【書籍化】大司教の権力を悪用して純真無垢な聖女とセックスしたら、毎晩イチャラブご奉仕されるようになった話 作:月見ハク
王都に帰還して六日。
よく晴れた日の午後、俺は神殿の入り口に向かっていた。
今日は夜から王城で、王陛下との御前会議がある。
廊下から外へ出たところで、俺に同行する聖騎士長と護衛の聖騎士たちが片膝をついて頭を垂れていた。彼らに前には黒髪が美しい聖女――マイが立っている。
彼女は儀式用の白いローブを着込み、細腕を聖騎士たちに向けて目を閉じた。
「みなさんの行程に女神の加護があらんことを」
小さい手のひらが淡く輝き、まばゆい光が聖騎士たちに降りそそぐ。
マイの、聖女の祝福だ。
相変わらず美しい。
祝福の光が止むと、聖騎士長が頭を上げる。
見惚れた顔でマイを見つめる他の聖騎士たちと違い、彼だけはきりっとした表情を崩さない。やはり信用できる男だ。
「聖女様、ありがとうございます。我ら少数ですが必ず大司教様をお守りします」
「はい、よろしくお願いします。みなさんもどうか無理せずに」
聖騎士たちが出発の準備をし始めたのを見計らい、俺もマイに近づく。
「見事な祝福だ、マイ」
「大司教さま」
ふんわりと微笑んだ彼女がこちらに歩み寄ってくる。
「出立の前に魔力の流れを確認しておきたい。こちらへ」
「あ、はい」
誰にも見られない物陰に連れ込むと、マイの頬にそっと触れた。やんわりと俺の魔力を流し込む。
「んっ、ぁッ……」
まぶたを閉じた彼女の口から、甘い声が漏れる。
三日前、聖域で彼女を抱いて以来、俺は挨拶代わりの魔力確認を直接触れて行うようになった。頬を染め、淫らな声を発すまいと唇を引き結ぶ様子がたまらない。
頬から耳をゆっくり撫で、艶やかなうなじ、そして綺麗な首筋へと手のひらを這わせていく。
「あぁっ、ん……んぅッ」
マイの手のひらが俺の手に重なる。
肩を震わせ快感を我慢する姿に興奮する。股間が熱くなり今すぐ襲いたくなるが、今は口実がないし、なにより出発前で時間がない。
「……ふむ。異常はないな」
仕方なく手を離すと、彼女が薄く目を開いた。
「ありがとうございます……あの、大司教さま」
「なんだ?」
「えっと、大司教さまにもその……祝福を」
「ああ、頼む」
腰を下ろして片膝をつく。頭を垂れるとマイが手のひらをかざすのが分かった。
彼女の祝福を浴びるのはずいぶんと久しぶりだ。祝福の修練に付き合ったとき以来だろうか。
「大司教……リンゼの行程に女神の加護があらんことを」
不意に名を呼ばれてドキリとする。王族への祝福以外で名前を呼ぶ必要はなかったはずだが。
彼女の魔力があたりに広がり俺の体に降りそそぐ。
なるほどこれは、聖騎士たちが恍惚としてしまうわけだ。マイの祝福は修練のときよりも温かく、彼女の慈愛がそのまま流れ込んでくるような心地だった。体がみるみる軽くなっていく。
しばし祝福に身を委ねていると、マイの手のひらが俺の頬に触れた。
「っ……」
唇に、柔らかい感触が重なる。
紛れもない、彼女の唇の柔らかさだ。俺の唇をほぐすように何度かついばんだ後、ゆっくりと離れていく。
目を開くと、顔を真っ赤にしたマイの顔があった。
「あの……これは、特別な祝福です。こうしたほうが、あの……大司教さまは特にお疲れのようでしたので」
「そうか」
特に疲れた者には俺以外にも口づけをするというのだろうか。
その苦しい言い訳が愛おしく感じ、俺は立ち上がりざまに彼女を壁に追い込んだ。
「まだ疲れが取れないようだ。もう少しいいか?」
「え、あっ……んむ」
強く唇を押し当てると、マイはすぐに唇を開いた。何度か唇の密着を楽しんでから、ゆっくり舌を差し入れていく。すぐに彼女の舌に迎えられ、絡まっていく。
