【書籍化】大司教の権力を悪用して純真無垢な聖女とセックスしたら、毎晩イチャラブご奉仕されるようになった話 作:月見ハク
俺と聖騎士長、同行していた二名の聖騎士とともに正門へと走る。
たどり着いたと同時に、門が中から開いた。
滑り込むように入ると、数人の聖騎士たちに出迎えられる。
「大司教様、聖騎士長、お待ちしておりました」
一人の聖騎士が深々と頭を下げる。聖騎士長が「誰よりも忠誠心の厚い男」と評した聖騎士だ。他の聖騎士も俺や聖騎士長が身辺調査をして、信用できると判断した者で固めている。
それ以外の聖騎士たちには今夜、休みを与えた。聖騎士の中にまだ裏切り者が潜んでいるとも限らないからだ。
「神殿内の配置はどうなっている?」
「はっ、聖騎士の精鋭十名のうち五名がここに、残り五名は大聖堂の護りについています」
今夜、マイ以外の聖女見習いは大聖堂に集めている。
――遠視の術。
まぶたの裏の景色をマイからロレンティアに切り替える。
広い大聖堂の奥に、彼女たちは固まっていた。魔導灯の光が
先頭にはロレンティアがおり、その一歩後ろにはニーナの姿があった。ロレンティアに頼んで「夜を徹して祈りの儀式を行う」よう伝えてあるからか、彼女たちの顔に不安の色はない。
俺は片目で聖騎士長を見つめた。
「別棟がもぬけの殻だと気づかれるのも時間の問題だ。その次は大聖堂を狙うだろう。我々はこのまま背信者を警戒しつつ大聖堂に向かう。そこで迎え撃つぞ」
「道中、背信者と出くわしたらどうしますか?」
「できるだけ殺すな。背後関係を洗う必要がある」
まあ、洗ったところで何も出てこないだろうが。
「承知しました。――よしっ、速やかに大聖堂へ向かうぞ。陣形を組んで大司教様をお守りしろ」
聖騎士に囲まれながら、神殿の建物へと走る。
まぶたの裏の景色をマイに切り替えるが、聖域に異常はない。
もし別棟が無人であることに気づかれても、大聖堂に聖女見習いが集まっているとなれば、奴らはそこへ向かうはずだ。
敵の注意を、中庭の奥にある温室から大聖堂に逸らす。
聖女見習いたちは、いわば撒き餌だ。だがもちろん彼女たちを危険にさらすつもりはない。
――他の子たちを守ってあげてください。
三日前、聖域でマイと交わした約束を思い出す。
神殿内に入り、廊下を進む。
夜の神殿内は魔導灯の明かりが点々と続くのみで、昼間よりも薄暗い。
いくつかの十字路を通り過ぎたとき、ヒュっと風を切る音が聞こえた。
――防護魔法。
咄嗟に魔力を展開する。キィンと何かが弾かれる音が聞こえ、足下に手投げ用のナイフが落ちた。
「背信者だ、迎撃しろっ!」
聖騎士たちが一斉に、廊下の奥へ光球を放つ。
それが当たった瞬間、まばゆい光の中に黒づくめの男たちの姿が見えた。
だがすぐに光が消え、暗い廊下に戻る。
これは――。
「魔道具だ。皆、剣を抜け」
敵は防護魔法が付与された魔道具を付けているようだ。
非常に高価で一介の賊が手を出せる代物ではないし、司教といえどいくつも用意できるものではない。
やはり、ゴーゼ司教の裏にはもっと大きな力――おそらく帝国がいると見て間違いないだろう。
ガキン、と剣と剣がつばぜり合う音が響く。
「数が多いっ、大司教様は下がって!」
聖騎士長が前に出て、俺を狙ってきた背信者を迎え撃った。
目視できるだけで敵は十人。対するこちらは俺を入れて九人だ。一人ひとりの力量は幸いなことに拮抗しているが、人数が少ない。
俺は魔力を練り上げると、最大出力で放った。
――防護魔法。
かざした手のひらから魔力が放たれ、聖騎士たちをすり抜けて背信者たちに衝突する。
