※この作品はR-18です。

【書籍化】大司教の権力を悪用して純真無垢な聖女とセックスしたら、毎晩イチャラブご奉仕されるようになった話   作:月見ハク

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第25話 不意打ち

 俺と聖騎士長、同行していた二名の聖騎士とともに正門へと走る。

 たどり着いたと同時に、門が中から開いた。

 

 滑り込むように入ると、数人の聖騎士たちに出迎えられる。

 

「大司教様、聖騎士長、お待ちしておりました」

 

 一人の聖騎士が深々と頭を下げる。聖騎士長が「誰よりも忠誠心の厚い男」と評した聖騎士だ。他の聖騎士も俺や聖騎士長が身辺調査をして、信用できると判断した者で固めている。

 

 それ以外の聖騎士たちには今夜、休みを与えた。聖騎士の中にまだ裏切り者が潜んでいるとも限らないからだ。

 

「神殿内の配置はどうなっている?」

 

「はっ、聖騎士の精鋭十名のうち五名がここに、残り五名は大聖堂の護りについています」

 

 今夜、マイ以外の聖女見習いは大聖堂に集めている。

 

 ――遠視の術。

 

 まぶたの裏の景色をマイからロレンティアに切り替える。

 広い大聖堂の奥に、彼女たちは固まっていた。魔導灯の光が煌々(こうこう)ときらめく中、手を組んで一心に祈っている。

 

 先頭にはロレンティアがおり、その一歩後ろにはニーナの姿があった。ロレンティアに頼んで「夜を徹して祈りの儀式を行う」よう伝えてあるからか、彼女たちの顔に不安の色はない。

 

 俺は片目で聖騎士長を見つめた。

 

「別棟がもぬけの殻だと気づかれるのも時間の問題だ。その次は大聖堂を狙うだろう。我々はこのまま背信者を警戒しつつ大聖堂に向かう。そこで迎え撃つぞ」

 

「道中、背信者と出くわしたらどうしますか?」

 

「できるだけ殺すな。背後関係を洗う必要がある」

 

 まあ、洗ったところで何も出てこないだろうが。

 

「承知しました。――よしっ、速やかに大聖堂へ向かうぞ。陣形を組んで大司教様をお守りしろ」

 

 聖騎士に囲まれながら、神殿の建物へと走る。

 

 まぶたの裏の景色をマイに切り替えるが、聖域に異常はない。

 

 もし別棟が無人であることに気づかれても、大聖堂に聖女見習いが集まっているとなれば、奴らはそこへ向かうはずだ。

 

 敵の注意を、中庭の奥にある温室から大聖堂に逸らす。

 聖女見習いたちは、いわば撒き餌だ。だがもちろん彼女たちを危険にさらすつもりはない。

 

 ――他の子たちを守ってあげてください。

 

 三日前、聖域でマイと交わした約束を思い出す。

 

 神殿内に入り、廊下を進む。

 夜の神殿内は魔導灯の明かりが点々と続くのみで、昼間よりも薄暗い。

 

 いくつかの十字路を通り過ぎたとき、ヒュっと風を切る音が聞こえた。

 

 ――防護魔法。

 

 咄嗟に魔力を展開する。キィンと何かが弾かれる音が聞こえ、足下に手投げ用のナイフが落ちた。

 

「背信者だ、迎撃しろっ!」

 

 聖騎士たちが一斉に、廊下の奥へ光球を放つ。

 それが当たった瞬間、まばゆい光の中に黒づくめの男たちの姿が見えた。

 

 だがすぐに光が消え、暗い廊下に戻る。

 これは――。

 

「魔道具だ。皆、剣を抜け」

 

 敵は防護魔法が付与された魔道具を付けているようだ。

 非常に高価で一介の賊が手を出せる代物ではないし、司教といえどいくつも用意できるものではない。

 

 やはり、ゴーゼ司教の裏にはもっと大きな力――おそらく帝国がいると見て間違いないだろう。

 

 ガキン、と剣と剣がつばぜり合う音が響く。

 

「数が多いっ、大司教様は下がって!」

 

 聖騎士長が前に出て、俺を狙ってきた背信者を迎え撃った。

 

 目視できるだけで敵は十人。対するこちらは俺を入れて九人だ。一人ひとりの力量は幸いなことに拮抗しているが、人数が少ない。

 

 俺は魔力を練り上げると、最大出力で放った。

 

 ――防護魔法。

 

