。
だがそれは治癒の力が減っているというよりは、部分的に詰まっているという感じだ。総量自体に変化はない。
司教連中に手籠めにされた他の聖女見習いとは、明らかに症状が異なる。
そして、この症状には覚えがあった。
「君の体内で魔力詰まりが起きているようだ」
「魔力詰まり、ですか?」
「ああ、マイも何度か起こしたことがあるからな。大丈夫、荒療治だが私の魔力を注ぎ込めば治る」
「大司教様の、魔力を……」
魔力詰まりは、大量の魔力が血管で目詰まりを起こしているような状態だ。
魔法はその人間の精神に影響する。
昔からマイも落ち込んだり思い詰めたりしたときに、この症状を引き起こしていた。
俺はいつもより親身に話を聞き、最終的に大量の魔力を流し込むことで解消できるということを発見した。
「ニーナ」
「は、ひゃいっ」
ニーナが変な声を上げた。さっきよりも顔を真っ赤にして、額には汗がにじんでいる。
「後ろを向きなさい。魔力を注ぐ」
マイであれこれ試したところ、背中に手を当てて一気に流し込むのが一番効果的だった。
ニーナは慌てた様子で背中を向けた。まるでステップを踏むような動きで、ピンク色の髪がふわりと宙を舞う。
白いローブ越しに小さい背中に手をかざす。
マイよりも背が低いので、かざす場所もいつもより下だ。
魔力を注入し、ニーナの体内へ浸透させていく。
「あぅっ、ん……」
体をかき抱くように丸まる背中に、さらに魔力を注入する。はぁはぁと息を荒げ、かなり発汗しているようだ。
そういえば初めてマイの魔力詰まりを治したときも、似たような反応だったのを思い出す。
「あぁっ……大司教様の魔力、すごい……です」
「そうか」
奥深くまで魔力を浸透させると妙な違和感があった。
まるで彼女の心臓を別の魔力が包んでいるような。
「ニーナ、すまないがローブを脱いでくれないか?」
「えっ、えぇ!? ……あ、あのっ、ご奉仕ですか?」
「いや、そのほうが治りも早いのだ」
直接肌に触れたほうが探りやすい。この違和感の正体、私の推測が正しければ少々厄介だ。
「わ、わかりましたっ」
ニーナは震える手でローブの紐を解き、ストンと床に落とした。薄い肌着と布面積の少ないショーツがあらわになる。
肌着の裾をつかみ、慣れた手つきで脱いでいく。
白く透き通った背中があらわになった。
「えと……下も、脱ぎますか?」
彼女がわずかに振り返り、吊り目がちのグリーンの瞳で見つめてくる。恥ずかしそうな、だがどこか誘うようなその流し目は、さぞや多くの男を虜にしてしまうのだろう。
「いや、このままでいい」
細い背中に手のひらを当て、肌に直接魔力を注ぎ込む。
「ひぅっ……あッ、あんっ……」
彼女の全身にまで染み渡らせた俺の魔力が、違和感の正体を突き止めた。
(これは、呪いか)
魅了、というより洗脳に近い。ニーナの心を奪い意のままに操る強力な魔法だ。
こうした呪術は帝国で盛んに研究されていると聞く。ゴーゼ司教の背後には帝国がいるのだろうか。だとしたらやはり厄介だ。
「ニーナ、一気に詰まりを解消する。我慢できるか?」
「は、はいっ……」
幸い、呪術はまだ発動した形跡がない。
ゴーゼ司教は「どういうとき」のためにこの呪いを掛けたのだろう。殺すとき……いや、マイを無理やり奪うときだろうか。