「ぐっ!」
「なんだとっ!?」
バリィンッ、と敵の魔道具が弾ける音が聞こえ、背信者たちが吹っ飛んだ。
何人かは廊下の壁に激突し、残りは床に叩きつけられる。
瞬時に聖騎士長が叫んだ。
「拘束しろ! 舌を噛みきらせるな」
聖騎士たちが次々に賊を縛り上げていく。ロープを口に噛ませて自害も封じた。
手早く拘束を済ますと、聖騎士長が指示を出す。
「三名はここで待機! 残りは大聖堂へ向かう」
六人となった俺たちは、再び廊下を走り出す。
すると隣を走る聖騎士長が耳打ちをしてきた。
「大司教様、お見事です。あんな防護魔法は見たことがありません」
「力を使い過ぎた。もう何度も打てないから油断するな」
「承知しました」
あの一回で、魔力の三分の一ほどを消費してしまった。
一瞬で聖騎士たち一人ひとりを防護の対象に定め、さらに敵の魔道具を上回る魔力を放つ必要があったからだ。
いざとなれば魔力増強剤を飲む手もあるが、できれば使いたくない。
マイの口づけによる解毒はとても魅力的だが、無用な心配をかけてしまうだろう。
……大司教とは常に聖女を支え、安心を与える存在でなければならない。それに頼ってばかりでは大司教としての面目も立たないしな。
「大司教様っ」
聖騎士長の大声が聞こえたと思ったら、左腕に激痛が走った。
「ぐっ……」
十字路で出会いがしらの敵に斬られたらしい。
咄嗟に左足に力を込め、斬った男を蹴り飛ばす。
俺の両側を無数の光球が通り抜ける。聖騎士たちの放った攻撃魔法は、またしても黒づくめの男たちが持つ魔道具に弾かれた。
「大司教様、ご無事ですかっ」
「問題ない。背信者を拘束しろ」
気づけば大聖堂の間近だった。扉を護っていた五人の聖騎士たちもこちらへ加勢してくる。
これで俺たちは十一人。対する敵は目視できるだけで十二人。また数が足りない。
双方がつばぜり合いを演じ始める中、敵集団の後方にいる人影から光球が放たれた。
「くそっ――」
――防護魔法。
聖騎士たちの前に防護魔法を展開し、光球を防ぐ。そのまま出力を上げていき、さっきと同じように背信者たちを弾き飛ばした。
「すぐに拘束しろ!」
聖騎士長の掛け声で、聖騎士たちが走り出す。床に散らばった敵の中に、さっき光球を放った男もいた。
「そいつの顔を見せてくれ」
聖騎士に呼びかけると、男の顔を覆っていた黒布が剥がされる。
ゴーゼ司教ではなかった。
攻撃魔法を使ってきたからもしやと思ったのだが……今回の襲撃には加わっていないのだろうか。
いや、そんなはずはない。
宿屋で襲ってきたときと同じように、どこかに身を潜めて好機をうかがっているはずだ。
「大司教様、これで背信者のほとんどを捕らえました」
「ああ、だが油断するな、まだ――」
ぐにゃりと、視界が歪む。
足から力が抜け、俺はその場に片膝をついた。
これは、毒か。
敵の剣に塗り込まれていたのだろう。
「大司教様! 誰か大聖堂の扉を開けろっ、至急治癒が必要だ」
聖騎士長に肩を支えられて立ち上がる。
おぼつかない足取りで大聖堂の中に入ると、聖女見習いたちはロレンティアを中心に固まっていた。近くの者はロレンティアにすがり付き、他の者は互いに身を寄せ合い、誰もが顔を凍りつかせている。
「大司教さまっ」
大勢の聖女見習いたちの中から、桃色髪の少女が飛び出してくる。
タタッと身軽な足取りで走ってきたニーナが、俺の胸に飛び込んできた。
「ニーナか、皆に変わりはないか?」
「はいっ……なんだか外ですごい音がして、でもロレンティア様が、大司教様が来るから大丈夫だよって」
「そうか」