 かざした手のひらから魔力が放たれ、聖騎士たちをすり抜けて背信者たちに衝突する。

 

「ぐっ!」

「なんだとっ!?」

 

 バリィンッ、と敵の魔道具が弾ける音が聞こえ、背信者たちが吹っ飛んだ。

 何人かは廊下の壁に激突し、残りは床に叩きつけられる。

 

 瞬時に聖騎士長が叫んだ。

 

「拘束しろ! 舌を噛みきらせるな」

 

 聖騎士たちが次々に賊を縛り上げていく。ロープを口に噛ませて自害も封じた。

 

 手早く拘束を済ますと、聖騎士長が指示を出す。

 

「三名はここで待機! 残りは大聖堂へ向かう」

 

 六人となった俺たちは、再び廊下を走り出す。

 すると隣を走る聖騎士長が耳打ちをしてきた。

 

「大司教様、お見事です。あんな防護魔法は見たことがありません」

 

「力を使い過ぎた。もう何度も打てないから油断するな」

 

「承知しました」

 

 あの一回で、魔力の三分の一ほどを消費してしまった。

 一瞬で聖騎士たち一人ひとりを防護の対象に定め、さらに敵の魔道具を上回る魔力を放つ必要があったからだ。

 

 いざとなれば魔力増強剤を飲む手もあるが、できれば使いたくない。

 

 マイの口づけによる解毒はとても魅力的だが、無用な心配をかけてしまうだろう。

 

 ……大司教とは常に聖女を支え、安心を与える存在でなければならない。それに頼ってばかりでは大司教としての面目も立たないしな。

 

「大司教様っ」

 

 聖騎士長の大声が聞こえたと思ったら、左腕に激痛が走った。

 

「ぐっ……」

 

 十字路で出会いがしらの敵に斬られたらしい。

 咄嗟に左足に力を込め、斬った男を蹴り飛ばす。

 

 俺の両側を無数の光球が通り抜ける。聖騎士たちの放った攻撃魔法は、またしても黒づくめの男たちが持つ魔道具に弾かれた。

 

「大司教様、ご無事ですかっ」

 

「問題ない。背信者を拘束しろ」

 

 気づけば大聖堂の間近だった。扉を護っていた五人の聖騎士たちもこちらへ加勢してくる。

 

 これで俺たちは十一人。対する敵は目視できるだけで十二人。また数が足りない。

 

 双方がつばぜり合いを演じ始める中、敵集団の後方にいる人影から光球が放たれた。

 

「くそっ――」

 

 ――防護魔法。

 

 聖騎士たちの前に防護魔法を展開し、光球を防ぐ。そのまま出力を上げていき、さっきと同じように背信者たちを弾き飛ばした。

 

「すぐに拘束しろ!」

 

 聖騎士長の掛け声で、聖騎士たちが走り出す。床に散らばった敵の中に、さっき光球を放った男もいた。

 

「そいつの顔を見せてくれ」

 

 聖騎士に呼びかけると、男の顔を覆っていた黒布が剥がされる。

 

 ゴーゼ司教ではなかった。

 

 攻撃魔法を使ってきたからもしやと思ったのだが……今回の襲撃には加わっていないのだろうか。

 

 いや、そんなはずはない。

 

 宿屋で襲ってきたときと同じように、どこかに身を潜めて好機をうかがっているはずだ。

 

「大司教様、これで背信者のほとんどを捕らえました」

 

「ああ、だが油断するな、まだ――」

 

 ぐにゃりと、視界が歪む。

 足から力が抜け、俺はその場に片膝をついた。

 

 これは、毒か。

 敵の剣に塗り込まれていたのだろう。

 

「大司教様! 誰か大聖堂の扉を開けろっ、至急治癒が必要だ」

 

 聖騎士長に肩を支えられて立ち上がる。

 

 おぼつかない足取りで大聖堂の中に入ると、聖女見習いたちはロレンティアを中心に固まっていた。近くの者はロレンティアにすがり付き、他の者は互いに身を寄せ合い、誰もが顔を凍りつかせている。

 

「大司教さまっ」

 

 大勢の聖女見習いたちの中から、桃色髪の少女が飛び出してくる。

 タタッと身軽な足取りで走ってきたニーナが、俺の胸に飛び込んできた。

 

「ニーナか、皆に変わりはないか?」

 

「はいっ……なんだか外ですごい音がして、でもロレンティア様が、大司教様が来るから大丈夫だよって」

 