つくづく下衆な男だ。
いずれにせよ、ここまで強力な呪術を発動させるには一回が限度だ。それも術者であるゴーゼ司教がニーナの近くにいないと発動しない。
この切り札のためにあの男は何度もニーナを抱き、長い時間を掛けて呪いを仕込んだのだろうが。
今ここで解呪させてもらう。私ならそれができる。
「では、いくぞ」
俺は大量の魔力を練り上げ、一気に彼女の中へと放出した。
「ぁっ……あぁッ、大司教、さまっ……だめっ、んん゛っ……んうぅぅぅっッ」
ニーナは自分を抱き締めながらビクビクと震えだし、ついに立っていられずに前のめりに倒れた。
床にへたり込み、四つん這いになった彼女の背中へさらに魔力を注入する。
「あぁっ、やめっ……あうぅッ、こんなのっ……むりですっ、ぁっ……あっ、あ゛あぁぁんっ……ッ」
「我慢しなさい。もう少しだ」
ニーナの心にまとわりついた呪いを、ゴーゼ司教の魔力を一気に押し流し、俺の魔力で上塗りをしていく。これでもう第三者が彼女に呪いを掛けるのは難しくなるはずだ。
渦巻いた魔力があふれ、ニーナの体が
「んくっ、ぅっ……あッ、あっ……はああぁぁぁんっ――ッッ」
ニーナは背中を反らせて天井を見上げ、やがて糸の切れた人形のように脱力した。
彼女の細い肩を支え、落ち着くのを待つ。
「ニーナ、よく耐えたな。体の調子はどうだ?」
「大司教、様っ……わたし、こんなの……初めてですっ……」
ニーナは瞳から大粒の涙をこぼしている。さすがに負荷が大きかったようだ。
おかげで彼女の体内から呪いは消え去った。
ついでに魔力詰まりも解消されたようだ。
「辛かっただろう? 少しこうして休んでいるといい」
「はい……大司教様、すごく……つらかったです」
ニーナが座ったまま後ろに倒れてきて、俺の胸板に後頭部をあずけた。寄りかかった彼女を俺が背後から包み込むような格好だ。
そういえばマイも昔、魔力詰まりを治したときはこうして俺をソファー替わりにしていた。
なんとなく、桃色の頭をポンポンと撫でてみる。
「頑張ったな、ニーナ。あとは胸の内につかえているものを吐き出してみなさい。そうすれば魔力詰まりになりにくくなる」
魔力の不調は精神的なところが大きい。
こうしてカウンセリングを施すことで心を軽くし、心の不調を起きにくくする。何度かマイの魔力詰まりを治すうちに、結局これは一番効果的なのだと学んだ。
「胸の内、ですか?」
「ああ、些細なことでいいんだ。今日の天気は憂鬱だとか、聖女見習いの決まりごとが面倒だとか、そういうのでいい」
「そんなこと言ったら、ティア姉さまに叱られちゃいます」
くすくすと笑うニーナは、年相応の無邪気な顔をしていた。だいぶ心を許してくれたらしい。
少しして、ふぅとため息をついた彼女がぽつぽつと話し出す。
「……司教様がたって、たいへんなお仕事なんですね」
司教……やはりゴーゼ司教のことで悩んでいるのだろうか。
「大変かもしれないが、それが司教の生き方だ。女神と人々に尽くし、聖女を護ることに生涯を捧げる。そういう生き物といっていい」
「大司教様もですか?」
「ああ、私は特にそうだな」
「それって、お辛くはないのですか?」
つらい?