ふっと、体の疲労が抜けていく感覚があった。
見ればニーナが抱きつきながら、必死に治癒魔法を発動している。
「大司教様、治ってっ……」
左腕の傷を治そうとしているのだろう。俺は右腕で桃色の小さい頭をポンポンと撫でた。
「大司教様、毒ですね?」
ゆっくりと歩み寄ってきたロレンティアが、神妙な表情で聞いてくる。
顔は少し強張っているものの、自然体の振る舞いを維持しようとしている。他の聖女見習いを不安にさせないためだろう。さすがは元聖女だ。
「ああ、治せるか?」
「診てみます」
ロレンティアが指で金色髪をすくい、耳にかける。
その整った顔を俺の左腕に近づけると、傷口へやんわりキスをした。
やがて顔を上げると、俺の血でほんのりと赤くなった唇が開く。
「これなら解毒できます」
「見事だ。では頼む」
「はい」
ロレンティアが傷口に手をかざす。
優しい熱が患部から全身に広がっていく。足腰に力が戻り、すぐに体が軽くなった。
「助かったよ、ありがとう」
「いえ……よかったです、リンゼ様」
ロレンティアの声が震える。美しい瞳には涙が浮かんでいた。
「ニーナも、もう十分だ。ありがとう」
再び桃色髪を撫でると、ニーナがさらにしがみついてきた。体を震わせ泣いているようだ。
念のため、彼女の頭から魔力を流し込んでみる。
「ひあぁっ」
……ふむ、呪いのたぐいはない。
もしゴーゼ司教が神殿内にいるなら、ニーナの呪いを発動しようとするだろう。まずは自分のもとへ来るよう念じるはずだ。そのときの魔力を感知できれば、あの男の居場所が分かる。
俺は、突っ立ってこちらをぼんやり眺めている聖騎士長を見つめた。
「けが人を大聖堂へ運ぶんだ。動ける者は何人かをここの護りに残し、他の者は二人一組で神殿内を探れ。残党がいるかもしれない」
「は、はいっ、承知しました」
聖騎士長が外へ出ていくと、ロレンティアがくすりと笑った。
「大司教様、その格好もお似合いですね」
「そうか」
自分の姿を改めて見下ろす。
いつものサンダルではなく簡素な革靴。黒いズボンに、商人が着る白シャツ。その左腕の部分が、べっとりと血で赤くなっている。
俺は肩のところからシャツをビリビリと破り捨てた。
マイが見たら、さすがに刺激が強すぎると思ったからだ。
「……ところで大司教様、なぜずっと左目をつぶっているのですか?」
「目に、ごみが入ってな」
少し無理のある理由を告げる。
俺は正門をくぐったときからずっと、左まぶたの裏にマイを映し続けていた。背信者と戦っているときも、大聖堂に入ってからもずっとだ。
今のところ聖域に異常はない。
いや、まて。
光柱の中にいるマイが、うっすらと目を開く。
その視線の先に、近づいてくる影があった。
「ロレンティア、聖女見習いたちを頼んだ。君が慰めてあげなさい。それとニーナも、もう離れなさい。聖騎士たちの傷を癒してあげるんだ」
しがみついていたニーナを優しく引き離す。
全てを分かっているかのように穏やかな顔をするロレンティアと、涙目で見上げてくるニーナに告げた。
「私は聖女のもとへ向かう」
***
マイの見つめる先、温室の入り口付近にそれは立っていた。
白いローブを頭からすっぽりと被り、顔には気色の悪い白い仮面を付けた、全身白ずくめの男。
仮面に空いた二つの穴から、細い目がじいっとマイを見つめている。
「ゴーゼ司教、ですね」
落ち着いた彼女の声に、男がうなる。
「ほう、よく分かったな。大司教から聞いていたか」
聞かずとも、これほど
でっぷりとしたお腹を揺らしながら、ゴーゼ司教がゆっくりマイへ近づいてくる。