「そうか」

 

 ふっと、体の疲労が抜けていく感覚があった。

 見ればニーナが抱きつきながら、必死に治癒魔法を発動している。

 

「大司教様、治ってっ……」

 

 左腕の傷を治そうとしているのだろう。俺は右腕で桃色の小さい頭をポンポンと撫でた。

 

「大司教様、毒ですね?」

 

 ゆっくりと歩み寄ってきたロレンティアが、神妙な表情で聞いてくる。

 顔は少し強張っているものの、自然体の振る舞いを維持しようとしている。他の聖女見習いを不安にさせないためだろう。さすがは元聖女だ。

 

「ああ、治せるか?」

 

「診てみます」

 

 ロレンティアが指で金色髪をすくい、耳にかける。

 その整った顔を俺の左腕に近づけると、傷口へやんわりキスをした。

 

 やがて顔を上げると、俺の血でほんのりと赤くなった唇が開く。

 

「これなら解毒できます」

 

「見事だ。では頼む」

 

「はい」

 

 ロレンティアが傷口に手をかざす。

 優しい熱が患部から全身に広がっていく。足腰に力が戻り、すぐに体が軽くなった。

 

「助かったよ、ありがとう」

 

「いえ……よかったです、リンゼ様」

 

 ロレンティアの声が震える。美しい瞳には涙が浮かんでいた。

 

「ニーナも、もう十分だ。ありがとう」

 

 再び桃色髪を撫でると、ニーナがさらにしがみついてきた。体を震わせ泣いているようだ。

 

 念のため、彼女の頭から魔力を流し込んでみる。

 

「ひあぁっ」

 

 ……ふむ、呪いのたぐいはない。

 

 もしゴーゼ司教が神殿内にいるなら、ニーナの呪いを発動しようとするだろう。まずは自分のもとへ来るよう念じるはずだ。そのときの魔力を感知できれば、あの男の居場所が分かる。

 

 俺は、突っ立ってこちらをぼんやり眺めている聖騎士長を見つめた。

 

「けが人を大聖堂へ運ぶんだ。動ける者は何人かをここの護りに残し、他の者は二人一組で神殿内を探れ。残党がいるかもしれない」

 

「は、はいっ、承知しました」

 

 聖騎士長が外へ出ていくと、ロレンティアがくすりと笑った。

 

「大司教様、その格好もお似合いですね」

 

「そうか」

 

 自分の姿を改めて見下ろす。

 いつものサンダルではなく簡素な革靴。黒いズボンに、商人が着る白シャツ。その左腕の部分が、べっとりと血で赤くなっている。

 

 俺は肩のところからシャツをビリビリと破り捨てた。

 マイが見たら、さすがに刺激が強すぎると思ったからだ。

 

「……ところで大司教様、なぜずっと左目をつぶっているのですか?」

 

「目に、ごみが入ってな」

 

 少し無理のある理由を告げる。

 

 俺は正門をくぐったときからずっと、左まぶたの裏にマイを映し続けていた。背信者と戦っているときも、大聖堂に入ってからもずっとだ。

 今のところ聖域に異常はない。

 

 いや、まて。

 

 光柱の中にいるマイが、うっすらと目を開く。

 

 その視線の先に、近づいてくる影があった。

 

「ロレンティア、聖女見習いたちを頼んだ。君が慰めてあげなさい。それとニーナも、もう離れなさい。聖騎士たちの傷を癒してあげるんだ」

 

 しがみついていたニーナを優しく引き離す。

 

 全てを分かっているかのように穏やかな顔をするロレンティアと、涙目で見上げてくるニーナに告げた。

 

「私は聖女のもとへ向かう」

 

 

***

 

 

 マイの見つめる先、温室の入り口付近にそれは立っていた。

 

 白いローブを頭からすっぽりと被り、顔には気色の悪い白い仮面を付けた、全身白ずくめの男。

 仮面に空いた二つの穴から、細い目がじいっとマイを見つめている。

 

「ゴーゼ司教、ですね」

 

 落ち着いた彼女の声に、男がうなる。

 

「ほう、よく分かったな。大司教から聞いていたか」

 

 聞かずとも、これほど恰幅(かっぷく)のいい男は教会内で他にいない。

 でっぷりとしたお腹を揺らしながら、ゴーゼ司教がゆっくりマイへ近づいてくる。

 

「ゴーゼ司教、ここは聖域です。大司教さま以外、立ち入ることは禁じられています」

 