むしろ俺にとっては最上の悦びだが。
「どういう意味だ?」
「いえその……誰かと、結ばれることはないのかなと思いまして……」
「司教や大司教を退いたら、そういう道を選ぶ者もいるな」
引退し、田舎で妻をめとる司教もいると聞く。
だが、ごくごく
生涯の多くを教会で暮らし、教義にその身を捧げてきた司教たちが俗世に下るのは難しい。司教になった時点で中年か初老に達しているのが普通だ。俺のように若くして司教になるケースは本当に珍しい。
「それで大司教様は幸せなのですか……? 男と女は交わり合うことで、本能的な幸福を得られるのだとゴーゼ様が――ぁっ」
ニーナが慌てて口をつぐんだ。「すみません」とつぶやき、気まずそうに下を向く。
あの男の邪な教えを披露してしまったことや、「ゴーゼ様」と寝所での呼び方で言ってしまったことに罪悪感をおぼえたのだろう。
こういうときは無理に否定をすると逆効果だ。
「いい。それも人の幸福の一つだ。彼も君のためを思っていろいろなことを教えたのだろう」
するとニーナはぐすりと鼻をすすった。
「いえ、きっとそんなんじゃ……ないです。大司教様のほうが、もっとずっとっ……」
次第に声が小さくなり、代わりにすすり泣く音が大きくなる。
しばらくすると、ニーナは口を開いた。
「最近も、ゴーゼ司教からお手紙をいただくんです」
ずっと聞き出したかったことを、彼女のほうから明かしてくれた。これは都合がいい。
「ほう、親しいのだね」
「い、いえっ、そんなんじゃなくって……あの、お手紙の内容も『元気か?』とか、『なかなか戻れなくて教会の様子が心配だ』とか、そんな感じでっ……でもお返事をするのが、こわくて、それでっ……」
まだ返事を送ってはいないらしい。
焦った様子で言い募る彼女に、さらに問いかける。
「教会のことを案じているんだね。だから変わったことがないかを君に聞いていると」
「あ、はい……行事や遠征の日程を教えてくれたら助かると言われています」
なるほど。これはやはり使える。
「では、私は三日後の夜、王陛下との御前会議のため王城に呼ばれていると伝えてあげなさい」
「え、いいのですか?」
「無論だ。神殿にいる司教たちには通達してある」
「わかりました、あとで文を送ります」
ニーナがふっと肩の力を抜いた。
少しは彼女のわだかまりも解けたのだろうか。
そろそろ日が暮れてきた。
私にはこの後やることがある。
「ニーナ、そろそろ戻りなさい。ロレンティアも心配するだろう」
「あ、はいっ……ぁ、あのでも、もうちょっとだけ、ここにいてはだめですか?」
「すまないが、聖域の見回りをしないといけなくてね」
寄りかかった彼女の肩をつかみ、前に起こす。
「わかりました……ごめんなさい、大司教様」
ニーナはこちらに向き直り、お腹のあたりで手を握った。彼女の白い上裸が、窓からの夕陽で赤く照らされる。
「まだ胸のつかえは取れていないだろう。悩み事があったらマイに相談しなさい。また私が聞いてあげよう」
言いながら温和な笑顔を作る。
ゴーゼ司教がニーナを「切り札」の一つとして見ているなら、彼女との関係を良好にしておいたほうが何かと有利に働くはずだ。
ニーナはぽかんとしていたが、みるみる頬を朱く染めていく。
「いえっ……今のお言葉で胸のつかえが半分くらい消えましたっ」
夕陽のせいか、彼女の瞳までもが熱く蕩けているように見えた。
***
日が沈み、空が薄暗くなった頃。
俺は中庭の奥まったところにある温室にいた。
植物の生い茂るその中心で、光の柱が煌々と輝いている。聖域の放つ光が温室内を包み、ほのかに暖かい。
「ここも異常はないな」
俺は聖域ではなく、茂みの中に分け入って各所を点検していた。これまで聖女見習い以外が立ち入れなかったせいで、男手による補修を必要とする部分が多い。
現状、男は大司教しか入れないので、その手の大工仕事も俺の役回りになるだろう。
ふと、草を踏み鳴らす足音が聞こえた。
(誰だ)