「んっ、ふ、ぅっ……んぁっ、ん……ぁっ……」
くちゅ、くちゅとゆっくりマイの口内をかき混ぜる。
彼女の肢体に手を走らせ、片手で胸元のふくらみを揉み、もう片方の手で尻の丸みを撫でる。マイの体はどこを触っても柔らかく、瑞々しい弾力があった。
硬くなった股間を彼女の柔らかい腹に押し付けていると、このまま衣服を暴いて乱暴に抱きたくなってくる。
だが、近くで聖騎士たちが俺を探している気配がした。
マイの体をまさぐっている手を離し、次いで口づけを解いていく。
目を潤ませた彼女が小さいため息をついた。
「大司教さま、疲れは……取れましたか?」
「ああ、これで会議も万全だ」
「なら……よかったです」
快感に肩を震わせるマイに、俺は視線を合わせた。神妙な表情を作って見つめる。
「マイ、湯浴みを終えたら今夜は聖域にいなさい。私が戻るまでずっとだ、いいね」
「はい、わかっています」
「いい子だ」
黒髪に手を置いてポンポンと撫でる。
彼女は微笑みながら、くすぐったそうに目を伏せた。
馬車の窓から、遠ざかっていく教会神殿を眺める。
俺は三日前に桃色髪の聖女――ニーナに伝えた言葉を思い出していた。
――私は三日後の夜、王陛下との御前会議のため王城に呼ばれていると伝えてあげなさい。
もし俺が襲撃者なら、大司教が不在のときにマイを狙うだろう。防護結界の使い手である俺がおらず、少数とはいえ聖騎士の数も少なくなる。夜闇に紛れて襲撃できる格好の機会だ。
金髪の元聖女――ロレンティアからの文によれば、ニーナは俺の言うとおりに伝書鳥をどこかへ飛ばしたという。
あとはゴーゼ司教が誘いに乗るかどうか。
俺はさっきよりも小さくなった白亜の神殿を見つめた。
***
「大司教殿、すみません。父上との会議の前に呼び立ててしまって」
「問題ございません王子殿下、私も殿下にご相談がありましたので」
俺は王城にある応接室で、第二王子と面会していた。
昨日、王子のほうから「王城に来るのであればその前に少し時間をもらえないか」という打診が来ていたのだ。
私も王子に確認したいことがあったので好都合だ。
彼がゴーゼ司教とつながっているかどうか、それを確かめる。魔獣遠征の帰りの宿で襲撃されたとき、ゴーゼ司教もその場にいた。
あの聖騎士の裏切り者が事前に報せたのだと思うが、王子と別れた後というのもあり、王子とゴーゼ司教が繋がっている可能性もある。
「それで、マイ殿はお元気ですか?」
「ええ、元気ですよ」
「私のことを、その……何か言ってはいなかったですか?」
俺を見つめるその瞳は、恋に夢中になっている青年そのものだ。ゴーゼ司教と繋がっているようには見えない。
王子について、か。
マイは神殿に戻ってから、俺の前で王子の話をしたことはない。
「そうですね。騎士たちがよく訓練されていると、言っていた気がします」
「そ、そうか! それは嬉しいな」
王子への直接の誉め言葉ではないのだが、えらい喜びようだ。ちなみにマイはそんなことは言っていない。
「それで殿下への相談なのですが、殿下直属の騎士から女性を一人、お借りできないでしょうか?」
「ほう……マイ殿の護衛ですか?」
「ええ、聖騎士は男所帯ですので、聖女の身辺警護の女性騎士が必要だと思っていたのです」
「もしや彼女の身に危険が?」
勘が鋭いな。
襲撃のことは教会でも一部の人間しか知らない機密事項にしてある。外部……王族や貴族、市民に知られると、教会の威信が揺らいでしまうからだ。
聖女の身を危険にさらすとは何事だと騒ぐ連中もいるだろう。それは厄介だ。
教会は聖女を独占している――そう言って敵視する人間も多い。