「くくっ……そうだな。だから光栄だよ。私のような者が聖域に立ち入り、聖女のあられもない姿を拝めるのだからな」

 

 野太いしゃがれ声が、くくくと笑う。

 

 卑しい視線を感じ、マイは修練服から露出した胸元を腕で隠した。それでもなお、ゴーゼ司教をきっと見据える。

 

「聖女が逃げ込むなら聖域に違いないと思っていた。いやはや大当たりだよ……聖女マイ、そこから出てこい」

 

「いや、です」

 

 マイがさらに体をかき抱くと、ゴーゼ司教が自分の手のひらを掲げる。そのふくよかな指には黒い指輪がはめられていた。

 

「この指輪はな、一定時間聖域の力を無効化する特別な魔道具だ。無理やり聖域から引っ張り出してもいいが、できれば面倒な真似をしたくない」

 

 ゴーゼ司教の視線は、マイの足下に置かれた短剣に注がれていた。

 

「その剣でなにができる? 心優しい聖女に人を傷つけられるわけがないだろう。刃物を人に向けただけで卒倒してしまうのではないか?」

 

「こないでください」

 

 マイが声を上げると、ゴーゼ司教はもうあと数歩の距離で立ち止まった。

 

「ふふ、怯える姿もそそるのぉ。男を魅了するその体、美味そうな唇……実にもったいない。旅の道中たっぷり可愛がってやるからな」

 

 しゃがれ声にいやらしい響きが混じり、仮面の下が舌なめずりするのが分かった。

 

 マイは「うっ」と身を震わせながらも、ゴーゼ司教から視線を外さない。

 

「旅、とは……どこへ、連れていくつもりなのですか?」

 

「帝国だ」

 

「帝国?」

 

 思わず聞き返したマイに、ゴーゼ司教が笑う。

 

「ああそうだ。聖女狩りというやつだな。お前の村も、それで焼かれたのだよ」

 

「え……」

 

 マイの目が見開き、固まる。

 

 そんな様子に気をよくしたのか、ゴーゼ司教がもう一歩近づいた。

 

「さあ、私と一緒に来い。馬車の中で、女の悦びを教えてやろう」

 

 太い腕が彼女へと伸ばされる。

 

「いやっ……!」

 

 そのとき、ガタンと温室の入り口のほうで物音がした。

 

「誰だ!」

 

 ゴーゼ司教が手をかざして振り向くも、そこに人の姿はない。

 再びマイへ向き直ると、鼻息を荒げた。

 

「おい、他に誰かいるのか? 大司教は大聖堂へ向かったはずだ。聖騎士でも忍ばせたか」

 

「言いたく、ありません」

 

「正直に言え。さもないと、お前の可愛がっている妹たちも同じ目に遭わせるぞ」

 

 妹たち……聖女見習いたちのことだ。

 

 マイは下唇を噛むと、涙で揺れる瞳をゴーゼ司教に向けた。

 

「誰も……いません」

 

「ふふ、そうか」

 

 その瞬間、ゴーゼ司教の背中に手投げ用のナイフが突き刺さった。

 

「なっ――!」

 

 

 ――俺はそこで、遠視の術を解いた。

 

 温室入り口の物陰から躍り出ると、マイのもとへと走る。

 

「小癪なっ」

 

 ゴーゼ司教の手のひらから光球が放たれた。

 

 ――防護魔法。

 

 咄嗟に魔力を展開するも、威力を押し殺せずに俺の体が後ろに転がる。

 

 どうやら魔力増強剤か、魔力を増幅させる魔道具を使っているようだ。

 

 片膝をついて起き上がろうとする俺に、ゴーゼ司教がゆっくり近づいてくる。

 

「大司教が潜んでいたか……誰もいないなどと、まさか聖女が偽りを口にするとはな……」

 

 その声色から、本当に驚いているのが伝わってきた。

 

 ああ、俺もだゴーゼ司教。

 

 彼女には、いつも驚かされる。

 

 

「マイ、今だ」

 

 

 小さくつぶやくと、ゴーゼ司教の体が跳ねた。

 

「ぐっあぁぁッ……!」

 

 白づくめの巨体にバチバチと閃光が走り、野太い悲鳴が温室内に響く。

 

 その背後、聖域の光の中で。

 

 短剣を片手で握りしめたマイが、ゴーゼ司教に向けて手をかざしていた。

 

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