なんとなく遠視の術を使ってみる。
まぶたの裏に、温室内を歩くマイの姿が映し出された。
(ほう、寝間着か)
聖女見習いたちが別棟でのみ着用している寝間着。
白い麻布を二枚、肩のところで結んだだけのシンプルな衣服だ。首元まで布で隠れているが、そのぶん側面がぱっくりと開かれており、横から見れば脇腹や乳房の一部までもが容易に覗けるデザインになっている。
白い二の腕も露出していて、腕を上げたらなめらかな腋の下もあらわになるだろう。
上衣の裾をねじ込んでいるスカートは、これも二枚の麻布を腰のところで結んだような作りで、側面には深いスリットが入っている。
マイが歩くたびに、彼女の肉感的な太ももが露出する。
修練服に似た、なんとも無防備な格好だ。
マイは温室内を歩きながら、ちらちらと誰かを探していた。
おそらくは俺の姿を。
「まったく、仕方のない子だ」
俺は息を潜めつつ、彼女がちょうど目の前を横切ったところで両手を伸ばした。
「きゃっ」
マイの体を捕らえると、そのまま茂みの中へと引き込む。片手で彼女の口を覆い、もう片方の手をお腹に回り込ませて拘束する。
「んぐっ……ん゛んッ、んっ……!」
「マイ、そんな格好で一人出歩くなど不用心ではないか」
耳元でささやくと、彼女の全身の強張りが解けた。口を押さえていた手を放すと、マイがはぁっと息を吸い込んだ。
「大司教さまっ……びっくり、しました」
「それはこちらの台詞だ。どうして君がここにいる」
「あの、さっき……ニーナに会って、大司教さまがここにいると」
「それでのこのこと一人で来たのか? こんな無防備な格好のまま」
マイの寝間着の側面から腕を差し込み、柔らかい乳房を揉む。湯浴みをしたばかりなのか彼女の乳肉は熱く火照っていた。そういえば黒髪もしっとりと湿っている。
鼻先にある白いうなじを嗅げば、いつか俺が渡した入浴剤の香りがした。
「あッ、あんっ……ん、ごめんな……さい」
「それで私になんの用だ?」
手のひらを豊乳に
「んっ……ぁっ、あの、ニーナの……んッ、魔力の詰まりを治してくださったと、聞いて」
「それで?」
「それで……んッ、大司教様とお話がした……ぁっ、ん……ご相談したいことが……」
「なんだ」
「わ、わたしもっ……詰まりを、治してほしくて」
むにゅう、と乳房を揉み込むとマイは「あッ」と甘い声を発した。
彼女の柔乳を手のひらで
……詰まりはないようだ。魔力の流れに異常も感じない。
マイが、また嘘をついた。
その事実にドクンと心臓が脈打つ。どうしようもない情動が体の奥から湧きあがってくる。
「本当に、君は」
愛らしくて、いじらしい。俺の心をつかんで離さない。どんなに犯しても犯し足りない。
「あの、大司教さま」
黙っている俺に、マイが不安げな声になる。
「危ないだろう。……君は狙われているんだ。神殿内とはいえ日が落ちて出歩くなど、襲ってくださいと言っているようなものだ。こういうふうにな」
もう片方の手を彼女の下半身に伸ばし、スリットの中へと差し入れる。なめらかな太ももの感触を撫でてから、ショーツの薄布の内側へと手のひらを差し込む。
「んんッ……大司教さま、そこ、はっ――」
すでにぐっしょりと濡れている割れ目へ、中指を浸していく。くちゅりと愛液が指を濡らし、膣肉がうねって収縮しているのを感じた。
「はぁっ、あぁッ……大司教さまっ、ゆび」
マイが全身を震わせる。
以前抱いたときよりも、数段感度が上がっているようだ。
「魔力詰まりを治してほしいと言ったね。望みどおり、治してあげよう」
俺は先ほどニーナの呪いを解いたときを思い出していた。
肌に直接触れて、魔力を一気に注入する。ニーナの反応を見るに、あれは相当な刺激のようだった。
もし、膣を愛撫しながら快楽とともに魔力を流し込んだら。
いったいどれほどの性感に達してしまうのだろう。
「マイ、ここは聖域だ。淫らな声を上げてはいけないよ」
俺は指先に微弱な魔力を込めると、彼女の膣内へと注ぎ込んだ。