この国では聖女や聖女見習いは教会が管理している。それはつまり、この国の治療行為、民の命や健康を手中に収めていると言っても過言ではない。貴族風にいうと大きな利権だ。
だからこそ教会の権力を削いで、その利権を……あわよくば見目麗しい聖女や聖女見習いを手に入れようと考える貴族は少なくない。
「いいえ王子殿下、聖女の身の安全は私たちが守っています。ただ物騒な世相なので」
「まあ、そうですね。王城でも派閥争いが活発化してきていますから」
第一王子派と第二王子派の王位継承争いのことだろう。実にくだらない。
「それで、お借り受けすることは可能でしょうか?」
「ええ、実はちょうどマイ殿には女性の側仕えが必要なのではと思っていたところなんですよ」
「……ほう」
それは初耳だ。
第二王子はにっこりと笑みを浮かべ、指をパチンと弾く。
すると彼の横に一人の女性が現れた。両目を布で覆っている以外は特徴のない顔だ。給仕服が馴染んでいて、とても騎士には見えない。
「彼女はこう見えて『陰の者』です。マイ殿をしっかりお守りできるかと」
「なるほど、気配が薄いわけです」
陰の者。
王族直属の隠密部隊だ。主に諜報や暗殺に長けていると聞く。
つまりは見張り役か。
いや王子のことだ、マイの一挙手一投足を報告させるつもりなのかもしれない。
彼女に剣術を教える者を探していただけなのだが、少し面倒なことになった。こちらから相談した以上、断るのは難しい。
「で、どうだろうかこの者は? 私は適任だと思うが」
「ありがとうございます。ご配慮に重ねて感謝いたします」
「いえ、マイ殿のためです。私も彼女を守りたい一人なのでね。先ほど派閥争いが活発になっていると言ったでしょう?」
「ええ」
王子の声が低くなる。ここからが彼の本題なのだろう。
「どの派閥も教会の協力を欲しています。教会の後ろ盾があるとなれば優位に立てますから」
「そのようですね」
本当にくだらない。
教会は権力から切り離され、国境さえ超える中立組織だ。強いていえば建前上は民のためにある。王族の権力争いなどに巻き込まれるつもりはない。
「兄上……第一王子の派閥には教会をよく思わない者も多くいます。王家の管理下に置くべきなどと声を上げる貴族もいるのです。もちろん私はそうした過激な主張には反対の立場ですが」
「そうですか」
教会をよく思わない貴族が多いのは知っている。
私が司教たちの弱みを握ったとき、そこには必ず貴族との癒着があった。貴族と共謀して裏金を作ったり、聖女見習いの治癒を優先させたりはまだいいほうで、中には多額の賄賂と引き換えに彼女たちを夜の相手として派遣していた者もいた。
ゴーゼ司教を筆頭に。
そんな不正がまかり通らなくなった今の教会、というか俺に不満や恨みを抱くのは当然だろう。
ただ王子の言葉を聞くに、彼はそうした司教と貴族の汚れた歴史までは知らないようだが。
黙って考えを巡らせていると、王子が前のめりになった。ここから大事な話をするぞという合図だ。
「教会は民にとって等しく平等な存在であるべきだと思っています。それが聖女の……マイ殿の願いでもありますから。ただ同時に、今の教会のあり方に疑問を持っているのも事実です」
「ほう、それはどのような疑問でしょう」
「失礼ですが大司教殿は、いずれ家庭を持ちたいと考えたことはありますか?」
「ないですね。大司教はその生涯をもって聖女を支える。それが古くからこの大陸で受け継がれてきた教義ですので」
「その教義が、あなた方を縛っているのではないですか? 私は貴族も民も等しく自由であるべきだと思っています。教義によって人を愛する権利まで奪われるなど、馬鹿げています」