「ゴーゼ司教、ここは聖域です。大司教さま以外、立ち入ることは禁じられています」
「くくっ……そうだな。だから光栄だよ。私のような者が聖域に立ち入り、聖女のあられもない姿を拝めるのだからな」
野太いしゃがれ声が、くくくと笑う。
卑しい視線を感じ、マイは修練服から露出した胸元を腕で隠した。それでもなお、ゴーゼ司教をきっと見据える。
「聖女が逃げ込むなら聖域に違いないと思っていた。いやはや大当たりだよ……聖女マイ、そこから出てこい」
「いや、です」
マイがさらに体をかき抱くと、ゴーゼ司教が自分の手のひらを掲げる。そのふくよかな指には黒い指輪がはめられていた。
「この指輪はな、一定時間聖域の力を無効化する特別な魔道具だ。無理やり聖域から引っ張り出してもいいが、できれば面倒な真似をしたくない」
ゴーゼ司教の視線は、マイの足下に置かれた短剣に注がれていた。
「その剣でなにができる? 心優しい聖女に人を傷つけられるわけがないだろう。刃物を人に向けただけで卒倒してしまうのではないか?」
「こないでください」
マイが声を上げると、ゴーゼ司教はもうあと数歩の距離で立ち止まった。
「ふふ、怯える姿もそそるのぉ。男を魅了するその体、美味そうな唇……実にもったいない。旅の道中たっぷり可愛がってやるからな」
しゃがれ声にいやらしい響きが混じり、仮面の下が舌なめずりするのが分かった。
マイは「うっ」と身を震わせながらも、ゴーゼ司教から視線を外さない。
「旅、とは……どこへ、連れていくつもりなのですか?」
「帝国だ」
「帝国?」
思わず聞き返したマイに、ゴーゼ司教が笑う。
「ああそうだ。聖女狩りというやつだな。お前の村も、それで焼かれたのだよ」
「え……」
マイの目が見開き、固まる。
そんな様子に気をよくしたのか、ゴーゼ司教がもう一歩近づいた。
「さあ、私と一緒に来い。馬車の中で、女の悦びを教えてやろう」
太い腕が彼女へと伸ばされる。
「いやっ……!」
そのとき、ガタンと温室の入り口のほうで物音がした。
「誰だ!」
ゴーゼ司教が手をかざして振り向くも、そこに人の姿はない。
再びマイへ向き直ると、鼻息を荒げた。
「おい、他に誰かいるのか? 大司教は大聖堂へ向かったはずだ。聖騎士でも忍ばせたか」
「言いたく、ありません」
「正直に言え。さもないと、お前の可愛がっている妹たちも同じ目に遭わせるぞ」
妹たち……聖女見習いたちのことだ。
マイは下唇を噛むと、涙で揺れる瞳をゴーゼ司教に向けた。
「誰も……いません」
「ふふ、そうか」
その瞬間、ゴーゼ司教の背中に手投げ用のナイフが突き刺さった。
「なっ――!」
――俺はそこで、遠視の術を解いた。
温室入り口の物陰から躍り出ると、マイのもとへと走る。
「小癪なっ」
ゴーゼ司教の手のひらから光球が放たれた。
――防護魔法。
咄嗟に魔力を展開するも、威力を押し殺せずに俺の体が後ろに転がる。
どうやら魔力増強剤か、魔力を増幅させる魔道具を使っているようだ。
片膝をついて起き上がろうとする俺に、ゴーゼ司教がゆっくり近づいてくる。
「大司教が潜んでいたか……誰もいないなどと、まさか聖女が偽りを口にするとはな……」
その声色から、本当に驚いているのが伝わってきた。
ああ、俺もだゴーゼ司教。
彼女には、いつも驚かされる。
「マイ、今だ」
小さくつぶやくと、ゴーゼ司教の体が跳ねた。
「ぐっあぁぁッ……!」
白づくめの巨体にバチバチと閃光が走り、野太い悲鳴が温室内に響く。
その背後、聖域の光の中で。
短剣を片手で握りしめたマイが、ゴーゼ司教に向けて手をかざしていた。