ずいぶんな理想論を語っているが、王子の目的はマイだろう。彼女を手に入れるために教義が邪魔なだけだ。
俺は小さくため息をついた。
王子は……というか王族は
王の一族は、強烈に聖女を欲する。
彼らは聖女と交わることによって膨大な魔力を得る。古い昔、彼らはその力を使ってこの大陸全土を支配した。
暴虐の限りを尽くす王族に嫌気がさした
やがて民はその教訓から「聖女は誰とも交わるべからず」という教義を作り、各地の聖域に教会を建て、聖域と聖女を守護するようになった。
これは歴代の大司教でも知る者は少ない。教会の禁書庫にある古文書に記された、この大陸の真の歴史だ。
大司教とは、そもそもが
まあそんな歴史があろうとなかろうと、誰にも聖女を渡すつもりはない。
マイは、永遠に俺のものだ。
「……殿下のお考えはずいぶんと革新的ですね。私は古い人間ゆえ、教義に疑問を抱くなど考えもしませんでした」
「なにを言う、大司教殿も十分お若いではないですか。あなたなら私の話も通じるのではないかと……いえすみません、少し熱くなり過ぎました。いずれにせよ私は教会の味方です」
最後に取って付けたような言葉を述べ、王子は爽やかな笑顔を浮かべた。
ただの色惚け王子かと思っていたが、懐柔しつつけん制をしてくるあたり、なかなか抜け目のない男のようだ。さすがは若くして政治に参画する秀才なだけはある。
だが、化かし合いなら俺のほうが
「殿下のお言葉、ありがたい限りです。教会に好意的な方であれば、我々としても協力は惜しみません。いざというときには、ぜひ私を頼ってください」
「おお、それは助かります」
第二王子には、とりあえず第一王子派の重鎮貴族の不正の証拠でも渡しておこう。
同様に第一王子には第二王子派の不正の証拠を流す。そうして双方の力を削りつつ、どちらにとっても教会の影響力を強める。
そうして、たとえ次期国王といえども教会には口出しできなくする。
これがマイを守るための最適解だろう。
「では殿下、私はこれで失礼します」
「ええ、今日はいい話ができました。ぜひまた……こ、今度はマイ殿もお呼びして三人でお茶でも――」
「いえ、聖女をそのような場には」
「そ、そうですか……」
やはり色惚け王子には変わりないようだ。
聖騎士長を連れて廊下へ出る。
「ふぅ」
思わずため息が漏れる。
なんだかどっと疲れた。
王族との腹の探り合いは、小ずるいが欲望に忠実な司教連中とは別種の面倒さがある。マイとの他愛ない会話が恋しくなる。
「大司教様、お待ちください」
いきなり背後から女性の声がして、俺と聖騎士長が同時に振り向く。
立っていたのは給仕服を着た、あの陰の女だった。
さすが陰の者だ。まったく気配を感じ取れなかった。
「ああ、君は殿下の……どうしたのかな?」
「いえ、これから教会でお世話になりますので、ぜひご挨拶をと」
陰の女が抑揚のない声で言う。両目とも布で覆われているのでいまいち表情がつかめない。かなり無愛想な感じだ。
「こちらこそ聖女の護衛を任せる身だ、世話になる。ああ、神殿につとめる以上は君も聖女見習いとして入ってもらうことになるが、大丈夫か?」
すると陰の女は一転して顔をほころばせた。
「むしろ光栄でございます。聖女様は私のような平民の女にとっては憧れそのもの……その近くにお仕えできるなど夢のようです。聖女様も、そして大司教様も平民の出と聞き及んでおります。まさに私ども平民にとっては希望の星」
「……そうか」
熱のこもった口ぶりにいささか引く。……頬を染めて興奮している様子から、どうやら演技ではないようだ。
「命を賭して聖女様をお守りしますので、どうぞよろしくお願いします」
いつの間にか近寄ってきていた陰の女が、両手を差し出してくる。
「ああ、よろしく頼む」
俺も片手を出して握手をする。
と、同時に微弱な魔力を流し込んだ。
「んっ、ぐぅッ……!?」
彼女の手がビクッと震えた。
魔力に不審なところはない。体の中に罠や呪いも刻まれていないようだ。
「ああすまない。簡単な身体検査のようなものだ」
手を離すと、陰の女は肩を上下させながら甘い吐息を漏らした。
「い、いえ……凄まじい魔力制御ですね。私も房中術……女の技をそれなりに叩き込まれましたが、ここまでの心地は初めてです」
「さすがは陰の者だ。魔力制御のたまものであるとよく分かったね」
一発で見破ってくるあたり、やはり相当の使い手だ。これは油断できないな。
俺の目が届かないときはロレンティアに監視させるか。
「大司教様こそ、かなり鍛えていらっしゃいますよね。格闘術の心得がおありで?」
「いやいや、大司教の仕事はなにかと激務でね。鍛えているといっても、ここにいる聖騎士長からしたら赤子のようなものだ」
言いながら考えを巡らせる。
この女を抱いて三人目の
いずれにせよ。
「君の着任はまだ先だ。いろいろと面倒な手続きがあるのでね。季節が変わる頃までは待ってほしい」
それまでに対策を考えよう。
「かしこまりました。楽しみにお待ちしております」
深々と頭を下げる陰の女を背に感じながら、俺は廊下を進んだ。
王の謁見室近くの控え室で、俺と聖騎士長は顔を突き合わせていた。
「それで、第二王子をどう思う?」
「私のほうで背後を調べましたが、ゴーゼ司教との繋がりは見えませんでした。今日の様子からも、王子殿下はシロかと」
「私も同感だ」
これで懸念の一つは消えた。
控え室の窓から外を見る。
王都の街並みがもう夕闇に沈みつつあった。
「聖騎士長、手はずどおり陛下との会議は断ってくれ」
「……本当によいのですか? このように直前で断るなど」
「問題ない。それが許されるくらいの貸しは作ってある」
「承知しました。では手はずどおり、王城の裏口に商人の馬車を用意しております」
「では行こうか」
俺と聖騎士長はゆっくり立ち上がった。
***
すっかり日が沈み、あたりが夜に包まれたころ。
俺は馬車の窓から、目の前にそびえる教会神殿を見上げていた。
「大司教様、来ると思いますか?」
商人の普段着に身を包んだ聖騎士長が、神妙な面持ちで聞いてくる。
「どうだろうな。だが私が背信者なら必ずこの夜を狙う」
俺も白シャツに黒ズボンという簡素な服を着ていた。平民の服を着るのは何十年ぶりだろうか。
俺たちは王城で商人の変装をした後、商人用の馬車に乗り込んで神殿へと戻ってきた。
教会の馬車は今も王城に停まっている。襲撃者の仲間が王城を見張っていることを想定した上での作戦だ。
同行した聖騎士たちも商人の格好をさせ、神殿の周りを巡回するよう命じてある。もし襲撃者の気配があればすぐに報告がくる。
しばらく待機していると、ついにその時がきた。
『東側に背信者、数は二十ほど』
馬車の外から聖騎士が報告する。
「やはり一番手薄な東の外壁から来たか」
事前に西側外壁の見回りを強化しておいてよかった。
「大司教様の読みどおりですね。で、我々はどうすれば?」
「予定どおり正門から行くぞ。背信者はまず聖女のいる西側の別棟を目指すはずだ」
「承知しました」
俺は左目だけを閉じて遠視の術を発動した。
まぶたの裏にマイの姿が映し出される。
彼女は露出の多い修練服を着て、光の柱――聖域の中で祈っていた。
相変わらず美しい。
「……いい子だ、マイ」
片目をつぶりながら、聖騎士長と馬車を降りる。
「ではネズミ捕りといこう」
俺は小さく息を吐くと、目の前の正門へ駆け出した。